全速力でアラスカ基地を後にするアークエンジェルのドックで、ナナは基地の行く末を見た。
モニターに映し出される、サイクロプス作動による惨状。
ユニウスセブン崩壊の映像とリンクして、言葉もなく、ただ背筋が冷えるばかりだ。
涙は出なかった。
悲しみよりも怒りがある。
いや、それ以上に感じるのは“後悔”だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
やがて、アラスカから数十キロ離れた荒野に、アークエンジェルと、そしてキラの乗った『フリーダム』が降り立った。
乾いた風の中、ザフトのパイロットスーツに身を包んだキラはアークエンジェルのクルーたちとの再会を果たした。
「本当にキラくんなのね……?」
マリューはまだ信じられないといった様に問う。
誰もが、キラの言葉を固唾を呑んで待っていた。
「……はい」
キラはゆっくりと頷いた。
「キラ……!!」
それが合図だったかのように、ミリアリアらが駆け寄って来る。
「お前、どうして……!」
「幽霊じゃないんだよな?!」
クルーたちに囲まれたまま、キラは周囲を見回した。
そして、輪の外側に佇むナナの姿を見止めると、ゆっくりと歩き出した。
ナナは一言も発さず、キラを見上げている。
周囲は鎮まり、二人を見守った。
「ナナ……」
キラは静かに笑んだ。
が、ナナは奥歯をかみ締めたまま、何も言わない。
再会の喜びも、驚きも、戸惑いさえも表さない。あるとすれば……悔しさだ。
だが、その心をキラはもう知っていた。
「ナナ、ごめん」
だから、その複雑な心ごと包むように、キラはナナを抱きしめた。
「キ……ラ……」
ようやく、ナナは声を発した。
肩は少し震えている。
それはつい今しがた死線を乗り越えたからではない。
この再会を喜んでいるのでも戸惑っているのでもない。
「ごめん、ナナ」
キラはもう一度言った。
そしてナナの肩に手を置いて、強い瞳で見つめた。
「今まで、独りで戦わせてごめん」
「……え……?」
ナナの声は掠れていた。
「ようやく、ナナが言っていたことの意味がわかったんだ」
「キラ……?」
キラの言葉が、少しもわからないといった様に、首を少し傾ける。
その仕草に見覚えがあったキラは、懐かしさを覚えた。
「“何と戦わなくちゃならないのか”……君はずっと僕に教えてくれていたのに」
そう……ずっと側にいた彼女に、“後悔と懺悔”をさらけ出す。
「僕は弱すぎて……君を見ようとはしなかった」
「キラ……私は……」
ナナは何かを言おうとして、それを飲み込み、うつむいた。
彼女もさらけ出している。
“後悔と懺悔”を。
「ナナ……」
が、キラはそのまま言葉を繋げた。
「今度は僕も、
ナナは再び彼を見上げた。
やはり、苦しげに。
「大丈夫」
それがナナの“優しさ”だと、もうわかっていたから、キラは笑えた。
「僕の意志も、君の意志と供に戦うから……」
「キラ……」
キラはもう一度、「大丈夫」と囁いた。
それでようやく、ナナは少し笑った。