戦慄の宇宙(そら)の果て   作:亜空@UZUHA

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遠い光

 ザフト軍のパナマ攻撃の知らせを、ナナはモルゲンレーテの整備ドックで聞いた。

 

「ザフトは『ジョシュアの敵討ち』……と、猛攻撃を仕掛けてきました」

「狙いはマスドライバー?」

 

 宇宙へ上がるための施設、「マスドライバー」。

 いまや貴重なそれが、パナマにはあった。

 それさえ制圧すれば、地球軍の足は地上に止まる。

 ザフトのパナマ攻略の目的は明らかだった。

 

「パナマ陥落は……おそらく時間の問題かと……」

 

 キサカの言葉に、ナナは少しの間考えこんだ。

 そして、グレイスの整備を周囲の者に任せ、ウズミの元へと向かった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「パナマが落ちれば、情勢はどうなる……?」

 

 窓辺に立ち、ウズミはナナにそう問う。

 ガラスの向こうには、夕日を浴びる紅い海が広がっていた。

 

「地球軍は地球に残るマスドライバーを求め、躍起になると思います」

「で……あろうな……」

 

 地球に残されたマスドライバー……それは、このオーブにもあった。

 日に日に強まる、地球軍からの参戦要請。

 それに、マスドライバーの保持。

 そして、強大な軍事力……。

 どの条件から見ても、オーブが立たされた場所は狭く際どい所だった。

 

「地球軍は……オーブに対する圧力をいっそう強めるでしょう」

「うむ……」

 

 外交でどうにかなる問題ではなくなる……と、ナナは懸念した。

 もちろん、ウズミがそのことを前提に考えていることも知っていた。

 

「オーブは“敵対国”と見なされるでしょうね」

 

 冷静な声に、ウズミはナナを向いた。

 そして、再び問う。

 

「そなたは、オーブの取るべき道をどう考える?」

 

 ナナが答えるのに、間は無かった。

 逆に、簡単な問題を出されたかのようで、少し笑う。

 

「私に聞かずとも、もうお答えは決まってらっしゃるのでしょう?」

 

 だから、ナナはこう言った。

 

「私は、ウズミ様がオーブの理念を崩すことは、決して無いと思っています」

 

 ウズミはかすかに目を細めた。

 

「地球軍に組みすれば、軍やマスドライバーを利用されるかもしれませんが、孤立は免れるでしょう……」

 

 ナナの言葉に淀みは無い。

 

「逆にザフトと組んでも、同じこと……」

 

 自分の足で、ようやくここまで辿り着いた者の、強い信念があった。

 

「国民の多くは、地球軍に参戦することを望むかもしれません。この国が戦場にならない道を選ぶのなら……」

 

 ウズミはそれに聞き入った。

 

「でも、それでは何も終わりません」

 

 微動だにせず。

 

「互いを認め合わず、ただ“違うから”と憎み、全てを敵、味方に分けては、争いは絶対に終わりません」

「ナナ……」

「そうさせる“力”こそが“敵”だと……私は思いました」

 

 “答え”はいつのまにか出ていた。

 

「そして昨日、ウズミ様の言葉で確信に変わりました」

 

 ウズミはナナに歩み寄り、ナナもソファから立ち上がった。

 

「そなたは“光”を見つけたのだな」

「遠い……光です」

 

 妨げるものは数多ある。

 そのための犠牲も、覚悟せねばならないだろう。

 だが、

 

「オーブが取る道は、世界に指し示す道となるでしょう」

 

 ナナは噛みしめるように言った。

 ウズミもまた、腹の底にある決意を見据えるように頷いた。

 そして、

 

「そなたはどうする。どうやってその光へと進むのだ……?」

 

 三度問う。

 やはり、ナナに迷いはなかった。

 

 

「戦います」

 

 

 気負いすら取り払った。

 

「オーブの理念を掲げて、望む未来のために、戦います」

 

 望まぬ未来が迫っていても、希望は捨てない。

 そのために戦う。

 その力も持っている。

 

「やはりな……」

 

 ウズミは急に老けたような顔で笑った。

 

「ウズミ様……?」

 

 そしてナナの肩に手を置いて、呟いた。

 

「やはりそなたは、我らの光だ……」

 

 ナナは首を振る。

 最近も誰かに言われたその台詞は、やはり他人事のようだった。

 

「私はずっと……ウズミ様の信念に導かれて生きてきましたから……」

「よいのだ」

「ウズミ様……」

 

 ウズミはカガリにするように、ナナの頭に手を乗せた。

 

「人類の未来は、そなたの目指す先にある。……私もそれを目指して共に戦おう……」

 

 

 

 

 

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