宙域を離脱した三艦は、小惑星群に身を潜めた。
エターナルのブリッジにそれぞれの艦長らが集結し、目の当たりにした悲惨な状況を話し合っていた。
皆が考えていることは同じだった。
アレが……あの『ジェネシス』という兵器がもし、地球に向けて放たれたなら……。
クサナギから、エリカ・シモンズが兵器の分析を報告する。その予測される結果も。
それはまさに絶望で、この世の終わりだった。ナチュラルにとっては……。
「地球に向けて、撃つつもりでしょうか……」
マリューの問いに、バルトフェルドが答えた。
人はすぐ、戦いに、殺し合いに慣れるのだ……と。
もう、地球軍は核を撃った。そしてザフトもジェネシスを撃った。
その引き金を引くことを、たぶんどちらももう、躊躇わないだろう……。
「兵器が……争いを生むのでしょうか。それとも、人の心が……」
ラクスが影を負っていた。
彼女の強さが、ナナが焦がれた強さが、影に飲み込まれそうになっている。
「核もあの兵器も、絶対に互いを撃たせちゃだめだ」
押し止めようとしたのはキラだった。
「そうなってからじゃ、もう全てが遅い」
彼の視線が、ナナを向く。
彼だけじゃなかった。
皆が、ナナを見ていた。
「ナナ」
キラが口を開いた。
「僕は……僕たちは、君に導かれてここまで来た」
「キラ?」
そう話すキラの傍らで、ラクスが笑んだ。
「僕たちは何もわかってなくて、ただ戦うことを否定して……戦いを終わらせるために“何と戦わなくちゃならないのか”ってことを、考えようとすらしなかった。君は初めからずっと、教えてくれていたのに」
「キラ……」
そうね、とマリューが同意する。
「ナナは、私たちの誰よりも強い意志で戦っていたわね……。目の前の戦場ではなく、ずっと先の、何かを見つめて」
「マリューさん……」
そんなふうに思われていたことなど、知らなかった。
ただひたすらに、『戦え』『立ち止まるな』『撃て』と、鞭打つような言葉を投げつけて来たつもりだった。
キラに、ミリアリアたちに、マリューやムウに……。
そんな自分が怖くて、後悔することを怯えていた。
孤独は平気だった。
でも、仲間たちの優しさを知っていたから、彼らを傷つけることは哀しかった。
だから、
「私は、キラに『戦え』って言ったこと、今でも後悔してるよ」
正直にそう告げる。
「マリューさんたちにも……確かに戦わなきゃ死ぬって状況だったけど、それでも、私は……バルトフェルドさんや……アスランを撃とうとしたんだし……」
自分の言葉に、涙がこみ上げそうになる。
「ナナ」
カガリの手が肩に触れる。
その瞳は、まっすぐで正直だった。
(うん、わかってる)
それに応え、口を開いた。
「それが正しかったのかなんて、今はまだわからない……けど……」
刃のような言葉を突き付けることが、自分の役目とわかっている。
「まだ私は、戦わなくちゃならない」
最後まで“力”を使うことを肯定して。
「核も、あの兵器も、どっちも壊す。私たちの力は今、そのために使う」
そうやって進むことしか、自分にはできないのだから。
「はっきり言って、たったこれだけの戦力で成し遂げるのは難しいけど……見ているだけなんてもうできない。無駄かもしれないけど、ここで止めたら、今までの犠牲こそが無駄になる。間違ったやり方かもしれないけど、でも、ここにある意志は、今やり遂げなければならないものだと思う」
皆を見回した。
ナナの口から出る言葉に、怯える者は誰もいない。
「私たちは未来を託された、小さくても消えない強い火種だと……そう信じてる」
その場が静まりかえった。
ただただ、誰もがその言葉をかみしめているようだった。
ナナ自身も。
「ナナ」
キラが、再会の時と同じ言葉を言った。
「僕の意志も、君の意志と供に戦うから……」
ラクスがナナの両手を取った。
歌っているときのような、穏やかな瞳をしていた。
「参りましょう」
それはまるで、全てを包み込むような、ウズミの眼差しに似ていた。
「信じた道を」
声もなく、ただ、皆がうなずいていた。