「う……ここは……」
ベットに横になっていた男が目を覚ます。
周りは薄暗く、チカチカと見慣れない機械の光が点滅している。
横になっていた男が上体を起こした。
『お目覚めかい?』
スピーカー越しに男の声が聞こえる。
それと同時に男がいるベットにライトが向けられた。
ライトで照らされ、眩しく思ったのか男は腕で光を遮る素振りを見せる。
男の出で立ちは、肩まで伸びる赤いボサボサの髪に無精髭を生やしている。
肉体は洗礼されており、着ている服は赤を基調とした裸に密着するタイプのモノだった。
次第にライトの光に目が慣れた男は、光を遮っていた腕を膝の上に降ろす。
スピーカーの声の主は少し高い所に設置されているであろう部屋からこちらを見下ろしている。
残念なことに、ベットを照らすライトが邪魔で、部屋の中の人物が分からない。
「テメェは誰だ?」
男は粗暴な感じで声の主に聴く。
『私は“ジェイル・スカリエッティ”……君は私のラボの前で倒れていた。このロボットと共にね……』
そう言って、ライトが別の区画を照らした。
そこにあったのは一体のロボット……
ダークブルーの機体色、片腕は損失しており、頭部の一部は潰されている。
そのロボットは横たわり機能は完全に停止しているようだ。
男は驚いた。
「俺の“AEUイナクト”……なぜコイツが……」
そして、全てを思い出した。
「そうだ!俺は死んだんだッ!ソレスタルなんたらのガンダムと戦って!……だけど、俺が最後に乗ったのは“アルケー”だったはず……おい!イナクトの他に機体はなかったか!!?赤い機体だ!」
男は鋭い眼光で、スカリエッティが居るであろう部屋を睨み付ける。
しかし、そんな眼差しに臆することなくスカリエッティは淡々と男の質問に答える。
『残念ながら、そんな機体は無かったよ。その……イナクトと言うのかい?それしかなかった。』
「クソ!いったいどこにあるんだ!俺のアルケーは……ッ!」
『まあ、今焦っても仕方あるまい。衰弱はしているが、幸いにも怪我は一切していない。今は体力の回復に集中したまえ。』
そう言って、スカリエッティの声はしなくなった。
「チッ……!」
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男と会話をした後、スカリエッティは自室に戻るため通路を歩いていると彼の前に二人の女性が現れた。
「ドクター、例のロボットの解析が終了しました。」
「ほう……それで?」
「あの機体はこの世界の技術とは全く違う技術で作られています。装備は質量兵器のみ……外部電源方式とバッテリーで駆動していたみたいですね。」
「あの男の操縦技術と相まって凄い性能ですよ、ドクター♪」
「あと彼と共にロボットの近くに落ちていたこの指輪……どうやらデバイスのようです。」
「それにこのデバイスったら、色々とロックが掛かっているせいか、解らないことだらけで……私とウーノ姉さまの手には余る代物なんです……」
「そうか。色々と世話をかけたね。このデバイスは彼の物だろうし明日にでも返して上げよう。君たちも疲れただろう?今日は休みたまえ。」
「分かりました。」
「ありがとう、ドクター♪」
二人は資料と指輪状のデバイスをスカリエッティに手渡すと、彼のもとから去って行った。
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あれから数日たった……
「さて、体の調子も良さそうだね?アリー・アル・サーシェス君?」
「ああ……おかげさまでな。ってか、お前がジェイル・スカリエッティか?」
「そうですよ。」
「それで、俺の名前をいつ知ったんだ?」
「それに関しては、あのイナクトのデータベースに君のバイオメトリクスが載っていましたからね、簡単なことでしたよ。それに君は言ってましたね?自分は一度死んだ身だと……」
「ああ、確かに死んだ。ガンダムのパイロットに眉間と体を撃たれてな……チッ、思い出しただけでもムカついてくるぜ……ッ!にしても、何の因果か別の世界に蘇っちまうんなんて……前の世界でガキに聞かれたよ。お前の信じる神はいるのかと……フン、今ならその神っていうも信じていいな……」
サーシェスは自嘲気味に笑ってみせる。
「それに君は前の世界で凄腕のパイロットだったみたいだね?ついでに戦闘データも見せてもらったよ。」
「まあ、俺は戦争屋だからな……戦うことが好きなんだよ。」
「面白いことを言う……なら、ここは一つ私の計画に手を貸してくれないか?」
「何?」
「至極簡単なことだ。私はこの世界に復讐をしたい。そして、君は戦争がしたい。利害の一致と言うわけだね。私が君に戦争の舞台を揃えてやろうというのだ。」
「なるほど、嬉しいことじゃないか。死んでもなお戦争ができるとは……戦争屋冥利に尽きるってもんだぜ!その話し乗った!それで何をするんだ?」
「私は今、レリックと言うのを集めている。」
「レリック?何だそりゃ?」
「簡単に説明すれば、莫大なエネルギーを帯びる“超高エネルギー結晶体”ってところだね。」
「楽勝じゃあねぇか!」
「残念だが、考えが甘いよ。」
「何だと?」
「レリックの収集には、ちょっとした障害があるんだよ。」
スカリエッティの後ろに設置してあった大型モニターに映像が投影される。
そこに映っていたのは、空を飛び回る数人の少女たち……
飛行型の機械を相手に激しい戦闘を繰り広げていた。
「どういう事だ……人が空を飛んでやがる。」
「言ってなかったね。この世界は魔法技術が発達した世界……」
「馬鹿な……ッ!そんなバカみたいな話……あり得ない!冗談も大概にしてくれよ、旦那。」
サーシェスはスカリエッティの言葉を否定した。
「本当だよ。この間、君が倒れていたすぐ側にはこのリングが落ちていた。検証した結果、このリングはデバイス……すなわち魔法を制御する装置だと判明した。」
そう言うとスカリエッティは、サーシェスにリング型のデバイスを手渡す。
「一度、デバイスを起動してみると良い……今から我々はこの世界を相手に戦争をするんだからね。」
「それもそうだ。で、どうしたらコイツは起動するんだ?」
「指輪状のデバイスだ。とりあえず、着けてみては如何かな?」
「それもそうだな……」
スカリエッティに言われるがまま、サーシェスはデバイスを右の人差し指に着けた。
するとサーシェスの体は光に包まれ、光が晴れると以前、彼が駆っていた“AEUイナクト”の姿になっていた。
「スゲェ……スゲェぞ!スカリエッティ!」
まるで、玩具を与えられた子供のようにサーシェスは燥いでいた。
主力武器であるリニアライフルを構え、さらには教えてもらってもないMA形態への変形をこなし、天性と言っても過言でもないセンスをスカリエッティに見せつけた。
「気に入ってくれたかな?」
「もちろんだとも!スカリエッティの旦那ァッ!このデバイスさえあれば楽しさ100倍増しだぜ!」
「そうか、頼もしい限りだよ……じゃあ、早速出撃と行こうか。この映像はリアルタイムだ。あの飛行ガジェットは私のおもちゃでね……例のレリックに反応して自立行動している。場所はここから近い山岳地帯のレールウェイだ。」
「了解だ、旦那……リハビリ程度の野暮仕事だ。さっさと済ませて来るぜ。」
サーシェスはスカリエッティのもと去って行った。
「クックック………さあァッ!始めようか時空管理局の諸君!ゲーム開始だッ!!!!」
スカリエッティが世界を相手に本格的な行動を起こす。
アリー・アル・サーシェスと言う最凶最悪の駒を使って……
次回に続く。