スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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13話 鈴原トウジ

 使徒が出現してから15分が経過した。

 東京都内では、懸命な避難活動が続いていた。

 都内には約400か所の地下シェルターがあるが、約1000万人の都民を避難させるには足りない。

 そこで、自衛隊は使徒の進行方向およびその周辺に限定して、住民の避難を進めていた。

 しかし、インターネットが支配するこのご時世、すべての者が使徒出現の情報を得ることができた。

 

 それによって、都内はいたずらに混乱していた。

 使徒進行方向とは真逆のエリアの都民たちも狼狽して地下シェルターに走っていた。

 そのため、非難は思った以上に送れる形になってしまった。

 

 その煽りを受ける少年たちがいた。

 鈴原トウジは学校からの帰宅途中で使徒と出くわし、結果電車が途中で止まる事態になってしまった。

 満員電車だっただけに、車内は騒然としていた。

 

「おい、どないなっとんや。なんで止まったんや?」

「なんか緊急事態宣言が出たらしいよ」

 

 トウジの隣に立っていたケンスケが言った。

 

「緊急事態? 地震でも起きたんか?」

「わからないけど、ネットでは巨大ロボットが現れて町で暴れてるらしいって」

「ロボットって、戦争は終わったはずやろ」

 

 一年戦争が終結して、日本はいつもどおりの日常を取り戻していた。国民の間に平和ボケが蔓延し始めたころに起こった事件だった。

 

「ほら、これ見て。動画サイトに上がってたよ」

 

 ケンスケはスマホ画面をトウジに見せた。

 映像は誰かが撮影したと思われる使徒が近くのビルを横切っていくシーンだった。

 

「なんやこれは?」

「わからないけど、けっこうやばい状態なのかも。もしかしたら、この辺までやってくるかも。だとしたら、何とかシャッターに収めたい」

「アホなこと言うとなるな。ここに来るんやったらやばいやんけ」

 

 まもなくして、アナウンスが入った。

 

「乗客の皆様にはご迷惑をおかけしております。いましばらくの間、電車は停車いたします。乗客の皆様にはこのまま静かにお待ちいただけるようご協力お願いします」

 

 アナウンスは努めて冷静だったが、乗客はそうではなかった。

 あちこちで不満の声がとどろいた。

 

 トウジは家族のことが心配になって、母親に電話を入れようとしたがつながらなかった。

 

「くそ」

 

 トウジは何度か掛け直したが、電話はつながらなかった。

 トウジには妹もいる。妹とも電話がつながらなかったので、兄として心配になった。

 

「やばいよ、トウジ。例のロボット、こっちのほうに近づいて来てるみたいだ」

「ほな、はよう逃げんといかんやろ。何しとんや、JRは」

 

 トウジがそのようにぼやくのと同じくして、あちこちで乗客から罵声が飛んだ。

 

「早くしろよ。なんかロボットがこっちに向かってきてるらしいじゃないか!」

「ロボット?」

「はやく何とかしろや!」

 

 乗客らのパニックは伝染して、押し合いになった。

 

 しばらくしてようやく電車のドアが開いた。

 

「乗客の皆様、申し訳ありませんが、電車はここでしばらく停車いたします。政府の要請により避難をしていただくことになります。乗務員の指示に従って静かに行動してください」

 

 そんなアナウンスも効果はなく、我先にと乗客たちが外になだれ込んだ。

 

「おわっ、アホか、押すなや!」

 

 トウジとケンスケは人々の雪崩に巻き込まれながらも外に転がり出た。

 

「乗客の皆さん、最寄りのシェルターまで誘導しますので、2列に整頓して歩いてついてきてください。なお、私語はご遠慮ください」

 

 乗務員がメガホンで声を張り上げたが、その声はまるで届かなかった。パニックになった乗客たちは乗務員を無視して避難路に走った。

 皮肉にも、慌てれば慌てるほど、避難路は混雑して、避難に時間がかかった。

 

 トウジらは何とか避難路から町中に降りることができた。

 そのとき、遥か先に使徒の姿が見えた。

 

「あれか、巨大ロボット」

「あれだよ。間違いないよ」

 

 ケンスケは使徒が見えるなり、恐怖心より好奇心に駆り立てられて、写メを取り始めた。

 

「か、感動だ。東京に巨大ロボット襲来。そんなSFみたいな光景をお目にかかれるなんて」

「アホなこと言うとる場合か。逃げるぞ」

 

 トウジはケンスケの手を引っ張って、人々が向かうのと同じ方向を急いだ。

 そのとき、使徒が前方の障害物を破壊するため、目から破壊光線を放った。

 

 前方の建物が大きくはじけ飛んだ。

 その音は遥か遠くにいる人たちの鼓膜に強烈に響いた。

 

「うわ、なんや?」

 

 振り返ると、とてつもなくまばゆい光が空にほとばしった。人々の悲鳴が重なり、あたりが混乱状態になった。

 

「死ぬ死ぬ、殺される!」

 

 パニックになった者たちが暴徒化して、目の前の人を殴り倒し、その体を踏みつけて逃げ始めた。

 トウジも暴徒化した男に突き飛ばされて転倒した。

 

「アホ、何するんや!」

 

 しかし、パニックの中ではトウジの声は通らない。

 

「こんなとこにおったら人に轢きこされていまう。ケンスケ、人の少ないとこに行くぞ」

「いやでも、シェルターはこっちだし」

「どっちみち全員は入れんやろ」

「そうだな」

 

 トウジとケンスケは人気のない道をどんどん進んで、やがて右も左もわからなくなった。

 

「はあはあ、ここはどの辺や?」

「新宿三丁目あたりみたい。ここからだと、2キロ先にシェルターがあるけど、そこも満席になってそう」

「それやったら、もうここでジッとしとったほうがええんちゃうか?」

「そのほうがいいかもな」

 

 いたずらに走り回っても事態は良くならない。二人は人気のなくなった商店街のベンチに座った。

 遠くで何かが爆発する音がこのあたりまで響いてきた。

 

「しっかし、現実にこんなことに巻き込まれる日が来るとはな。実際、こういうことになると焦ってしまうんやな」

「どうなってしまうんだろ。このまま東京は滅んでしまうかも」

「東京がどうなってもええけど、あかん、おふくろにつながらん」

 

 トウジはもう一度電話を入れたが、やはりつながらなかった。

 

「トウジのお母さんって軍事会社の事務員だったっけ? だったら安心だよ。自前の社員用のシェルターもあるだろうし」

「おふくろが無事だったとしても妹が心配や」

「そっか、たしか隣町の中学校だったよね。学校にいるなら、学校のほうで避難してるんじゃないか?」

「そやったらええけど、心配や」

 

 トウジは妹想いだったので、いてもたってもいられない様子だった。

 

「ここにおってもしゃあない。無事かどうか確認しに行く」

「おい、待てよ。勝手に動いたら危ないぞ」

「どこにおっても変わらん。おれは行く」

「ったく、じゃあおれもついて行くよ」

 

 ケンスケはトウジの後を追いかけた。

 

 ◇◇◇

 

 都民が非難にあくせくしている間、ミサトは使徒殲滅のための作戦を立てていた。

 

「ATフィールドの中和幅はわかった?」

「推測ですが、初号機の場合で2200から2800の間ぐらいで中和可能だと思われます」

「中和して至近距離から爆撃すればいけるわけね。まあでも、シンジ君には荷が重いか……」

 

 ミサトの配下には豊富な戦力が揃っているが、実戦で使える戦力は思いのほか少なかった。

 エヴァ零号機は封印中で、即座の実戦配備はできない状態。

 エヴァ初号機はメインパイロットのシンジが戦えるレベルにない。

 

 ATフィールドを搭載した相手となると、モビルスーツやモビルアーマーによる迎撃も現実的ではなかった。

 

 必然的に、マジンガーZによって力づくで殲滅するしか選択肢がなかった。

 ミサトは作戦内容をみんなに伝えた。

 

「マジンガーZによる殲滅作戦を実行します。エリア17、A-3まで対象を誘導。アッシマーを援護につけて、マジンガーZを対象の懐に突貫させます」

「了解」

 

 ミサトが立てた作戦は最良のものと言えた。しかし、とあるスタッフがもう1つの選択肢について言及した。

 

「エヴァ初号機による中和攻撃も有効と思われます。エヴァ初号機はどうしますか?」

「そうしたいのはやまやまだけど、パイロットがまだ実戦に耐えれないわ」

 

 シンジはこの間まで民間人だった新米。さすがに新米を作戦のメインにはできなかった。

 

「でも一応待機させておいたほうがいいか」

 

 戦力として期待はできないが、使える戦力は出来る限り活用するのが戦争の基本だ。

 ミサトはボスに連絡を入れた。

 

「おうおう、ミサトさんか。いったいどうなってんだ? 世間はおかしなロボットが出たと騒いでいるようだわよ」

「詳しいことは後で話すわ。ボス君、いまどこ?」

「展望台だわよ。シンジも一緒だぜ」

「今すぐこっちに来てくれる? ボロットの出撃準備がいま進んでるところだから」

「なにー? ついに俺様の出番か? オッケーイ、任されよう」

 

 ボスは勇ましい顔になった。

 

「シンジ、戦いの時が来たぜ」

「え、戦い?」

「そうだわさ。英雄になれるチャンスよ。急ぐぜ」

「あの、戦いって?」

 

 よくわからなかったが、シンジはボスについてネルフ本部を目指した。

 

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