錦の輝き、鈴の凱旋。   作:にゃあたいぷ。

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 もしこれから遠くない先の未来、ウマ娘で世界大戦が起きたとします。
 世界中のウマ娘と日本代表がレースの一発勝負で対決し、負けたら植民地にされる。
 という事態になったら、日本代表は絶対にシンボリルドルフでないと嫌でしょう?
 ミスターシービーでも良いんですか? カツラギエースに日本の命運を託せますか?
 シンボリルドルフを貶している奴は、国家規模で考えるべきです。

 でも、シンザンになら……

 そこうるさいっ!

迷インタビュー集の切り抜き、チームベテルギウスのトレーナー。


第3.5幕「ロード・オブ・エンペラー」
第1話:英雄になる為の試練。


 波乱のマイルCS、一人のウマ娘の悲劇はお茶の間を騒がせた。

 放送はすぐ中断されたが、ゴールの瞬間。その直後までは放送することになった。この事で、ひと波乱。ふた波乱と起きることになるが、それはまた別の話。

 此処では、概要を書き記すだけに留める。

 

 事故の後、一部の活動家がトゥインクル・シリーズ。強いてはドリームトロフィー・リーグの閉鎖を要求したが、参加者にウマ娘が居ない事、そしてウマ娘のほとんどを敵に回したことで活動は思うような影響を与えなかった。他には、ハーディービジョンが声明を出したことが大きかっただろう。彼女は一切の後悔ない事を前提に、迷惑を掛けたことを謝罪した。そして、これからもまだトゥインクル・シリーズを始めとしたウマ娘レースに関わる意向を見せた後、クモハタが事故の再発防止に努める為のルール改正を明言した事で一先ずの落着を見せることになる。

 

 ハーディービジョンが、当時、その身を賭して絶対王者と呼ばれたニホンピロウイナーを破った悲劇は、時と共に風化し、当時を知らない者達の手によって美化される日が来る。悲しみや喜びといった感情は取り除かれて、その結果のみを語られる日が来る。

 

 しかし、あえて言わなくてはならない。

 

 彼女達の走りは夢を魅せる。みんなの想いを背負って走り続ける。

 そんな彼女達の結末が、悲劇で終えることは絶対に許されてはならないのだ。

 

 疑問視する声も多い。この声が止むことはきっとない。

 スポーツに怪我は付き物だ。だからといって、それを当たり前にしてはならない。

 事故は事故なのだ。当然のように受け止めて良いはずがない。

 この声がなくなった時がトゥインクル・シリーズから理性が失われる瞬間である。

 

 ……レースは続く、これからも。

 多くのドラマを生み出し、多くのウマ娘ファンを魅了していく。

 日の目を浴びる者もいれば、影で泣く子もいる。道半ばで夢を諦める子も多いはずだ。

 それでも、最後は笑顔であって欲しい。

 全てのウマ娘に、それを願うのは些か傲慢だろうか?

 

 この話は、此処までにする。

 もし、機会があれば、物語を通じて、もう少し詳しく語るとしよう。

 

 

 

 少し時を戻して、

 10月第4週、東京レース場。秋の天皇賞。

 波乱の展開に場内は騒然としていた。

 

 シンボリルドルフが膝に手を付いて、苦悶の表情を浮かべている。

 スプリンターズSから殴り込み、短距離マイルの絶対王者であるニホンピロウイナーも息を切らせて、先頭を走った一人のウマ娘を憎たらしげに睨み付けていた。去年重賞1つ含めた4戦4勝、今年の宝塚記念を3着バであるウインザーノット。そして大阪杯の覇者、ステートジャガーもまた顔を俯かせている。

 そして肝心の優勝したウマ娘は、肩で呼吸をしたまま、茫然と掲示板の頂点を見つめていた。

 

「……えっ、これ、なんかの夢ってこと?」

 

 あっと驚くギャロップダイナ。後40年に渡り、語り継がれる名言が生まれた瞬間であった。

 

 トゥインクル・シリーズにおけるシンボリルドルフが最後の軌跡、秋シニア三冠レース。

 彼女が今も伝説として語り継がれる最後のピース、ここから更に少し時間を巻き戻したところから始めたい。


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