白銀の竜が蔭に咲く   作:ドリベンタス

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前回のあらすじ!!

いよいよカルコッツ島に上陸!毎日が新鮮な発見で忙しいカセキホリダー研修がスタートしたよ!カセキ発掘体験に行って良いカセキ岩見つけるぞー!って意気込んでたら、立入禁止区域に入って白いカセキ岩を見つけちゃった!?スタッフさんには怒られたしカセキ岩も取られたし、おまけにピッケルも落としてきちゃった……収穫なし!これからウチ、どうなっちゃうの!?!?

はぁ……口調も気分も合わない……しんどいこれ。


Ep. 5「グレイ」

 

 

 

 自業自得とはいえ、悔しいものがある。立入禁止区域に入り苦労して手に入れたカセキ岩はスタッフに回収され、ピッケルも紛失し、発掘講習の収穫は虚無だった。この後、各々が掘り出したカセキ岩を皆でクリーニングする「クリーニング講習」もあるのだが、ウチだけ練習用のカセキ岩を用意してくれないだろうか……。

 

「流石に用意してもらえるっしょ。練習用のカセキ岩なんて山のように持ってそうだし」

「ん〜……」

「まあ、自分のリバイバーに出来ないのは不満だよね……」

「……幸先わっる」

 

 ウチの失望なんていざ知らず。クリーニング講習はスタッフによって開始された。各々が空いてるクリーニング台で作業を始める中、モリチャとウチはスタッフに相談を持ち掛ける。

 

「そういうことでしたら、あちらに予備のカセキ岩がありますので」

「待ちな!」

 

 聞き覚えのある声に思わず振り向く。ウチからカセキ岩を奪った……いや、回収したラフィカだ。

 

「非破壊分析が終わった。クリーニングとリバイブはお前に任せる」

「え……でも大事なものなんじゃ……」

「掘ったのはお前だろ?それに、こっから先はリバイブしてからホリダーの手によって成長させて調査するんだ。その観察ホリダーをお前に一任する。良かったな!」

「あ……えと、はい。ありがとうございます?」

「もっと喜んで良いんだぜ?ま、とにかくまずはクリーニングだ。自由にやってもらって良いが、一つだけ忘れちゃいけない事がある」

 

 ラフィカの表情から笑顔が消えた。

 

「……中身は絶対に壊すんじゃねぇぞ?」

「は……はひ……!」

 

 マジトーンボイスがトラウマになりそう……。

 

「ラフィカったら……焦らずゆっくりやっていきましょう。多少の損害であれば修復も出来ますし」

 

 相談を持ち掛けた方のスタッフが醸し出す優しさは、痛いほど沁みたのだった。

 

 

 

〜〜

 

 

 

 苦闘すること2時間。モリチャやスタッフの助言を元に、何とか自力で掘り出した。え?時間制限?そんなものあったらウチは絶望に心を呑まれ、火山の火口に身を投じる事になる。冗談はさておき、リバイブの作業に入った。

 

「初めてにしては上出来じゃねぇか」

「他の皆は既に撤収してますけど……」

「大事なのは成功体験だろ。過程はどうあれ、『上手くいった』ってのがモチベーションになる。時間はいくらでも掛けて良い。ただ、後悔だけはするな」

「はい……!」

 

 強い口調だからか、ラフィカの言葉はウチの心によく刺さる。『成功体験』か……。

 

「ユミレ!お疲れサマリー!」

「お疲れサマーバケーション……ひひっ」

「お前ら……」

 

 モリチャが片付けを終えて戻って来たところで、スタッフも準備が整ったようだ。リバイブが始まる───!

 

 

 

 

「……あ」

「ユミレ、これって……!」

「……タペヤラだ!」

 

 重そうな瞼に、細身な身体に不釣り合いな程大きい翼。トサカは少し違う構造をしているが、このやる気無さげな雰囲気は間違いない。タペヤラだ。

 

「おめでとうございます!初リバイブですね!」

「やったじゃん!ユミレ!」

「……!ひひっ」

 

 ヤバい。今すぐにでも抱きしめたい。抱き締めて良いかな?良いよね?ウチのリバイバーだし。

 

「触れ合いたい気持ちは分からんでもないが、一旦撤収しないと晩飯間に合わねぇぞ?」

「んなっ……!?」

 

 とりあえずタペヤラをメダルにして先に後片付けをする事になった……。

 

 

 

〜〜A view of Laphica〜〜

 

 

 

「それでは、本日の定例会議を始めます。何か気になった点がありましたら、ご報告を──」

 

 一日の最後に起きた事を整理するのは重要だ。だが、今の私にはこの時間が惜しい。エリア6付近の探索はカセキホリダー研修とは別件の任務だったが、これ以上に無い収穫があったのだ。早く終わらないかな、この話し合い。

 

「───ありがとうございます。発掘講習の人員は増やしてみても良さそうですね。他に意見は……無さそうなので、話題を変えて、次は『エリア6におけるエネルギー特異点反応の調査』について、ラフィカ隊員のご報告を」

「はい」

 

 来た。

 

「『エリア6におけるエネルギー特異点反応の調査』を行ったラフィカです。まず結果から述べますと、正体は『花』のタペヤラでした」

「『花』か……」

「新種ですか?」

「はい。非破壊分析の結果、付近に咲くギンリョウソウとの強い相互作用を確認しました。未確認の新種で間違いありません」

「とすると、アイツが動き出すな」

「既に連絡は取っています。今後は、『花竜園』側と協力し、リバイブしたタペヤラの保護・観察に尽力していく所存です」

「そのタペヤラは今誰が面倒を見てますか?」

「私が担当する新人ホリダーに一任しています」

「新人ですか……。少し心許ないのでは……?」

「顧問スタッフの私が間接的に関わっているので、何かあればいつでも介入出来ます」

 

 その後もいくつか質問を貰った。気になる点はあるようだが、それでもこの方針に不満を抱く者はいなかった。ただ一人を除いては───。

 

「『花』は高額で取引される。情報が漏れれば不審な輩が研修を妨害してくるだろう。新人ホリダーに任せるのは本人の安全面も考慮すれば、あってはならない事態だ。今すぐ回収しろ」

「新人ホリダーは、既にそのタペヤラと『共鳴』を果たしているものと思われます」

「何だって……?」

「相性の良さは、ホリダーと間近でコミュニケーションを取った私が保証します。仲を引き裂くような真似は既に不可能です。我々は、新人ホリダーとタペヤラ、そしてカセキホリダー研修の参加者及び関係者全員を脅威から護る事を最優先に行動すべきかと」

「……はぁ。こうなる事を見越して先にリバイブさせたな?ラフィカ」

「いずれは惹かれ合うものですから」

「もういい、分かった。警備システムは任せろ。憂慮すべきトーナメントに向けて、今一度体制を整えておく」

「……ありがとうございます!」

 

 第一関門であるセキュリティ部門のリーダーを説得出来た。幸先の良いスタートだ。ここからは、ユミレの意思や言動が重要になってくるだろう。私は彼女を、彼女が望む未来に導くだけだ。

 

 

〜〜A view of Humile〜〜

 

 

「んー……」

「まだ考えてるの?」

「命名権は行使せねば」

「明日も早いし、アタシは先寝るわ。おやす〜」

「やす〜」

 

 卓上灯の光だけが、部屋を仄かに照らしている。ウチの初リバイバーにして推しリバイバー。名前はちゃんと考えなければ。ラフィカから聞いた話だと、このタペヤラは通称「お花リバイバー」と呼ばれる特殊なリバイバーで、花の持つ不思議な力を用いて人々に幸福や癒しを与えるのだとか。なんか、リセマラなしですごいリバイバーを引き当ててしまった感MAXだ。このタペヤラも、誰かを幸せにする存在になるのだろうか。

 

「……」

 

 タペヤラは元より無気力さを前面に出したリバイバーだ。話に聞くような、他のキラキラしたお花リバイバーとは少し違うかもしれない。タペヤラの花であるギンリョウソウも、調べてみると光合成をしない珍しい植物で、太陽の届かないジメジメしたとこに咲いているという。なんだろう。他の花が咲く場所から離れて孤独に咲いている部分にシンパシーを感じる。

 

「ウチとお揃いの『グレイ』だね」

 

 灰色な生活。灰色な青春。学校からも家庭からも逃げ、自室に篭ってゲームをする事が自分らしさであると思っていた日陰者なウチの人生は、まさしく「グレイ」だ。純白でもなく漆黒に染まるのでもない。色も彩度も輝きも失くしたウチに相応しい、「グレイ」だ。

 

「身勝手な名付け方だけど、まあ許して」

 

 ウチは卓上灯のスイッチを切り、グレイのメダルと添い寝した。グレイな毎日も、いつか色を纏う時が来るかもしれない。その時は、この「グレイ」と共に歩んできた日々を顧みては笑うのだ。明日から始まるリバイバーとのふれあい企画も楽しみだ。ウチの心は、グレイなムードを漂わせつつも、カラフルな未来を心待ちにしていると自覚したのだった。

 

 

 

〜〜

 

 

 

 翌日。ウチがグレイをおさわりしていると、モリチャとロット、パールがやって来た。流石に変態すぎたか!?

 

「ねぇ、『1on1トーナメント』出てみない?」

「『1on1トーナメント』?」

「知らねぇのか?自分のリバイバー1体だけで勝負するカセキバトルトーナメントだ!」

「きっと良い経験になりますよ」

 

 へぇ、そんなものがあるのか。

 

「アタシらは今から参加登録して来るけど、ユミレはどうする?」

 

 モリチャが出るのか……それなら───。

 

「じゃあ……ウチも出る」

「オッケー!そんじゃ、付いてきて!」

 

 モリチャ達に連れられ、カセキアムに向かう。ロットからの視線を感じるのが少し違和感だけど、誰にだって推しリバをなでなでしたくなる時がある。

 

「参加者登録が済みました。明日から予選が始まりますので、お楽しみに!」

 

 カセキバトルか……。参加者登録が済むと途端に自覚する。明日から、グレイと共に「戦う」事になるのだ。ウチはともかく、グレイはそれを望んでいるのだろうか。

 

「アタシら、明日のトーナメントに向けて調整しようと思うんだけど、ユミレもどう?」

「え?あー……今日は遠慮しとく」

「そっか……」

 

 ウチは自室に戻ると、ルーズリーフを取り出し、スマホで検索を始める。グレイに負担は掛けたくない。だから「戦略の最適解」を探す。勝利への近道だ。それを見つけるには、タペヤラを知り尽くさなくては。夕飯も風呂もすっ飛ばし、朝までずっと戦略を考えた───。

 

 

 




次回、Ep. 6「カセキバトル」
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