スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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27、新武装

 シンジはバニングの特訓過程をすべて終えて、ネルフに戻ることになった。

 短くも長い特訓だった。1日の例外もなく過酷な日々だったが、そのぶんシンジは成長した。

 

 シンジが武者修行に出ている間、甲児とボスはグアムの基地にシンジと同じように武者修行に出ていた。こちらもバニングの特訓に負けず劣らず過酷なものだった。

 とはいえ、甲児やボスはどんな過酷な特訓も半ば楽しむ感覚で乗り越えネルフへと戻ってきた。

 

 ミサトもジャブローでの任務を終え帰還した。

 

 彼らがネルフを離れている間、ネルフでも大きな改革があった。

 マジンガーの修復が完了し、開発中だった強化型ロケットパンチが装着された。使徒との戦いに備えて強化されたものであり、従来のロケットパンチよりも射程距離、射出速度が格段に増していた。

 ついでに、ボロットにも追加武装が届いたようであった。

 

「なにー? ボロットにロケットパンチがついただって?」

 

 追加武装が加わったことを知ると、ボスはさっそく甲児とシンジを連れて新兵器を見に行った。

 格納庫でスポットライトを浴びるボロットの右腕はロケットパンチに変化していた。

 ボスはそれを見て涙を流した。

 

「嬉しいという気持ちもあるが、元祖ボロットの面影がなくなるのは寂しいだわさ」

 

 ボスは複雑な表情でボロットを見上げた。しかし、そんな気持ちはすぐにすっ飛んで、ボスは笑顔になった。

 

「これでこざかしいモビルアーマーも撃ち落してやれるだわさ。一年戦争時代に欲しかったぜ。何度空襲でお陀仏になるところだったか。しかし、これからは堂々と撃ち落してやるわさ」

 

 ボスは腕をぶんぶんと鳴らした。

 

「でも地上からモビルアーマーを狙うのはすごく難しいですよ」

 

 シンジが言った。バニングの特訓を受けて、シミュレーションだが、シンジも色々な操縦現場を体験していて、地上から飛行機やモビルアーマーを狙う難しさが理解できるようになっていた。

 

「バカ野郎、シンジ。俺様を誰だと思ってやがる。コアブースターだろうがアッシマーだろうが、余裕のよっちゃんよ」

「ちょうどいいや、ならさっそく試そうぜ。VGにさっそく実装されたってリツコさんが言ってたからな。おれのマジンガーがボロットをもう一度スクラップにしてやるぜ」

「おもしれえ、甲児。今こそどっちが上か決めようじゃねえのさ。おれのボロットがマジンガーを粉砕するぜ」

「シンジ、お前も腕を上げたんだろ。初号機でかかってこい」

「お、お手柔らかにお願いします」

 

 3人は訓練施設のほうに降りて来た。

 このあたりも修行に出ている間に少しずつ改装されていた。

 パイロットの訓練の要となるVGの精度も上がり、エヴァ初号機の宇宙モードや新武装が追加されたマジンガー、ボロットのモードなどが追加されていた。

 ほかには、フルアーマーガンダムのモードやゲシュペンストMK-ⅢSなどの米軍の新兵器もモードとして選べるようになっていた。

 それ以外にも、実戦データがより精密にプログラムしなおされて、ダメージの判定やそれに伴う機体性能の劣化などより実戦感覚的なものが反映され、実戦と寸分たがわぬほどシミュレーションの精度が上がっていた。

 

 3人が訓練室にやってくると、リツコをはじめとする科学者たちが新しくなったVGのテストをしていた。

 

「リツコさん、さっそくマジンガーを試したいんですけど、使えますか?」

「ちょうど良かったわ。いまテストプレイの途中。あなたたちのほうがより実践的なデータが取れるからお願いするわ」

「おれじゃあ、ロケットパンチの圧に耐えられねえからな」

 

 先ほどまでテストパイロットとして頑張っていた科学者の一人が席を立った。彼は日向という若い科学者で、一応大学時代はパイロットの訓練も受けていたらしいがマジンガーを使いこなすほどには至っていなかった。

 

「しっかし、甲児君はたいしたもんだな。いつもあんな重たい操縦桿を扱ってるんだよな」

「そうでなくちゃパイロットをやってる意味がないですからね。おれは頭のほうはさっぱりですからね」

 

 甲児はそう言うと、さっそく操縦席についた。

 

「おっしゃあ、シンジ、おれたちも行くわさ」

「うん」

 

 ボスとシンジもVGの操縦席に腰を下ろした。座った感覚はバニングのもとで訓練したものと同じだった。

 あっちでは主にジェガンの操縦を学んだ。他にもガンダムMK-Ⅱ、百式、コアブースターの操縦もそれなりにこなせるようになっていた。

 

 シンジは慣れた手つきでモードの選択画面に進み、マスターキーをオンにした。

 ちょっと違和感を覚えた。向こうにいる間はマスターキーからバニングの大きな声が飛んできたものだが、バニングはここにいない。

 

「標準セット。急げ! 1秒でも遅い!」

 

 そんなバニングの叱責が耳に残っていたので、マスターキーから漏れ聞こえてくる科学者の声はとても平和的だった。

 

「おっす、シンジ君。おれだけどわかる? 覚えてくれてる?」

「たしか日向さん」

「そうか、覚えてくれてたか。2、3回ほど会話したことあったよな」

「はい」

「エヴァ初号機に新武装が追加されたんで説明するな」

 

 パラパラと紙をめくる音が聞こえた。まだ実装されたばかりということもあって、科学者たちも武装データをそらんじてはいないようだった。

 

「スナイパーライフルだ。南原研究所の協力でかなり強力な電磁砲に仕上がったよ。南原研究所は知ってるよな?」

「神奈川の研究所ですよね。コンバトラーの開発が進んでいるという」

「そうそう、コンバトラーのほうはけっこう難航しているみたいだけどね。まあ、日本の研究所は何をやらせても遅いからいまさら珍しくもないけどな。おれたちも人のこと言えず仕事が遅いしな」

 

 日向はユニークな自虐を混ぜた。科学者とは思えないほどフレンドリーだった。

 

「で、説明するとな、まず装備後に自動充填が始まる。消費エネルギーはK値で4.このあたり意味はわかるか?」

「あ、はい。一通りは勉強しましたので」

「そうかそうか、それは感心だ。消費4なんで、6秒も放射すると半分近くエネルギーを消費する。アンビリカルケーブルの充填とうまく付き合っていく必要があるな。まあ、そのあたりは追々葛城三佐がうまく作戦を立ててくれるから、シンジ君は深く考える必要はないと思うけど」

 

 一般的に、ミサトが作戦を立てて、シンジはその指示に従うことになる。エネルギーの計算などはすべてミサトの仕事だった。頭が下がる思いだった。

 

「ところでシンジ君にちょっと聞きたいんだが」

「はい、何でしょうか?」

「葛城三佐、普段の会話で僕のことなんか言ってたりした?」

「え? いえ、特には」

「あーそっか。ならいいんだ。話を戻すね」

 

 日向はごまかすようにそう言って、武装の説明を続けた。

 どうやら、日向はミサトに気があるようだった。

 

 武装の説明が終わったところで、シンジはエヴァ初号機の地上モードを選択した。エヴァは一般的に地上での作戦のために造られたが、宇宙での任務も一定数は想定されていて、スラスタークラフトを装着すれば、宇宙での移動も可能になっている。

 しかし、シンジには宇宙モードでの操縦経験はまだなかった。トウジやリュウセイらと遊びで宇宙対戦をやったことはあるが、バニングから直接指導を受けたことはない。

 地上モードを選択すると、今度はシンクロ率の想定を行う。

 シンジはあえて50%にした。100%まで選択できるが、実戦ではなんだかんだシンクロ率は6割ぐらいになっていくものだから、普段から厳しめの値に設定して訓練しておく必要があるのだ。

 シンジがモードを選択すると、甲児から送られてきたエリアを指定して戦場に入った。

 

 戦場はアメリカシカゴの台地だった。入り組んだ深い岩場が連なるこのあたりは、エヴァでの移動も大変だが、こうした場所での訓練に慣れておかなければ、いざ実戦で困る。シンジにとっては格好の練習場となった。

 シンジは甲児に通信を入れた。

 

「準備できました。どういう想定で訓練しますか?」

「三社入り乱れの殴り合いだ。最後まで残ったやつが勝ちだ」

「了解。行きます」

 

 シンジは目の前に集中した。

 シンジはもう素人ではない。作戦が始まるや否や、レーダーで敵の位置を確かめた。

 

「ボロットは地上、マジンガーは飛行。ならば、しばらくはボロットは無視できるな。あとは……空からの攻撃を受けにくい場所を」

 

 シンジは索敵システムをうまく利用して、良い地形を探した。こういうことも自然とできるようになっていた。

 そんな光景をリツコらは見ていた。

 

「シンジ君、だいぶ操縦に慣れたみたいね。シンクロ率50%でこれだけの動きはなかなか立派」

 

 リツコは感心して見ていた。

 

「バニング大尉がかなりしごいたようです。昨日。そのバニング大尉から電話があって、シンジは最高のパイロットになると言ってましたよ」

 

 シンジは射撃武器を構えやすそうな岩場を見つけるとそこに向けて進んだ。険しい岩場もしっかりと乗り越え、やや開けた場所に出た。

 

「このままじゃ右に回り込まれる。どうしようか」

 

 シンジはあたりを見渡して次の手を探った。

 甲児は伊達に何年もマジンガーを操縦していない。やはり腕前だけだと、甲児が一枚も二枚も上手だった。

 

 しかし、エヴァ初号機もまた伊達にネルフの最新兵器ではない。

 シンジは慌てず、マジンガーの接近を待った。

 

「新人だからって容赦はしないぜ、シンジ。行くぜ、必殺の大車輪ロケットパーンチ!」

 

 甲児はエヴァの背後に回ると、降下のスピードを活かして、ブンブンと腕を振り回した後に、強化されたロケットパンチを放った。

 ロケットパンチは空気をえぐるように鋭く飛んできた。回避は不可能だった。

 

 ならば、弾けばいい。

 

「ATフィールド全開!」

 

 シンジの操縦するエヴァにはマジンガーにはない防御機能ATフィールドがある。

 エヴァ初号機は最大出力でATフィールドを展開した。

 

 ロケットパンチはATフィールドを削り取るように飛んできたが、ATフィールドは想像以上に強固であり、その攻撃をはじくことに成功した。

 

「うおっ、マジか。なんだそりゃ、無敵のバリアかよ。ずいぶん卑怯じゃねえか」

「それがエヴァですから」

 

 弾かれたロケットパンチはひとりでにマジンガーの腕に戻っていった。ロケットパンチはそれが大破されていなければ、マジンガー側から操ることができる。

 

「こっちも攻撃だ」

 

 シンジは即座に武装オプションから新兵器であるスナイパーライフルを選択した。

 

「さっそく使ってみよう。長射程だから、届くはずだ」

 

 エヴァはスナイパーライフルを装備した。この武装の問題点はエネルギー充填に時間がかかることだ。

 

「へへっ、逃げるが勝ちよ」

 

 エネルギーが溜まる前に、マジンガーは射程外へ逃げていった。

 

「やっぱり敵の攻撃を防いでからじゃ間に合わないな。敵の攻撃に合わせるぐらいじゃないと」

 

 シンジはそのことをVG実戦を通して理解した。守ること、攻めることを別々にやっていては何も間に合わない。敵に離脱されてしまう。守りながら攻めることをしないと戦いにならなかった。

 

「ったく、甲児のやつ一撃離脱とは、みみっちい戦いをしてんじゃねえのさ。男は殴り合いよ。行くぜ、シンジ」

 

 遅れて、ボスもエヴァの近くまでやってきていた。

 

「シンジ、殴り合おうじゃねえのさ」

「申し訳ないけど、銃を使わせてもらいます」

 

 シンジは一旦スナイパーライフルを戻して、初号機に使いやすいバレットライフルを装備させた。

 

「照準を中央に入れて、動きの予測……おそらくあの踏み台を利用して左に飛んできそう。なら、少し左に照準を変更」

 

 シンジは一連の動作を手早く行い、バレットライフルを撃ちだした。

 ジェガンの訓練時代から、シンジは射撃テクニックにセンスを感じさせていたが、今回も的確な攻撃になった。

 

 ボロットは元来身軽な機体ではない。しかし、ボスが操縦すると、いつもシュールな動きになった。

 

「おーっとっとのオットセイ」

 

 ボロットは現実離れした柔軟な動きで岩場に滑り込んで、敵のライフルを阻止した。

 

「くー、銃を使うとはシンジ、男気がねえぞ」

「そっちこそロケットパンチがあるじゃないですか」

「そういやそうだったな。ちっと女々しいが、やらせてもらうわさ。行くぜ、ボロット」

 

 ボロットはシュールな動きで岩壁から出てくると、右手をブンブンと回した。

 

「行くぜ、ゴールデンデリシャスハイパワーボロットプレッシャーパーンチ!」

 

 ボロットからロケットパンチが繰り出された。

 それはシンジが想定していたよりも鋭く飛んできた。敵が攻撃してきたのを見てからATフィールドを展開しようと思ったが、それでは間に合わなかった。

 一応、反射的なATフィールドは展開されたが、十分な出力がなく、ロケットパンチはエヴァ初号機を吹き飛ばした。

 

「うわっ」

 

 思いがけず威力が高く、動力部破裂、エントリープラグ損傷のダメージ結果が出た。つまり、実戦なら殺されていたところだった。

 

「おー、なんという威力。エヴァを一撃で倒すとは。ナイスだぜ、ボロットよ」

 

 ボスは新兵器の力が圧倒的であることを喜んだ。

 今回の訓練では、ボスの勝ちとなった。

 なお、そのボロットはマジンガーの大車輪ロケットパンチで粉砕され、勝者は甲児となった。

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