ネルフは来たる次の使徒戦に備えて、使徒殲滅計画というものを立ち上げた。
使徒の詳細はまったく不明であるから、次の使徒が現れるかどうかは明らかではない。しかし、備えはしなければならない。
使徒殲滅計画のために、マジンガーZのパイロットである甲児やエヴァ初号機のパイロットであるシンジ、ボロットのパイロットであるボス、エヴァ零号機のパイロットであるレイなどが任命された。
一応、コンバトラーVやアフロダイAもこの計画に組み込まれていたが、コンバトラーは開発が遅れており、アフロダイも日本最大の軍事同盟国であるドイツにパイロットである弓さやかと共に派遣されていて、ドイツ軍はアフロダイAの実戦配備にこだわりがあり、アフロダイAを手放さなかった。
やや戦力が不十分とはいえ、マジンガーからエヴァまで揃う精鋭部隊となった。
作戦指揮官には引き続きミサトが選ばれた。科学班にもリツコをはじめネルフの主力チームがついた。整備班も宇宙戦でも実績のあったベテランが結集した。
使徒殲滅計画に選ばれたチームはさっそく実戦を想定した訓練を始めた。
まずは第一使徒戦のおさらい。
あの戦いは初号機が謎の力を発揮して使徒殲滅に至ったのであって、自力で殲滅されたものではなかった。
第一使徒のデータがシミュレーションに搭載され、第一使徒殲滅のシミュレーション任務が繰り返し行われた。
シンジはミサトの指示に的確に反応できるように、毎日繰り返し訓練に励んだ。
「エリアA14まで移動。A15まで使徒を引き付け次第、スナイパー充填」
「了解、エリアA14まで移動します」
シンジはミサトの指示を受けると、指定された位置まで初号機を走らせた。初心のころと違い、エヴァ初号機の動きはダイナミックでなめらかだった。
「ポイントに使徒を捉えました」
「オッケー、標準セット。発射」
「発射します」
シンジは的確に作戦をオペレートした。
シミュレーション上ではあるが、かなり的確に第一使徒を殲滅できるようになった。
エヴァ単機での撃墜もこなせるようになったが、マジンガーやボロットと連携する訓練も繰り返し行われた。
「シンジ行くぜ、タイミングを合わせろ」
「了解、18秒後に発射します」
シンジは甲児と息を合わせてライフルを構えた。
「行くぜ、せーの! ブレストファイヤー」
シンジはマジンガーの攻撃に合わせて、的確に援護射撃を行った。
連携した作戦もかなりこなせるようになった。
しかし、これらはすべてシミュレーション。実戦はまた違う……と思われていたのだが、彼らは実戦でもシミュレーション通りの力を発揮することになる。
第二使徒出現の報は突然やってきた。
新宿に突如、触手を備えた謎の巨大兵器が現れたとネルフに通報が入った。
都内では、すぐに避難活動が行われた。前回の使徒出現と同じく、多くの人が使徒の出現に不安に覚えた。
しかし、それを払拭するかのように、救世主たちが現れた。
「こちら、初号機。目的地に到達しました。偵察機のデータ通り、目標はこちらに向かっています」
使徒出現の現場にエヴァ初号機が到着した。前回の時とは違い、シンジは冷静に使徒を見ていた。
「ジャンジャジャーン、こっちも到着だわさ」
今回の作戦では、ボロットも前線に出ることになっていた。ボスはボロットをシュールに操ってエヴァ初号機の隣で停止した。
「シンジ、おれたちの最強の合体攻撃を見せてやるわさ」
「ええ、お願いします」
「甲児、そっちも準備オッケーか?」
「おう、こっちはいつでもオッケーだぜ」
甲児のマジンガーは地中で待ち伏せしているので地上に姿は見えなかった。
「ミサトさん、こっちは準備オッケーです」
「了解、なら事前の打ち合わせ通りやるわよ。これは訓練じゃなくて実戦。シンジ君、心の持ちようは大丈夫かしら?」
「大丈夫です。僕には心強い仲間がいますから」
シンジにはいまマジンガーチームがついている。加えて、ミサトやリツコらのバックアップもあり、かつての第一使徒の戦いの時とは比べ物にならないほど落ち着いていた。シンクロ率も98%というかなり高水準をキープしていた。
「おっしゃ行くわさ。シンジ、盛大にぶん投げるだわさ」
「よろしくお願いします」
シンジは力強く両手を天に翳して、隣にいたボスボロットの両手を掴んだ。
そして、繰り返し練習したように、ハンマー投げの要領でボロットを振り回した。
シンクロ率98%から繰り出されるエヴァのパワーは甚大で、理論上はボロットを宇宙空間まで投げ飛ばすこともできると言われている。
そんなパワーから、シンジはボロットをぶん投げた。
ボロットは放物線を描くのではなく、使徒めがけて地面とほぼ垂直に飛んで行った。
「おうおう、いいスピードだ」
ボスは飛ばされながら、腕をぶんぶんと振り回した。
「食らいやがれ、ゴールデンスーパーデリシャスハイパワーボロットプレッシャーパーンチ!」
ボスはその速度に上乗せするように、ロケットパンチを飛ばした。
もはや、それは音速の4倍強のスピードとなった。
その超音速のボロットプレッシャーパンチは第二使徒のATフィールドを一撃で吹き飛ばした。
「追撃だ。ボロットパーンチ」
ATフィールドを吹き飛ばした後に、ボロットが使徒のもとに到着。超合金Zの拳が使徒に炸裂した。すさまじい衝撃だった。しかし、どういう理屈かわからないが、ボロットはまったく無事で、使徒を貫いた後、華麗に着地した。
「決まったぜ」
「まだまだ、最後は俺様の出番だ」
最後のひと押しのために、マジンガーZが地上に飛び出してきた。
「くらえ、大車輪ロケットパーンチ!」
マジンガーZから繰り出されたロケットパンチはすでに大ダメージを負っていた第二使徒にとどめを刺した。
使徒に大きな火柱が上がった。
オペレーションルームでは、使徒の完全沈黙が確認された。
「見事だ」
その様子を見ていたゲンドウは一言そう言った。
不安視された第二使徒の襲来だったが、シンジや甲児のチームにとってみると敵ではなかった。
◇◇◇
第二使徒殲滅の翌日、日本で要人会議が開かれた。
その会議に参加するために、ゲンドウと冬月は永田町を訪れた。
会議場の前で、ゲンドウは一人の男から挨拶を受けた。
「碇司令、第二使徒の殲滅。ご苦労様でした」
「……」
「君は確か燐君の弟の……」
ゲンドウが黙っていると、冬月がそう言った。
目の前の男は今時の若者らしいおとなしそうな顔つきをしていたが、どこか目つきにぎらついたものを感じさせた。
「そうです。ラストエンペラーのドラ息子でございます」
「君も会議に呼ばれていたのかね?」
「いえ、姉さんの代理でしてね。姉さんは火星からまだ戻れないということで」
「なるほど」
「行くぞ、冬月」
ゲンドウは燐の弟を語る男を無視して歩き始めた。
「碇司令、聞いていたとおり不愛想なお方だ。まあ、それがネルフのトップに立つ男の風格と言ったところでしょうかね」
男はそう言って笑みを浮かべつつ、ゲンドウの隣に並んだ。
「僕はやんごとなき方々から軽んじて見られちゃうんですよね。こんななりだからでしょうか。おかげで、せっかく莫大な資産を引き継いだというのに、資産は目減りする一方ですよ」
男はそう言うと、目つきを変えて付け加えた。
「まあ、タイタニスさえ起動できれば、世界は僕を無視できなくなるんだけどね」
「仙台の研究所からは何の報告もないが、まだ起動していないのかね?」
冬月が尋ねた。
「そうなんですよ。ラストエンペラーの血を引いているはずなのにどうしてでしょうか。やはり姉さんじゃないとダメなんですかねぇ……」
冬月はあごに手をやった。
タイタニス。
それはラストエンペラーが日本反逆に用いた究極の兵器のことだ。
今から20年以上前になる。
古の文明より受け継がれる破壊神タイタニスを手にした切花鉄王は腐敗した日本を変えるため、日本に対して宣戦布告し、一方的に「大和」として独立を宣言した。
日本国を大和の領土と一方的に主張し、日本大陸に攻撃を仕掛けた。
当時、世界大戦終結から50年ほどが経過しており、アメリカの支援もあって日本は復興が進んでいた。
そんな矢先に起こった大惨事だった。
タイタニスは日本大陸で暴れまわったが、最後は当時アメリカで力を発揮していたモビルスーツのひな型やドラグナーのひな型を大量投入し、タイタニスを束縛。大量の犠牲を出汁ながらも、パイロットの切花鉄王はタイタニスのコックピットで自決した。正確には脱水症状による心不全と診断された。
タイタニスは一度米軍の管理下に置かれ、一度は兵器として研究された。
しかし、いまだにその技術は明らかになっておらず、タイタニスを起動するには、特別な血が必要だった。その血とは切花鉄王が持つ血。
それを継承した子供たちは当時1歳の燐と生まれたばかりの弟だった。厳密には、弟は養子であり、鉄王の血は引き継いでいないのだが、世間は継承者と認識している。
鉄王の資産は切花家がそのまま引き継がれ、現在に至る。
燐は科学者になり、その弟は大学を出た後、無職のままふらふらとしていた。
会議には同じようなメンツが並んだ。米軍のトップから防衛省のトップなど、頑固な老人たちが顔を連ねている。
ゲンドウと冬月もその一員として席についた。
「さて、まずは碇君。よくやってくれた。第二使徒撃墜、我々は約束の時に向けて確実に歩を進めることができた」
司会がそう言ったが、ゲンドウは反応しなかった。
「しかし問題はここからだ。第三使徒はかつてないほど手ごわい敵になるかもしれない。死海文書には、愛する者の絆なくして突破できないとされている。それが意味するところは不明だが、碇君、今まで以上に気を引き締めてもらう必要がある」
「最初からそのつもりでございます」
碇は淡々と答えた。
「そして、今回。もう1つ重要なことがある。みなも聞いていると思うが、ジオン軍が分裂した。そう、シロッコだ。やつはハマーン・カーンの忠実な右腕かと思っていたが、ザビ家にそそのかされたらしい。ティターンズと名乗り、ジオン軍から正式に独立したと声明を出している。ザビ家はみなも知っているとおり、火星を牛耳っている。ネルガル工業の筆頭株主というのも有名なところだろう。今回は、このティターンズに対する我々の姿勢を確認したいと思う」
司会がそう言うに続いて、米軍の司令官が起立した。
「まずはアメリカの立場を話させてもらう。ティターンズの独立は、ジオン軍の衰退につながるということで、軍事関係者は特に好意的に見ている。ティターンズを支援するのはどうかという話が上院でも議論されるようになっている。同時に、ティターンズはテロ集団でもある。ザビ家がバックについているとはいえ、その存在を認めることもまた危険だ。野党はそこをついて上院与党に噛みついている」
司令官はアメリカの情勢を話した。
続いて、日本防衛省の司令官が起立して主張した。
「我々も基本はアメリカ政府の主張を尊重します」
短い言葉だったが、日本がアメリカのポチであることを十分に示す答弁だった。
「今回の件については、碇司令の意見もうかがいたいと思う。碇君、何か意見はあるかね?」
任命されたので、ゲンドウは静かに立ち上がった。
「今回のティターンズ独立については、私も好意的に捉えています。ザビ家の狙いはわかりませんが、ジオン軍の弱体化に大いに資するものと考えます。しかし、ティターンズがネルガル工業の技術的支援を受けるとなると看過できないところもあるでしょう。今回のポイントはネルガル工業の意向が最大のポイントと考えています」
「うむ、たしかにティターンズがディストーションシステムを持つのは我々にとって脅威。そのあたりのことはどうなのかね? えー、火星の情勢に詳しいのは鉄栄君か。何か知っていれば情報を提供してほしい」
鉄栄は口元を緩めると、面倒くさそうに立ち上がった。鉄栄は燐の代役としてここにいるが、唯一無職という立ち位置であり、明らかに浮いていた。
「まあ、そんなことはどうでもいいじゃないですか、みなさん。ジオン残党なんてしょせん一年戦争の負け組。そんな連中が立派な技術を持ったってカトンボしか造れません。それよりも落葉家にもっと厳しい目を向けませんか、みなさん」
鉄栄はそのように言ったが、周囲の反応は芳しくなかった。
「どうやらみなさんは、落葉家を過小評価しているようですね。まあたしかに火星の落ちこぼれ。しかし、連中が抱えるマタニスは宇宙を揺るがす力を持っているんですよ。あれが動き出したらこの宇宙は終わりだ。第二のビッグバンを迎えることになるでしょうね」
「鉄栄君、君の考えはよくわかった。ともかくもういい、座りたまえ」
鉄栄は息を吐くと、めんどうくさそうに座った。
「鉄栄君の言う通り、落葉家を軽視できないのも事実。彼らはかつて、日本第2位の資産家だったわけですからな」
しかし、上層部はあまり関心がなさそうだった。
「今後については第三使徒との戦い、そしてティターンズの動きを注視していこう。諸君らには今しばし忙しい時間を過ごしてもらうことになる」
会議はそうして終わった。