川の真ん中に建てられた3階建ての建物。綺麗と呼べるほどの外見では無いが、その造りは並の災害には耐えれるようしっかりしている。
土手と建物を繋ぐ橋を渡れば、扉の上の壁に玉狛のエンブレムが描かれている。
ここは玉狛支部。その建物の入口に、千歌と曜は立っていた。
「いつ来てもここは慣れないなぁ」と千歌は小声でそう呟いた。千歌も曜も一応本部出身である。ただ、出身というだけで、基本的にはどこの派閥にも入らずプラプラとしているが…実際に部隊を組んで無いのもぶっちゃけ派閥関係のしがらみが面倒っていう理由であったりしなくもない。
とはいえ、そういう隊員は意外といる。特に加古さんや朝香さんなんかは、その典型的な例だ。
「ヨーソロー!」
そう言いながら扉を開ける曜の後に続くと、そこにはカピバラがいた。
もう一度言おう。カピバラが、いた。
更に言うと、そのカピバラは子供を乗せていた。
「あ、陽太郎久しぶり〜」
「ひさしぶりだな、よう、ちか。うちにはいるきになったのか?」
「違うよー月ちゃんに呼ばれて来たんだ」
「・・・そうか」
と、フランクに話す曜とカピバラに乗って落胆している陽太郎が話をしていると奥の方から帽子を被った月ちゃんが姿を見せた。
「ごめんね曜ちゃん、呼びつけるみたいな事をして」
「全然大丈夫だよーなんたって月ちゃんはS級隊員なんだから」
と曜は少し揶揄うような口調でそう言葉を返した。
と、ここでS級隊員について少し解説的なものをしよう。
S級隊員とは黒(ブラック)トリガーを所持するボーダー隊員の階級である。A・B・C級のヒエラルキーから外れランク戦にも参加できない、黒トリガー所持者のための例外的な階級である。
基本的に単騎での戦闘が前提となるためチームを組むことはない。
桁違いの性能を有する黒トリガーだが、ボーダーが製造したトリガーではないため緊急脱出(ベイルアウト)の機能は付いていない。撃破された場合には生身と黒トリガーそのものを敵前にさらす事になるため、性能に比例して高いリスクを抱えている。
現在ボーダーに所属しているS級隊員は渡辺月と高坂真澄、上部尋代の3人である。閑話休題……
「そういえば月ちゃん、どうして千歌ちゃんも玉狛に呼んだの?」
「あぁ、今日は桐絵ちゃん達が居ないから夕飯でも一緒にどうかなって」
と答える月に対して千歌は内心なんとも言えない違和感を感じていた。
その後、千歌達は途中で作戦室から出てきた栞ちゃんと雷神丸に乗ってきた陽太郎を含めた5人で月特製ピザを談笑しながら平らげた。
食事を終えて栞ちゃんが流しで皿を洗っていると月ちゃんがおもむろに口を開いた。
「ここからが本題になるんだけど……」というと一度言葉を切り深く息を吐いた。
「千歌ちゃん、曜ちゃん、チームランク戦に参加しないかい?」
どのくらいの間静寂が居座っていただろう。
恐らく栞ちゃんが「どうしたの?」と声をかけてくれなければずっと固まっていたのではないだろうか。
千歌と曜は想定外の話の展開に頭の整理が全く追いついていなかった。
先に再起動したのは千歌だった。
「え、どういう事なの月ちゃん?なんでチームランク戦? 」
「いやー本部からの指示でね。トリオン兵撃破数No.3の肩書きを持つペアの実力は放っておけないのよ。それにね千歌ちゃん。曜ちゃんと協力して他のチームと戦ってみるのは楽しいと思うよ?それに2人なら大丈夫だって。僕のサイドエフェクトがそう言ってるから。」
そう言われ千歌は玉狛に来る前に感じていたモヤモヤが胸の中から消えるのを感じた。
そして曜に向かって
「曜ちゃん!チームランク戦に出よう!!」
と言い放った。
だが曜は未だ処理が追いついてないのか何故か表情が明るくなかった。
「でも千歌ちゃん。チームランク戦って事は戦う相手には、あの果南ちゃんとかも居るってことだよ?」
という曜に対して千歌は思いっきり曜の両手を掴んだ。
「それはソロランク戦と同じ事だよ。いずれは越えないといけないわけだし。大丈夫!曜ちゃんがいてくれるなら千歌は、千歌達は勝てるはずだって!!」
と目を輝かせながら答えた。
その目にやられたのか、はたまた観念したのか曜は「千歌ちゃんがそう言うなら…」と苦笑しながらそういった。
「でもオペレーターはどうするの?当てはある?」
と曜が千歌に聞くと顎に手を当てながら「そこなんだよね……あははは……」と返ってきた。
「月ちゃんは誰かフリーのオペレーター知らない?」
「ごめんね曜ちゃん。本部のオペレーターに関しては僕あんまり詳しくないんだ…。」
と月が答えると3人になんとも言えない空気が漂った。
だが、この空気を振り払ったのはやはり栞ちゃんであった。
「安心して2人とも!さっき心当たりのある1人に声掛けておいたよ。明日のお昼頃なら空いてるっていう話だから本部食堂に12時集合ね!」
と言い放ちメガネをクイッとさせた。
「ありがとう栞ちゃん!」
「何のなんの。本当は私が千歌ちゃん達と組みたいって気持ちもあったけど、今は玉狛第一のオペレーターだから出来ないし……せめてこれくらいはしてあげたいなって。だからね、2人とも。チームランク戦楽しみにしてるよ!」
と少し照れくさそうに言う栞に2人は思わず抱きついていた。その3人の目には少しばかり光るものがあった。
次回予告
千歌と曜が食堂で待っている所に栞が引き連れて現れた人物とは!?
S級隊員
渡辺月/高校生/15歳
4月10日生まれ
ブラックトリガー︰???
サイドエフェクト:未来視
眼前の人のほぼ確定している未来(実現の可能性が限りなく高い未来)は、年単位で先まで見える。ただ、予知で介入する事が出来る「不確定な未来」は、かなり近い未来迄しか見えない。
parameter ()は通常トリガー装備時
トリオン 35(12)
攻撃 20(9)
防御・援護 15(7)
機動 15(7)
技術 10(6)
射程 15(4)
指揮 7(7)
特殊戦術 8(3)
total 125(55)
好きなもの バイク 暗躍 制服
旧ボーダー時代、少なくとも8年以上前から所属する最古参の隊員のひとり。
現役隊員では小南桐絵に次ぐ古株である。
隊員に対する面倒見が良く、未来視のサイドエフェクトを使い今日もどこかで暗躍中。
「僕のサイドエフェクトがそう言っている」が口癖。
過去にネイバーに母親を殺されているが、ネイバーフッドとの関係は融和派で玉狛支部に属する。
本部においてもその実力は評価されており彼が動くと場の空気が変わるほど。
色々な制服に目が無く制服姿でボーダー基地に来る子達にナンパ紛いの事をしているとかなんとか。
戦闘においても未来視をいかんなく発揮し驚異的な回避能力と先読みで圧倒的強さを持つ。
ボーダーが公に出るより以前から所属しており、かつては松浦果南と個人(ソロ)ランク1位を争っていた。
アタッカー用トリガーであるスコーピオンは、
迅が太刀川に勝つためにエンジニアと共に作り上げたトリガーである。
また、彼女の愛用バイクはホンダ・エイプ100の2008年仕様である