【本編完結】ロバ娘:ファンディングストライプ   作:桐型枠

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 トンチキ度合いが増したので初投稿です。

 Q.シマウマってダートより芝なの?
 A.他のシマウマはわかりませんがサバンナストライプの原作(JWC)における戦績では英国の芝中距離で好成績を残しています。



一度思いの丈をぶちまけよう

 

 ほどなく、歓声が落ち着いた頃合いを見計らって、ぼくは走り終えてターフの上でへばっているターボ師匠を回収してから皆のもとに向かった。

 やっぱり皆目に見えてへばっている。次のレースが始まる兼ね合いもあるため、コースから出る程度の気力は残っているようだけど、クールダウンできる体力は残らなかったようだ。

 

「大変だったねぇ」

「トラちゃんも走ってたよね!?」

「ひ、他人事みたいに言いやがって……! 完全に狙ってただろ、この展開……!」

「狙ったねー」

「こ、こいつ……」

 

 最優先ターゲットにしたマヤノと、戦略のためとはいえ後ろからつつき回してしまったウオッカは、既に脚がガクガクだった。若干申し訳ない。

 

「テイオー、マックイーン、お疲れ様」

「ええ……いやターボさんを背負ってここまで来るなんて元気ですわね」

「おつかれっ。……もしかしてストライプ、本気じゃなかったりした?」

「まさか」

 

 間違いなく全力だった。ただ、体はそれを速さとして出力してくれはしなかった。それだけのこと。

 あと、ぼくに関しては余力があると言うよりひと息入れると勝手に回復するというか。

 もしもし神様(うんえい)? 好転一息レース終わってから発動してるんですがどういうことですか?

 

「完敗だよ。流石テイオー」

「へへっ、だって無敵のテイオー様だもんね!」

 

 たしかアプリだと本当に無敵になれるんだよねテイオー。他のウマ娘もそうだけど。

 この世界だと本当に無敗の三冠(ハイパームテキ)テイオーになれるかな。どうかな。

 

「ええ、感服いたしましたわ。……ところでストライプ、貴女の……そのスタミナですけど、どこで鍛えたのですか?」

 

 と、そこでマックイーンが疑問を振ってくる。スタミナ……スタミナかぁ。

 教えるのは別に構わないんだけど、うーん……マックイーンの求める答えに合致するものを出せるかなぁ。

 

「しいて言えば、高山トレーニング」

「しいて言えば? その言い方ですと、特別なことをしていないように感じますけれど」

「ケニアって国土の大半が標高1000m以上の高原で、ぼくが生まれたところだと……2500m近くあったから……自動的に……」

「あ、はい……」

 

 だから勝手に肺機能が鍛えられたわけですね。(RTA文法)

 これは真面目な話でもある。海外マラソンランナーが日本のマラソン大会の上位を総なめにしたという例があるけど、その原因の一端がこれだ。

 もっとも、ウマ娘の場合必ずしも「だから勝てる」とは限らないのだけど。

 

「やはり(わたくし)も高山トレーニングは取り入れた方が良いのでしょうか……」

 

 そういえば今専門の機械があるんだっけ。空気を薄くするとかなんとか。

 メジロ家ならそういう設備もすぐ手元に取り寄せたりできるんだろうか。テイオーの脚をマッサージしながら、少し羨ましく感じた。

 

 

 ・・・≠・・・

 

 

 一着になったテイオーに大勢のトレーナーが押しかけるのと、ぼくを見るトレーナーさんたちが困惑して首を傾げているのを見届けた後、ぼくは中庭の大樹のうろにやってきていた。

 選抜レース中だけど……いや、だからこそだろうか。ここも大盛況だ。

 

「何でもうトレーナーがついてる子が出てるのよー!!」

「どいつもこいつも見る目が無ぁーい!!」

「トレーナーさんをもっと甘えさせたいいいいい!」

「にんじんラーメン超爆盛りアブラマシマシペアセットぉぉ!!」

「あんたらおかしいで」

 

 ノイズは挟まったが大盛況だ。

 すまんな、と約二名のウマ娘を押し出していくタマモクロス先輩を見送ると、次はぼくの番だった。

 そろそろ一度思いの丈をぶちまけよう。

 

「本当はダメだけど……ひでぇことだけど……負けても賞金が五十万くらい出てほしい! たくさんお金が欲しいいいいい!!」

 

 後ろのウマ娘たちはズッコケた。

 離れたところでタマ先輩が「ちょっと分かる……」とばかりに、やや複雑そうに頷いている。

 レースでは、たとえ入着してもライブに出るか否か、出させてもらえるかどうかによっても賞金が変わる。1着の賞金が一番多いのは当然にしても、2、3着と4、5着で入着した場合にもまた差が出てくる。

 調子やレース場の状態、出走者によって変動してくる着順の中、レースも楽しみたいし安定してお金も欲しい。負けて改めてぼくはそう思った。

 

「ふぅ」

 

 スッキリした。

 負けて悔しい思いもちょっとあったし、それも一緒に吐き出せたような感覚だ。

 とりあえず一旦寮に戻って着替えよう……としたところで、タマ先輩がふと何かビビッと来た様子でこちらににじり寄ってきた。

 え、突然なになになに。

 

「……キミ」

「な、何です……?」

「猛虎魂を感じる」

「グリーンウェル」*1

「ヌ゛ッッッ」

「タマ!?」

 

 しまった、あまりに勢いよく迫ってくるものだからつい反撃を……。

 

「え……ええ性格しよるやんけ……ウチやなかったら戦争やぞ……」

「ごめんなさい……なんか急に迫ってくるから……」

「タマ、グリーン……誰だ?」

「ソレ以上言うんやないでオグリ。その名は禁句や」

 

 ……こっちでもあったのか、神のお告げ事件*2……。

 

「タマちゃん、知り合いの方ですか~?」

「え。いや面識は無いで。すまんなキミ」

「いえ、いいですよ。タマ……ちゃん、先輩?」

「『ちゃん』は抜いとき」

「はいタマ先輩」

「よし。こっちはクリークとオグリ。多分知っとるやろ?」

「はい。噂はかねがね。サバンナストライプです。よろしくおねがいします」

「トラで縞。名前から猛虎魂を感じる」

「まだ言いますか」

「縦縞のユニフォームが似合うと思うで」

「そろそろ虎ファンからアスリートに思考を戻してください……」

 

 いけない。魂が虎の球団に囚われかけている。ウマ娘より場末の匿名掲示板にいそうなノリだ。頼むから帰ってきてほしい。

 

「サバナステイショク……」

「サバンナストライプちゃんよ、オグリちゃん……」

 

 いけない。魂が食欲に囚われかけている。生粋のウマ娘のノリそのものだが怖いので頼むから食堂に行ってきてほしい。

 

「ところで、ストライプちゃん?」

「あ、はい」

「少し……頭をなでなでしてもいいかしら~」

「ご勘弁を」

 

 いけない。魂が母性に囚われかけている。下手に受け入れるとぼくは今から赤ちゃんにされるから誰か助けてほしい。

 

「しゃ……シャワー浴びて着替えてこないといけないから、ぼくはコレで……」

「……せやな! クリーク、オグリの腹も鳴っとるし、食堂行くで!」

「え? いや私は問題な……」

「あらまあ。言われてみたら、よく鳴ってるわぁ」

 

 意を察してくれたタマ先輩のフォローが光る。

 先程の焼き直しのように二人を押して離れていくのを見送り、当初の予定通りぼくはシャワーを浴びに戻った。

 しかし何であの三人ここにいたんだろう。模擬レースとかでイナリワン先輩に負けたとかかな。

 

 はてさて、軽くシャワーを浴びて考えてみるけど、やっぱり選抜レース、一回目じゃ思ったようにトントン拍子に話が進むことは無いだろう。

 競り合った相手もテイオーにウオッカ、マヤノにマックイーン、ターボ師匠と強豪ばかりだし、いずれも名前はトレーナーの間でよく知られている。

 その中でぼくはまるで注目を受けていなかったポッと出のシマウマだ。誰こいつというのがトレーナーさんたちの正直な気持ちだろう。

 認識としては、いいとこ「まぐれでテイオーと競り合えた幸運なやつ」ってところか。

 今の時点で過度な評価は要らないんだ。そのくらいでいいし、そのくらいがいい。ウオッカもスカーレットもまだチームに目星をつける前のようだし、クラシック戦線が激化していくのは来年以降になるだろう。

 年度内で四回あるうちの最初の選抜レースが終わったから、今年度は残り三回。三回目か四回目に理解のあるトレーナー君と巡り合うくらいが理想的かな。

 まだぼくの体は完全に出来上がってるわけじゃない。トレーニングも栄養も、自分である程度管理はしているけど本職のトレーナーにはどうあっても及ばない。なら早い内にトレーナーがついてくれるとしたらそれはその方がいい……けど、そこで現実を見ないわけにはいかない。

 人は良い面よりもまず悪い面の方が目に付きやすい。

 負けたぼくは、外から見て「足りない」と思われるようなことが数多くある。尻尾が回っていたという困惑を超えてこちらに寄ってきたトレーナーがいなかったのがその証左になるだろう。

 この一回は言わば叩き台。まだお金も人気もかかっていないデビュー前の今のうちに、ここから少しずつ「見え方」を修正していけばいい。

 

 慌てない、焦らない、その上で計画をしっかり練る。お金を稼ぐためにはそれが大事だ。お金に限ったことでもないけど。

 まずは軽くノートにでも今の問題点を洗い出すのがいいかな。部屋に戻ってそう考えていたところ、外から何やらノック音が聞こえてきた。

 

「あ、はい」

 

 ミーク……じゃないな。同室だし、そういうのは気にしないだろう。じゃあ他の同級生かな。

 外に出てみると、そこにいたのは全身黒ずくめの服に身を包んだニンジャだった。

 

「…………は?」

「ドーモ、サバンナストライプ=サン。ニンジャスナイパーです

 

 なんっ……え、ニンジャ?

 ニンジャ、えっ……ニンジャ? スナイパー?

 ニンジャスナイパー? って、あの? あれ???

 

「アイエエエ!? ニンジャ!? ニンジャスナイパーナンデ!?」

 

 二文字しか違わない!

 コワイ!!

 

「ある方が貴様をお呼びだ。これから連れて行く。反論は受け付けん」

「えっちょっと待って何を……やめっ……ヤメロー! ヤメロー!」

 

 頭が追いつかない! いきなり現れて怒涛の勢いで追い込みを始めるんじゃない!

 何なのこの状況!?

 誰か説明してくれよぉ!!

 

 


 

 

◆オマケ:選抜レースを見ていたトレーナーによるサバンナストライプの寸評

 

・新人トレーナーA

 足元がふらふらしており生まれ持った体幹でどうにか持ち直せている印象。才能で走っているだけと考えられる。

 フィジカルによる強引なレース運びがうまくハマっただけではないだろうか。トウカイテイオーと比べスマートさに欠け、同じことをしろと言ってもできるとは考えづらい。

 現状では選外。何で尻尾が回っているのか理解できない。

 

 

・中堅トレーナーB

 スタミナは見事だが、近現代の長距離戦においてはマイル戦すら制することができる優れたスピードが要求されることを、スーパークリークが既に示している。

 時代に逆行した半端なランナーという印象が目立つ。選外。

 個人としては視界の中で意図不明の動きをされて気が散りながらも三着をもぎとったメジロマックイーンに着目したい。

 

・ベテラントレーナーC

 どこからどこまでが狙った展開であるのかが不明だが、フェイントを交えた特殊な走法をしていることが見て取れる。

 仮にレース展開を制限するために走法を変化させていたのだとすれば、ウマ娘個人でレース展開を把握し逐一作戦を更新できる頭脳があるということだ。フィジカルを鍛え最高速を更新することで、GI戦線への参入も夢ではない。ただし、希望的観測による仮定であるため次回、次々回以降の選抜レースまで様子を見たいところ。

 空力学的に何の意味があるのか分からないあの尻尾の回転はやめさせるべきだと考える。

 

・桐生院葵

 特殊な走法をしておられるようなので、足腰への負担が気にかかりました。周りのウマ娘さんたちの様子を見る限り終始サバンナストライプさんがペースを握っておられたようなので、作戦立案能力が高いことが見受けられます。現在、担当ウマ娘がいるため私が個人的に面倒を見ることができないのが残念なところです。

 コメント:大丈夫です、フォームは矯正できます

 

・東条ハナ

 ルドルフからの報告に上がっていた注目株。ケニア出身で身体バランスと肺機能に優れており、あの年頃にしては優れた戦術眼を持っている様子。

 現地の環境はトレーニング環境としては最適だったかもしれないが、専門家に面倒を見てもらっている様子は無く、全体的に独学で鍛錬した形跡が見て取れる。早熟かつルドルフを目標にトレセン学園への出入りも行っていたトウカイテイオーに敗北すること自体は自然であり、相応の教育を施せば伸び代は大きいのではないか。

 リギルメンバーの海外挑戦に向けたマッチアップ相手としても最適と考えられるため、可能ならチームに迎え入れたい。

 ところであの尻尾の回転は何?

 

・新人トレーナーG

 その時、ふと閃いた!

 このアイディアは、ハルウララのトレーニングに活かせるかもしれない!

 

*1
某虎の球団ファンにとってのトラウマ。超大型助っ人として大金を積んで契約したら7試合だけ出場して引退して帰った。

*2
グリーンウェル引退の理由。会見でマジで言った。ファンはキレた。





 原作(競馬)知らないけどウマ娘は知ってる人も多いと思われるので本作では基本JWC産駒以外オリジナルウマ娘は基本出ません。
 加えて原作再現方面では他の素晴らしい先駆者が大勢いらっしゃることもあって、こちらではできるだけウマ娘に落とし込みたいという事情もあるので、JWC産も出てもあと1~2名の予定です。
 あいつらウマ以外が多すぎて落とし込めない……。

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