破面娘のいる非日常   作:塩レモン

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プロローグ 覚精の時

 

綺麗な白蛇がいつのまにか自分の部屋にいた。見覚えがあると思ったら2日ほど前に公園の隅で怪我をしていたところを助けた蛇だった。

見たこともないような真っ白い大きな蛇でとりあえず包帯を巻いて1時間ほど膝の上で撫でていたら、ぼんやりとした光を纏い始め、急に元気になりどこかへ行ってしまったのだ。

 

そんな蛇が俺の部屋のベッドの上をまるで自分の寝床だと言わんばかりに陣取っている。

 

「全く、どうやって入ってきたんだか…ッ!?」

 

ビキリ、と稲妻のような衝撃が俺の頭を迸り、次いで視界が薄い青に染まる。この現象には覚えがあった。

 

「これは…女の人…?」

 

ザザッ、とテレビの画面が切り替わるように俺の視界が切り替わり、蛇の姿が見知らぬ女性へと変わる。美しい美女であった。袖の長い白い服を着ており、少し緑がかった黒の長髪が目を惹く。一定に切り揃えられた前髪と切長の双眸、桃色の瞳。右目の下にある三つの丸い模様が異様ながらも色気を放っている。

 

そうして視界が元に戻ると同時に、俺は自らの体の異変に驚愕していた。視界が切り替わったことにではない。答えは己の下半身。ズボンの股間部分に山を作っている己の男性器、つまりはチ○コである。

 

「……何……だと……!?」

 

勃起している己の逸物を凝視しながら驚愕の表情を浮かべる俺の姿は客観視するとさぞかし滑稽に映るのだろうが、俺にはそんなことを考える余裕はなかった。

 

このオ○ンポ凝視驚愕少年の誕生理由にはまず俺の自己紹介から入らなければならない。

 

俺の名前は黒崎嶺二。幽霊が見えることとたまに未来が見えることを除けばどこにでもいるごく普通の中学生だ。家族構成は父親と兄に双子の妹がいる。母は既に他界しているが、それなりに家族仲は良い。

幽霊が見えるのは遺伝的な何かだと思う。親父は霊感ゼロだが、俺と兄は見える、触れる、話せるの三拍子揃ってるし、双子の妹の姉の方も強い。妹の方はぼんやりと見える程度らしいがそれでも異常だろう。

 

そしてもう一つ、俺はたまに未来を見ることができる。いや、できるというより見てしまうの方がいいかもしれないな。なんせ自分で制御することができないのだから。未来視には起こる前兆がある。頭にビリビリと電流のような刺激が来て視界が薄い青色に染まるのだ。この力は家族の中でも俺だけしか持っていない。

最初は何かの勘違いだと思っていたが、小さな医院をやっている家に急患が来ることを当てたり、学校の先生が病欠で休むことなどを言い当てたり、そのほかにも色々と正確に予測を当て続けたためにこの力がガチであると自他共に確信してしまった。まぁ、他と言っても知っているのは俺と家族、あと少しの人たちだけだし、その人たちも言いふらすような人たちではない。

 

…おっと、すまない。長々と話してしまったがこれが最後だ。未だ俺の視線はそそり立つ(と思われる)股間のテントに注がれている。何故俺が自分の勃起にここまで驚いていると言った話だったな。

欲望に忠実な皆さんなら中学生なんて日夜エロいことを考えて授業中にテントを設立し起立するときに引っ掛かって苦痛に顔を歪ませたりしているんだろうとお思いだろうが残念ながら俺は違うのである。

 

 

俺は今まで性的興奮をしたことが無かったのだ。

 

 

女の子が好きであるという自覚は強くあれど、何故か!勃起!しないのである!!これは由々しき事態だ!母の遺伝子を濃く受け継いだ俺はかなりの美形であり今までも告白を受けたことなどザラにあるというのに、一度も使うことなく死ぬなんて悲惨すぎる!

 

それに気づいたのが2年前、それから俺はマイサンを戦闘形態に移行させるために様々な癖への扉を叩いた。協力者を募り、時に吐き気を催しながらも何度も()()を試みてみたが結果は失敗。

 

2年間もの修行の末、俺が導き出した結論は俺が興奮できるものはこの世には存在しないということだ。まさしく生まれる時代を間違えた、というやつだ。幽霊が見えようが未来が読めようが辿り着くことのできないゴールに絶望し、悟りを開きかけていた俺であったが…

 

「見ろこれを!ついに…ついに覚精の時が来た!!」

 

「嶺兄うるさい!」と妹の声がした気がしたがそんなことどうでもいい。俺は感動していた。マイサンもズボンを突き破らんばかりに喜びを誇張している。

 

しかし、感動に震えるのもここまで、マイサンが反応したのはまず間違いなく未来視にて見えたあの女性に対してだろう。艶のある長髪、大きすぎず小さすぎない女性の象徴たる確かな胸の膨らみ。その全容がしっかりと脳内メモリーに保存されており、思い返すたびにマイサンは確かな喜びの舞を踊る。

 

「!わっ」

 

ベッドで目を閉じていた白蛇がスルスルと俺の身体を登ってきて首へと巻きついた。軽く巻きついているため苦しくはなく、ひんやりとした感触が伝わる。

 

昨日は気がつかなかったが白蛇から感じるのは幽霊たちと同じ雰囲気で見た目も相まって普通の蛇ではないことがわかる。未来視で見た通りになるのならば白蛇ちゃんはあの美人さんになるということになる、鶴の恩返しならぬ蛇の恩返しか…?

 

白蛇はつぶらな瞳をこちらに向け、スン、スンと鼻で息をしている。

 

「まっ、そんなことはどうでもいい!白蛇ちゃん!白蛇ちゃんだと変か…じゃあ、スンスンって鳴くからスンスンちゃんだ!…スンスンちゃん…俺は決めたよ…必ず君をあの美人さんにして、プロポーズする。…そして成し遂げるんだ。諦めかけていた夢を…」

 

グッと拳を握り、俺は高らかに宣言した。

 

「俺はハーレムを作る!!!」

 

ドン!という効果音が鳴り響きそうな宣言とともにスンスンちゃんは俺の首を絞め、二人の妹が轟音を立てて鬼の形相で俺の部屋に突入した。

 

 

 

 

 

 

 

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