戦慄の宇宙(そら)の果て   作:亜空@UZUHA

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ドミニオン

 コロニー・メンデルの港で、エターナル、クサナギ、そしてアークエンジェルの三艦は整備と補給を急ピッチで進めていた

 ザフトか……地球軍か……。

 どちらが先に現れたとしても、それは“敵”としての姿であることは間違いなかった。

 ここに、安息はない。

 ナナは補給組と整備班の間をせわしなく行ったり来たりとしていた。

 合間にアークエンジェルのブリッジや、クサナギ、エターナルとも連携をとり、できるだけ効率よく作業が進むように気を配った。

 時間は少しも無駄にできなかった。

 一刻も早く、戦闘準備を整えなければならなかった。

 当然のことではあったが、ナナには嫌な予感がしていた。

 

 そしてそれはいつものように的中する。

 フリーダムとジャスティスのエターナルへの移送が決まった直後……アークエンジェルのブリッジにアラートが鳴り響いた。

 警戒宙域に敵艦補足……。

 すぐに発進したアークエンジェルが目にしたのは、アークエンジェルの同型艦『ドミニオン』。

 その艦の艦長は、ナタル・バジルール……。

 そして、ブリッジにはブルーコスモスの盟主、アズラエルの姿があった。

 

 

 

 アークエンジェルから、フリーダムを先頭に次々とMSが飛び出す。

 クサナギからもM1隊が発進していた。

 最終調整が終わらないエターナルを除く二艦は、戦闘のために港を出た。

 ドミニオンからもMS隊が向かって来る。

 中には例の新型三機の姿があった。

 

≪あの三機はオレとキラで抑える。ナナは艦の防衛に回れ!≫

 

 ジャスティスからの通信が入った。

 

≪大丈夫、僕たちに任せて!≫

 

 そしてフリーダムからも。

 ナナは言葉を飲み込んでうなずいた。

 あの三機……新型というだけでなく、戦い方がおかしかった。

 正規の軍を相手にシミュレーションを繰り返してきたナナだからこそ、すぐにわかった。

 彼らは正規に訓練を受けた軍人でもなければ……()()()()()()()()ではない……。

 そう感じたことを、まだ誰にも言ってはいなかった。

 言えば混乱は必至だった。いや、自分自身が一番混乱していたのかもしれない。

 ナチュラルでも、コーディネーターと同じように……誰よりもそう思って、特殊な環境で訓練を積んできた。

 実際、パイロットとしての腕は、ナチュラルの中でも隊長クラスにはなっている自覚があった。

 正規の訓練を受けたパイロットと、搭乗時間は比べものにならないのだから。

 が、あの三機はグレイスの性能を差し置いて考えても、ナナの能力を凌駕していた。

 それは、戦術や戦闘スキルというわけでなく……運動能力そのものが卓越しているように感じられた。

 ナチュラルで、あれほどの動きができるとは思えなかった。

 奢るわけではないが、子供の頃からMSに乗ってきた自分は、誰よりもMSを自身の身体のように乗りこなせるつもりでいた。

 それでも、理屈でない『違い』が彼らとの間にあったのだ。

 オーブでの戦闘でそれを実感したナナは、アスランとキラに従った。

 自分ではまだ、足手まといになる……。今は、まだ。

 

「クサナギ! 出遅れてる!!」

 

 モニターで艦の位置を確認し、バスター、ストライクと連携が取れる位置につく。

 ナタルの腕は流石だった。

 的確な戦術と判断で、アークエンジェルを追い詰めていく。

 デブリすら利用して攻めて来た。

 

≪デブリにつかまった! 身動きがとれない!!≫

 

 キサカの声でクサナギを見ると、デブリのワイヤーがその艦体に絡まっていた。

 アサギが懸命にそれを切ろうとしているが、手間取っているようだった。

 他のM1に、それを援護する余裕はない。

 

「ディアッカ、ムウさん、ここお願い。私はクサナギの援護に行きます」

≪わかった!≫

≪了解!≫

 

 言ったと同時に、あの三機のうち一機が、クサナギの状況に気づいて向かって行った。

 

「アサギ!!」

 

 アサギに向けられた砲を、なんとか防いで逆にビームを放つ。

 今はまだ、この機体には勝てない……。

 しかし、

 

「アサギ、私が援護する。大丈夫だからちゃっちゃと終わらせちゃって!」

≪は、はい! ナナ様!≫

 

 そんな事を思っているなど、仲間に悟られてはいけなかった。

 なんとか懸命に迎え撃つしかなかった。

 

 ようやくアサギがワイヤーを切り裂き、クサナギが自由になる頃には、ナナの肺はゼーゼーと音をたてていた。

 決定的なダメージはなかった。

 エネルギー残量も、相手の機体と同じくらいは残っているはずだった。

 ここでケリを……。

 そう思った矢先、敵の機体はまるでグレイスとの戦闘に飽きたかのように、フリーダムとジャスティスに向かって行った。

 

「アスラン! キラ! 一機がそっちへ向かった!!」

 

 その返事の仕方で、二人でさえもギリギリの状態であることがわかった。

 ナナは一瞬躊躇したが、すぐにそちらへとグレイスを向けた。

 クサナギが戦線復帰したことで、すぐにこちらの有利になるはずだ。

 あとはあの三機の攻撃に持ちこたえるだけ……。

 オーブでの戦闘の再現のように、六機はぶつかり合った。

 が、フリーダムとジャスティスで敵を押し込んだ時、ドミニオンからフリーダムに対して直接攻撃があった。

 

「キラ……!!」

 

 艦からの攻撃は、最早アークエンジェルやクサナギではなく、フリーダムに的を絞っているようだった。

 

「バジルール中尉……まさか……!!」

 

 攻撃をかわすだけで精一杯のグレイスの横を、ジャスティスが線を描くように駆け抜けた。

 そして、フリーダムを窮地から救う。

 と、その腹いせのように敵の一機がグレイスを攻撃し、コックピットを蹴りつけた。

 

「ぐっ……」

 

 強烈な衝撃を受けて飛ばされるグレイス。

 コックピット内には、戦闘不可能状態を告げるアラートが鳴る。

 暗い宇宙に光る戦いの灯が、フラッシュのようにモニターを照らした。

 堕ちる……。

 大気圏突入の時をぼんやりと思い出す。

 点滅する光が遠ざかり、視界が暗くなりかけた。

 そのとき、急にガクンと機体が止まった。

 

≪……か!? 大丈夫か!? ナナ!!≫

 

 その声がアスランだとわかっていたが、呼吸がうまく出来ない状態で……、返事さえも返すことはできなかった。

 

 

 

 

 

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