ミッドチルダ東部、山岳地帯にて……
『さて、サーシェス君。簡単に状況の説明をしておこう。目標であるレリックは既に敵対する時空管理局の精鋭部隊“機動六課”によって完全に押さえられている。』
「機動六課だと?」
『そうだ。ここ最近新設された部隊でね、優秀な人材が集まっているみたいだよ。ラボで見た映像……アレに映っていた彼女達もこの部隊メンバーだ。』
「チッ!女と子供の寄せ集めってか?萎える仕事だな……」
『ところが、侮ることなかれ……彼女らは時空管理局を代表するエースたちばかりだ。がっかりはしないと思うよ。』
「まあ、それは何よりなことで……」
『さあ、気合いを入れたまえ。戦域到達まで残り5分だ。』
「了解……」
サーシェスは暴れたい衝動を押さえながらも、与えられた新しい力“イナクト”を駆り、戦いの場へ向かうのだった。
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一方、機動六課の作戦室では前線メンバーに高速で接近する未確認機を広範囲レーダーで捉えていた。
「未確認機(アンノウン)?いったい、何処から?…」
「ついさっきまで、こんな反応は無かったのに!」
焦るオペレーター陣。
「しかも、速いッ!!?この速さは……先ほど隊長たちが撃墜していたガジェット2型の約3倍ですッ!」
「何やてッ!!?なのは隊長とフェイト隊長に緊急通信ッ!フォワードのみんなはリインの指示のもと防御陣形で待機!急ぐんや!」
機動六課の部隊長“八神はやて”は迅速な指示をオペレーター陣に出す。
「こちらロングアーチです!応答して下さい!」
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場所は変わり、六課前線メンバーはロングアーチからの緊急通信を受けていた。
「了解!みんな、聞いたねッ?」
「「「「はいッ!」」」」
「二人とも!見えたですぅッ!」
リインが空を指差す。
彼女の示した方向を見るとこちらに向かってくる飛行機みたいなシルエットをしたガジェットらしき物があった。
「あれが通信でシャーリーが言っていた例のアンノウン……」
「みんな、気をつけて!何があるか分からないから……!」
彼女たちがこちらに向かってくるサーシェスを警戒している。
その一方でサーシェスは六課前線メンバーにいち早くロックオンをしていた。
「ターゲットロックオン……さあ、パーティーの時間だ。存分に楽しませてくれよ、機動六課のお嬢ちゃん達……」
モビルアーマー形態のイナクト(サーシェス)の機首部分となっているリニアライフル、主翼パイロン、フロントアーマーの兵装担架に搭載されていたミサイルを発射する。
発射されたミサイルは全部で5発。
「なのは!あれって……」
「質量兵器!行くよ!レイジング・ハート!」
『マイスター了解です。』
なのはは先陣を切ってみんなの前に出る。
ジェット推進で目標に向かう5機のミサイルは、途中で子弾頭へと分裂した。
「多すぎる!レイジング・ハート!」
『了解……ターゲットロックオン。いつでも発射可能性です。』
「高町なのは!目標を凪ぎ払います!ディバイィィン…バスタァァーーーッ!」
高町なのはの得意技である桜色のディバインバスターが、迫りくる子弾頭の群れを一瞬のうちに凪払った。
迎撃された子弾頭は赤い炎を撒き散らしながら爆発する。
「やった!」
なのはは安堵の表情を浮かべるが、その期待はすぐに裏切られた。
なんと爆発の閃光の中から群青色の飛行機が現れ、なのはに急接近してきたのだ。
「レイジングハート!」
『了解……アクセルシューター。』
彼女はアンノウン迎撃のため周囲に数十個の桜色のスフィアを展開する。
「シューーート!!!!」
なのはは向かってくる飛行機に向けて全てのスフィアを発射した。
「甘ぇ……全くなってねぇな、白いお嬢ちゃん!」
次の瞬間、群青色の飛行機が言葉を発した。
「ガジェットが……しゃべった!!?」
なのはは初めての経験で動揺する。
「俺はガジェットなんかじゃねぇ……歴とした人間だ。」
次の瞬間、サーシェスはMAから人型であるMSに変形した。
変形した群青色のロボット……サーシェスを撃ち落とそうと食い下がるアクセルシューターだったが、彼は急制動をかけ後退しながら、リニアライフルと牽制用の機銃を使い、なのはのアクセルシューターを次々と撃ち落としていく。
「いったい、何なの!!?飛行型から人型に…ッ!!?」
なのはは唖然としていた。
一方、地上で見ていたフェイトとリインにフォワード陣はなのはと同じように驚愕している。
人型に変形し終えたサーシェスは、リニアライフルの銃口をなのはに向けると、躊躇なく引き金を引いた。
リニアライフルから数十発の弾丸が連続で発射された。
「クッ!プロテクション!」
なのはは防御魔法で弾丸を防いだ。
「堅ェな……ッ!リニアが効かねェなら、ブレードで切り刻むだけだァァッ!!!!」
サーシェスは、リニアライフルの先端に大型のカーボンブレードを展開させるとなのはに斬りかかった。
「そらそらァァッ!」
「つ、強い!」
なのはは必死にサーシェスの斬撃を往なすが、一瞬脇が開いてしまう。
その隙を戦闘のプロであるサーシェスが見逃すはずがなく……
「もらったァァッ!!!!」
なのはの体を貫こうと、全出力を載せたカーボンブレードを勢い良く突き出した。
「し、しまった…ッ!」
この時、なのはは迫る刃が鮮明に見えた。
しかし、実際には反応できないスピードで迫っている。
彼女は死を覚悟した。
「なのは!」
なのはの親友であり、戦友のフェイトに応えた彼女のデバイス“バルディッシュ・アサルト”が、魔法を発動する。
『ソニックムーヴ!』
バルディッシュが発動したのは、高速移動魔法の一つだ。
フェイトの姿が金色の光に包まれ、一気にトップスピードまで加速するとサーシェスとなのはの間に割り込み、金色の魔力刃でカーボンブレードの鋭い突きを防いだ。
「間に合った……大丈夫?なのは?」
「うん、ありがとう……フェイトちゃん。」
フェイトはなのはを心配し、なのははフェイトに助けて貰ったお礼を言う。
「ほぅ……ちぃっとはやるじゃないか、金髪のお嬢ちゃんも……」
未だブレードを構えた状態でサーシェスは二人の女性魔導士を見つめていた。
「あなたはいったい何者?なのはとのやり取りを聴いていたけど、本当に……」
「ああ、そうさ……俺は人間だ!」
「ならば、アナタを重大な管理局法違反で逮捕します!」
「面白い!やれるなら、やってみろォォッ!!!!」
サーシェスはリニアライフルで、なのはとフェイトに牽制をかける。
突然の攻撃に驚いた隙に二人の間をサーシェスは再び飛行型に変形し猛スピードで抜けていく。
「ま、待ちなさいッ!」
二人は慌てて男の後を追いかけた。
「このままじゃ、フォワードのみんなが危ない!」
一方、レールウェイで防御陣形で待機していた新米たちはこちらに向かって猛スピードで飛んでくるサーシェスに警戒していた。
「ティア!こっちに来るよ!」
「見れば分かるわよ!みんな!迎撃態勢!奴の狙いはこのレリック……守りきるわよ!」
「うんッ!」
「「はいッ!」」
新米たちはリーダーのティアナの指示で防御陣形から迎撃陣形にシフトする。
「だ、ダメですよぉ!みんなは防御陣形でって言われたじゃないですかぁ!」
リインは彼女たちの命を預かる上官として新米たちを制止させようと声を張り上げる。
しかし、リーダーのティアナは聞く耳を持たない。
「何を言っているんですか!守っていたら負けます!スバル!クロスシフトA!行くわよ!」
「OK!ティア!エリオとキャロはレリックをお願い!」
「はい!」「任せて下さい!」
「行くよ!マッハキャリバー!」
『了解!相棒!』
「ウイング……ローーード!!!!」
ティアナとスバルはエリオとキャロのペアにレリックを任せるとリインの制止を無視して向かってくるサーシェスに向けて攻撃を行った。
「喰らいなさい!クロスファイヤーシューート!」
ティアナの放ったオレンジ色に光る多数の魔力弾が先行するスバルに先立ちサーシェスに向っていく。
「チッ!またかよ。これじゃあ、リニアの無駄になるか……」
そう言うと、サーシェスは迫り来る魔力弾を機体制御のみで避けてしまった。
「そんな……アイツ、私の魔力弾を全部……ッ!!?」
唖然としているティアナ。
「任せて!あとは私が……ッ!」
スバルは渾身の右ストレートをサーシェスに放つ。
「意気がるなガキが!チョイサァァッ!!!!」
サーシェスは瞬時に人型に変形するとすれ違いざまに彼女の一撃を躱す。
そして、彼女の攻撃へのお返しと言わんばかりに右腕をあられの無い方向へ思いっきりへし折った。
「うわあぁぁぁぁッ!う、腕がぁぁぁぁッ!」
腕を折られたスバルはあまりの激痛からその場にうずくまってしまう。
「スバル!」
なのはが叫ぶ。
「あぁぁ…そんな………」
「「スバルさぁぁん!」」
「私のせいなの…私がリイン曹長の指示を無視したから……」
ティアナの顔色がみるみる内に青ざめていき、彼女の手からは銃型のインテリジェントデバイス“クロスミラージュ”がこぼれ落ちる。
サーシェスはスバルの戦力を完全に奪い、三度変形すると、戦意を失って呆然と立ち尽くすティアナの側を素通りし、レリックを持つキャロのもとへ向かった。
「きゃッ!」
「キャ、キャロ!」
「お嬢ちゃん、そのケースを大人しく渡せ。」
サーシェスが怯えるキャロに近づく。
「止めろ!キャロにそれ以上、近づくな!」
声の方のした方をサーシェスは見る。
そこには、赤毛の少年が槍型のデバイスをサーシェスに向けている姿があった。
「ククク……笑えるねェ。王子様気取りってか?」
「本気だぞ!」
エリオはサーシェスを睨み付ける。
「おお……怖い目だ。だが、足が震えているぞ?」
次の瞬間、サーシェスはエリオの右太股をリニアライフルで撃ち抜いた。
「うわあぁぁぁぁッ!」
その場に倒れるエリオ。
「力もねぇのに出しゃばりやがって……坊主、少しは空気読めって言うんだ。さてと……お嬢ちゃんもう一度言う。ケースを渡せ。コイツみたいになりたく無かったならな?」
「ダメですぅ!キャロには指一本……」
「うるせぇハエだ……」
リインを裏拳で弾き飛ばす。
「きゃあ!」
「リイン曹長……ッ!」
「さあ、渡せ……」
恐怖に駆られたキャロは小さく返事すると、レリックの入ったケースをサーシェスに手渡した。
「素直な子だ。その姿勢嫌いじゃないぜ……」
サーシェスは、桃色の髪の少女キャロからレリックの入ったケースを受け取ると、そのまま空の彼方に飛去っていく。
「コレがレリックか…意外と重いな…」
サーシェスはレリックの重みを実感している。
すると後ろから声が聞こえて来た。
「待ちなさいッ!アナタを管理局重犯罪法違反で逮捕します!」
「何だ?後ろから声がする…」
サーシェスが後方を確認すると、彼を猛追するフェイトの姿があった。
「ほう、金髪のお嬢ちゃんか。俺のスピードに付いてくるとは大したもんだ……」
サーシェスは主翼を後ろ方向に折りたたみ、高速巡航形態になると、一気に加速しフェイトを突き放して空の彼方に消え去っていった。
「くッ!速すぎる……シャーリー、そっちで奴を追える?」
フェイトはアベルの追跡を諦め、六課隊舎の作戦室で広域スキャンをしていたオペレーターのシャリオ・フィニーオ一等陸士に託す。
『はい!バッチリ出来てますよ!フェイトさん!』
フェイトのもとにシャーリーから、サーシェスを追跡していたスキャン映像が届いた。
『フェイトさん達を襲撃した犯人は只今、マッハ1.2で西の方角へ逃走中……あ、ダメです!反応が消えました……』
彼女の言うとおり、サーシェスの反応はすぐにスキャン映像上から消失する。
唯一の頼みの綱であった広域スキャンも無駄になってしまった。
そして、この事件が事実上の初陣であった六課とその新米フォワード達は初任務が失敗に終わり、部隊長の八神はやては地上本部からかなりのバッシングを受けるのだった。
次回に続く。