スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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20話 新たな舞台

 

 幸い、シンジのダメージは小さかった。その日の夕方、シンジは目を覚ました。

 

「碇シンジ君、わかるかな?」

 

 主治医がシンジに問いかけた。

 シンジはうなずいた。

 

「握力はあるかな? このペンを握ってみなさい」

 

 シンジは普通に握り締めることができた。

 

「うむ、大丈夫だな。脳波にも異常はない。しかし、しばらくは経過を見たほうが良さそうだ。あとでMRIも取りたい」

 

 主治医は看護師にその場を任せて緊急治療室を後にした。

 看護師の女性はシンジに微笑みかけた。

 

「よく頑張りましたね。あなたのお父さんから伝言を預かっています」

「父さんから……?」

「よく頑張ったって」

「頑張った……?」

 

 シンジには、ゲンドウがそのような言葉を口にするところを想像することができなかった。

 

「うん、本当にお疲れ様でした。あなたが日本を守ったのですよ」

「僕が日本を?」

「ええ、あなたが敵を倒さなければ、このあたりも攻撃を受けて壊滅していました」

「……」

 

 シンジには実感がなかった。自分が日本を守ったなんて信じられなかった。

 

「しばらくゆっくり休んでください、若きヒーロー」

 

 看護師の女性はそう言ってその場を後にした。

 ヒーローなんて言われたのは生まれて初めてだったから、どんな反応をしていいかわからなかった。

 

 それから1時間ほどした後、ミサトが甲児とボスを連れて、見舞いにやってきた。

 

「シンジ、見てたぜ。すげえな、一人で使徒を倒しちまうなんて」

 

 甲児は開口一番そのようにシンジをほめた。

 

「こらこら、病人相手に大きな声を出さない」

 

 ミサトは甲児を咎めて、椅子に座った。

 

「具合はどう?」

「大丈夫です。どこも異常ないって」

「そう。それは良かったわ」

 

 使徒の攻撃を受けたときはどうなるかと思ったが、幸いシンジは元気だった。

 

「しかし、シンジよ。お前に格闘技の心得があるとは思わなかったぜ」

 

 ボスが言った。

 

「え?」

「あのマウントポジションからの的確な打撃は俺様の次ぐらいの腕前だ。おい、どこで格闘技を習ったんだ?」

「いや、格闘技なんて僕はやったことないですよ」

「とぼけんな。ありゃあ、素人にできるもんじゃねえ。近くで見ていたら、恐怖さえ感じる徹底ぶりだわさ」

「いや、本当に僕は何も……意識を失ってて何も覚えてなくて」

「意識を失ってただぁ? なら、催眠拳法でも会得してるのか?」

 

 ミサトはそのやり取りを聞いて、首を傾げた。

 

 シンジは意識を失っていた。

 だとすると、あの初号機はやはりシンジではない何かによって操縦されていたと見て間違いない。

 

 しかし、いまはそんなことを考える局面ではない。

 

「ともかくご苦労さん。退院はいつごろ?」

「検査の結果を見ながら、三日後には退院できるっていう話でした」

「よっしゃ、そのときはパーティーだ」

 

 甲児は元気にそう言った。

 

 ◇◇◇

 

 そのころ、ゲンドウは冬月と共に科学者のチームと回収された使徒のパーツを調べていた。

 

「これがコアかね?」

「はい。エネルギー反応はここから生まれたものと推測できます。内部は見たこともない構造をしています」

 

 リツコがそのように説明した。

 

「ちょうど人の生命活動に酷似しています」

「なるほど」

 

 ゲンドウはコアのスキャンデータに目を通した。

 科学の心得のあるゲンドウはそのデータからあることをつかみ取った。

 

「なるほど、人の構造に似ているという話だったが、碇、これは間違いないな」

「ああ、最初の人間アダムと同じだ」

 

 ゲンドウはそれを確認すると、科学者らにその場を任せて去っていった。

 

 ミサトらに続いて、他にも色々な者がシンジの見舞いにやってきた。

 シンジと同じネルフ傘下のパイロットたちがたくさんやってきた。

 その中にはレイの姿もあった。

 レイはパイロットらに同行する形でやってきたので、シンジに直接話しかけることはなかったが、花瓶に花を1つ差していってくれた。

 

 しかし、ゲンドウが見舞いに来ることはなかった。

 看護師の話だと「よく頑張った」という言葉を伝言にしたそうだが、シンジはその言葉をゲンドウの口から直接聞きたかった。

 しかし、それは叶わなかった。

 

 ゲンドウの見舞いはなかったが、検査に異常はなく、シンジは首尾よく退院することができた。

 退院後、ミサトはシンジをネルフの展望台に連れて行った。

 

「いい景色でしょ」

「はい」

 

 シンジは高さ450mから地上を見下ろした。高層ビルのすべてが小さなものに見えた。

 

「紛れもなくあなたが守った世界よ」

「……でも、実感がないです」

 

 シンジはしばらく地上のすべてを

 

「もし、使徒を止めることができなかったら、このあたり2500棟は壊滅、民間人から800人以上死者が出ていたと試算されているわ。自信を持ちなさい、あなたは国を守った立派なパイロットなのよ」

 

 それでもシンジは実感できなかった。けれど、少しだけ誇らしい気持ちになった。

 シンジはずっとゲンドウのコネでネルフに連れて来られて、いやいやエヴァのパイロットになったと考えていた。自分は被害者だと考えていた。

 

 しかし、ミサトの言葉を受けて、自分は国を守るパイロットなのだという思いが少しずつ芽生えて来た。

 だから、シンジはミサトに次のように提案した。

 

「ミサトさん、僕に操縦を教えてください」

「……」

 

 シンジの突然の強い言葉にミサトは一瞬驚いた。

 

「国を守ったと言われても、僕自身は何もしていません。きっとエヴァの力のおかげなんだと思います。それじゃダメだと思いました。だから、ちゃんと操縦できるようになりたいんです」

「わかった」

「お願いします」

 

 シンジは頭を下げた。

 

「それじゃあ、シンジ君のその決心を称えて飛び切りやりがいのある訓練の機会を上げるわ」

 

 ミサトはさっそくシンジのために、話をつけた。

 

 ネルフはその傘下にいくつも部隊を持っている。

 日本海の国境を防衛する部隊に「北日本ネルフ特殊防衛隊」がある。

 ベテランパイロットであるバニングが部隊長を務める鬼の部隊である。

 

 

 この部隊は数々の名パイロットを輩出しているが、過酷で厳しいスパルタ指導で知られている。

 

 ガンダム試作一号機のメインパイロットとなり、宇宙戦線で活躍するコウや一年戦争で22機を落とす大車輪の活躍を見せたモビルアーマーの名手ラトゥーニなどを輩出している。

 

 ミサトはシンジをバニングの元に送り込むために話をつけた。

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