【完結】クレーは反省室で反省しない   作:リヒス

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クレーとアルベド

「ドカーンしてごめんなさい……、っと」

 

クレーはジン代理団長に叱られ反省室にいる。

叱られた理由は爆弾に関わることだが、クレーにとってはいつものことなので、クヨクヨと反省することなく、いつもの反省文を書き上げてゆく。

 

「終わっちゃった……」

 

反省文は一瞬で終わる。

しかし、反省室からは出れない。

とっても退屈。

外はからっと晴れていて、冒険日和。

任務もないお休みの日だから宝物を埋めている場所にいったり、ちょっと遠出してレザーと遊びたかった、などの妄想でクレーは退屈をしのいでした。

 

「んー、なんでクレーばっかりぃ〜」

 

トラブルを起こしている大人は沢山いる。

飛行禁止区域で風の翼を使って免停になったり、任務中だと嘘をついてエンジェルズ・シェアでお酒を飲んでいたり、本の返却期限にルーズで本のページに落書きをしていた利用者に強いお仕置きをしたり、トラブルは多々起こっている。

何度も似たりよったりのトラブルを起こしているのになんで反省室に入れられるのはクレーだけなのだろうと彼女は悩んでいた。

 

「クレー、いるかい?」

「あっ」

 

ドアの向こうからクレーを呼ぶ声がする。

その声を聞いたクレーは苦い顔から一瞬でぱあっと明るい表情になった。

 

「アルベドお兄ちゃん!」

 

ドアを開けると、クレーはアルベドに飛びついた。

アルベドはそんなクレーを受け止めた。

 

「ジンから反省室に入れられていると聞いてね」

「ちゃーんと反省文書いて、反省してたよ!」

「そうか」

 

アルベドはクレーの頭を優しく撫でた。

撫でられているクレーは恍惚の笑みを浮かべていた。

 

「クレー、そろそろ離してくれないかな」

「どこにも行かない?」

「行かないよ。今日はクレーに用があるんだ」

「クレーと一緒に遊んでくれるの!?」

「クレー、それは違うよ」

 

アルベドは腰にしがみついて離れないクレーを反省室に押し込みながら用事を告げた。

 

「君にこれを渡したくてね」

「……絵本?」

 

クレーはアルベドから本を受け取った。

アルベドの絵が表紙になっている。

タイトルは『セピュロスきしだんのこころえ』。本棚にある難しい本と同じものだ。

 

「クレーが理解できるようにと僕が作ったんだ」

「ありがとう!」

「さて……」

 

アルベドは椅子に座った。

両肘をつき、手を組んだ姿勢でじっとクレーを見つめる。

一緒に住んでいるクレーは知っている。

これはアルベドが独自に作った錬金のレシピを試した際にする表情だ。

 

「実証しよう」

「クレーと遊んでくれるの?」

「いや、僕が作った本を読んで、クレーが理解し反省するか、を試してみたいんだ」

「ふーん」

 

この絵本を読めばいいんだ。

 

「実験はアンバーでやった。彼女の意見を取り入れて書き加えたり、直したりしている」

「そうなんだあ」

 

クレーは絵本を開いた。

クレーとジン代理団長を簡略化した絵が描かれている。

その絵本はジン代理団長が監修し、アルベドが描き、アンバーが添削した合作だ。

内容はクレーが反省室へ入れられる経緯を簡単に書いた実体験である。やってはいけないことをした場面に大きくバツが描かれ、『反省室で反省しないといけません』で締めくくられる構成になっている。

 

「絵本のクレー、悪いことばっかりしてる」

「そうだね。絵本のクレーは悪い子だ」

「クレー悪い子じゃないよね?」

「絵本に描かれたことを再現したら、悪い子だ。反省室にいるクレーはーー」

「悪い子だ!!」

「うん、これで実証された。成功だ」

 

クレーは反省室に入れられていた理由をここで理解した。

絵本のクレーと同じ事をしていたからなのだと。

悪いクレーになっていたからだと。

はっとするクレーの顔を見て、アルベドは微笑んだ。

 

「アルベドお兄ちゃんありがとう!クレー、絵本を読んでいい子になる!!」

「僕の用事はこれで終わった」

「アルベドお兄ちゃん、暇なの?」

「任務はない。スクロースとティマイオスの課題はもう出した。頼まれた用事は今、済ませた。だから立てた仮説を試そうとドラゴンスパインにーー」

「暇なんだね! クレーにお話して!」

「いや、やる事が……」

「昨日『用事が終わったら、クレーにお話する』って約束したもん!」

「あ、ああ……」

「約束を破るのは、失敗の元だってーー」

「分かったよ。少し、話に付き合おう」

「わーい!」

 

クレーはアルベドとの舌戦に勝った。

アルベドは深い息を吐いた後、クレーに語りかける。

 

「クレーは反省室で何をしているんだい?」

「何もしてなーい」

「それは悪い子だ」

「クレー悪い子なの!?」

「時間を無駄にするのも悪い子なんだよ」

「どうやったらいい子になる?」

 

アルベドはクレーが分かるよう、言葉を選びながら、クレーが『いい子』になる方法を話した。

 

「爆弾のアイディアを練ってみたらどうだい? 僕はそうしているよ」

「爆弾のアイディア……?」

「クレーが作る爆弾は僕には思いつかないものばかりだ。いつもは家で考えているよね」

「うん!」

「それを反省室でもやってみたらどうかな」

「いいの? ジン団長に怒られない?」

「アイディアは形になるまで人に教えてはいけない。だからジンには黙っていればいいのさ」

「そっか!」

 

アルベドは椅子から立ち上がった。

 

「じゃあクレー、絵本を大事にするんだよ」

「うん!」

「あと、アイディアの話は僕とクレーの秘密だ」

「なんで?」

「アイディアは人に話すと真似をされてしまうからね」

「分かった。クレー秘密にする」

「また、家で会おう」

「バイバイ!」

 

クレーは、アルベドと別れた。

アルベドの言う通り、その後のクレーは爆弾のアイディアを練っていた。そうしていると時間があっという間に過ぎてゆき、夕刻の鐘が鳴った。

 

「クレー?」

 

ジン代理団長がゆっくりと反省室のドアを開ける。

クレーが真剣な顔つきで、書物をしている。その姿勢を見たジン代理団長はクレーが反省してくれていると感動していた。

 

「あ、ジン団長!」

「帰っていいぞ」

「え?」

 

クレーは時計を見て、夕刻の鐘が鳴った事に気づいた。

クレーは反省文をジン代理団長に渡し、絵本と紙を持った。

 

「クレー、絵本を読んでいい子になる」

「そうか」

「バイバイ!」

「ああ。また明日」

 

クレーは駆け足で西風騎士団本部を出ていった。

ジン代理団長はクレーが反省室で反省していると、クレーの成長にうんうんと深く頷いていた。

しかし、クレーは反省していない。アルベドとの秘密の会話で反省室での有意義な過ごし方を覚えただけなのである。

 

 

 




次はアンバーに戻ります。
このシリーズは3万文字くらいで終わる……、はず?
次回お楽しみに―!
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