スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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17話 初実戦

 シンジはミサトと共にネルフの地下にやってきた。

 ネルフの地下は東京全域をターミナルで結んでいる。時速400キロのリニアを使うことで、数分で東京のあちこちに異動することができる。

 シンジはエヴァ初号機の待機場所に向かうためリニアの座席に座った。

 

「大丈夫。こっちでバックアップするから、肩の力を抜いてリラックスして」

 

 ミサトはそう言ったが、実戦経験のないシンジには難しいことだった。

 

 ミサトはリニアの扉が閉まったのを確認すると、発進の合図を送った。

 すると、リニアは猛スピードで地下通路を走り抜けていった。

 ミサトは作戦を指揮するために、オペレーションルームに戻った。

 

 リニアは約1分で目的地にたどり着いた。あっという間だったが、シンジはその時間をとても長く感じていた。

 緊張感から、体全体が小さく震えていた。恐怖心はなかったが、シリアスな空気感が強く感じられた。

 リニアの扉が開くと、スタッフが3人待っていた。

 

「碇シンジ君、こっちだ」

 

 シンジはリニアを降りるとスタッフについて通路を進んだ。

 通路の先にはエヴァ初号機があった。発進準備は整っていて、パイロットが入ればすぐに出撃できる状態だった。

 エヴァを見ると、より不安感が高まった。

 こういうとき、ミサトにいてほしかった。

 スタッフには顔なじみがおらず、それがシンジの不安感をより高めた。

 

「エントリープラグ開放します」

 

 アナウンスと同時にエントリープラグが開放された。

 シンジは誘導されるがままにコックピットに座った。

 起動実験の時とは違う緊張感があった。しかし、これから使徒と戦うことになるという実感はあまりなかった。

 

 自分は本当に今から使徒と戦うことになるのだろうか?

 

 実感はなかった。しかし、体は実感しているのか小さく震えた。

 しばらくすると、ミサトから通信が入った。

 ミサトの声を聞くと、少しだけ安心することができた。

 

「シンジ君、まずはリラックスして。深呼吸よ」

「はい」

 

 シンジは深呼吸を1つした。気休め以上の効果があったような気がした。

 

「この前の起動実験の時のことを思い出して。落ち着いて1つ1つの動作に集中していればいいから。あとはこっちから指示を出すわ。難しく考えなくていいからね」

「はい」

 

 ミサトがバックアップについているのは心強かった。シンジにとっては大きな心の支えになった。

 

「前にちょっとだけ説明したと思うけど、エヴァにはATフィールドというエネルギー障壁が搭載されているの。ATフィールドの展開条件は反射回路。例えると、目に虫が飛んで来たら思わず目を閉じるでしょ? それがATフィールドを発生させてエヴァを守ってくれるわ。逆に言うと、シンジ君が身の危険を感じなければATフィールドは展開されないの。だから、使徒を捉えたら、まっすぐ使徒を見つめて。目を閉じたり背けたりするとATフィールドが展開されなくなってしまうから」

「わかりました」

 

 シンジは顔を上げて前を見つめた。

 

「使徒もATフィールドを持っていることが確認されているわ。使徒を倒すためには、ATフィールドを中和しなkればならないの」

「中和? それはどうすればいいのですか?」

「陽子を用いてフィールドの電子配列を破壊するんだけど、それはこっちで調整するわ。シンジ君は使徒に近づいてくれれば大丈夫」

「わかりました」

「初号機にプログレッシブナイフが搭載されているから、シンジ君は使徒の胴体にナイフを突き刺せばオッケー。理論上、それで倒せる」

 

 シンジは武装選択オプションを開いて、プログレッシブナイフがあることを確認した。

 選択すると、武装の説明文が液晶モニターに現れた。

 

 プログレッシブナイフ

 

 加速した陽子をエネルギーに転化し、対象の装甲を貫き爆破させる。

 刃は全長2,26m。

 利き腕で握り、他方の手で添え、両手で扱う。

 装備後、ATフィールドを展開して対象に接近して使用する。

 使用エネルギーレベルは、タンクレベル13以上。

 消費エネルギーは陽子レベルにつき、表に定める。

 陽子レベル17の場合、15秒につき、タンクレベル1を想定する。

 陽子レベルはオペレーターの指示に従うこと。

 

 色々書いてあったが、シンジが単刀直入に思ったことは、ナイフではなく飛び道具のほうが安全ではないかということだった。

 ナイフだと、敵の懐まで接近しなければならず、危険ではないかと思ったが、シンジがそう思ってもしょうがない。

 

「時間みたい。シンジ君、今からLCLを注入するわ。この前と同じ要領だから」

「はい」

 

 LCLに入るのはこれで3度目。シンジもだいぶ慣れたところがあった。

 LCLがプラグに満たされたのを確認すると、シンジはゆっくりと息を吸い込んだ。問題なく、受け入れることができた。

 

「シンジ君、90秒後に発進するわ。モニターにタイマーが表示されてるはずだけど見える?」

「はい、見えました」

 

 シンジは87,9と表示された数字を見つめた。

 ミサトはシンジをいたずらに緊張させないよう、あえて「頑張って」という言葉はかけないようにした。

 

「シンジ君、ゆっくりリラックス。ゲームだと思って肩の力を抜いていれば大丈夫だからね」

「はい」

 

 とはいえ、シンジの体は嫌でも硬くなった。

 それは明確にシンクロ率にも現れた。

 

 リツコは測定されたシンクロ率を読み上げた。

 

「シンクロ率78%。碇シンジ君、さすがに緊張しているみたいね」

「無理もないわ。初めての実戦だもの」

 

 シンジと初号機のシンクロ率は99%を超える驚異的なものだった。しかし、いまは78%まで低下していた。

 緊張、不安などで、スポーツ選手が本来の力が発揮できないように、シンジもいまはそれに似た状態だった。

 

 ミサトの仕事は実戦までにシンクロ率を少しでも上げることだった。

 

「シンジ君の好物ってなに?」

「え?」

「好きな食べ物。この任務が終わったらみんなで食べに行きましょ。ちなみに私はお酒が飲めればなんでもいいクチだけど」

 

 ミサトはそう言ってほほ笑んだ。

 

「えーっと……僕は別に何でもいいです」

「じゃあ、奮発してシャンベルタンをおごってあげるわ。高級ワインよ。パートナーにはビーフシチューね。私のおすすめの店があるからそこに行きましょ」

「あの、僕、未成年ですけど」

「堅いこと言わなくていいのよ。ガーッと行っちゃえばいいのよ」

「いや、でも……」

「いいからいいから、楽しみにしてなさい」

「は、はい、それじゃあ」

 

 見ると、シンクロ率は81,6%まで上がっていた。一定の効果はあったようだった。

 エヴァを用いた任務におけるシンクロ率の推奨は60%以上。80%は十分な数字だった。

 とはいえ、実際に使徒と直面したときに、その水準のシンクロ率を維持できるかはわからない。

 

「葛城三佐、エヴァ初号機、発進準備整いました。いつでもいけます」

「オッケー、さっそく発進するわ。リフトアップ準備」

「リフトアップカウントダウン、入ります。5、4、3、2、1……」

 

 ミサトはカウントダウンに合わせて宣言した。

 

「エヴァ初号機リフトアップ」

 

 初号機を乗せたリフトは勢いよく上昇して、あっという間に地上にたどり着いた。

 シンジの目の前に青空が広がった。

 

「いよいよか」

 

 シンジは緊張感をより高めた。

 

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