【完結】クレーは反省室で反省しない   作:リヒス

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クレーとバーバラ

クレーはだっだだーとモンドを駆ける。

商店街、噴水広場を抜け、西風騎士団本部も通り過ぎた。

階段を登り、風神象を抜け、大聖堂で走るのを止めた。

 

「どうしたんだいクレーちゃん」

「ジン団長が! ジン団長が!」

「ああ、ジンさんだね。バーバラの治療を受けているよ。過労だ――」

 

大聖堂前の兵士にジン代理団長の居場所を聞いたクレーは、最後まで話を聞かず、大聖堂の中へ入った。

クレーの後ろ姿に、兵士はため息を吐く。

 

 

 

「クレーちゃん」

「バーバラお姉ちゃん! ジン団長は?」

 

聖堂内を駆けまわり、クレーはバーバラを見つけた。

沈んだ顔をしていたバーバラだが、クレーを見つけ、笑顔を作る。

クレーはジン代理団長の様子を尋ねるも、バーバラは首を横に振った。そして人差し指を唇に当て「しー」っと言った。

 

「聖堂ないではお静かに! あと、走っちゃだめだよ」

「ご、ごめんなさい」

「分かればよろしい」

 

バーバラの注意を受け、クレーはシュンとする。

ジン代理団長の妹であるバーバラは、顔つきが姉と似ている。

注意する際、丸い瞳が吊り上がる様子がそっくりだ。ジン代理団長に怒られているようにクレーには感じられた。

 

「ジンは仕事のし過ぎで倒れただけ。身体をここで休めているだけだから、安心して」

「よかったあ」

「だから、クレーちゃんも仕事――」

「バーバラお姉ちゃん?」

 

バーバラが何か言いかけた。クレーは上手く聞き取れず、じっとバーバラを見つめる。

 

「クレーちゃん、お願いがあるんだ」

 

バーバラの顔つきが変わった。

バーバラのお願いとは何だろう。クレーの関心が更に高まった。

 

「モンドの外で派手にドカーンしてきてくれないかな」

「え? いいの!?」

 

派手にドカーンしてくれ、そう頼まれたのは初めてだった。

クレーはバーバラのお願いに耳を疑った。

バーバラは「いいよ」と言った。

 

「あ、でも、周りに人がいないことを確認してね。クレーちゃんが怪我しちゃうドカーンはダメ」

「はーい」

「お願いね」

 

クレーはだっだだーと聖堂を出た。反省しないクレーはバーバラの『聖堂内は走っちゃだめ』という注意を忘れている。

バーバラは注意しようにも「あっ」と言葉が漏れただけで、何も言えずクレーの後ろ姿を見守るだけだった。

 

 

クレーはスキップしながら、モンド城を出た。

今日は好きにドカーンしていい日。

草原を歩きながら、クレーはドカーンする場所を考えていた。

人に迷惑がかかるドカーンはダメ。

クレーが怪我するような危険なドカーンもダメ。

 

「どこにしよっかな~」

 

好きにドカーンしてもいいと言われると、どこをドカーンするか考えてしまう。

 

「お魚にしようかな~、それともヒルチャールかな?」

 

こんな理由でドカーンされる魚もヒルチャールもたまったものではない。

 

「あっ」

 

モンドの外を歩いていると、ヒルチャールの集落を見つけた。

そこは先日『改良型ウサギ伯爵』で木っ端微塵に破壊された場所である。

あそこまで破壊されたにも関わらず、ヒルチャールたちは集落を再建していた。

この場所はモンド城全体を眺めることが出来、ヒルチャールたちにとっても立地がいいのだろう。

更地にされた理由を知る者たちはクレーによって吹き飛ばされたので、危険性を伝えることも出来なかった。

 

「ここにしよう!」

 

そして再び、クレーの手によってヒルチャールの集落は壊滅させられるのであった。

 

ドカーン。

ドカーン。

 

爆音と共に、ヒルチャールが吹っ飛んでいく。

 

「ボンボン爆弾!」

 

ボンボン爆弾に当たったヒルチャールたちは、火の粉を消そうとその場をぐるぐる回っている。そのうちに誘導弾が爆発し、更に被害が広がる。

 

「火力、ぜんかーい!」

 

調子がノッテ来たクレーはドッカン花火を発動させた。

ヒルチャールや建物に花火が降りかかる。

花火が舞っている間も、クレーは爆弾を投げ続けた。

 

「やったあ! ドカーンおーわり!」

 

ヒルチャールの集落が壊滅させられるのに、そう時間はかからなかった。

クレーにしては派手にドカーンした方である。

 

「人にも迷惑かけてないし、クレーも怪我してない。よーし、バーバラお姉ちゃんに報告――」

 

クレーは油断していた。

ヒルチャールの一人が、最後の力を振り絞り、氷元素を込めた弓矢をクレーに向けて放ったことに気付かなかった。

 

「ひゃ」

 

その矢はクレーの太腿に突き刺さった。

 

「痛いよお」

 

爆弾を散々投げて、集落を壊滅させた人物の言うセリフではない。

矢を放ったヒルチャールはその場に倒れ、動かなくなった。

クレーは脚に刺さった矢を抜こうとするも、非力だったためそれが出来なかった。

氷元素のせいで、体がどんどん冷えてゆく。

 

「クレー、失敗した」

 

モンドに辿り着く前に、クレーはその場に座り込んでしまった。

矢が刺さっている足が動かなくなってしまったのだ。

 

「どうしよう」

 

クレーは急に不安になった。

いつもは西風騎士団の人たちと一緒に行動しているため、こんなトラブルが起きることはなかった。

不安な気持ちでいっぱいになったクレーはぽろぽろと泣き出した。

 

「クレー!?」

 

名前を呼ばれた方へ、クレーは顔を向けた。

 

「ベネット……、お兄ちゃん!!」

「どうしたんだ……? 足に矢が刺さってる」

「助けてえ」

「分かった」

 

そこにいたのはベネットだった。

クレーの容態を瞬時に理解したベネットは、そっとクレーに近づく。

 

「クレー、爆弾を全部、床に置いてくれないか」

 

ベネットの要求通り、クレーは爆弾を全て床に置いた。

それを確認したベネットはクレーの太腿に触れる。

 

「氷元素が含まれてるな。痛くて冷たかったろ、今、抜いてやるからな」

「うん」

「痛いのは一瞬だ。我慢してくれな」

「……うん」

 

ベネットは矢を引き抜いた。それから、彼は包帯でクレーの足をきつく縛った。そして彼は神の目を使い、クレーの傷を癒した。

 

「ありがとう!」

「単独行動は感心しないな。一人で冒険していいのは俺だけだぞ」

「ごめんなさい。クレーはりきちゃった」

「張り切った……? まあ、それは帰りながら聞くよ」

 

ベネットはクレーを背負い、彼女の荷物を担いだ。

 

「モンドまで送っていく。傷を塞いだつもりだけど、一応バーバラに診て貰おう」

「うん」

 

クレーはベネットに背負われた状態で、モンド城へ帰還した。

 




投稿遅れてすみません。

次回お楽しみに!
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