戦慄の宇宙(そら)の果て   作:亜空@UZUHA

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温床

 アークエンジェルは、再びオーブにその身を隠した。

 正直、彼らにとっては“賭け”だった。

 敵前逃亡艦と見なされているであろう地球連合軍の艦を、わざわざ受け入れるなど、ありえるわけもない。

 それも、オーブにとっては二度目の“危ない橋”である。

 いくら『ナナ』が搭乗しているとはいえ、国の危険を考えると、受け入れは認められない可能性があった。

 が、ナナは何の不安も抱かずオーブへの進路を導き、そしてオーブはあっさりと彼らを受け入れた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「とりあえず……よかった」

「これで、色々とこの先のことを考える時間ができたね」

 

 入港が完了すると、ナナとキラはドックからブリッジへ向かった。

 これからウズミ前代表がブリッジに入り、士官と対話することになっている。

 

「この先……か。ナナは何か考えてるの?」

 

 そう問うキラには、以前のような不安げな様子はなかった。

 

「オーブでなら、それが見つけられると思って」

 

 ナナも軽い口調で答える。

 

「地球軍のやり方はアラスカではっきりわかったから」

 

 “敵”であるコーディネーターを全て滅ぼすという『やり方』。

 ナナはまさに『内側』でそれを直に見定めた。

 

「まだよくわかんないけど、私にとっての本当の敵は、“それ”の気がする」

 

 探し続けた本当の敵……それが少しだけわかった気がしたから、

 

「だから、今度は“それ”と戦うために何が必要なのか、オーブで見つけようと思う」

 

 曖昧な言葉でしかなかったが、キラは安堵したように笑んだ。

 

「やっぱり君は光だよ、ナナ」

「だからそれはラクスだってば……」

「ラクスが導いた先にある光が“ナナの意志”だよ……そんな気がする」

 

 信じて疑わないキラの瞳に、ナナは言い返すことを諦めた。

 

「とにかく、私の意志はオーブの理念が元になってるの。だから、またウズミ様の話を聞いて色々考えて、アークエンジェルの皆がそれぞれ道を選べればいいなって思っただけ……!」

 

 そう言い放って、少し歩みを速くする。

 

「確かに、ウズミ様の言葉は僕も……」

 

 それに追いつこうとキラも足を速めた時、

 

「キラ……!!」

 

 その背に、聞き覚えのある声がかかる。

 

「ナナも……!!」

 

 キラとナナが振り返ると、目に涙を溜めたカガリ・ユラ・アスハが駆けて来た。

 

「カ、カガリ……?!」

「このバカっ……!!」

 

 カガリは走る勢いを止めぬまま、キラの首に抱きついた。

 

「お前っ……お前っ……!!」

 

 キラはそのまま、後ろに倒れこむ。

 

「死んだのかと思ったんだぞ!! この野郎っ……!!」

「ご、ごめん……」

 

 戸惑うキラと、泣きながら文句を言うカガリの傍らにしゃがみこみ、ナナが笑った。

 

「カガリ、久しぶり」

「ナナ……!!」

 

 カガリは今度はナナを睨みつけた。

 

「ナナもっ! アラスカで討たれたかと思ったじゃないか!!」

「ごめんごめん」

 

 心の底から心配していた様を見せ付けられ、キラとナナは優しく宥める。

 

「二人とも……ほんとに生きてるんだな……?!」

「ちゃんと、生きてるよ」

「僕たち、戻って来たんだ」

 

 ようやく安堵して涙を拭ったカガリに、ナナは手を差し伸べた。

 

「アークエンジェルからお前の捜索依頼が来てすぐ島に向かったのに、お前、居ないから……」

 

 カガリはその手をとりながら、キラを見下ろしてまだぶつぶつと恨み言を言う。

 

「機体も……コックピットも酷い状況で、でもお前の姿はなかったから……ほんとに、心配したんだぞ」

「ほんとにごめん、カガリ」

 

 ナナは押し倒されたキラにも手を貸した。

 

「じゃあ、カガリが捜索隊の指揮をとってくれたんだ」

「そうだ。それで“キラじゃないヤツ”を発見した」

 

 何気ない口調で言ったナナに、答えたカガリの言葉。

 それにキラに手を貸したナナと、ナナの手をとったキラが同時に固まる。

 

「僕じゃ無いヤツ……って……?」

「……誰……?」

 

 急に蒼白になった二人に、カガリは低い声で告げた。

 

 

「アスランだよ」

 

 

 キラは息を呑んだ。

 

「ア、アスランは……い、きてた……?」

 

 カガリとキラの情況が逆転した。

 

「ああ。こっちで保護して、ザフトに返した」

「ア、アスランが……」

「めちゃくちゃ落ち込んでたぞ、アイツ。お前を殺したって泣いてた……」

 

 ゆっくりと語るのはカガリで、声を震わすのはキラだった。

 そして。

 

「ナナ……?」

 

 ナナは言葉すらなく、ただその場に立ち尽くしていた。

 

「ナナ? どうしたの?」

 

 キラが心配そうにその顔を覗き込む。

 その傍らで、カガリがため息をつくように言った。

 

「アイツ、ちゃんと持ってたぞ。ナナの石」

「え……?」

 

 キラが彼女を向く。

 

「アイツを保護した時、見覚えのある首飾りをしてたんだ。ナナが、大事にしてた守り石だった」

「なんで……アスランが……」

 

 ナナは視線を彷徨わせるばかりで、二人の会話すら聞こえていないようだった。

 だから、カガリが代わりに明かす。

 

「地球に降りた直後に遭難して、その時にナナと会ったらしい」

「遭難……?」

「ナナも遭難したころがあったろ?」

「あ……あの時……?」

 

 キラは再びナナを見た。

 ナナはやっと、息をつく。

 

「……そっ……か……」

 

 そして言った言葉は、

 

「生きてたんだ……アスランも……」

 

 今さら、()()だった。

 

 

 

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