スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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23、マジンガーチームの特訓

 翌日から、シンジはバニングの厳しい特訓を受けることになった。

 

 銃の扱い、サバイバル術、格闘術から肉体トレーニングや兵法のイロハまで、朝から晩まで過酷な特訓は続いた。

 

「チンタラするなぁ! 急げ!」

 

 バニングの怒号が飛ぶ中、シンジは懸命に特訓に集中した。他のことは考える余裕がなかった。ただ目の前の過酷な特訓に耐える毎日だった。

 バニングの訓練は特に厳しいと評判であり、入隊した若者の半分は途中で挫折してやめていくと言われている。

 

 しかし、シンジは新入りがやめていく中でも、めげることがなかった。

 シンジはネルフにやってくるまでは、軍人とは対極の暮らしをしていた。そんな軟弱なシンジがこの特訓に耐えられたのにはいくつか理由があった。

 

 もともと、シンジは孤独に強かった。物心つくころには母親はすでに他界しており、父親もそばにはいなかった。

 友達と呼べる友達もおらず、シンジはずっと孤独に暮らしてきた。

 バニングの特訓は孤独との戦いでもあった。

 

 バニングが新人に最初に課すトレーニングが、離島での7日間のサバイバル訓練だった。

 シンジはナイフ一本だけを持たされ、まだ冷える東北の離島に投げ込まれた。

 そこでは頼る人はいない。協力する仲間もいない。

 

 自らの力で食糧や寝床を確保しなければならなかった。

 日が沈みあたりが静かになると、孤独な夜を過ごすことになる。

 新人の多くが、この孤独に耐えられないのだという。結果、数日でギブアップの通信を入れる者が後を絶たなかった。

 普段から友達と駄弁り、何となく誰かの輪の中で過ごすことにならされている現代人には、離党でのたった一人での暮らしは過酷だった。

 

 しかし、シンジにはその孤独は普遍的なものだった。

 離島での静かな夜は、シンジにとって心地よいとさえ思えるものだった。

 

 7日間の離島サバイバルを乗り越えて戻ってきたのは、参加した25人の新人のうち7人だけだった。

 その中には、シンジ、リュウセイ、トウジが含まれていた。

 

 この離島サバイバルを耐え抜いた者には、本格的な軍事演習が行われた。

 野生に還ったかのような過酷なトレーニングの日々が土日なしに続いた。

 シンジは激しい筋肉痛にさらされながらも、歯を食いしばって訓練に耐えた。

 

 ◇◇◇

 

 シンジがバニングの過酷な特訓を受けている間、ネルフにも色々なことが起こっていた。

 来る次の使徒との戦いに備えて、大規模な軍事改革が行われた。

 

 リツコをはじめとする科学部は光子力研究所と共にマジンガーZをはじめとする兵器の強化合宿に参加することになった。

 現在研究中の強化型ロケットパンチの開発、さらにはボロットに装着可能なロケットパンチの開発も進められた。

 

「なんと? ボロットに新しい武器が追加されるってか? こりゃたまげただわさ」

 

 ボロットに新兵器が加わるということで、ボスは大いに喜んだ。

 甲児とボスもまた、今後の使徒戦に備えて、特別訓練に参加した。

 

 甲児らはグアムに渡り、米軍との合同訓練に参加した。

 グアムの米軍基地には、カイが率いるゲシュペンスト部隊が駐屯している。カイは「鬼の鉄拳」の異名を持っており、一年戦争でも大車輪の活躍をしていた。

 

 カイは一応甲児とボスの上司でもある。グアム基地はもともと日米軍の拠点であり、日本を拠点にするネルフとは親しい関係にある。

 甲児とボスがまだ幼いころから、カイは操縦のイロハを叩きこんでいた。

 そのこともあって、甲児もボスもゲシュペンストの1級操縦士の資格を持っている。

 

 カイは久方ぶりに甲児とボスと面会することになった。

 

「おう、小僧ども、久しぶりじゃねえか。どうした? 左遷でもされたか?」

「ご無沙汰です、カイ中尉。マジンガーを大破させちまいまして。しばらくマジンガーが使えなくなったんです」

「マジンガーをぶっ壊しただぁ? いったいいくらする機体だと思ってんだ? てめえの命よりずっとたけえんだぞ」

「はは、相変わらず手厳しいことで」

 

 甲児は苦笑した。

 

「まあいい、あれからちっとは上達したのか? おれが直々に相手してやる。来い」

「よろしくお願いしますだわさ」

 

 甲児とボスを交えたシミュレーション訓練が行われることになった。

 想定は、グアム基地を空襲する敵機をミノフスキークラフト搭載のゲシュペンストで打ち倒し、グアム基地を防衛するというもの。

 敵機には、カイ率いる約15名のベテランパイロットが入り、防衛軍側は甲児、ボスをはじめとする若手チームが入った。

 グアムの新人たちはまだまだ初々しく、経験値では甲児とボスが一番だった。

 

 甲児とボスは久しぶりにゲシュペンストのコックピットに座った。

 

「懐かしいな。この独特の操縦桿」

 

 甲児は操縦桿を握り締めると、久しぶりの感触にテンションが上がった。

 

「おうおう、MK-Ⅱはやはりいいな。ジェットマグナム搭載だから、ボロットパンチで鍛えたおれにはちょうどいいぜ」

 

 ボスもゲシュペンストの操縦桿を握り締め、気合を高めた。

 二人が乗り込んだのはゲシュペンストMK-Ⅱである。

 ゲシュペンストは米軍の主力兵器の1つであり、大量生産しやすいという利点がある。

 

 量産に向いているのに、機動性、武装のパワーともに一般的なモビルスーツを上回っている。

 一年戦争でも大活躍した。

 

 もともと、旧式のアッシマーやゲルググやザクを土台に開発されたものであるから、性能が高いのは当然である。

 とはいえ、最近はザクの後継機も増えており、最近発表されたザクⅢはゲシュペンスト以上に汎用性の高い武装を兼ねそろえていた李する。

 

「準備はいいか?」

「いつでもオッケーです。カイ中尉」

「ではスタートだ」

 

 カイは旧式のアッシマーを起動させた。上空にたどり着くと、モビルアーマーに変形し、グアム基地を目指した。

 カイの後ろには15機のアッシマーが続いた。

 今回の訓練は、これらのアッシマーからグアム基地を防衛するというものである。

 

 カイの操縦のうまさを知っている甲児は味方機に次のように指示した。

 

「単機ではカイ中尉を追うな。少なくとも列機3体で、それも出来る限り一撃離脱を心がけるんだ」

「了解です」

「ところで、おれがリーダーでいいのか?」

 

 甲児は仲間機に尋ねた。

 

「マジンガーのパイロットである甲児さんがリーダーをするべきです。私たちはそれに従います」

 

 グアムの新人たちは謙虚だった。しかし、反発する者が一人いた。ボスだ。

 

「おいおい、甲児。勝手に決めるな。リーダーは俺様だ。いっぺん小隊長ってやつをやってみたかったのよ。一年戦争時代はずっと指示待ち補給任務ばかりだったからな。おれが指示を出す側に回りたいのさ」

「そりゃおれだって同じだよ。小隊長は軍人のあこがれだからな」

「おれがやる」

「いいや、おれがやる」

 

 甲児とボスは子供じみた小隊長の取り合いをした。

 グアムの新人たちはこの醜い言い争いを聞きながらも、ジッと黙って待っていた。

 

 これはシミュレーションだから、カイは甲児とボスの通信を傍受していた。

 

「バカ野郎、くだらねえ言い争いしてんじゃねえ。真面目にやらんか!」

「申し訳ありません、カイ中尉」

 

 中尉の怒号には従わざるを得ない。二人はしゃんと背筋を伸ばした。

 

「じゃんけんで決めろ」

 

 カイがそう言うので、甲児とボスはじゃんけんで小隊長の座を争った。結果、ボスが小隊長になった。

 

「ジャンジャジャーン、行くわよ!」

 

 ボスの掛け声と同時に、グアム基地からゲシュペンストMKーⅡが飛び出して行った。

 ゲシュペンストはもともと陸上戦を想定したものであり、一年戦争時代は中東でのモビルスーツ戦に広く導入されていた。

 米軍はいち早くミノフスキークラフトを搭載したゲシュペンストを実戦配備していたが、一年戦争ではあまり活躍しなかった。一年戦争の主戦場が中東の陸上戦だったのが要因である。

 米軍が飛行型ゲシュペンストの活用に消極的だったもう1つの理由が、その技術を世界に広めたくなかったというのもある。

 

 堕ちた機体は敵軍にしてみると格好の教材であり、日進月歩する兵器開発の世界で相手にアドバンテージを与えることは危険だった。

 飛行型ゲシュペンストは結局ほとんど実戦で活躍しないまま、一年戦争が終結した。

 

 米軍のミノフスキークラフトの精度は高く、モビルアーマー相手に格闘戦を仕掛けることも可能になっている。

 とはいえ、モビルアーマーに格闘戦を仕掛けるのはナンセンス。兵法のイロハを知るボスは列機に指示を送った。

 

「メガビームライフルではちの巣にしてやるわさ。おれに続け」

 

 ボスは小隊長になれたことでテンションが上がっていた。

 

「連中は馬鹿正直に向かって来やがったな。俺様が射撃のできないでくの坊だと勘違いしてもらっちゃ、こまこま困りんだわさ」

 

 ボスはレーダーに現れた敵機を見つけると、メガビームライフルを装備した。

 ゲシュペンストの主力兵器は、ロングレンジのメガビームライフル、遠隔操作系のスラッシュリッパ―、追尾型のミサイルである。

 もっとも、ゲシュペンストの最強武装はその拳であるというのが、ゲシュペンスト使いたちの共通の回答である。

 

「甲児、勝負だ。どっちが多く堕とせるか」

「アホ、アッシマー相手にそうそう当たるかよ。新米ならまだしも相手はみなベテランだぞ」

「ずいぶん、弱気じゃないのさ。見てろよ、おれの見越し射撃の腕前を」

 

 ボスは敵機を射程に捉えると、メガビームライフの銃身をセットした。

 銃身はオートロックオンされる。しかし、このオートロックオンは敵機がどういう行動を取るかは計算されない。

 そのため、正確に敵を撃つには、相手の行動を予測するか、相手がこちらに気づかない状態で撃たなければならない。

 残念ながら、高性能レーダーのおかげで、敵はボス機の位置を正確につかまれている。そこで、頼りになるのは、パイロットの予測となる。

 

「うりゃうりゃー、行くぜ。メガビームライフルだわさ」

 

 ボスは自分の勘に自信を持ってライフルを撃った。

 ライフルは高濃度の陽子を纏ったエネルギーを放射した。

 現在、使用されるビーム兵器はたいてい、陽子加速型だ。陽子を光の速度の90%以上に加速させることで、水素分子や酸素分子を誘導して莫大な熱エネルギーを発生させ、酸素の燃焼効果を用いて放射する。

 最も速く空間を移動するほか、イオンや重力の影響を最小限度にできる。

 ビームは空間内で減速するが、それでも音速を超える速度で敵機に到達する。

 

 カイはボス機のビームライフルの発射と同時期に小さく操縦桿を傾けた。すると、アッシマーは少しだけ右に移動方向を変えた。

 次の瞬間、アッシマーの隣を高速ビームが抜けていった。紙一重のタイミングだったが、カイほどの実力者からすると、今のタイミングでも次の一言となる。

 

「遅い。なってないな」

 

 0コンマ1秒でも反応が遅れれば当たっていたが、0コンマ1秒はパイロットにとって、あまりに十分な時間だった。

 

「さて、まずはお遊びからだ」

 

 カイは口元を緩めると、アッシマーの砲台を開放した。

 アッシマーにも強力なビーム砲が備わっている。ゲシュペンストを一撃で貫くのに十分な破壊力を秘めている。

 

 カイはお手並み拝見ということで、第一波を放った。

 

「来たな、俺様に当てようなんて100万光年早いのさ」

 

 ボスは右に大きく旋回して、アッシマーのビーム砲をかわした。

 しかし、カイからすると、それは十分に未熟な回避だった。

 

「おいおい、新米か? それじゃあ、高度を失うだけだろが。ったく、おれが一生懸命教えてやったのに、はやイロハを忘れやがって」

 

 カイはぶつぶつ文句を言いながら第二波を放った。

 ちょうど、甲児機とその後ろの列機が重なっているところに撃ち込まれた。

 

「おりゃ、当たるか」

 

 甲児は最小限度の旋回でそれをかわした。

 

「へへー、カイ中尉、なめてんすか。おれはそんなもんには当たらないっすよ」

「なに得意げになってやがる。ド素人が。まだ気づかねえか?」

「え……あ!」

 

 勘のいい甲児はすぐに気づいた。

 カイはやみくもに撃っていたのではなく、敵機がどう避けるか予測して撃っていた。気が付くと、基地への航路ががら空きになっているほか、ボス機も甲児機も一番高いところにいるアッシマーから狙われやすい位置に誘導されてしまっていた。

 

「お前らの任務は基地を守ることだぞ。なにがら空きにしてんだ」

「くっそー、騙されたぜ。おい、全機戻れ。空域を封鎖するんだ」

 

 甲児は慌ててそう言ったが、時すでに遅し。カイ率いるベテランは基地への空域のポジション取りを完全にすませていた。

 あとは、慌てて戻ってくる新米たちに、避けにくい角度からのビーム砲を繰り出した。

 

 4機が一瞬で撃破。かろうじて逃れた甲児とボスだったが、反撃不能な低空に追い詰められていてなす術はなかった。

 

「ちくしょー、完敗だ!」

 

 甲児は天を仰いだ。相手を軽視しているわけではなかったが、カイ率いるベテラン部隊は戦場を広く見て、2手も3手も先を読む巧みな操縦をしてきた。かたや、若手は目の前しか見えていなかった。

 

「鍛え直しだな。お前ら、覚悟しとけよ」

「ははは、お手柔らかにお願いしますよ、カイ中尉」

 

 甲児は苦笑した。

 

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