スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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14話 無言の再開

 第一使徒はネルフ本部に向けてゆっくりと歩を進めていた。

 使徒は基本的に自分の進行を妨げるもの以外は無視した。一方で、進行を阻止しようとするものには破壊光線を繰り出した。

 

 ミサトは無人機をいくつか繰り出して、使徒の攻撃パターンを分析した。

 無人機を使徒の前方に繰り出して攻撃させた。

 すると、使徒は例によって破壊光線を繰り出して、無人機を大破させた。

 

「目に留まらない速さね。マヤ、速度はわかった?」

 

 ミサトはオペレーターのマヤに尋ねた。

 

「点滅から大破までの時間から、220000m/sと推測されます」

「ほとんど光速と同じってこと? とんでもない攻撃ね」

 

 ミサトは眉をひそめた。そんな速度の攻撃は今まで経験したことがなかった。

 

「攻撃距離も知りたいわね。陸型巡航ミサイルの用意をお願い」

「わかりました」

 

 マヤはミサトの命令に要領よく応えた。リツコの部下として配属されたばかりの新卒という話だったが、即戦力の優秀な仕事ぶりだった。

 

「エリア16、A19より射出可能です」

「オッケー、使徒がX76と重なったら射出して」

「了解」

 

 使徒がある地点に到達すると同時に、巡航ミサイルが放たれた。

 この巡航ミサイルは対象をホーミングして高速で飛ぶ。核爆弾を搭載することもできるが、今回は爆弾は搭載せず、あくまでも使徒の動きを測るために使われた。

 

 ミサイルは放物線を描くように飛び、使徒を捉えると、まっすぐと向かった。

 使徒は距離約15キロのところで巡行ミサイルを探知したようであった。

 使徒はミサイルを捉えると、破壊光線で破壊した。

 

「ミサイル大破」

 

 ミサイルが撃ち落されることは計算のうちだ。

 これにより、使徒の索敵能力をおおよそ推測することができた。

 

「対象は直進距離14,42キロで反応したようです。攻撃パターンは過去のものと同じ傾向で、人が操っているような誤差が見られませんね。対象は無人機の可能性が高いです」

 

 マヤは速やかに色々なことを推測した。

 

「人が乗ってないなら、容赦なくぶっつせそうね」

 

 ミサトはすぐに甲児に連絡を入れた。

 

「甲児君、今から敵の情報を送るから確認して」

「了解」

 

 ミサトは甲児のコックピットにいくつかの情報を送った。

 敵の攻撃パターンや射程、動きのクセなどが長文で送られてきた。甲児はさらさらと飛ばし読みした。それでも十分に理解できた。

 

「ミサトさん、敵さんはずいぶんと冷静沈着な野郎ですね。ミケーネの機械獣じゃあないですよ」

「そうね、ミケーネが送り込んできたわけではなさそうね」

 

 ミケーネ帝国の刺客という線は薄れた。では、使徒は何者か。気になることだったが、いまは使徒殲滅を優先する必要があった。

 ミサトは敵の索敵能力などを考慮して以下の作戦を立てた。

 

「予定通り、エリア17、A-3にてマジンガーZにより使徒を迎え撃つわ。無人弾幕機2機をサポートにつけるわ。一機はマジンガーと同時に発射。もう一機はA-6より射出。パターン6、高度は4450フィートでハイ」

「了解。発射準備に移ります」

 

 ミサトが立てた作戦はセオリーに忠実なものだった。誰の目にも最善の作戦に見えたが、ミサト自身は不安を感じていた。

 未知の敵だけに、セオリーが通用するかわからない。

 ちょうど、そのときに、ボスとシンジが本部にやってきた。

 

 シンジはオペレーション室に入ったとき、その広さに圧倒された。背景で、英語のアナウンスがこだましていて、緊張感が感じられた。

 シンジは周りを見渡しながら、やがてその目線はゲンドウのほうに向いた。

 

「父さん」

 

 シンジは父親の横顔をしばらく見つめていた。

 父親を見るのは久しぶりのことだった。父親のことは好きではなかったが、久しぶりに姿を見ると、少し懐かしい気持ちになった。

 ゲンドウはシンジの視線には気づかず、まっすぐとモニターを見つめていた。

 

 ミサトが二人のもとに駆け付けた。

 

「ありがとう、来てくれたのね」

「いつでもボロットで出られるわさ」

「いま、エリア17、A-1にボロットを待機させてるわ。いつでも出撃できるように待機お願いできる?」

「了解。俺様がどんな野郎も木っ端みじんにしてやるだわさ」

 

 ボスは闘争心を目に秘めて、オペレーション室を駆けだしていった。

 エリア17までは20キロの距離があるが、ネルフの地下にはターミナルがあり、東京全域とつながっている。20キロの距離をわずか1分で移動することができる。ボスはターミナルに急いだ。

 

「シンジ君は私の隣にいて」

「あの、僕も戦うことになるんでしょうか?」

 

 シンジは不安げにそう尋ねた。ネルフに来てまだそんなに長くない。いきなり戦えと言われても戦える状態になかった。技術的な面はもちろん、精神的な面もまったく足りていない。

 ミサトもそのことは良くわかっていたから、シンジを実戦に出すつもりはなかった。

 

「大丈夫よ、今回の作戦にエヴァは採用してないから。でも、実戦がどんな感じか見学してほしいの」

 

 ミサトはシンジに実戦の様子を伝えるために見学させることにした。

 シンジはミサトの後ろに立って、目の前のモニターを見つめた。

 

 モニターには、使徒が進軍する様子が映し出されていた。

 画面越しからでも、使徒の威圧感が伝わってきた。

 オペレーターが色々な情報を伝えたり、色んな施設と英語で連絡を取る声も聞こえてきて、シンジは嫌でも緊張することになった。

 

「今、弾幕機の準備が進められてるわ。人工知能パイロットで勝手に攻撃してくれるのよ」

「あの、無人で出来るなら、人が乗らなくてもいいんじゃないですか?」

「いい質問ね。もちろん、それがベストだけど、人工知能の操縦はあくまでも機械的で、いくつかのパターンでしか操縦できないの。だから、敵の動きを見ながら柔軟には働いてくれないわ。それに、ジャミングに弱くて、一度かく乱されると、おかしなパターンを取るようになってしまうの。最悪、味方機を敵機と誤解して攻撃しちゃったり。だから、人工知能はあてにはならないわ」

 

 ミサトは簡単に人工知能の脆弱さを説明した。

 

「指揮官の間では、完ぺきなAIより犬の操縦って格言もあってね。敵機からすると、AIの操縦パターンは読みやすいし、悪用もされちゃう。ハッキングされて乗っ取られるってことも何度も起こってるしね」

「はあ」

 

 シンジは狐につままれたような顔をした。

 

「だから下手なAIより新米のシンジ君のほうが計算できる戦力なのよ」

「僕は無理です」

 

 シンジは両手を振った。

 

 そうこうしていると、準備が整った。

 

「葛城三佐、弾幕機、スタンバイオッケーです」

「了解、使徒の移動パターンを毎秒で足跡として残してくれる?」

「了解、レーダーにスタンプを配置します」

 

 ミサトはレーダーを横目で見た。ミサトは一目で、レーダー上のあらゆるものを理解することができた。シンジが見ても、光が点滅しているようにしか見えないが、ミサトの目で見れば、色んなことがわかった。

 

「高低差で、進行方向をわずかに変えてる?」

「はい、下りに入ったところで、高低差が緩やかなところを選択して移動しているようです」

「だとすると、目的地には若干右回りする可能性があるわね。何とかその性質を利用できないかしら」

 

 ミサトは使徒の細かいパターンにも注目した。

 

「索敵能力にも影響しているかもしれないわね。もう一度無人機を送ってくれる。高度7000フィートで」

「わかりました」

 

 シンジは蚊帳の外から、彼らの仕事ぶりを見ていた。まるでついていけなかった。場違いを感じてしまい、少し居心地が悪かった。

 振り返ると、ゲンドウの姿が見えた。一瞬だけだが、目が合ったような気がした。しかし、ゲンドウはシンジを無視して、戦況を見守るばかりだった。

 

 このまま、ここで見ているだけというのが少し辛かった。

 みんなが頑張って仕事をしている中、自分だけはこうしてぼさっと立っていると悪い気がした。

 かと言って、エヴァに乗って戦えるわけでもない。シンジは何もできない自分に無力さを感じながらも、そこにとどまるしかなかった。

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