シンジがガンダムMK-Ⅱの操縦に悪戦苦闘していると、ようやく甲児とボスがやってきた。
「ミサトさん、来ましたよ」
「全国5000万のボロットファンのために参上したわよん」
「やっと来たわね、今後は遊びに行くならせめて一言連絡入れなさいよ」
甲児とボス。この二人の管理にはミサトも長い間苦労してきた。
しかし、彼らは二人とも優秀なパイロットである。
ミサトは一年戦争時代、この二人を集中的に鍛えて、期待通りの活躍をしてくれた。
甲児はマジンガーZのメインパイロットとして、ボスも補給任務をそつなくこなす縁の下の力持ちとして重宝した。
しかし、二人とも若いゆえに管理には苦労する。
特に戦争終結で、日本に帰還した後は、世話を焼く機会が増えていた。
「で、何するんですか?」
「碇司令の息子さんが候補生に入ったって言ってたでしょ。碇シンジ君っていうんだけど。今日から、あんたたちにはシンジ君の教官をやってもらうわ」
「教官? マジっすか。それめっちゃやってみたかったんですよ」
「おうおう、おれのスパルタ指導で、ニュータイプを覚醒させてやるわさ」
二人は乗り気だったが、あんまり調子に乗らせると良い結果につながらないことはミサトがよくわかっていた。
「くれぐれも真面目にやってちょうだいよ。悪い遊びを覚えさせたりとか絶対ダメだからね。わかってると思うけど、碇司令の息子だからね」
「わかってますよ。お偉いさんにはおべっか使うってやつでしょ。ミサトさんの苦手なやつ」
「そうよ。それを謹んでやるのがあなたたちの仕事」
「了解」
ひとまず、ミサトはシンジに二人を紹介した。
「こちらが兜甲児君。シンジ君もマジンガーZは知ってるでしょ。そのメインパイロットよ」
「よろしくな、シンジ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
シンジはぺこぺこと頭を下げた。
「で、こっちがボス君。補給任務の速度と精度は右に出るものはいないわよ。どちらかというと、シンジ君はボス君から補給任務を学んだほうが実用的かもしれないわね」
「任せておけ、シンジ。俺様の子分として可愛がってやるよ」
「はい、お願いします」
シンジは誰にでもぺこぺこと頭を下げた。
「ひとまず、シンジ君にMK-Ⅱのイロハを叩き込んであげて」
「オッケー、任せろ」
こうしてシンジ育成計画が立ち上がった。
シンジは再び、ガンダムMK-ⅡのVGに入った。
初めてコクピットに入って2時間。一応、歩行で基地内を移動することだけはできるようになっていた。
実戦で敵機と戦うことができるまでの道のりはまだまだ長い。
「じゃあ、シンジ君。レーダーの見方について説明するわね。これ超重要だから覚えてね」
「わかりました」
「レーダーの隣にスイッチがあるからまずは押して」
「はい」
「で、黄色い点が映ったでしょ。それがMK-Ⅱの現在位置を示してるわ。で、敵機は赤、味方は青、アンノーンは赤点滅で表示されるから覚えておいてね」
基本的なことだが、覚えるべき情報量はどんどん増えていく。
シンジは無理やりそれらを頭に入れ込んでいった。
「じゃあ、ここで……」
ミサトは通信機器を装着して、甲児につないだ。
「甲児君、マジンガーでフィールドに入ってくれる?」
「オッケー」
甲児は指示を受けて、VGを起動した。
甲児は2年以上もこのVGで訓練しているので、すべての機能を完璧に使いこなすことができた。
マジンガーZのモードを選択して、シンジが入っているフィールドに入った。
マジンガーZがバーチャル映像の中に追加されると、シンジのレーダーに青点が1つ追加された。
「シンジ君、青点が現れたのが見えたと思うけど、それがマジンガーよ。青点をタッチしてみて」
「はい」
「そしたら、詳細が表示されたでしょ。MZ119995は覚えなくてもいいけど、マジンガーZの識別番号を示してるわ。で、距離の見方なんだけど、レーダーの下にボタンがあると思うんだけど、いまは1センチを200mで設定してあるわ。割合を調節すれば索敵エリアを広げたり縮めたりできるわ。まあ、200mが基本だからそのままでいいわ」
シンジは覚えるべきことの多さに処理が追い付かなくなってきた。
「で、右のボタンで基地表示モード。さらに右隣はZ座標の分解が可能で、高度差をどのレベルまで考慮するかを決めることができるわ。で、次のボタンが対象を自動追尾モードになってて、タッチした点のほうに自動的に移動してくれるわ。それから次のボタンで通信モード。タッチした相手と通信を行うことができて……」
さすがに覚えきれなくなったので、シンジはミサトの話を追いかけるのをあきらめた。
「おーい、シンジ。聞こえるか?」
そうこうしていると、甲児から通信が入った。
「まあ、こまけえことは気にすんな。とりあえず、最初はだな、ビームライフルを乱射して基地をぶっ壊すんだ。たまらない快感だぜ」
「甲児君、ちょっと、勝手に話を進めないでくれる?」
「いや、操縦のイロハはドッカンドッカンだって」
「いいから引っ込んで」
ミサトはマスターキーから甲児の通信を切った。VGはマスターキーが最優先で実行されるので、ミサトの意思で通信を切ったり電源を落としたりできる。
「あの、ビームライフルはどうやって撃つのでしょうか?」
珍しくシンジのほうから質問が入った。
甲児に触発されたのかもしれない。男というのは細かいことより、ビームライフルやビームサーベルで戦うことに憧れを持つのかもしれない。
ミサトはいい兆候だと思ったので、ビームライフルの使い方を指導することにした。
「中央に青いボタンがあるでしょ。青く光ってるところ」
「はい」
「そこを押したら、武器オプション画面が開くわ。押してみて」
シンジが青いボタンを押すと、液晶画面に選択可能な武器という一覧が表示された。
「MK-Ⅱにはビームサーベル、ビームライフル、バルカン、ハイパーバズーカ、拡散バズーカ、ミサイルポッドが搭載されているわ。じゃあ、ビームライフルをタッチしてみて」
「はい」
すると、ガンダムMK-Ⅱは右手にビームライフルを装備した。
「オッケー。そしたら、操縦かんの側面のボタンでスタンダード3を押して、上から3番目、「ビームライフルの照準を自動で行う」を押す」
「はい」
「あとは操縦かんの中央ボタンがトリガーになって発射できるようになるわ。フルチャージでも10発ぐらいしか撃てないから気を付けてね」
「あの、撃ってもいいですか?」
「バーチャルだから派手に壊しちゃっていいわよ」
ガンダムMK-Ⅱの先には管制塔が建っている。シンジはそれを見つめた。
シンジの目の動きを感知して、照準は自動で整った。
「よーし」
シンジは操縦かん中央のボタンを押した。
ガンダムMK-Ⅱはビームライフルを発射した。
シンジの視線の先をものすごい勢いでビームが飛んでいくのがわかった。
管制塔にぶつかると、オレンジ色の光がはじけた。
バーチャルとはいえ、その映像のリアリティはかなり高かった。
「わわっ」
最初は戸惑ったが、何度か撃っていると、楽しくなってきた。
建物に照準を合わせて、何度もビームライフルを撃ち込んだ。
気が付くと基地は火の海になった。
バーチャルとはいえ、自分の力で建物をぶっ壊す感覚は、大きな力を手に入れたような気分になって悪くなかった。