スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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26、ペンペン

 ミサトの奮闘で、シロガネの大破は阻止されたのだが、ミサトが予想していたとおり、リーは国連に次のように報告した。

 

「葛城補佐が艦長命令に背いて勝手なことをしてしまったため、シロガネはあわや撃墜という状態に追い詰められた。従業員を危険な状況に追い込んだ葛城補佐を軍法裁判にかけ、その責任の重さを認識させる必要がある」

 

 リーは今回の任務結果をそのようにでっちあげてすべてミサトに責任を押し付けた。

 リーの責任転嫁を一方的に押し付けられたミサトだったが、リーがミサトを軍法裁判にかけたにも関わらず、裁判所の回答は「その訴えは認められない」というものだった。

 

「バカな。なぜだ?」

 

 リーにはその理由がよくわからず、いら立ちを表に出した。自分のプライドを傷つけたミサトに復讐したいという思いもあっただけに裁判所の回答はリーにとってはとうてい受け入れがたいものだった。

 裁判所のこの判断には碇ゲンドウの影響が多分に含まれていた。

 ミサトはネルフ上層部から高く評価されている指揮官ということで、階級がそれほど高くなくとも特別にプロテクトされているところがあった。

 とはいえ、ミサトは続けてリーの補佐官としてシロガネに乗りたくなかったので、任期の間、ミサトは偵察機の補助搭乗員として仕事をすることになった。

 

 そのころ、シンジはバニングのもとで特訓を受けていた。

 シンジはバニングの厳しい特訓をしっかりと耐えていた。2週間も経つ頃には、銃を構える姿勢も様になった。モビルスーツの操縦もそれなりにできるようになった。

 シンジは射撃センスがあるようで、同期のリュウセイやトウジよりも高い射撃能力を発揮した。

 

 シンジはバニングのもとでジェガンの操縦を学んだ。ジェガンの持つライフル銃は照準をオートで設定してくれる。しかし、実際に撃つ場合は敵機の動きを予測して撃たなければ当たらない。

 シンジはそのテクニックでセンスを見せていた。シミュレーションでは120秒間に4機の敵機を落とすこともあった。

 バニングもシンジの射撃センスを見抜き、それに特化した訓練を課した。

 

 ちょうどそのころ、エヴァ初号機の新兵器にスナイパーライフルが開発されていて、それを扱うに際してはシンジの射撃能力が活きると言えた。

 しかし、シンジには大きな弱点があり、それは格闘戦が大の苦手ということだった。

 リュウセイやトウジとシミュレーション対戦しても、距離を詰められるとシンジはたいてい対処することができなくなった。

 今日も、リュウセイのガンダムに接近を許すと、ハイパーハンマーを振り回されて撃墜されてしまった。

 逆にリュウセイの格闘能力は高く、接近戦での反射神経は誰よりも高かった。

 

 それなりに経験値が上がってきたことで、それぞれの長所が明確に見えるようになった。

 そんなバニングの特訓も最終日を迎えることになった。

 

 バニングはこれまで特訓してきた8人のパイロットを集めた。

 

「お前ら、よくここまでついて来れたな」

 

 バニングは8人の候補生たちの顔を順に見ていった。

 約3分の1が途中でリタイアしたが、例年半分以上が脱落するのが標準なだけに、今回の候補生たちはなかなか骨があった。

 

「さて今日が最後の訓練だ。最後は銃もモビルスーツも使わねえ。入れば出られないとされる樹海に入ってもらう」

「樹海でありますか?」

 

 リュウセイが尋ねた。

 

「実はな研究所で飼われていたペンギンがいなくなったと連絡が入ってな。それを捜索しようってわけだ」

「ペンギン?」

「そうだ、研究のために研究されていた温泉ペンギンだ。お前たちに捜索してもらう」

「なぜペンギンなんですか?」

 

 トウジが尋ねた。軍事施設が研究のためにペンギンを飼う。まったくおかしなことのように思えた。

 

「おれも詳しくはわからねえが、実に賢明なペンギンで、パイロットのサポートに力を発揮できる可能性があるということだ」

「ハロみたいなもんか?」

 

 ここにいる者はいまいち解せなかったが、最後の任務にはペンギンの捜索ということになった。

 

 シンジはリュウセイ、トウジとパーティーを組んで樹海に入った。

 この3人は入隊当初からパーティーを組んで共に切磋琢磨してきた。

 お互いに打ち解けて、今では良い友人同士だった。

 

「しっかし、パイロットになってペンギンを探すことになるとは思わんかったな」

 

 トウジは木々の並ぶ先を見つめた。樹海はどこまでも同じ景色が続いていた。きちんとコンパスを確認しなければ迷い込んでしまいそうだった。

 3人はバニングのもとで厳しい訓練を受けていたから、すでにコンパスの読み方ぐらいは完全にこなせるようになっていた。

 

「でもおもしれえな、ペンギンがパイロットの手伝いをするなんてよ」

 

 リュウセイはコンパスで方角を確認しながら、きちんとマッピングデータに登録した。

 

「でも何の役に立つんだろう。ペンギンが操縦してくれるわけじゃないし」

 

 シンジは2人の一番後ろをついていった。シンジは基本的に非常食などの荷物を持つ係だった。シンジはどこに行っても先頭に立ちたがるタイプではなかったので、最後尾がベストポジションだった。

 

「癒し効果じゃないか? 常に緊張状態の中で操縦するんだ。猫の一匹でもいてくれたら心が休まるってもんだ」

「でもペンギンに癒し効果なんてあるのかな?」

「考えてもみろ、補助席にバニング大尉が座ってるのとペンギンが座っているんじゃ、緊張感が1億倍は違うだろ」

「それは確かに」

 

 シンジは納得した。バニングのもとで操縦訓練を受けて来たシンジにはバニングの厳しさがよく染みついていた。しかし、バニングの厳しい訓練があればこその上達でもあった。

 いまのシンジは一通りモビルスーツを操縦することができる。

 

「おい、ちゃんと方角記録してるんやろな?」

 

 先頭を行くトウジが振り返った。

 

「おう、問題なくな……って、あれ?」

 

 リュウセイはコンパスをいじりながら焦りの表情を作った。

 リュウセイの持っているコンパスはどの方向にどれだけの距離を歩いたかを記録することができ、その記録を再生すれば、もとの位置に戻るまでのナビゲートをしてくれる優れものだ。

 しかし、そんな精密コンパスに異常があるようだった。

 

「やべっ、データが見つかりませんって出るんだが」

「はあ? ちょう、貸してみ」

 

 トウジはリュウセイからコンパスを受け取って確かめた。

 トウジは色んな機器の扱いにセンスがあり、シンジ、リュウセイでもなかなか扱えない複雑な機体であるヒュッケバインの操縦をこなせるほどだった。

 

「電気が通ってへんな。回路がどっか切れてるかもしれんな」

「マジかよ、どうするんだよ?」

「待っとれ、ちょっと分解してみるわ」

 

 トウジはシンジの担いでいた荷物の中からドライバーを取り出すと、コンパスを分解した。こういう細かいことはだいたいトウジの役割だった。

 

「治りそう?」

「あかんな、ここや。ここの電気が通ってへん。なんか代用できるもんがあったらええけど……」

 

 荷物には非常食をはじめ色々なものが入っているが、回路の修復に使えそうなものはなかった。

 

「で、コンパスの代えは持ってこうへんだんか?」

「だって各班に1個ずつしか配布されなかったろ」

「アホ、何でも予備を用意するのが当たり前やろ」

「え、おれのせいなのかよ」

「一応、お前がリーダーやろ」

 

 リュウセイは腕を組んだ。

 

「たしかにおれがリーダーだ。そうか、そこまで気を配らなければならなかったのか。反省だ」

「なってしまったものはしょうがないよ。ともかく基地に戻ろう」

 

 シンジは冷静に考えていた。

 

「しかし右左あちこち進んで、谷間もあちこち抜けてきたよな。ちゃんと覚えてねえぞ。誰か道を覚えているやついるか?」

「……」

「……」

 

 誰も覚えている者はいない様子だった。

 

「とりあえず、飯でも食うか」

 

 リュウセイは非常食を手に取った。

 

「食ってる場合か?」

「腹が減っては力も出ねえだろ」

「もう昼過ぎだしそのほうがいいかも」

 

 ひとまず、3人は非常食の用意を始めた。軍で使用されている非常食は、栄養バランスの整った固形物から体温を上げるために火を通して食べるものまで色々なものがある。

 携帯用のガスコンロを使うと、それなりに立派な食事を用意することができた。

 

 3人がのん気に食事を取っていると、そのにおいに引き寄せられたのか、草の茂みから何かが出て来た。

 

「あっ」

 

 シンジがそれのほうに目を向けると、ちょうど目が合った。

 そこにいたのは、ペンギンだった。

 それは紛れもなく、研究所で飼われていた温泉ペンギンと見て間違いなかった。

 

「ねえ、あれじゃない。いなくなったペンギンって」

「あれだ。間違いねえ」

 

 コンパスが故障してしまったが、不幸中の幸い目的の者を発見することができた。

 

「で、どうすんだ。どうやって捕獲するんだよ」

「捕獲用のネットはあるけど撃つか?」

 

 トウジは荷物から、ネット砲を取り出した。これを使えばライオンでさえも捕獲できる。あとは麻酔銃もある。

 しかし、そんなものを使う必要はなさそうだった。

 ペンギンはてくてくと歩いてきて、やがてシンジの隣にやってきた。

 そのまま、食事をねだってきたので、シンジはいくつかの食事を与えることにした。

 ペンギンは人懐っこく、人に危害を加えることがなかった。

 

「何や人懐っこいペンギンやな。伊達にパイロットのサポートペンギンやないってわけか」

「シンジ、お前気に入られてんじゃないか?」

 

 ペンギンは一目でシンジに懐いたらしかった。

 やがてペンギンは3人を誘導するように手で方角を指出し、その方角に向けて歩きだした。

 

「ついて来いって言ってるみたい」

「ほんまか? けったいなとこに連れて行かれるんにゃないやろな」

「ついて行こうぜ。どのみち行く当てはないんだしよ」

 

 3人はペンギンの後について樹海の道を進んでいった。

 すると、無事基地に戻ることができた。

 

「すげえ、戻れたぜ。やっぱすげえんじゃねえか、このペンギン」

 

 最初は半信半疑だったが、本当にこのペンギンはパイロットのサポートができるのかもしれない。

 

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