スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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2、祝砲

 アスカがエヴァ弐号機のメインパイロットに選ばれたことが正式に発表されると、大々的に報じられた。

 アスカのもとに祝砲がいくつも舞い込んだ。

 

 まずミサトから祝福の電話が入った。ミサトはいま日本で仕事をしている。ネルフ本部にて、使徒と呼ばれる謎の侵略者を殲滅するための指揮官を務めている。

 ミサトがネルフに行くまでは、何度も同じ部隊で仕事をしたことがあった。

 

「アスカ、おめでとう。弐号機のパイロットに選ばれたって聞いたわ」

「ありがとう、ミサト。我ながら良くやったと思うわ」

 

 弐号機パイロットに選ばれる道のりは険しい。軍人として突出した成績を出さなければ選ばれることがない。

 最大のライバルだったオランダ軍のジュドー・アーシタを押さえての選出だった。

 

 ただ、このジュドーという少年は只者ではない。

 パイロット経験なしの民間人から、軍にスカウトされて半年でアスカに追随する操縦テクニックを披露していた。

 巷では、「ニュータイプ」だとささやかれているようだが、来年にはさらに優秀になっていてもおかしくはない。

 ジュドーはもともと火星近辺の衛星コロニー出身だったが、一年戦争の影響でコロニーが閉鎖されて、最終的にオランダに難民申請した。

 

「そっちはどう? 使徒が出現したって聞いてるけど」

「そうなのよ。それでめちゃくちゃ大変」

「初号機のパイロット、碇司令の息子って聞いてるけど、どんなやつなの?」

 

 アスカの気になることの1つだった。自分より先にエヴァを操縦しているパイロットは自分にとっては先輩に当たる。

 

「碇シンジ君。そうねえ、碇司令に似てると言えば似てるけど、似てないと言えば似てない感じかな」

「どっちなのよ」

「おとなしい男の子よ。扱いやすいと言えば扱いやすいけど、そうじゃないと言えばそうじゃないのよ」

 

 ミサトの言い回しはわかりにくかったが、的を射ていると言えなくもなかった。

 

「で、優秀なの?」

「スコアは全然。最近まで普通の民間人だったからね」

「それでなんで初号機のパイロットになれたわけ? こっちは最高スコアを出してようやくだってのに。日本は甘いわね」

「シンクロ率が評価されたのかもしれないけど、碇司令の息子さんってのが一番大きいんじゃないかしら」

「コネか。いいわね、そういうの使える人は」

 

 アスカにはコネが何もなかったから、実力で生き残るしかなかった。

 

 ミサトの次に、いま火星の任務についている旧友からも祝いの電話があった。

 

「おう、アスカ、聞いたぜ。大出世したんだろ。金はいくらもらったんだ?」

「開口一番バカな質問してんじゃないわよ」

 

 電話をくれたのは、スバル・リョーコ。かつて、アスカと同じ部隊で一年戦争を戦った。

 その後、アスカは地球に戻ったが、リョーコは火星に残り、その後、戦艦ナデシコの搭乗員になったという話を聞いていた。

 リョーコはナデシコ艦内から、衛星電話で電話をしてきた。火星経由の衛星は通話料が1分数千円もする。

 

「もったいないから切るわよ」

「ちょっと待て。こっちも新しいマブダチができたんで紹介するぜ。おい、ヒカル、例のツインテーラーだ。一言挨拶しとけよ」

「あいつ、どういう紹介の仕方してんの?」

「こんにちは、初めまして、ヒカルです」

「どうも」

「よくわからないけど頑張ってください」

「はい」

 

 ヒカルはそれだけ言うと、後続と交代した。

 

「ドイツ人はどいつだ? フフ……フフフフ……」

「は?」

「いまのはイズミだ。そんな感じで楽しくやってっから、いつでも遊びに来いよな。エステもう一機余ってっからよ」

 

 リョーコはそれだけ言うと、電話を切った。

 戦艦ナデシコの今後が心配になる人事に思えた。

 

 中東の任務に当たっているミスリルからも祝いの電話があった。

 

「アスカさん、お久しぶりですね、こうしてお話するのは」

「そうねえ、すごく久しぶりにテッサの声を聞いた気がするわ。休暇取れたの?」

 

 友人からは「テッサ」の愛称で親しまれているテスタ・テスタロッサはアスカと同い年で、飛び級で士官学校を卒業した天才でもある。

 いまは国連の秘密部隊である「ミスリル」の大佐を務めている。

 

 ミスリルはもともとミケーネ帝国をけん制するために作られ、その業務内容は「貿易路の監視および貿易船の護衛」だったが、それは体裁に過ぎず、実際は中東の「武器開発施設」の殲滅である。

 中東の先住民は戦争で滅んだということになっているが、その戦争で開発された数々の軍事技術を後世に伝えるために、その知識をDNA構造に封印したとされる。

 DNAにそれらの情報を植え付けられた者を「ウィスパード」と呼ぶ。

 

 ウィスパードは戦争移民として世界中に散らばっており、ミスリルはそうしたウィスパードを探る任務も任されている。

 ウィスパードが関与したとされる武器開発施設の殲滅まで含めてミスリルの業務内容となっている。

 

 ウィスパードが関わっているとされる兵器は少なくない。

 

 1、エヴァンゲリオン

 2、ラムダドライバ・エンジン

 3、データウェポン・システム

 4、念動システム

 5、ニュータイプ

 6、ディストーション・システム

 7、デビルガンダム細胞

 8、ラストエンペラーズ・ウェポン

 9、相転移・システム

 10、超合金Z

 

 などなど、これらはウィスパードが関与した兵器だと言われている。

 こうしたウィスパードが関与した兵器の監視、場合によっては施設の殲滅がミスリルの仕事だった。

 

「仕事を抜け出してきました」

「何やってんの、ダメじゃないの」

「そうですね。でも、アスカさんはもう少しぐらい休暇を取ったほうがよろしいと思います。あまり無理をなさらないでください」

「無理してるつもりなんてないわよ。それにせっかくエヴァのパイロットに選ばれたんだからゆっくり休んでる時間はないわ」

 

 アスカはそう言いながら時間を確認した。わずか30分のフリー時間が終わろうとしていた。

 これからさっそくエヴァ弐号機のシンクロ実験が行われる予定になっていた。

 

 ◇◇◇

 

 弐号機のシンクロ実験が行われるということで、格納庫ではさっそく弐号機がお披露目になった。

 一部のジャーナリストだけが見学を許可され、4人が弐号機を見上げた。

 

「おお、これが弐号機か」

「プロトタイプの零号機よりも重心が安定し、初号機よりも30%以上、機動性が高まっていると聞く。ジャパニーズには負けないというドイツ人の意思を感じるな」

「……」

 

 軍事ジャーナリストらは弐号機を見上げてそれぞれに称えた。カメラは禁止されているので、みながみな弐号機の姿をしっかり目に焼き付けた。

 ジャーナリストの中に一人だけ異質な存在があった。

 

 そのジャーナリストは紅一点で大変な美人だったので、その中で際立っていた。

 その美人は他のジャーナリストと違い、まったく表情を変えず、一言もしゃべらず、まっすぐ弐号機を見ていた。

 

「君、たしかラミア・ラヴレスさんだったかな? 国境なき記者団からと聞いているが、見たところ新入りのようだね」

「……」

 

 ラミアはジャーナリストに話を振られても、気にも留めずに弐号機をジッと見つめていた。

 

「どうだね、この後僕と一緒に食事でも。へへへへ」

「……」

 

 記者のナンパにも無反応だった。

 

「なんだ、マグロ女か。どんな美人でもお人形じゃ価値がないぜ」

「おい、あいつにはあまり近づかない方がいいぜ。殺し屋がバックについていると噂もある」

「そりゃ怖い。国境無き記者団はマフィアも国境を設けないのか」

 

 ジャーナリストたちはそんな会話をした後、ラミアからは距離を取った。

 ラミアはしばらく弐号機を見つめていたかと思うと、起動実験が行われる前に、格納庫を去って行った。

 

 弐号機の起動実験に立ち会う予定だった加治は去っていくラミアを遠巻きに見ていた。

 

「加治、女ばっかり見てないでちゃんとこっちを見とけ。弐号機はいずれお前の支配下に入るんだぞ」

「ああ、そうだな」

 

 加治は言われて、むさくるしい男たちが働く弐号機のほうに目を戻した。

 

「さっきの女、どうも怪しい感じだよな。美人だけど、ロボットなんじゃないかってぐらい人間味がない。ありゃタチが悪いぜ」

「ははは、じゃじゃ馬に蹴られるよりはよっぽどマシだよ」

 

 加治は誰かのことを思い浮かべながら弐号機を見上げた。

 

「宇宙を想定してスラスターモジュールをくっつけるらしいが、弐号機は宇宙に上げるのか?」

 

 加治がエンジニアの男に尋ねた。

 

「そういう噂は出てるな。初号機が地上止まりだったんで、宇宙で耐えるエヴァを世界にお披露目したいんだろ。ドイツ人は人一倍プライドが高い。どこよりも勝ってないと気が済まないんだ。その気質がヒドラ―政権やEU崩壊を招いたんだろうけどな。ドイツほどよそ者に厳しいとこはないよ。ユダヤもジャパニーズも基本許さないスタンスだ」

「おれは日本人だぜ?」

「そのうち迫害されるかもしれんから気を付けといたほうがいいぜ」

 

 ドイツ空軍には、日本のエンジニアもけっこう入っている。しかし、ドイツは長らくEUの王様のような地位にいたから、自分たちがヨーロッパの支配者であるというプライドを持っているところがあった。

 加治はかつての混乱期「セカンドインパクト」の時代を生きていた。だから、国を転々としてきた経緯があり、どの国も「自分の故郷」と思うことができずにいた。日本も例外ではなかった。

 

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