戦慄の宇宙(そら)の果て   作:亜空@UZUHA

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孤島の邂逅

「……っ……」

 

 

 どれくらい時が経ったのか……。

 気がつくと、ナナはしんと静まり返ったスカイグラスパーのコックピットに居た。

 前方には砂浜。

 機体は島の浅瀬に胴体をへばり付かせたまま、波に揺られていた。

 急降下の衝撃のせいで、息が苦しかった。

 手を見ると、火傷の治りきらない右手が小刻みに震えていた。

 ぼうっとした頭を無理矢理働かせ、キーボードをたたく。

 が、全てのシステムがダウンし、離陸もアークエンジェルとの交信も不可能な状況だった。

 

「……やっぱダメか……」

 

 仕方なく、ナナは機を降りた。

 浅瀬……といっても、ナナの身長よりは深い海。

 さらに高波が押し寄せ、ナナの怪我した右手から救命パックを奪って行った。

 

 なんとか浜に上がり、息を整える。

 少し泳いだだけだというのに、激しい動悸と眩暈がした。

 パイロットスーツの内側までずぶ濡れのせいで、身体はよけいに重くなっていた。

 無理矢理それを動かし、ナナは島の内部に入る。

 熱帯の島らしく、ジャングルが広がっていた。

 が、それはそう広くもなく、少し歩いただけで島の反対側へと出た。

 

「小さい島……。無人島かな……」

 

 独り言を呟きながら、シダをかきわけ浜に足を踏み入れる。

 と……。

 誰もいないと思ったその浜に、赤いパイロットスーツをまとった人影があった。

 

(……ザフト兵……?!)

 

 わずかに身じろいだときに、足元の葉が揺れた。

 瞬間、ザフト兵がナナに気づく。

 銃を構えるのは同時だった。

 

 目が合った。

 

 同じ年頃の少年……。

 どちらもヘルメットをとっているため、顔まではっきりと確認できた。

 温い風が、二人の間に割り込んだ。

 その時に、ナナの視界の片隅……向こうの木々のはざ間にグレイのMSが見えた。

 

(あの機体は……!!)

 

 ナナが注意を逸らしたことで、ザフト兵は引き金を引いた。

 弾丸はナナの銃にのみ命中し、それを弾き飛ばす。

 さらに彼は銃口を向けたまま威嚇した。

 が、ナナは銃を弾かれた手の痺れも気にせずに、無防備に目を見開いた。

 銃を構えるザフト兵が怪訝な顔でジリジリと歩み寄る。

 ナナはその彼をまっすぐに見つめて呟いた。

 

「……アス……ラン……?」

 

 突然名前を呼ばれた彼は、銃口を向けたまま息をのむ。

 ナナは再び震える声で、だがはっきりとその名を口にした。

 

「アスラン……ザ……ラ……?」

 

 何故その名がナナの口から出るのか……。

 彼は心当たりを思い出したように、目を見開く。

 

「……ナナ……イズミ……か……?」

 

 呼ばれて、ナナはフっと笑った。

 銃口を向けられている緊張感よりも、“おかしさ”がこみ上げたのだ。

 だが次の瞬間、ナナの身体は突然その力を失った。

 

「…………?!」

 

 乾いた浜に倒れるナナが、“アスラン”に撃たれることはなかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 瞼を上げると、グレイの物体が目に入った。

 そのスキマから入り込む僅かな日の光で、しばらくするとそれがMSの手だとわかった。

 

「……あれ……?」

 

 記憶が鈍く甦り、ようやく目の前に現れた“アスラン”の存在を思い出す。

 

「……アスラン……」

 

 ゆっくりと身体を起こした。

 額から濡れたタオルが落ちた。

 手足は拘束されておらず、そればかりか身体には薄い毛布がかけられていた。

 誰がそれをしたのか……。

 はっきりとした心当たりに何故か胸が痛んだ。

 その存在を探すべく、ナナは辺りを見回した。

 砂浜に転がる岩と岩にはさまれたその場所に、ナナは寝かされていた。

 強い日光は彼のMS、イージスの手のひらによって遮られている。

 

「気がついたのか?」

 

 岩陰から、彼が現れる。

 やはり、さっきのザフト兵だった。

 

「気分はどうだ?」

 

 彼は困惑を隠そうとはしなかったが、言葉はナナを気遣うものだった。

 

「え……?」

 

 しかし、ぼうっとしたナナの頭では、その意味は理解できなかった。

 彼はため息混じりに言う。

 

「そんな身体で戦闘機に乗るとは……どういうつもりなんだ。お前も、指揮官も……」

 

 そしてナナに近づき、その手から温くなったタオルを取り上げる。

 

「え……?」

「だから……、ひどい熱だと言っている……」

「ねつ……?」

 

 それでも状況が呑み込めずにいるナナに、彼は呆れたように言った。

 

「パイロットスーツを脱いだほうがいい。濡れたままだとますます熱が上がるぞ」

 

 そしてタオルを持ったまま、岩の向こうへ行った。

 

「…………」

 

 しばらくかかって、ナナはやっと彼の言葉に従った。

 もぞもぞと、びしょ濡れのパイロットスーツを脱ぐ。

 そして毛布にくるまった。

 潮の香と、嗅いだ事のない布の匂いに包まれた。

 鈍くなった身体と頭。

 それを無理矢理覚醒させるかのように、ズキンと痛みが走る。

 それは擦り切れた包帯の下ではなく、強くあろうと張り続けた胸の奥。

 

 それを抑えるすべをナナが見つけ出せないまま、やがて彼は、濡らしたタオルを手に戻った。

 

「……ほら……」

 

 岩によりかかって座り込んでいたナナに、彼はそれを差し出す。

 素直に受け取り、額に当てながらナナは言った。

 

「なんで……私を拘束しないの……?」

「え……?」

「私を縛っておかなくていいの……」

 

 ナナの抑揚のない問いに、彼はため息まじりに答える。

 

「そんな身体のヤツに何ができる……」

 

 そして顔を背けた。

 ナナは胸の痛みに自らナイフを入れるように言った。

 

「今のうちに私を殺さなくていいの……?」

 

 ナナは立ち上がった。

 眩暈は押し殺した。

 アスランの言葉が聞きたかった。

 アスランは振り返り、戸惑いの表情でナナの瞳を見つめなおした。

 

「X-101グレイスのパイロットを……殺しておかなくて良いのかって聞いてるの」

 

 挑発の言葉とともに、ナナは静かな表情のまま両手を広げた。

 はらり……と毛布が砂に落ちる。

 アスランはかすかに拳を握った。

 

「私はあなたの“敵”でしょう……?」

 

 さらに自嘲気味な言葉を吐き出したナナは、微笑さえも漏らした。

 アスランはしばしうつむき、沈黙した。

 迷い、葛藤……。

 それを見つめて答えを待つナナに、彼はついにつぶやいた。

 

 

「別に……お前をここで殺す気はないさ……」

 

 

 ため息をつくようにそう言って、彼はナナの足もとに落ちた毛布を拾う。

 

「今は戦闘中じゃないし……お前は戦えるような状態でもない……」

 

 そして目を伏せながら、それを再びナナに押し付ける。

 

「それに……『あの時』の借りを返すだけだ……」

 

 ナナはじっと、彼の瞳を見つめた。

 

「あの時お前は……キラを『返す』と言ってくれた……その礼だ」

 

 二人の間に、あの時の記憶が甦る。

 キラとナナ、二人でラクスをアスランの元に返したときのことを。

 

「ラクスも……お前に世話になったと、話をしていた……」

 

 が、ナナは冷たい声で静かに言った。

 

「あなたを殺して……あなたの機体を奪うかもよ?」

 

 ナナの腹の底で、いやな塊が膨らんだ。

 が、ナナはアスランから目を逸らさなかった。

 彼の言葉が聞きたかった。

 彼の心を知りたかった。

 

「だとしたら……」

 

 少しの沈黙の後、アスランは再びナナを見た。

 

「俺はお前を殺さなきゃならない」

 

 怒りとか殺気とか、そんなに鋭いものではなく、苛立ちや願いのようなものが彼の瞳に揺れたのを、ナナは見た。

 

「俺はザフトのパイロットだ……機体に手をかけさせるわけにはいかない」

 

 そう答えるのはわかっていたのに、わざわざ挑発するように言ったのは、その揺らぐものを見るため……。

 ナナはようやく、押し付けられた毛布を羽織りなおした。

 

「だからよせよ……そんなことは」

 

 息苦しさから逃れるように、彼はまた岩陰に消えた。

 

 

 

 

 日も暮れた頃、ナナの前で、アスランが拵えた焚き火が呑気に燃えていた。

 先ほどの“熱”と、身体の“熱”でぼうっとした状態のナナの前に、彼の手が伸びる。

 

「ほら……」

 

 救命パックに入っていたらしい非常食だった。

 

「ありがとう」

 

 ナナは素直に受け取った。

 その素直さが意外だったのか、アスランはあきれたような溜息をつきながら、火の向こう側に腰を下ろした。

 

「そんなひどい熱で戦闘機に乗るなんて……それに、『銃口から目を逸らすな』とは、軍学校で一番最初に教わることだろう」

 

 ナナは一口スープをすすり、自嘲気味に呟いた。

 

「だって私……軍人じゃないもの」

「……え……?」

 

 アスランは当然驚き、薪をくべる手を止めた。

 

「あの時……」

 

 ナナは単調に話す。

 

「ヘリオポリスでたまたま戦闘に巻き込まれて、あの艦に乗ることになっちゃったの」

 

 パチン……と火花が舞った。

 

「……キラと一緒だよ……」

 

 砂の舞いのような、静かなナナの声色。

 アスランは「キラ」の名に苛立ちを思い出して低く叫んだ。

 

「だったら何故……あんなモノに乗っている……?!」

 

 が、ナナは逆に穏やかに答えた。

 

「モルゲンレーテのテストパイロットだったから、あの機体を動かせただけ」

「テスト……パイロット……?」

「そう……だから、一応はオーブの……民間人ってことになるのかな……」

 

 アスランは目を伏せ、手の中の小枝を焔の中に放り込んだ。

 

「でも、アレの開発に協力してたってことで、あなたたちの敵ってことにはなるかもしれないけどね」

 

 また自嘲気味に言って、ナナは手の中のカップを揺らす。

 

「なぜ中立国のオーブが地球軍のMSをつくっていた……?! あそこにあんなモノがなければオレたちだって……」

 

 彼の怒りを含む、低い声。

 

「ヘリオポリスを攻撃するつもりはなかったんだ……!!」

 

 ナナは黙って聞いていた。

 

「だが、オレたちはプラントを護るために戦っている……。だからあれを見逃すわけにはいかなかった……」

 

 再び沈黙が流れた。

 

「でも……」

 

 ナナがゆっくりとそれを解く。

 

「……地球軍も、ザフトが攻撃をするから、わざわざ中立国のオーブでアレをつくってたんだよね……」

 

 そして、解けない輪をさらけ出す。

 

「オレの母は……ユニウスセブンにいた……」

「……え……?」

 

 それに、アスランは憎しみで答える。

 

「ただの農業プラントだったのに……何の罪もない人たちが一瞬で殺されたんだぞ……子供たちまで!」

 

 そう……その憎しみを先に生み出したのは地球軍だと。

 

「それで黙っていられるかっ……!」

 

 では……その後に生まれたのは……?

 その前にあったものは……?

 

 炎の揺れを見つめながら、ナナはまだ、絡み合った醜い輪を持て余す。

 

「撃たれたから撃って……また撃ち返して……キリがない……」

 

 吐き捨てるような台詞に、アスランがナナを見た。

 炎の揺らめきが、互いの瞳に同じ光を灯している。

 

「それが……戦争だ……」

「じゃあ、それはいつまで続くの……?」

 

   『どこで終わりにする?……双方が滅ぶまでか……?』

 

 カガリから聞いた、“砂漠の虎”の言葉。

 

「何が敵? 何が悪かったの……?」

 

 ナナはアスランの答えを待たずに続けた。

 

「最初はこの戦争に『巻き込まれた』かもしれないけど……」

 

 かすかな迷いを彼に見せぬよう、噛みしめるように言う。

 

「私は……その答えを見つけるまでは、あの機体に乗り続ける……」

 

 決意を彼はどう受け止めるのか……。

 

「……だったら……オレとお前は敵だ……」

 

 『敵』と……そう言われて、ナナは返す言葉を飲みこんだ。

 言ってしまえば……彼の迷いはさらに大きくその心を揺るがすだろう。

 彼はやさしいから。

 そうしたら彼は撃たれるかもしれない。

 キラに……あるいは自分に……。

 だから。

 

「……そうだね」

 

 告げて、ナナは笑った。

 打ち寄せる波に逆らうように……。

 あまりにも、場にそぐわぬその表情。

 どう受け止めたのか、アスランはハッとしたような顔をした。

 

「お前……」

 

 そして口をついて出た言葉が何か分からぬうちに、ナナがそれを遮った。

 

「……っ……!」

 

 その右手から、空になったカップが落ちる。

 

「怪我してるのか……?!」

「あ、うん……大丈夫」

 

 右手の小さな震えを見つけ、アスランは考える間もなく歩み寄る。

 

「手を出せ」

「え……?」

「診せてみろと言っている」

「あ……うん……」

 

 ナナは言われるがままに毛布から右手をゆっくりと出した。

 巻きつけていた包帯はボロボロに擦り切れて、血が滲んでいた。

 

「どこまで無茶してるんだ、お前は……」

 

 アスランは今日一番深いため息をついた。

 そして、救護セットを引き寄せ、手当を始める。

 ナナの手の平に、治りかけの赤黒い火傷が広がっていた。

 

「こんな手ではまともに操縦できないだろう……」

「だって……降りるときに……」

「地球へか?」

「うん……ちょっとドジっただけ」

 

 アスランは手を止めた。

 あの時も、二人は同じ戦場にいた。

 直接戦ってはいないが、アスランもストライクとグレイスが降下していくのを目にしていた。

 当たり前のこととはいえ、知らなかったからとはいえ……互いに刃を向け合っていた事実を実感する。

 改めて、目の前の存在が“敵”であることを思い知らされるその記憶。

 

 ナナはゴクリと唾を飲んだ。

 アスランの揺らぎがまた、大きくなったような気がした。

 

 が、アスランは黙ったまま、ナナの手に包帯を巻き始めた。

 この手が、彼を撃つのだとしても……彼の仲間を、プラントを撃つ手だとしても……。

 

「今は……」

 

 彼の手は、器用に包帯を巻いていく。

 言葉は不器用に、そこに漂った。

 

 

「お前は俺の敵じゃない……」

 

 

 胸の痛みはついに耐えがたく……。

 ぽつん……と、雫になって彼の手に落ちた。

 

「……ナナ……?」

 

 初めて名を呼ばれ、ナナは笑う。

 

「アスランは……優しいね……」

 

 戸惑った彼の顔がキラと重なる。

 

「キラも……あんなに優しいのに……」

「……ナナ……」

 

 この心の震えを抑えるすべなど知らない。

 ただ気休めのように、叫んでも無駄だという言葉を、今さら吐き出す。

 

「なんでっ……二人が戦わなくちゃいけないの……っ?!」

「お前……」

 

 「キラと戦わないで」……言えば楽になることをナナは知っていた。

 キラとアスランを戦わせたくない。

 そんなところは見たくない。

 今、強くそう思う。

 なんで二人が撃ち合わねばならぬのか。

 その運命を激しく呪う。

 だから「戦わないで」と言えれば良かった。

 だがそれは、一時的に痛みを消すだけにすぎない気休めの言葉。

 彼はザフトのパイロットで、キラは地球軍に入隊した。

 かつての親友が、今は『敵』同士。

 

    ちがう……

 

 さっき飲み込んだ言葉が、涙とともに込み上げてくる。

 

    ちがう……敵じゃない……

 

 だが、言ってはいけなかった。

 言っても浅はかと思われるだけ。

 言ってはアスランに迷いを生む。

 迷いは彼を死に近づける。

 彼に死んでほしくはない……。

 

「ナナ……」

 

 ぎこちない手つきで、アスランはナナの本心を拭った。

 潮風、波の音。

 穏やかなそれらと裏腹に、ナナの心は激しく揺れていた。

 彼の心を……優しさを知るほどに、胸の痛みが増すから……。

 いっそ知らなければよかったと、思ってしまうから。

 

「ハハ……」

 

 これ以上はダメだ……。

 脳の奥で警報が鳴った時、ナナは笑った。

 

「ごめんね」

 

 そしてそう言おうとした瞬間、アスランが先に口を開いた。

 

「まったくお前は……」

 

 戸惑いを無理矢理押し込めた複雑な顔つきで、彼も笑っていた。

 

「強いくせに泣き虫で……、よくわからないヤツだな」

 

 そんな彼の表情に一瞬面くらい、ナナは左手で涙を拭った。

 何の答えも見出せないままだが、そうすると激しい揺らぎは収まった。

 鋭い痛みは、鈍いうずきに変わった。

 初めてちゃんと、笑えている気がした。

 

 パチンと、薪がはじけた。

 思い出したように、アスランは枝をくべ始める。

 ナナは真新しい包帯が巻かれた右手を見下ろした。

 そこに灯った温かさを失わぬよう、しっかりと毛布にくるまる。

 

「ラクスはちゃんとプラントに戻った?」

 

 かける声に、ぎこちなさはもう無かった。

 

「ああ……本当、お前たちのおかげだな」

「婚約者なんだってね」

「あ、ああ……まぁ……一応……な……」

 

 赤らんだ彼の横顔に、ナナは笑った。

 『無口なのですけど……とても優しい方』

 そう彼を表現したラクスの言葉を思い出す。

 彼女の言葉で想像していたよりずっと、アスランはやさしかった。

 その証拠に。

 

「そ、そんなことより、具合は大丈夫なのか?」

 

 そうやって案じてくれる。

 

「うん。アスランこそ、降りて来たばっかで時差ボケでしょう? 救助信号をキャッチしたら起こすから寝てていいよ」

 

 そしてそう言ったにも関わらず、額に触れてくる。

 

「まだ熱があるじゃないか、お前こそもう休め」

 

 また、涙がこぼれそうになった。

 こんな優しさは知らなかった。

 人の手が、こんなに温かいなんて……。

 キラや仲間や、自分を撃つかもしれない手がこんなに、あたたかいなんて……。

 

「ナナ……?」

 

 ナナはアスランの隣に座った。

 そして、目を閉じた。

 本当はもっと話がしたかった。

 色々な話が……。

 が、これが夢であって欲しいという思いがそれを圧し止めた。

 次に逢うのが戦場とは、悲しすぎるから。

 

 アスランはかすかに身体を寄せたナナに、それ以上何も言わなかった。

 ナナは毛布の下で、真新しい包帯が巻かれた右手をそっと握った。

 

 

 

 

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