スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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第2話 一年戦争後のネルフ

 シンジは徴兵制度に則って、ネルフに配属されることが決まった。

 一年戦争後も、防衛省は定期的にパイロット候補生を徴兵する方針を固めていた。

 しかし、同時に18歳以上のみを徴兵するという方針を打ち出しており、シンジは例外的な徴兵だった。

 一年戦争では、多くの優秀な少年少女が徴兵され、彼らも戦場に送り込まれた。

 特に、米軍は一年戦争末期から、世論の反発を受ける形で戦場から多くの兵士を撤収。

 代わりに日本軍や独軍を戦場に投入した。

 

 シンジが例外的に徴兵された背景にはゲンドウの影響があった。

 これまで、シンジに一切の世話を焼かなかったゲンドウが突然このような形で世話を焼いてきた。

 シンジにはゲンドウの狙いがわからなかった。

 実の息子だからという理由で推薦したのかはたまた嫌がらせか。

 いずれにしても、ゲンドウは久しぶりにシンジに何かしらの干渉を行った。

 

 ネルフに徴兵された者には給与が支払われる。

 未成年のパイロット候補生には基本給として月額27万5000円が支払われる。

 世界的に失業率が高く、安定した雇用がままならない状況では、好待遇と言える。

 実際、一年戦争時代は、困窮した大学生から多くの志願兵が登場した。

 候補生から正規のパイロットになると、約109万円まで基本給が上がる。

 

 しかし、パイロットになるためには厳しい試験があり、当然シンジになれる世界ではないし、シンジもパイロットを目指す気などさらさらなかった。

 

 シンジの管理をすることになったミサトは手続きに追われた。

 ミサトはネルフの指揮官として一年戦争に参加した。

 西独軍の指揮を担当し、もっぱら相手はミケーネ帝国だった。

 配下には、ネルフ傘下の光子力研究所から派遣されたマジンガーZを筆頭に優秀なメンツがそろった。

 

 米軍最大のテスラ・ライヒ研究所からの支援も受け、グルンガストやゲシュペンストも投入された。

 ミサトの部隊は優秀であり、ミケーネ帝国のイラク侵攻を完全に食い止めた後、停戦合意の交渉において重大な貢献をもたらした。

 一年戦争終結後は日本に戻り、ネルフの軍編成の仕事に従事するようになった。

 

 ミサトはすさまじい量の書類を片付けた後、シンジに電話を入れた。

 

「シンジ君、いまどこ?」

「親戚のところです。言われたとおり、引っ越しの荷物をまとめているところです」

「そう、用意が早くて助かるわ。いま手続きが終わって正式にネルフに登録されたから、近日迎えに行くわね。都合が大丈夫な日教えてくれる?」

「僕はいつでも」

「じゃあ、えーっとね……四日後はどうかしら?」

「はい、わかりました」

「本当にそれでいいの? 学校の友達とお別れパーティーとか、そういうのあるんじゃないの?」

「いえ、僕には友達なんていませんから」

 

 シンジは淡々と暗い話をした。

 ミサトもこれからシンジを管理していくうえで、シンジの性格を良く見極めておく必要がある。

 見た目、根暗でおとなしい中学生という感じだろうか。

 こういうタイプにはあまり野暮なことは言わないほうがいい。ミサトはすぐにそう判断した。

 

「わかった。じゃあ、四日後に迎えに行くわね」

 

 ミサトは要件だけ伝えると、世間話などはせずに電話を切った。

 

「うーん、ちょっと扱いにくそう」

「例の碇司令の息子さん?」

 

 ミサトの隣にいる科学者の女性が問いかけた。

 彼女は赤城リツコ。ミサトと同期であり、光子力研究所を経て、現在はネルフの有力な軍事開発者となっている。

 

「まあ、金持ちのボンボンにありがちな偉そうなところがないから何とかなりそうだけど」

「責任重大ね。碇司令の息子さんとなったら粗末には扱えないもの」

「あんまりプレッシャーかけないでほしいんだけどね」

 

 ミサトはただでさえ問題児を何人も抱えている。そこに新たに要観察人物が加わるとなると、気が気ではなくなる。

 

「でも、なんで碇司令はシンジ君を候補生に推薦したのかしらね。パイロットなんて事故死のリスクだってあるし。コネを使えばもっといいポストぐらいいくらでも用意できるでしょうに。防衛省の管理職なんてコネの巣窟みたいなもんでしょ」

「どうかしらね。案外そういうところのほうが精神衛生上悪いかもしれないわよ」

「それは言えてるかもしれないわね。金目のものにしか興味ないおじさんばかりだし」

「それにかわいい子には旅をさせるって言うでしょ。楽なポストを渡すだけが親の愛情じゃないってことよ」

「知ったこと言うわね、おんなじ独身のくせして」

 

 お互い仕事に追われていて、結婚どころではなかった。

 一年戦争が終わったので、この先はそういう機会が出てくるかもしれないが、二人の場合は完全に仕事脳が染みついているところがあった。

 

「ところで、マジンガーZは結局どうなるの? 独軍に奪われちゃうわけ?」

「まだ未定。でも、碇司令はネルフ傘下に残したいと考えてるみたいだけど」

「ここは碇司令に頑張ってもらいたいところね」

「どうして? 西ドイツには愛するフィアンセがいるんでしょ」

 

 リツコはいたずらっぽく笑みを浮かべた。

 

「フィアンセじゃないわよ。わが人生最大の天敵よ」

「相変わらず仲がいいのね」

「わが人生の幸福のためにも、私は絶対に日本にとどまりたいわけよ。リツコ、あなたからも意見書を頼むわよ。大きいでしょ、リツコ先生の意見書の効果は」

「残念ながら何の効力もないわよ」

「エヴァンゲリオン開発の功労者じゃないの?」

「あいにく世の中の悪いおじさんたちは手柄を持っていく天才だから。一科学者が出世することは永遠にないのよ」

「嫌なおじさん連中ね、まったく。私もずいぶん手柄を持っていかれたわ」

 

 ミサトもリツコも一年戦争勝利の功労者であることは間違いなかったが、一年戦争で一番出世したのは、何もしていない軍の要人たちだった。

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