【完結】クレーは反省室で反省しない   作:リヒス

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西風にセフィロスとロゴを打つのが大変なので省略します。



クレーとアンバー

クレーは反省室に入った。

本棚と机と椅子だけが置かれた質素な部屋だ。

この部屋にはクレー専用に低い高さの椅子と机がある。

 

「よいしょっと」

 

クレーは自分専用の席に座った。

反省室に入る前、リサに紙とペンを貰い「反省文」を書くという決まりがある。

幼いクレーは難しい文字を書けない。そのため、ジン代理団長が定めたクレー用の文章がある。

 

『ドカーンしてごめんなさい』

 

この一文で終わり。これが終わったら暇になってしまうのである。

 

「いいなあ〜、クレーもお外に出て冒険したい~」

 

クレーは窓の外の景色を眺める。

でも、一日反省室に入っていないとジン代理団長に怒られてしまう。

ジン代理団長に一度文句を言ってみたが、彼女は「本が置いてあるだろう」と言った。

本棚には本が置いてあるが、クレーが読める本はなく、ほとんどが西風騎士団の指導教法ばかりなのだ。

 

「難しいの分かんない~」

 

五段ある踏み台脚立に登り、本の題名を眺めても、クレーには読めない文字の羅列ばかりだ。

クレーは一冊手にとってみる。

分厚く、両手で抱えないと持てない。それを机においてペラペラと絵が描いてある部分だけ眺める。

騎士団の制服を着た人たちの上に○か☓が書いてある。

 

「おーわり!」

 

挿絵が無くなると、読書が終わる。

絵の隣に書いてある文字を読まないため、クレーは反省出来ないのだ。

怒られたことを忘れた時にどかーんする。ジン代理団長に怒られる、反省室に入るという負のスパイラルが生まれている。

 

「あ、クレーだ!」

 

教本を読み終えたところで、反省室のドアが開いた。

入ってきたのはアンバーだった。

 

「アンバーお姉ちゃん!」

 

反省室への来客にクレーは大喜び。

クレーはアンバーに駆け寄り、彼女に抱きついた。

アンバーはクレーの頭をわしゃわしゃと撫でた。その場にしゃがみ、クレーと目線を合わせる。両手で、クレーの両頬をはさんだ。

 

「また反省室に入れられちゃったんだねえ?」

 

ニヤついた顔でアンバーが言った。クレーは頷いた。

 

「もう、悪い子だなあ。悪い子にはこしょこしょしちゃうぞ」

 

アンバーはクレーの腰をくすぐった。

くすぐられているクレーは「くすぐったいよお」と文句を笑顔で言った。

一通りのスキンシップを終えたところで、アンバーは席に着いた。紙束を机に置き、ペンを持ち、ググプラムジュースを飲んだかのような苦い顔をしている。

 

「アンバーお姉ちゃんもジン団長に怒られたの?」

 

クレーの問いにアンバーは髪を軽くかきながら苦笑した。

 

「そうなんだよ〜」

 

クレーの問いにアンバーは同意した。

 

「飛行禁止区域で風の翼使っちゃってね……」

 

小声でジン代理団長に怒られた理由を告げた。

ちなみに、反省室に入るのはクレーの次にアンバーが多い。この二人が反省室で一緒になることはそう珍しくないのだ。

 

「クレーみたいに、反省文書くの?」

「そうなのー。終わるまで待っててね」

「うん! クレー待ってる!」

 

アンバーは難しい顔をして反省文を書きあげてゆく。

その間クレーはアンバーの様子をチラチラ見ながら、教本の挿絵を眺めていた。足を小さくバタつかせており、遊んでくれることを心待ちにしている。

 

「終わった〜」

 

アンバーは両手を天井に上げ、背伸びをした。

終わったの声を聞いたクレーはアンバーに駆け寄った。

 

「終わったなら、クレーと遊ぼ!」

「うん! 何しよっかあ」

 

アンバーは反省文を書き終えると、退屈しているクレーの相手をしてくれる。教本の文字を読んでくれたり、余分な紙をクレーに渡し、一緒にお絵かきをしたり。二人で過ごしていると反省室にいる時間があっという間に過ぎていくのだ。

 

「今日はね〜」

 

アンバーは白い紙に絵を描いた。

それはアンバーが戦闘時に囮として放り投げる『ウサギ伯爵』だ。描き上がった絵はクレーの机に置かれた。

そして、アンバーは踏み台脚立を登り本棚の上へ手を伸ばした。掴んだものをクレーに見せる。

それはクレヨンだった。

 

「わあーい、塗り絵だあ!」

 

クレーは飛び上がって全身で喜びを表現した。

アンバーは人差し指を唇に当て、「しっ!」とクレーに注意した。

 

「騒いじゃだめだよー。ジンには秘密なんだから」

「ご、ごめんなさい」

 

このクレヨンは反省室で退屈そうにしているクレーを見かねたアンバーが反省室に隠したものである。この存在はジン代理団長には秘密であり、知っているのはクレー、アンバーと反省室の掃除をするノエルのみ。ノエルにはアンバーが口封じをしているため見つかっていない。

反省室に二人きりのときは、アンバーが絵を描き、クレーが塗って時間を潰している。

 

「次、ドドコがいい〜」

「分かった。すぐ描いちゃうからね」

 

この遊びを始めてからアンバーの画力がメキメキと上がっていったのは言うまでもない。

 

 

夕刻を告げる鐘が鳴る。

反省室がら出られる合図でもある。

これを聞いたクレーは反省室のドアを勢いよく開けた。

 

「ジン……」

 

反省室の前にはジン代理団長がいた。

反省文を提出せずにクレーが家へ帰ってしまう時がよくあったからだ。

ジン代理団長はクレーの前に手を出す。

クレーは反省文をジン代理団長に渡した。

 

「爆弾で漁をしないように」

「はあーい」

 

返事をした後、クレーは振り返ってアンバーにこう言った。

 

「アンバーお姉ちゃん! 遊んでくれてありがとう! バイバイ!」

 

クレーは駆け足で西風騎士団本部を出ていった。

それを見送るアンバーとジン代理団長。

 

「ジン、反省文ここで出しちゃっていいかな」

「ああ」

 

アンバーは反省文をジン代理団長に手渡した。

 

「じゃあ、あたしもこれで……」

「待て」

 

ジン代理団長は自分の元から離れようとしたアンバーを引き止めた。

アンバーは恐る恐る振り返る。

ジン代理団長は鋭い目つきで、アンバーを睨んでいた。

 

「クレーが『遊んでくれてありがとう』と言っていた件だが」

「そ、それは〜」

 

ジン代理団長の指摘にアンバーは視線をそらした。目が泳いでいる。

 

「ごめん! クレーが可愛そうだったから」

 

言い逃れが出来ないと諦めたアンバーは両手を合わせ、ジン代理団長に謝った。

ジン代理団長は深いため息をついた。

 

「甘やかすな。クレーが反省しないじゃないか」

「ほんと、ごめん」

「まあいい。何で遊んでいたんだ?」

「ぬ…、お絵かきだよ。ウサギ伯爵を描いてたんだ」

「……そうか。帰っていいぞ」

「お疲れー」

 

追求されたくないアンバーは速歩きで西風騎士団本部を出た。

誰も居なくなった反省室にジン代理団長か入る。

クレーの机を見つめ、色を塗る際にはみ出したクレヨンの跡に指をなぞらせる。

 

「ほんと、クレーに甘いな。アンバーは」

 

そう呟いたジン代理団長は微笑みを浮かべた。

 




クレーと誰かが反省室に入る形で連載してゆきます。
次回はガイアです。お楽しみに!
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