スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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19話 暴走

 シンジは夢うつつの中にいた。

 使徒の攻撃による激痛で意識がもうろうとしていた。

 

「ここは……?」

 

 シンジはぼやける視界の中、不思議な光景を見ていた。

 

 目の前に自分がいた。

 子供のころの自分。

 子供のシンジは無邪気に誰かの引っ張っていた。

 

「かあ……さん……?」

 

 シンジは思わずそう問いかけた。すると、夢の中の母親が微笑みかけてくれた。

 

「母さん……」

「大丈夫よ、そのまま楽に……あなたのことは私が守るから」

「……」

 

 シンジはゆりかごの中のような心地よさを覚えて、そのまま目を閉じた。

 

「初号機、覚醒しました!」

 

 マヤが狼狽気味に言った。

 

「覚醒?」

 

 ミサトはモニターを凝視した。

 

 たしかに、エヴァ初号機は立ち上がっていた。

 使徒の2度の攻撃でボロボロになり、エネルギータンクが機能しなくなっているはずだ。理論上ありえないことが起こっていた。

 

 覚醒した初号機は獣のような咆哮を上げた。

 

「どういうこと? 予備電源がまだ生き残ってるの?」

「いえ、回路が完全に遮断されています。理論上、動けるはずがありません」

「でも、現に動いているじゃないの」

 

 誰の目にも初号機は動いていた。

 科学者一同、理論的にありえない光景に困惑していた。

 誰しもが困惑する中、ゲンドウと冬月だけは平然としてモニターを見つめていた。

 

「碇」

「ああ、間違いない」

 

 ゲンドウは覚醒した初号機を見てにやりと笑った。

 

「おはよう、ユイ」

 

 ゲンドウはそのようにつぶやいた。

 

 覚醒した初号機は赤く輝く瞳で使徒を見据えた。

 初号機の体はすでにボロボロだ。装甲の70%が破損しており、エントリープラグにも熱エネルギーが介入していた。パイロットの命も危うい状態だったが、初号機は力強く左上でを天に突き上げた。

 

 その左腕は一瞬で復元された。

 

「ふ、復元されました」

「復元? どういうことよ。DG装甲は動力部にしか使われてないはずでしょ?」

 

 ミサトはリツコに尋ねた。

 

「そうよね、リツコ」

「ええ、間違いないわ」

「じゃあ、どうして復元できるのよ?」

「私にもわからない。DG細胞の一部が変異を起こして金属を汚染したのかも」

 

 リツコに言えることはそこまでだった。

 想定外の状況だけに、どう対応していいかわからない。

 ミサトはともかくシンジに通信を入れた。

 

 しかし、通信不能だった。

 

「ダメね、シンジ君とは連絡がつかない」

「使徒内部にエネルギー反応。攻撃きます」

 

 使徒は覚醒した初号機にめがけて破壊光線を撃ちだした。

 目にも留まらぬ攻撃だったが、エヴァ初号機は完全に見切っていたのか、タイミングよく左腕を前に突き出した。

 

 発生したATフィールドが使徒の破壊光線をはじき返した。

 その破壊光線は使徒の装甲にしたたかに打ち付けられた。

 激しい音と同時に使徒が後ろに転倒した。

 

「何が起こってるの? シンジ君が操縦しているの?」

 

 それはありえない。シンジにこんな操縦ができるはずがない。

 

 初号機は使徒の攻撃を跳ね返すと、ジグザグに鋭くステップして、使徒に飛び掛かった。

 この動作1つとっても、人間離れしていた。シンジが操縦しているはずがなかった。

 

「まるでアムロ・レイが操縦しているみたい。いったいどうなっているの?」

「……」

 

 リツコは何も応えなかったが、初号機の動きから何かを感じ取っているようにも見えた。

 初号機は使徒に馬乗りになると、拳を次々と振り下ろした。

 使徒の抵抗を力でねじ伏せ、やがて使徒の首根っこを掴み、むしり取った。

 

「……」

 

 もはや見守るしかなかった。

 初号機は使徒が動かなくなった後もしばらくの間、使徒に攻撃を加え続けた。

 どちらが侵略者かわからないような光景だった。

 

 現場に駆け付けたボスはその光景を見て不気味さを覚えた。

 

「おいおい、シンジの野郎、本性はこんな獰猛な性格だってのかよ?」

 

 ボスも初号機には近づけなかった。

 しばらくして、初号機の目から輝きが失われた。

 ようやく、初号機は動きを止めた。

 こんな結末を迎えるとは誰も予想できなかった。

 

 しかし、使徒殲滅のミッションは成功という形になった。

 ミサトは嬉しそうな表情を作ることなく、ミッションの終了を宣言した。

 

「対象は完全に沈黙しました」

「ご苦労、よくやってくれた」

 

 ゲンドウは静かにそう言った。

 ミッション完了だが、そこに居合わせた誰しもが、しばらくの間沈黙していた。

 

 ◇◇◇

 

 ミッションは成功に終わった。しかし、ここからが忙しかった。エヴァ初号機や使徒の回収および、使徒襲来の被害状況の確認などの雑務もミサトらの仕事だった。

 ミサトはエヴァ初号機の回収に立ち会った。シンジの安否が心配された。

 

 エヴァ初号機の回収は、ボスの手によって行われた。ボスはマジンガーの救出からエヴァの回収まで、広く活躍することになった。

 

「装甲がドロドロに溶けちまってるわさ。シンジ、大丈夫か?」

 

 ボスはエヴァ初号機をリフトに乗せた。

 安否は不明だが、破損状況からすると、エントリープラグ内も高温にさらされている可能性が高かった。

 

 すぐに冷却が行われて、エントリープラグが摘出された。

 エントリープラグの外部は真っ黒に焦げていた。貫通はしておらず、LCLが漏洩しているわけではなかったので、LCLがシンジを守ってくれた可能性はあるが、中を確認するまではわからなかった。

 

 救助班は手際よくエントリープラグを切断すると、中からシンジを救出してタンカに乗せた。

 ミサトはすぐに駆けよった。

 

「パイロットの状況は?」

「外傷はなく、心肺機能は正常です。しかし意識がありません。強いショックを受けた可能性があります」

 

 ミサトはシンジの顔を見つめた。

 経験則から言うと、脳死状態ではない。軽い脳震盪程度で済んでいる可能性が高いと見た。

 シンジはすぐに緊急治療室に運ばれていった。

 

 ミサトは回収されたエヴァ初号機を見上げた。

 いまは完全に沈黙しているが、あのとき確かに覚醒した。

 

 エヴァはなぜ覚醒したのか?

 

 大きな疑問が残ったままとなった。

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