アークエンジェルは、再びオーブにその身を隠した。
正直、彼らにとっては“賭け”だった。
敵前逃亡艦と見なされているであろう地球連合軍の艦を、わざわざ受け入れるなど、ありえるわけもない。
それも、オーブにとっては二度目の“危ない橋”である。
いくら『ナナ』が搭乗しているとはいえ、国の危険を考えると、受け入れは認められない可能性があった。
が、ナナは何の不安も抱かずオーブへの進路を導き、そしてオーブはあっさりと彼らを受け入れた。
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「とりあえず……よかった」
「これで、色々とこの先のことを考える時間ができたね」
入港が完了すると、ナナとキラはドックからブリッジへ向かった。
これからウズミ前代表がブリッジに入り、士官と対話することになっている。
「この先……か。ナナは何か考えてるの?」
そう問うキラには、以前のような不安げな様子はなかった。
「オーブでなら、それが見つけられると思って」
ナナも軽い口調で答える。
「地球軍のやり方はアラスカではっきりわかったから」
“敵”であるコーディネーターを全て滅ぼすという『やり方』。
ナナはまさに『内側』でそれを直に見定めた。
「まだよくわかんないけど、私にとっての本当の敵は、“それ”の気がする」
探し続けた本当の敵……それが少しだけわかった気がしたから、
「だから、今度は“それ”と戦うために何が必要なのか、オーブで見つけようと思う」
曖昧な言葉でしかなかったが、キラは安堵したように笑んだ。
「やっぱり君は光だよ、ナナ」
「だからそれはラクスだってば……」
「ラクスが導いた先にある光が“ナナの意志”だよ……そんな気がする」
信じて疑わないキラの瞳に、ナナは言い返すことを諦めた。
「とにかく、私の意志はオーブの理念が元になってるの。だから、またウズミ様の話を聞いて色々考えて、アークエンジェルの皆がそれぞれ道を選べればいいなって思っただけ……!」
そう言い放って、少し歩みを速くする。
「確かに、ウズミ様の言葉は僕も……」
それに追いつこうとキラも足を速めた時、
「キラ……!!」
その背に、聞き覚えのある声がかかる。
「ナナも……!!」
キラとナナが振り返ると、目に涙を溜めたカガリ・ユラ・アスハが駆けて来た。
「カ、カガリ……?!」
「このバカっ……!!」
カガリは走る勢いを止めぬまま、キラの首に抱きついた。
「お前っ……お前っ……!!」
キラはそのまま、後ろに倒れこむ。
「死んだのかと思ったんだぞ!! この野郎っ……!!」
「ご、ごめん……」
戸惑うキラと、泣きながら文句を言うカガリの傍らにしゃがみこみ、ナナが笑った。
「カガリ、久しぶり」
「ナナ……!!」
カガリは今度はナナを睨みつけた。
「ナナもっ! アラスカで討たれたかと思ったじゃないか!!」
「ごめんごめん」
心の底から心配していた様を見せ付けられ、キラとナナは優しく宥める。
「二人とも……ほんとに生きてるんだな……?!」
「ちゃんと、生きてるよ」
「僕たち、戻って来たんだ」
ようやく安堵して涙を拭ったカガリに、ナナは手を差し伸べた。
「アークエンジェルからお前の捜索依頼が来てすぐ島に向かったのに、お前、居ないから……」
カガリはその手をとりながら、キラを見下ろしてまだぶつぶつと恨み言を言う。
「機体も……コックピットも酷い状況で、でもお前の姿はなかったから……ほんとに、心配したんだぞ」
「ほんとにごめん、カガリ」
ナナは押し倒されたキラにも手を貸した。
「じゃあ、カガリが捜索隊の指揮をとってくれたんだ」
「そうだ。それで“キラじゃないヤツ”を発見した」
何気ない口調で言ったナナに、答えたカガリの言葉。
それにキラに手を貸したナナと、ナナの手をとったキラが同時に固まる。
「僕じゃ無いヤツ……って……?」
「……誰……?」
急に蒼白になった二人に、カガリは低い声で告げた。
「アスランだよ」
キラは息を呑んだ。
「ア、アスランは……い、きてた……?」
カガリとキラの情況が逆転した。
「ああ。こっちで保護して、ザフトに返した」
「ア、アスランが……」
「めちゃくちゃ落ち込んでたぞ、アイツ。お前を殺したって泣いてた……」
ゆっくりと語るのはカガリで、声を震わすのはキラだった。
そして。
「ナナ……?」
ナナは言葉すらなく、ただその場に立ち尽くしていた。
「ナナ? どうしたの?」
キラが心配そうにその顔を覗き込む。
その傍らで、カガリがため息をつくように言った。
「アイツ、ちゃんと持ってたぞ。ナナの石」
「え……?」
キラが彼女を向く。
「アイツを保護した時、見覚えのある首飾りをしてたんだ。ナナが、大事にしてた守り石だった」
「なんで……アスランが……」
ナナは視線を彷徨わせるばかりで、二人の会話すら聞こえていないようだった。
だから、カガリが代わりに明かす。
「地球に降りた直後に遭難して、その時にナナと会ったらしい」
「遭難……?」
「ナナも遭難したころがあったろ?」
「あ……あの時……?」
キラは再びナナを見た。
ナナはやっと、息をつく。
「……そっ……か……」
そして言った言葉は、
「生きてたんだ……アスランも……」
今さら、