ナナを片腕で抱いたまま、アスランは全速力でグレイスを駆った。
ジャスティスさえも凌ぐスピードは、“G”の常識を超えている。
ナナがグレイスに細工したのだということがすぐにわかった。
ここが……このコックピットが、ナナの戦場だった。
それをかみしめたまま、暗い通路を抜けていく。
ナナはやはり、ただただ泣いていた。
やがて、グレイスはジェネシスの外へと躍り出た。
同時に、後方で視力を奪うほどの閃光が発せられる。
そして、機体を吹き飛ばすほどの爆風……。
ジャスティスの核爆発により、ジェネシスの存在は完全に消滅した。
「ナナ……」
そのことにすら興味を失ったかのように、ナナはアスランの首にしがみついたまま泣いていた。
モニターを見ることも、何がどうなったのか聞くこともせず。
「ナナ……ジェネシスは破壊した……」
回された腕がわずかに動いたのを、アスランは感じ取った。
「ジェネシスは撃たれなかった……オレたちも、死ななかった……」
ゆっくり……まるで億劫だとでもいうように、ナナはやっと顔を上げた。
「ナナ、オレたちはまだ、生きているんだ」
ヘルメットの中はすでに、涙の粒でいっぱいだった。
「ナナ……」
すすり上げながら、ナナはシールドを上げて首を二、三度横に振る。
アスランの目の前に、雫がいくつも煌めいた。
「ナナ、すまなかった……」
未だ止まることを知らぬ涙を、アスランはそっとすくい取る。
「お前を護るつもりが、誓いを破るところだった……」
そして、心の底から自然とこみ上げて来る言葉をそのまま告げる。
「未来が……世界がお前を必要とするように、お前がオレを必要としてくれるのなら……」
涙をいっぱいに溜めた瞳が、こちらをまっすぐに見ている。
「もし、そうなら……オレはずっと、お前の側にいると誓う」
ナナのこの涙が、この姿が、もしも自分への想いなのだとしたら……。
「アスラン……」
ナナは再び彼の首にしがみついた。
「……いて……」
声は震えて聞き取れなかった。
が、彼にはちゃんと伝わった。
「ずっと……側にいて……!」
願いも、想いも。
惹かれ合い、求め合っていることが、この戦いの果ての宙でわかった。
「ナナ……」
ナナの体を起こし、彼は言った。
「お前を愛している」
ナナは嗚咽をこらえながら、聞き取れないくらい震えた声で応えた。
「わたしも……」
と。
その
憤怒も、慟哭も、全てが鎮まったように。
二人はキラの姿をすぐに見つけた。
彼は大破したフリーダムのすぐそばに、漂っていた。
「キラ……!」
涙を引っ込めたナナが、グレイスのコックピットを飛び出していく。
そして、キラにしがみついてまた泣いた。
キラも、泣いていた。
そしてアスランも。
戦いは終わった。
多くの者を失って、傷ついて、傷つけて……。
それでもこうして、戦いは終わったのだ。
今はやがて過去になり……未来は……。
「行こう……キラ……アスラン……」
暗い宇宙の果てで、遠くに青く輝く地球を見つめながら、ナナがつぶやいた。
「未来へ……一緒に……」
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続編(DESTINY編、後日談も含む)も引き続きよろしくお願いいたします!