錦の輝き、鈴の凱旋。   作:にゃあたいぷ。

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誤字報告ありがとうございます。
間が空いてしまったので、とりあえず手が動く場所から投稿します。


番外編:ポニーは身長で決まる規定なんです。

 これは、そう遠くない未来の話だ。

 ウマ娘界隈における二大名家のひとつであるメジロ家は衰退し、打ち壊される運命にある。私財の多くは差し押さえられた後、唯一残った屋敷はメジロ家で最も偉大な戦績を残した大叔母様メジロマックイーンが引き取った。そして、貧乏な家庭であるにも関わらず、ウマ娘を産んでしまった事により、食費を払えずに捨てざるを得なかった孤児達の為に、現役時代に稼いだ資金を投じて屋敷を改修した後に孤児院として開放した。

 そこで孤児達は、若い内から自分の手で稼ぐ手段を身に付ける為にメジロ式の教育を受けた後、全国各地にあるトレセン学園に通う事になることが多い。

 

 有名どころで云えば、ドリームジャーニー、オルフェーヴル、ゴールドシップ、ラッキーライラック。地方まで含めるとタイセイレジェンド、ドリームズラインといった多くのウマ娘を輩出する名門となっている。

 

 そんな偉大な家族の一員であるのが私だ。

 まるで小学生のような体躯だと皆から言われるが恐れるなかれ、なんと私は日本レコード保持者なのだ! 中距離では物足りぬ。近頃は短中距離が本流だと云われているが、少し昔は長距離こそが強いウマ娘の証だと云われていたのだ! 姉貴分であるオルフェーヴルから何時も「ちっちぇえなあ」とガシガシと頭を撫でられるのは癪に障るけど、私だって歴史に名を残す名ウマ娘の一人である。

 私は大叔母様が大好きだ。

 まだ結果は出せていないけど、記録を残すことでメジロ家に相応しい能力を身に付けたと思っている。

 

 私は立派な大叔母様の立派な娘だ。

 癖の強すぎる御姉様達が大嫌いで、何時も大叔母様に迷惑を掛けている姿を見ると苛々する。

 何時の日か、ガツンとやって! ギャフンと言わせてやるって決めている!

 

 そして、その日はトレセン学園から大叔母様の屋敷へ帰る日だった。

 週に一度か二度、予定のない日は屋敷に戻ることを習慣としており、私は大叔母様が大好きなスイーツを片手に意気揚々と歩いていた。

 その屋敷の門前にて、これまた見たくない顔があった。

 

 キンイロリョテイ。大叔母様が運営する孤児院の寄付金を収める代わりに、何処からか拾ってきた孤児を押し付ける。その度に大叔母様が頭を抱えているというのに、彼女は感謝の言葉を告げるどころか大叔母様に対しても不遜な態度を取り続ける厄介者なのだ。大嫌いだ。

 

 ブルルンッ! と私が嘶いて威嚇すれば、彼女は面白がって私の頭を撫でてくる。

 ちなみに私は姉貴分のオルフェーヴルに拾われた身の上、恩義もなければ義理もねえ! 大叔母様が何もして来ないからって何時までも良い顔できると思うなよッ! 問題児ばっかり拾ってきて、凄く困ってるんだぞ!

 しかし額を抑えつけられてしまっているせいで、手を出そうにも手が届かない。畜生ッ!

 

「ちびんこ、後で遊んでやるから今は大人しくしてな」

 

 ピンと額にデコピンを受けて、痛みに堪えている内に彼女はさっさと屋敷の敷地内に入り込んでしまった。まるで自分の屋敷のように!

 

「ちびっていうなー!」

 

 私の訴えも無視して、彼女はへらへらと笑うばかりだ。

 庭一面の人参畑を横切って、屋敷に向かう彼女の後を追いかける事しかできなかった。

 

 

 キンイロリョテイとは、謂わば経営仲間だ。私が孤児院の内側の事で忙しい中、主に彼女は外回りを担当してくれている。

 貧乏な家庭に産まれた結果、満足に御飯も食べられずに困窮するウマ娘の存在は、昔から問題視されており、そんなウマ娘の為にURAや慈善団体が動いてはいる。しかしURAで稼いだ資金の大半は中央トレセン学園の運営資金で持って行かれており、慈善団体も補助金や寄付金だけではやっていけず、受け入れられるウマ娘の数は多くない。

 全国各地にあるトレセン学園は、ウマ娘が満足に御飯を食べる為の場所であり、高校生の身分で自分の食い扶持を自分で稼ぐ為の場所でもあった。

 

 この孤児院も基本は、トレセン学園に入るまでの避難所であり、その為の訓練を施している。

 今は古いとされるメジロ式のトレーニング方法を施すのもその為であり、世間を知った時、礼儀礼節は大切という事でメジロ式のものを教えている。破天荒な娘は多いが、冠婚葬祭の場においてはきちんとした身嗜みと言葉遣いができるように徹底的に叩き込んだ。それはもう徹底的に。あのドリームジャーニーも、あのオルフェーヴルも、あのゴールドシップも、気合と根性と覇気で分からせてきた実績が私にはある。

 ……とはいえ、私は自分の事をよくやっている。とは思っているが大層なウマ娘ではない。

 名伯楽と呼ぶ者も居るが、それは娘達が自分で頑張った結果だ。私が救えるウマ娘は数少なく、ほんの一握りに過ぎない。ほんの一握りのウマ娘ですらも途中からは各地のトレセン学園に入れてしまう為、最後まで面倒を見れている訳ではなかった。それでも娘達からは大叔母様と慕われるのは、本当にありがたいことだ。

 私は、そのように尊敬される人物ではないが、娘達のことは本当の娘のように思っている。

 

 ……今はもう現役時代に稼いだ資金は底を尽いてしまっている。

 今も各地で活躍する娘達から寄付金が届けられており、ありがたく使わせて貰っているが、娘達に負担を掛けてまで孤児院を続ける意味はないように思っている。何処かで区切りを付ける算段は立てており、兼ねてよりの協力者であるキンイロリョテイとは話を進めていた。

 受け入れる孤児の数は減らしており、小柄なウマ娘が日本レコードを残したのを契機に打ち切る決心を固める。

 

 最後の最後に良いものを見せて貰った、と。

 

 折を見て、その旨を説明した時に猛反発したウマ娘がいた。

 ゴールドシップだ。彼女は、せめて屋敷は残すべきだと云っていたが、それも出来ない。今の私ではメジロ家時代から仕えてくれた者達に支払わなくてはならない退職金を用意できない。彼らはいらないと云ってくれたが、妻子持ちの者も多いし、そんな不義理をする訳にはいかなかった。この屋敷を売り払って、退職金に当てる手筈になっている。……それでも、足りないくらいなのだ。最悪、旧メジロ家の者達の世話になれる私とは違って、彼らには残せるものは残しておかないといけない。

 それでも納得がいかなかったのか。その翌日にゴールドシップは失踪した。

 

 娘達に心当たりを当たって貰ったが、誰一人として彼女の行方を掴めない。

 その捜索をキンイロリョテイに頼んでいるところだった。

 

「あいつ、ゴールドシップの行方が分からねえ」

 

 渋い顔を見せるキンイロリョテイに、そう、と私は短く告げる。

 彼女は差し出した紅茶には口を付けず、焼いたクッキーを彼女は好んでよく食べる。

 しかし、今日は手の進みが遅かった。

 

「最後に痕跡を確認できたのは中央トレセン学園だ。しかし、そこから忽然と姿を消してしまっている」

 

 そう俯く彼女に、私は気を紛らわせるつもりで小噺を挟んだ。

 

「そういえば、トレセン学園では神隠しがある。と聞いたことがあります」

「神隠しだあ?」

「真夜中、肝試しをしている時にシラオキ様が現れて、その導きに従うとマヨイガに着いて、おもてなしを受けられるとか。言っていたのはマチカネフクキタルですけど。他にも三女神に見初められた者は、その彫像の前で祈ると神域を垣間見ることができるなど」

「オカルトじゃねーか」

「マンハッタンカフェには、視えないものが視えていると噂になった事もありましたね」

 

 くすくす、と笑い声を零せば、キンイロリョテイが大きく溜息を零して両手を上げる。

 

「流石にオカルト関連までは調べらんねえよ」

「あの子の事ですから何処に行っても、その先が無人島であっても呑気に生きていますよ」

「ああ、それは容易に想像できるな。都会っ子の俺には無理だ」

 

 調査は継続するよ。と彼女が言ったので、あまり無理をなさらないでください。と私は軽く釘を刺しておいた。

 

 

 話を、聞いちゃった!

 あの莫迦な姉様は、また大叔母様に迷惑をかけているようだ。

 何時も、何時も心配をかけて、けしからん!

 とっちめてやる!

 

 そう思い立ったが吉日、と私はトレセン学園に蜻蛉返りした。

 

 トレセン学園にはオカルト関連の話は非常に多い。

 シラオキ様を見たウマ娘は多いし、マンハッタンカフェが居る場所にはオカルト関連の出来事が発生することが有名なのだ。学園の七不思議なんてものがある程であり、発光するトレーナーの話は使い古されたネタである。

 単なるオカルトならともかく、発光する人間なんて居るはずないのにばっかでー!

 

 とか思っている内に三女神の前まで着いてしまった。

 兎に角、調査だ。探偵とは行動あるのみだって、シャーロックホームズも言っていた! 知らんけど! 灰色の脳味噌なんて使っている暇があれば、とにかく証拠を集める為に足を使うのだ。手を動かすのだ。虫眼鏡を片手に三女神の彫刻を隈なく探すのだ!

 すると銀色に光る長い髪が三女神の内、一人の髪に絡みついているのを見つけた。

 

 ……うん、これはゴールドシップ! 間違いない! ウマ娘としての直感が、そう言っている! ウマ娘の直感は、時に女の勘よりも鋭いのだ!

 

 推定ゴールドシップの髪を握り締めて、大叔母様が言っていた話を思い出す。

 確か三女神の前で祈ればよかったはずだ。

 そうすれば神域に行ったかも知れない莫迦姉に会えるかもしれない。

 

 南無、南無、南無。

 

 深く目を閉じて、三度祈った後に目を開いた。

 

 

 

「やあ」

 

 

 

 そこは見知らぬ場所であり、見知らぬウマ娘が立っていた。

 

「なんぞこれえええええええあああああいやあああああああああああ!?!?!?!!?」

 

 兎に角、叫びに叫んで叫び倒してパニックに不定の狂気を得た後で心を落ち着かせる。

 

「それでウチの莫迦姉は何処なんですか?」

「うわあ! いきなり落ち着くな!?」

 

 まるで小宇宙のような空間、重力を感じさせない流星飛び交う中に彼女はポツンと立っていた。

 

 彼女は女神ゴドルフィンアラビアン。

 莫迦姉ことゴールドシップの行方を知っているというので話を聞くと、彼女は女神バイアリータークの手によって連れ去ってしまったとの事だ。なんでもメジロ家の魂にはヘロド系の血脈が流れており、その血脈を存続させる為に他世界からウマ娘を引き抜いているという話である。

 彼女は、それを止めたい。との事だ。

 

 うん、よく分からない。

 私は大叔母様を安心させる為に、あの莫迦姉を連れ戻さなくてはいけないのだ! 御託なんていらない、大切なのは私がゴールドシップの向かった先に行けるのかどうか!

 女神ならやってみせろよ、ゴドルフィンアラビアン!

 

「……乗り気なのは良いんだけどさ、なんか心配だなあ……ちゃんと話、聞いてた?」

 

 ぶつぶつと呟きながら彼女は、何かしらの力を行使する仕草を見せる。

 

「まあ今の弱くなった私の力だと、君くらいの小さなウマ娘しか転移させられないんだけどね」

「ちびっていうなー! 女神だからって許されると思うなよー!」

「知ってるかい? 2000年くらいまではまだカルストンライトオとかサニングデールっていう競走馬がマッチェム系の系譜に居たんだぜ?」

「知るかばーか! ちびっていうなー!」

「うん、時代の流れは残酷よね……お姉さん、悲しくなっちゃうな……海外だと盛り返してきてるんだよ?」

 

 しくしく、と涙を流す仕草を見せる女神の姿を最後に意識は光の中に包み込まれた。

 

 気付いた時、私はトレセン学園にある三女神の彫刻の前に居た。

 此処が莫迦姉の居る世界! ……いや、戻って来ただけでは? なんとなしにトレセン学園の彫刻が綺麗になっている気がするけども、たぶん気のせいだ!

 さっきまでのは夢かな? きっと夢だね!

 

 お腹が空いたから大叔母様が居る屋敷に帰ろう! そうしよう!

 

“あっ、ちょっと待って、話を聞いて、夢じゃない。夢じゃないから、あっ、あっ、あぁ~……”

 

 屋敷に戻ると畑だったはずの庭に、綺麗な花が植えられていた。

 まるで貴族の御屋敷のように整えられており、数人の庭師が手入れをしているところである。

 ……な、なんぞこれ~!




ウイポやってました。
うちの世界線ではトウショウボーイが幅を利かせています。サンデーサイレンスにトウショウボーイで迎え討つ構図になっている辺りが楽しいですね。
あとマヤノトップガンの時代にメジロパーマーとビワハヤヒデとマチカネタンホイザが居るのは、ちょっとおかしいのです。
いや、まだこの辺りは良いんですよ。バンブービギンは流石におかしい。
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