スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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21話 新境地へ

 シンジはネルフを離れるために始発の電車に乗り込んだ。

 

 行先は新潟の新潟空軍基地。

 

 新潟空軍基地は現在、ギガノス帝国との連絡地として使用されている。

 米軍と日本軍が共同で管理しているが、ネルフが約3割の資金を提供している。

 日本軍は米軍と違い、官中心で軍事施設が営まれる。99%以上の施設を民間企業に委託する米軍と違い、施設ごとにそれほど大きな違いがない。

 米軍が民間の軍事開発にかなりの自由度を持たせているのに対して、日本軍は基本的に防衛省の認可制だ。

 

 それゆえ、良くも悪くも管理が厳しい。

 エヴァ初号機開発計画も結局官民の内部抗争がきっかけで開発が遅れた経緯がある。

 米軍がグルンガストやビルトファルケンの開発を低コストで進めるなか、日本軍はエヴァ初号機開発だけに3兆円もかけてしまった。

 当初、エヴァ計画の予算は7500億円だったのだが、度重なる汚職も相まって、3兆円にまで膨れ上がってしまった。

 しかし、こうした厄介な体質にはメリットもある。

 

 米軍は予算の順守を厳しく言い渡されるが、日本軍は青天井だ。米国の場合、予算オーバーは議会から強い反発があるほか、国民の過激派が暴れる一因になるのでそこは厳しい。

 ところが、日本国はおとなしい国民性ということもあり、予算がオーバーしてもデモも起こらない。せいぜい、ネットに批判的な匿名コメントが溢れる程度だ。

 そのため、いくらでも湯水のように資金が提供される。

 

 潤沢な予算のおかげで、マジンガーZやエヴァンゲリオンなどの兵器が開発されたともいえる。

 マジンガーにせよ、エヴァンゲリオンにせよ和製兵器は非常に優秀で、コストパフォーマンス重視で作られる米軍兵器に比べ、金がかけられているだけあって高精度の力を持つ。

 

 こうした軍事的背景もあり、いまでは「質の日本軍」「量の米軍」と言われたりもする。

 米軍が量産機主体のコスパ重視型の方策を取る一方で、日本軍は1つのユニットに数兆円の資金をつぎ込んで精度の高いものを作り上げる。

 

 シンジはそんな最高クラスの兵器であるエヴァ初号機のパイロットに選ばれた身である。

 それはすごいことである一方で大きな責任がかかることでもある。パイロットに選ばれたとき、シンジは責任なんて感じていなかった。嫌々、エヴァに乗るという感じだった。

 しかし、使徒との戦いを経験し、シンジの中に責任感を芽生えていた。初号機のパイロットとしての責任を全うするために、シンジは新潟空軍基地を目指した。

 

 シンジは力強くうなずくと、電車に乗り込んだ。

 

 東北に向かうのは初めてのことだった。

 リニア電車はあっという間に都心を離れ、地下トンネルに入った。

 時速500キロ超で走るリニアを使えば新潟までは1時間とかからない。

 特に地下リニアが実用化されてからは新潟の基地まで直線でつながってより速くなった。

 

 途中、ミサトから長文のメールが届いた。

 寮のほうに必要な物資を送り届けたという旨の内容と、励ましの言葉がつづられていた。

 

 シンジはミサトの激励の言葉を頼もしく感じた。

 

 ややあって、甲児からもメールが届いた。

 

「土産を楽しみにしてるぜ」

 

 シンジはそれを見て口元を緩めた。

 

 リニアは新潟空軍基地の地下施設に到着した。

 降り立つと、騒音の響くエリアが広がっていた。

 無人フォークリフトが大きな荷物を抱えてあちこちを行き来していた。

 

 シンジは到着するなりイヤホンをつけた。

 

「こちら碇シンジです。ただいま到着しました」

 

 シンジは基地のスタッフにそう伝えた。イヤホンを使えば、騒音の中でも自由に通信することができた。

 

「ご苦労様です。そちらに使いの者が来ていると思いますので、9番通路のほうに向かってください」

「えーっと、9番……」

 

 シンジは見渡して大きな文字で「9」と書かれたところを発見すると、そちらに歩みを進めた。

 エリアにはたくさんのフォークリフトが行き来している。シンジは信号機を守りながら地面に描かれた白線の上を進んだ。

 9番通路のところにたどり着くと、幾人かの男が談笑していた。

 シンジに気が付くと、年配の男が手を振った。

 

「おう、こっちだ」

 

 シンジは男のほうに向かった。

 

「ここはうるさいだろ。こっちだ」

 

 男はシンジを通路のほうに誘導した。

 

「お前が碇か?」

「はい、よろしくお願いします」

「おれはサウス・バニングだ。階級は大尉。まあ、軍のことはわからねえと思うから好きに呼んでくれて構わねえ」

「よろしくお願いします、バニング大尉」

 

 シンジはそう言って丁重におじぎをした。すると、バニングは笑った。

 

「んなにかしこまらなくていい。うちは緩いところだ。今月に入って若いのが3人、飲酒運転で謹慎処分だ。おれが若いころなら火星に左遷されるか、最悪オホーツク海に沈められてるところだぜ」

 

 バニングはそう言いながらにこやかにほほ笑んだ。

 

「まあ、スパルタ指導なんてのもすっかりなくなっちまった。暴力を振るったなんて知れたら、それこそパワハラでクビが飛ぶ時代だしな」

 

 バニングはそう言いながら、シンジのほうを見つめた。

 

「しかし、あんたの保護者からは厳しくしつけてくれって通達されている。まあ、楽しみにな」

「は、はい。よろしくお願いします」

 

 シンジは少しびびりながらも頭を下げた。

 保護者というのはミサトのことだろう。

 

「碇司令の息子なんだってな。エヴァ初号機のパイロットに選ばれたと聞いている。その歳でたいしたもんじゃねえか」

「いえ、僕の実力というわけではないんです」

「パイロットに実力なんてどうでもいい。問題は気持ちだ。戦場では、気持ちの強いやつが生き残る」

「気持ちですか」

「そうだ、気持ちだ。そのことをよく覚えておきな」

「はい」

 

 バニングはシンジを基地のミーティングルームに連れて行った。

 

「先週からうちに新入りが二人入っててな、紹介するぜ」

 

 バニングはシンジに二人の少年を紹介した。

 ミーティングルームに待機していた二人は1週間で軍のイロハを身に着けているのか、バニングがミーティングルームに入るや否や、起立し敬礼した。

 

 シンジはその二人を見つめた。

 シンジから見ても、その二人からは初々しさを感じた。それを見ると、少しホッとするところがあった。

 

「お前ら、喜べ。新入りが入ったぞ」

「新入りでありますか?」

 

 少年の一人が尋ねた。その少年はそれなりにがっちりした体型だった。

 

「碇シンジだ。すでにエヴァ初号機のパイロットとして、東京を侵略した使徒を倒している。つまり、お前らより格上だ」

「はっ、よろしくお願いいたします、碇シンジ殿。私はリュウセイ・ダテ候補生であります」

 

 少年はリュウセイと名乗った。続いて隣の少年も挨拶した。

 

「はっ、よろしくお願いいたします。私は鈴原トウジ候補生であります」

 

 トウジと名乗った少年は少し語調になまりを感じさせた。

 

「よろしくお願いします」

 

 シンジは頭を下げた。

 改めて、バニングは二人を紹介した。

 

「こいつはリュウセイだ。SRXチームから先週派遣されてきた。SRXチームは知っているか?」

「いえ」

「九州の民間軍事団体だ。もともとはゲヒルンの傘下だったが、ネルフ独立に合わせて独立したんだ。つっても、日本じゃどこの団体も結局防衛省の犬みたいなもんだがな」

 

 バニングはそう説明したが、軍事情報に疎いシンジにはそれでもまったくわからなかった。

 ネルフはもともとゲヒルンという大企業だった。

 南原研究所や光子力研究所を束ねていたが、内部抗争もあってネルフは光子力研究所や南原研究所を取り込んで独立。残ったSRXチームは九州に移って独立した。

 この内部分裂の背景には、当時与党だった「立憲共産党」が失脚したというのもあったが、SRXチームが起こした抗争が大きかった。その抗争は100人以上の死者を出す大きな事件だった。

 そんな最悪の別れをしたネルフとSRXチームだったが、最近は合同で兵器開発をするまでになっている。協力関係ではあるが、どこか対立している微妙な関係だった。

 リュウセイはSRXチームが抱えていたパイロット候補生であり、SRXチームの傑作兵器である「Rシリーズ」のパイロットの有力候補として、シンジと同じような経緯でここにやってきていた。

 

「こっちはトウジだ。先週うちに志願してきた。妹の医療費を賄うためにパイロットになりたいというなかなか根性のあるやつだ」

 

 トウジはバックボーンのない生粋の志願兵だった。今時少ない志願兵であり、バニングはトウジの根性を買って入隊させた。

 

「まずは友情を深めるところからだ。戦場じゃ、友情がものを言うからな。友情のないやつに戦場では力を発揮できねえ」

 

 バニングはそう言うと、懐からIDカードを取り出した。

 

「友情を深めるなら殺し合いが一番だ。さっそくやり合ってもらうぜ」

 

 バニングはそう言うと、にんまりと笑った。

 突然のことに、シンジは強い緊張感を覚えた。

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