ついに、レセップス突破作戦が開始された。
早々に「明けの砂漠」が仕掛けた広大な地雷原が撃破され、「ザフト」と「地球軍、レジスタンス連合軍」は真っ向からぶつかり合った。
ナナはブリッジにいた。
CICに座り、対レセップスの対艦攻撃を担った。
グレイスの修理にまだ目処がつかなかったことと、彼女の体調を慮るマリューの指示だった。
戦況はほぼ互角。
レセップス艦上にあのデュエルとバスターの影もあったが、砂漠での戦いには慣れていないようで、それほど脅威にはならなかった。
どちらかといえば、バクゥと戦闘ヘリを使って巧みに攻め込んでくるザフトが若干有利か……という具合だった。
しかし、アークエンジェルは後方からの思わぬ攻撃を受ける。
そこに艦が配置されていたのは想定外だった、
形成は一気に不利な方へと傾いく。
「艦長! スカイグラスパーでの出撃許可を!!」
ナナは立ち上がった。
カガリが「明けの砂漠」の一員としてジープで戦っている。
キラも、今は隊長機と交戦している。
ここで食い止めなければ、すべてを失いかねなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ナナ・イズミ、スカイグラスパー2号機、発進します!!」
砂漠の空は、灼熱の空気の塊だった。
久方ぶりの重圧。
めまいを押し殺し、右手の痛みも無視して、ナナは操縦桿を握った。
向かうは後方のザフト戦艦。
今も容赦なくアークエンジェル後部を攻撃している。
≪こちら2号機、これより艦後方のザフト艦を抑えます≫
ナナはフラガにそう打電した。
2機は上空で大きく旋回し、それぞれの攻撃目標へ向かう。
ナナは砂漠でオレンジ色の機体と戦うストライクをちらりと見やった。
あの隊長機……乗っているのは「砂漠の虎」に違いなかった。
物資調達の時の一件で、彼に出会ったことはカガリから詳しく聞いている。
彼が二人に投げかけた言葉も知った。
キラが今、どんな気持ちで戦っているかと思うと、また胸が痛んだ。
≪ナナ! 後方の戦艦にはモビルスーツが待機してるわ! 気をつけて≫
「了解」
“祈り”を胸に、ナナは艦後方へ移動した。
まずは、アークエンジェルの動きを止めている、工場跡地に放置された廃墟群をビーム砲で破壊する。
ようやく身動きが取れるようになり、後方からの攻撃に退避できるようになったアークエンジェルを見届けると、素早く戦艦に近づいて砲を浴びせる。
さすがにテストもなしで初めて乗った機体だけに、扱うのは困難だった。
が、なんとか力技で機体を操り、MS隊と艦からの射撃をかわす。
艦上のMSはそれほど動けないようだった。
それに、戦艦の火力も大したことはなかった。
逆に、スカイグラスパーの身軽さと、装備したランチャーの火力は予想以上だった。
「もう一発……!!」
ナナは再び上空から戦艦に急接近し、ビーム砲を発射する。
キラが熱対流の調整をしてくれていたおかげで、砲は戦艦エンジン部に直撃した。
戦艦の足は止まった。
アークエンジェルも前方のレセップスに攻撃を命中させる。
ナナはさらに後方艦のミサイル発射台と主砲砲台を撃破し、完全にこれを沈めた。
そしてストライクも、隊長機ラゴゥとの激戦に勝利した。
突破作戦は勝利に終わった。
が、わかっていたとはいえ、犠牲は大きかった。
レジスタンスのジープは半数以上を失った。
収まらない砂煙の中、オレンジ色の機体が燃えていた。
装備も装甲も失ったストライクは、いつまでたっても焼けた砂から立ち上がろうとはしなかった。