破面娘のいる非日常   作:塩レモン

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今更ながらBLEACH愛が再熱。新OPでヘリに乗ってる陛下が面白すぎた。


1 兄と弟

 

 

 

突然のことだった。いつも通りの夕食の最中、スンスンに果物でもやろうかと考えていたその時、いきなり家の壁が吹き飛び、崩れた壁から白い巨大な化け物が現れた。

 

「きゃあ!」

 

魚の骨ような顔をした巨大な化け物が腕を振り回し、テーブルごと俺たちを吹き飛ばした。

 

壁に背中からぶつかり、肺の中の酸素が飛び出る。

 

「いっ、てぇ…」

 

しかし、そんな弱音を吐いている暇はない。化け物がまた腕を振りかざす。父さんが吹っ飛ばされ背から血を流す。夏梨が這ってリビングから出た。そういえば一兄は今二階の部屋にいるはずだ。

 

化け物が手を伸ばし遊子を持ち上げた。遊子が小さく悲鳴をあげる。

 

「うちの可愛い妹に何してんだこのやろォォ!!」

 

痛む体を無視して化け物に飛びかかる。がむしゃらに叩き込んだ踵落としが巨大な化け物の頭に当たるが、化け物は堪えた様子もなく異様に大きな拳で俺を吹き飛ばした。

 

「がっ!」

 

壊れた家の中にまで吹き飛ばされた俺を心配するように俺の部屋から降りてきたスンスンが擦り寄ってくる。

身体中が痛いが、動かない理由にはならない。散らばっていた家の破片を化け物に向けてぶん投げ、妹の遊子を取り返すために化け物の腕に掴みかかる。

 

「遊子!嶺二!」

 

「一兄!!」

 

「ッ!うおおっ!!」

 

一兄がバットで化け物に挑むが、殴り飛ばされバットも折れてしまう。化け物は羽虫でも払うように俺も吹き飛ばし、一兄に襲い掛かった。

 

「ッッ!」

 

朦朧とする意識の中、視界が青く染まる。早送りのように景色が流れ、俺の目に未来が映る。

 

「一兄…」

 

俺が最後に見たのは、見知らぬ和装の少女に刀で胸を貫かれる兄と、未来で化物を一刀両断する少女と同じ黒い和装に身を包んだ兄だった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

ピピピピピピピピ、と安らかな眠りを強制的に終わらせる悪魔の電子音により、ゆっくりと瞼を開ける。ベッドから体を起こせば、いつもと変わらない日常の朝が広がっていた。

 

「っ!」

 

「もー。朝から慌ただしいなぁ」

 

あの化け物のことを思い出してドタドタとリビングへ飛び込むと、遊子と夏梨が呆れた目を向けてきた。二人とも無傷でケロリとしている。

 

んんん?どゆこと?あれは夢だったのか?あ、でも家の壁がぶっ壊れてる。ちょうどあの化け物が壊した位置だ。

 

「しかし奇跡だよな!トラックが家に突っ込んできたのに一家全員無傷なんてな!」

 

「それで誰も起きなかったことの方が奇跡だと思うけど…あ、お兄ちゃんも起きてきた。ゴハンできてるよー」 

 

「そのおかげで犯人は取り逃しちゃったんでしょうが」

 

トラックが突っ込んできたとな?父さんも夏梨も遊子も昨夜のことは何も覚えていない様子だ。あれ?もしかしてほんとにあれは夢だったのか?一兄は唖然とした顔してるし。うーん……まぁ、いいか!家族全員無事だったならそれで良しだ!ん、もちろんスンスンも無事で良かったよ!

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

それから一ヶ月ほどが経ち、6月17日の今日、我が黒崎家は愛すべき母の墓参りへと来ていた。

 

ちなみにスンスンも一緒である。

 

最初は置いて行こうと思い、そのことを事前にスンスンに話していたのだが、その日からスンスンはずっと俺の側から離れようとはしなくなった。無理矢理ついてきた今もスンスンは俺の服の中に潜んでいる。

 

まだ6月だというのに暑さがひどい。蛇は暑いのが苦手だというがスンスンにも当てはまるようで、服の中に仕込んだタオルに巻いた保冷剤にピッタリと張り付いているのを感じる。

 

 

父さんがはしゃぎ、夏梨と遊子が嫌な顔をしている。まぁ、父さんは場を和ませるつもりで大袈裟にはしゃいでいるだけだし、夏梨と遊子も本気で嫌がってなどいないことは分かるんだけど。

 

「…ん?」

 

坂の上で少女が手を振っていた。胸はぺったんこだが、美少女である。笑っているのかよく分からない視線は俺の後ろにいる一兄に注がれている。

 

「あれ?先客がいる」

 

「ほんとだ。あの人も墓参りかな?…手振ってる。お兄ちゃんの知り合い?」

 

「ふーん?一兄もなかなか隅に置けないね…井上さん泣かしたら許さないよ…」

 

「知らん!俺は知らんぞあんな奴!全く全然これっぽっちも…ってかなんで井上が出てくるんだよ!」

 

揶揄うように兄ちゃんの脇をつつく。この分だと巨乳大天使井上さんの思いには気づいていないようである。全くもって度し難い朴念仁っぷりだ。

 

「なんかあたし、あの人見たことあるような…」

 

夏梨がそう言って俺も思い出した。あの人は白い化け物が襲ってきたあの夜、兄ちゃんと一緒にいた人だ。

 

「そうだ!あの夜に一兄と一緒にいた和服美少女だ!」

 

「っ!?…嶺二っお前…覚えて…?」

 

「あれ?でもあれは夢で…兄ちゃん。あの子とどういう関係な訳?」

 

「あの夜って!?お兄ちゃんどういうことー!?」

 

「いや、それは…ばっ!!?」

 

一兄が和服美少女改めワンピース美少女に襟を掴まれて連れ去られていく。

 

「おほほほ!一護くんとはクラスメイトで友達なの!ちょっとお話ししたいことがありまして借りますわねぇ〜〜〜!!」

 

華奢な身体からは想像もできないほどパワフルに一兄を持って行ってしまった。夏梨が「ははーん」とニヤニヤしながら呟き、一兄が大好きな遊子が膨れっ面を見せる。むふふ、遊子よ。そろそろ兄離れして、もう一人の兄に甘えてくれてもいいんだぜ?…帰ってきたのは見事な無表情だ。やめてくれ遊子、その目は俺に効く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんかまた化け物がいた。毛むくじゃらの巨体に不気味な仮面をつけた気色の悪い化け物が夏梨と遊子を襲っていた。石を投げつけ、意識をこちらに向けてなんとか遊子と夏梨を逃がそうとするが、化け物は尖った鉤爪で俺の腹を斬り裂き、そのまま地面へと押さえつけた。

 

「がっ…あぁ…!!」

 

「クヒッ、カカカカッ!これはこれは…また美味そうな餓鬼が来てくれるとは…嬉しや、嬉しや」

 

「テメェ…クソ気持ち悪りぃ見た目のくせに流暢に人の言葉喋りやがって…」

 

「なんだ?随分余裕だね。クソ餓鬼」

 

化け物が更に力を込める。ミシミシと地面に押し付けられ身体が激痛を訴える。

 

「ぐがぁぁぁ…!!」

 

「あん?…ギャッ!?」

 

本気の死を実感し始めたその時、服の中に隠れていたスンスンが飛び出し、口からビームのような光を吐き出した。ビームは化け物の目に当たり、化け物は悲鳴を上げ、大きくのけぞった。

 

化け物から伸びていた触手によって囚われていた遊子が解放され、俺にかかる重さも軽くなる。その隙になんとか抜け出し、落下する遊子を受け止め、倒れている夏梨も火事場の馬鹿力で持ち上げる。

 

二人とも気を失っているようでぐったりとしている。

 

「ピィッ!」

 

「スンスン!」

 

化け物に投げ飛ばされ、木へと激突したスンスンに近づく。よくもスンスンを…このクソ野郎が…今すぐこの化け物をぶっ飛ばしてやりたい。だが、俺が向かって行ったところで簡単に殺されるだけだ。ならば今俺ができることは何か。大事な妹たちと俺を助けてくれたスンスンを守ること、それが今の俺が唯一できることだ。

 

「…テメェ俺を食いたいんだろ?できるもんならやってみろよ」

 

「カカ…恐怖でおかしくなったか?霊力の強い貴様とそっちのガキだけ喰うつもりだったが、わしを怒らせた罰じゃ。全員の魂、喰い尽くしてくれるわ」

 

「……ぁ…」

 

「ん?…どうした。今更我に帰ったか?…クハハ、もう遅いぞ!貴様は生きたまま喰うと決めたのだ。せいぜい恐怖するがいい!」

 

「ああ、怖えよ。いや、怖かった。…自分が死ぬことも、何より大切な人がいなくなることが、怖かったよ。でもな、もう安心してるよ」

 

「はぁ?」

 

化け物が首を不満気に傾げる。求めていた反応ではなかったのだろう。化け物が腕をこちらに伸ばしてくる。しかし、俺にはもう化け物に対する恐怖心なんてものはなかった。

 

誰よりも頼れる人が助けに来てくれるのを見たから。

 

 

「うおおおおっ!!!」

 

 

いつか見た黒装束に身を包んだ兄がでっかい剣で化け物の腕を切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

速報。兄は死神だった。正確には一ヶ月前の顔面魚骨の怪物が襲ってきたあの夜に死神の力を手に入れて死神代行として幽霊が変質してしまった怪物、虚を倒して回っているらしい。さっき襲ってきた奴や、一ヶ月前に家を襲った奴が虚なんだとか。

 

ちなみにさっき襲ってきた虚こと『グランドフィッシャー』は俺とスンスンも少し手助けして一兄が一刀両断した。一兄は母さんや俺たちのために一人で戦いたかったようだが、俺だって同じ思いを持っていることを分かってほしい。

 

話を戻して一兄に死神の力を渡した和服美少女こと朽木ルキアさんから死神や虚についてやらを色々聞いたのだが、正直よくわからん。一兄を死神にしてしまったことや危険に巻き込んでしまったとか謝られてしまったが、ただただ守ってくれて感謝しかねぇっす。

 

というかルキアさんは俺のことをグランドフィッシャーと一兄が戦う中守ってくれたし、俺もさっき知ったことだが虚であるスンスンのことも見逃してくれたから既に俺の中での印象は最高である。死神とか虚とかの霊的な存在には霊圧と呼ばれる霊的な力か気配みたいなものがあるらしいが、なんでも俺の霊圧はなんともボヤボヤと霧がかかっているように分かりづらいらしく今の今までスンスンに気づかなかったらしい。

 

「…今更、小さな虚一匹見逃しても変わらんだろうしな…」

 

ルキアさん小さく何か呟いていたが、彼女への恩返しの内容を考えていた俺の耳には届かなかった。

 

しかし、立て続けに虚なんていう化け物に襲われたことを思うと、俺も一兄のように何か戦える力が欲しいと感じてしまう。家族や友達を守ることもハーレムの夢を叶えることにも力は必須だろう。

 

スンスンを優しく撫でながら俺はそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

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