スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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22話 新たな仲間

 バニングは殺し合いと言ったが、それは誇張表現だった。

 実際は、シミュレーション操縦だった。

 

 シンジはガンダムMK-Ⅱのシミュレーションコックピットに座った。

 ガンダムMK-Ⅱはネルフにいたころに少しだけ操縦した経験があった。

 まともに操縦できるほどではないが、操縦の方法はまだ頭に残っていた。

 

 シンジはマスターキーをオンにした。

 

「準備できました」

「おう、なかなか慣れたもんだな。MK-Ⅱの操縦に心得はあるのか?」

 

 バニングが尋ねた。

 

「いえ、ほんの1日ほど体験があるぐらいです。ろくに操縦できないです」

「ならばちょうどいい。連中もみなまともにモビルスーツは操縦できねえ。お互い似た者同士だ。存分にやり合いな」

「しかし、動かし方がほとんどわかりません」

「それでいいんだ。何でもとりあえず水の中に飛び込むことが大事だ。もがいているうちに体が覚えてくるもんだ。分厚いマニュアルを読んだって操縦はできねえ。すべては実戦だ」

 

 バニングの方針は手荒だったが、最も理にかなっていると言えるのかもしれない。

 その後、リュウセイから通信が入った。

 

「碇シンジ殿、お手柔らかにお願いします」

 

 リュウセイはシンジのことをかなりの格上だと思っているようだった。それもそのはずで、軍事情報に心得がある者からしてみると、エヴァンゲリオン初号機のパイロットというのはすごい存在である。

 しかし、シンジからすると自分の意志に関係なく勝手に決まったことであり、格上だと思われるのはやりにくかった。

 

「あの、僕はコネで選ばれただけで実力は全然なんです。ですので、あまり過大評価しないでください」

「そう謙遜なさらず。リュウセイ・ダテ、胸を借りるつもりで全力で行かしていただきます」

 

 しかし、リュウセイはアムロレイを相手にするような様子だった。

 

 まずは、リュウセイとシンジの1対1のシミュレーションバトルが始まった。

 シンジが操縦するのはガンダムMK-Ⅱ.リュウセイが操縦するのはゲルググだった。

 

 シンジからすると、ゲルググは見るのも初めてだった。

 どう戦えばいいかわからなかった。

 

 バニングはソファーに腰かけると、高みの見物と言った感じでモニターを見つめた。

 

「よし、サバンナエリアを選択したら対戦を始めろ。シミュレーションだ。死んでもタマはなくならねえから思い切ってぶつかってけ」

 

 バニングはそう言って、楽しそうに笑った。

 

 シンジはエリア選択から「サバンナ」を選択した。すると、目の前が開けたサバンナになった。そして、遠くにゲルググの姿が見えた。

 

「えーっと、武器選択オプションを……」

 

 シンジは1つ1つボタンを確認しながら動作を取った。本来は、前とレーダーを同時に見ながら武器を選択する必要があるが、初々しいシンジにはそこまでの余裕はなかった。

 リュウセイもそれは同じだった。

 

「えーっと、コンバットメタルナーイブ……じゃなくて、ビームトマホークだ。よし、行くぜ」

 

 リュウセイもぎこちなく武器を選択すると、操縦桿を引っ張った。

 

「ともかく当たって砕けろだ」

 

 リュウセイはトマホークを構えたゲルググを進軍させた。

 

 シンジはこちらに向かってくるゲルググを見て焦った。

 

「急げ、えーっと、ビームライフル構えて……は、発射」

 

 焦りのせいで、銃身がしっかりと合わないままの発射となった。ビームはあさっての咆哮に飛んだ。

 しかし、リュウセイも慣れていないので焦った。

 

「うおっ、撃ってきた? か、回避だ。右に旋回」

 

 リュウセイはリュウセイで無駄な回避行動を取った。

 

 あさっての方向にビームライフを撃つシンジ、無駄な回避行動を取るリュウセイ。絵に描いたような素人の対戦だった。

 バニングは楽しそうにその光景を見ていた。

 

「こりゃあ、戦場には出せねえな」

 

 バニングの後ろには部下が3人ほど控えていて、彼らも思わず笑い声をあげた。

 

「懐かしいな、僕も彼らと同じころはそうだったな」

「ウラキ、お前はどっちが勝つと思う?」

「そうですね……」

 

 ウラキと呼ばれた部下はモニターをしばらく凝視した。

 

「碇少年の射撃は銃身が合っていませんが、目視で撃っているにしては思いのほか正確さを感じさせます。射撃のセンスがあるのかもしれません。ダテ少年のほうは、動きはめちゃくちゃですが、反応速度がかなりのものです」

「うむ、そうだな。どちらもセンスは感じさせてくれる。で、どっちが勝つと思う?」

「弾を撃ちきってしまうことを考えると、ダテ少年に勝算があるかと思います」

「なら、意見が分かれたな。おれは碇が勝つと思う」

 

 バニングは確信するように言った。

 

「鉄砲ってのは数撃ちゃ当たるもんだ」

 

 バニングの予想が当たり、シンジが撃った適当なビームがゲルググを撃ちぬいた。

 勝負はその一瞬で決まった。

 

「しまった、くそー。反応はできたのに、思わずアクセルを踏んじまった。ここは右にステップするべきだった」

 

 リュウセイはそう言って頭を抱えた。

 

「か、勝ったのか?」

 

 シンジからすると勝った気がしなかった。くじ引きを引くようなお祈り気分で撃ったビームが敵機をたまたま捉えただけだった。

 

「さすがはエヴァ初号機のパイロットであります。参りました」

 

 リュウセイはよりシンジへのリスペクトを高めたようだった。シンジからすると運が良かっただけにほめられても困ってしまった。

 

「よし、次はトウジとシンジだ」

 

 シンジは続いて、トウジの百式と対峙した。

 

「よろしく頼むで」

 

 トウジは関西弁をしゃべった。おそらく、それがトウジの標準語なのだろう。

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 この勝負は一瞬で勝負が決まった。

 

「メガバズーカランチャーや。いくで!」

 

 開始早々、トウジはとりあえずメガバズーカランチャーを撃ち込んだ。

 これは百式最強の武装で、15秒間放射するだけで、エネルギーが尽きる超強力な兵器だった。

 それを撃ち込んだところ、回避できなかったシンジは即死した。コックピット大破という形だったので実戦だったら死んでいた。

 

「さて、このド素人たちを来月にはそれなりに仕立て上げてやらんとな」

 

 バニングはそう言うと、拳をならした。

 

 ◇◇◇

 

 シンジはリュウセイ、トウジと部屋をシェアすることになった。

 ミサトが届けてくれた荷物を持って、シンジは部屋に向かった。

 

 室内は殺風景だが、3人でシェアするには十分な広さだった。

 

 リュウセイやトウジとは思いのほか早く打ち解けることができた。

 二人とも昔からパイロットを目指していたわけではなく、シンジと同じく普通の民間人として暮らしている時間のほうが長かった。それだけに、シンジと同じくロボットの操縦の経験はほとんどなかった。シンジはエヴァ初号機を操り、使徒と戦った経験があり、この中では、シンジが最も経験豊富だった。

 

「なあ、シンジ。エヴァに乗って使徒と戦ったんだろ? どうだった? やはり怖いものなのか?」

 

 リュウセイが尋ねた。

 リュウセイはつい先月まで民間人として普通に暮らしていた。ある日、突然軍の関係者がリュウセイの学校にやってきて、半強制的にリュウセイを徴兵した。

 いま、SRXチームはT-LINKプロジェクトなるものを薦めていて、そのプロジェクトのために、パイロット候補生を探している。その際に、リュウセイに適性があると判断された。

 なぜ、適性があるのかについてはリュウセイ本人にも詳しくは語られなかった。ともかく、リュウセイはシンジと同じく突然徴兵された身だった。

 

「うん、正直に言うと、すごく怖かった。目の前に使徒が見えたときは体が動かなくなった」

 

 シンジは当時のことを回想すると、今でも恐怖心がせりあがってきた。

 

「でも、使徒を倒したんだろ?」

「うん、でもあのときのことは良く覚えてなくて、自分でも信じられないぐらいなんだ」

「はー、すげえな。おれにはとても真似できそうにないぜ」

 

 リュウセイはそう言って大きく息を吐いた。

 

「リュウセイ君はどうして軍人に?」

「ああ、平和に暮らしていたら、イングラムとかいう怪しいおっさんがやってきて、軍に入るように薦められたんだ。おれは平和主義者だから乗り気じゃなかったんだが、そのなんだ……」

 

 リュウセイは後半を少しごまかした。すると、先ほどまで布団の支度に精を出していたトウジが介入した。

 

「きれいな姉ちゃんにそそのかされた。そういう話やったろ」

「それを言うな」

「ええやんけ。バニング大尉も戦争に出る動機としては十分っちゅう話やったろ」

「まあ、そういうことだ。おれはハニートラップにはまってしまった。それでここにいるわけだ」

 

 リュウセイは白状した。

 

「ひょっとしてシンジも同じクチか?」

「いや、僕はそういうわけでは……」

「でもいるだろ、気になる女ぐらい。ネルフの女はハイスペックだって先輩から聞いたことあるぜ」

「いや、どうかな……」

 

 そのとき、シンジが第一に思い浮かべたのはレイだった。その次にミサトの姿が思い浮かんだ。しかし、その先に思い浮かんだのは女性の姿ではなく父親の姿だった。

 

「僕がネルフに入れたのは父親のコネなんだ」

「そういや、シンジの親父さんってネルフの司令官って話だったっけ」

 

 シンジはうなずいた。どこか恥ずかしさを覚えたのでうつむいた。

 

「結局、世の中コネっちゅうことか。いいとこのボンボンやと苦労もしないで出世できる」

 

 トウジは少し嫌みたらしくそう言った。

 

「おい、そんな言い方するなよ」

「でもほんまのことやろ」

 

 トウジはそれほど裕福な生まれではない。それゆえ、ネルフ司令官の息子としていきなりエヴァのパイロットに任命されたシンジをそれほど良くは思っていない様子だった。

 

「シンジ、気にするな。トウジは関西人だからな、まったくモラルのかけらもないから困ったもんだぜ」

「いえ、本当のことだから」

 

 そのことはシンジもよくわかっていたから、別に嫌な思いになることはなかった。

 

「みんな色々あってパイロットをやってるんだな。まあ、なんにせよ、仲良くやって行こうぜ。改めてよろしく頼むぜ」

「うん、ありがとう。こちらこそ、よろしく」

 

 シンジはリュウセイと握手をかわした。

 

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