オーブ軍施設の一室で、オーブ政府側とアークエンジェル側の対談が行われていた。
オーブ側はウズミとキサカ、そしてカガリ。
アークエンジェル側はマリューとフラガ、そしてキラとナナだった。
室内は当然、明るいムードではなかった。
マリューがアラスカ「ジョシュア」での惨劇をウズミに報告すると、彼は額の皺を濃くした。
いくら情報漏洩があったとはいえ、地球軍本部がとった作戦はあまりに残酷であると、そう断言した。キサカもまた、机の上の冷たい計算と言い切った。
「それで、コレか……」
ウズミは吐き捨てるように言い、リモコンでモニターをつける。
と、画面にはジョシュアの戦闘を報じるニュースが映し出された。
内容は当然、攻撃を仕掛けてきたザフト……いや、『コーディネーター』への反抗心を煽るもの。
今こそひとつになってザフトを倒せ……と、デモやら軍人らが次々と画面に現れる。
何も無い荒野と化したジョシュアの映像に、ナナは唇を噛みしめた。
きれいさっぱり無くなってしまったあの場所で、いったい何人の“人”が亡くなったのか。
が、恨んでいても仕方なかった。
「大西洋連邦は、中立の立場を取る国々へも圧力をかけてきておる」
後ろを振り返っている暇はない。
このオーブもまた、難しい立場になりつつあった。
「連合軍として参戦せねば、敵対国としてみなすとな」
地球軍がオーブの保持する力を欲しがっていることは知っている。
連合に組みせねば、敵対国としてその力を奪うつもりだということも、簡単に予測が立った。
だが、この国は強い理念を掲げた中立の国である。
オーブの理念と法を守る者ならば、コーディネーターもナチュラルも関係なく受け入れる国である。
遺伝子操作の是非を問題としない社会を作ってきたのは、ただコーディネーターだから、ナチュラルだからというだけでお互いを見ることこそが、軋轢を生むという考えの下だった。
「キラ君がコーディネーターであるのも、カガリやナナがナチュラルであるのも、当人たちにはどうすることも出来ない“事実”でしかなかろう」
カガリはチラリと横に立つナナと、その向こうのキラを見た。
「そうですね」
キラは穏やかな表情で、ウズミに答えた。
ナナもウズミにうなずく。
「なのに、コーディネーター全てを“悪”として、“敵”として攻撃させようとするような大西洋連邦のやり方に、私は同調することはできん」
何度も何度も繰り返し掲げたオーブの理念。そして彼の意志。己の中に深く、そして力強く根付くもの根源を確認するかのように。
「しかし……おっしゃることはわかりますが……」
が、フラガが言った。
「失礼ですが、それは理想論にすぎないのではありませんか?」
彼の言葉も最もだ。
わかってはいるものの、コーディネーターはナチュラルを見下すし、ナチュラルはコーディネーターを妬む。
理想を掲げつつも、そうならないのがこの世界の現実だった。
無論、ウズミもその現実を知っている。
「我が国とて、全てがうまくいっているわけではい」
だが。
「が、だからといって諦めては、本当に互いを滅ぼし合うしかなくなってしまう」
そう……“敵”と“味方”に二分して……。
「そうなってから悔やんだとて、すでに遅い」
ウズミは立ち上がり、少し歩いて皆を見回した。
「それとも、それが世界というのならば、黙って従うか?」
問いかけは重く、答える者は無かった。
「どの道を選ぶも、君たちの自由だ」
ただ、選ぶことはできる。
「君らは若く力もある……」
だからこそ、
「見極められよ……真に望む未来を……」
『見極める』こともできるはず……。
ナナは壁を向いて息をついたウズミを見つめた。
ずっと追っていた彼の意志。
今はここに居る皆がそれを見て、見極める時を得ている。
「ウズミ様は、どう思ってらっしゃるんですか?」
そして、迷いを捨てたキラが口を開いた。
「キラ……」
彼はウズミをまっすぐに見据えていた。
ナナはキラからウズミに視線を移す。
ウズミもまた、その視線をしっかりと受け止めていた。
「ただ剣を飾っておける状況ではなくなった……と思っておる」
そしてそう言い、ナナに視線を移した。
「…………」
ナナはかすかに頷き、キラを見やる。
彼の横顔は、安堵と決意が入り混じったように、わずかな笑みを浮かべていた。