スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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ロシアのウクライナ侵攻のせいで、プロットが大幅変更に。


13、宣戦布告

 世界情勢に大きな変化が生じたのは、アスカらが宇宙任務を始めて2週間後のことだった。

 これより少し前に、ネルフ本部にギガノス帝国が「ネオホンコン」を侵攻するかもしれないという情報が入っており、諜報部がその動向を注視していた。

 ちょうど、ミサトも諜報部の任務に参加していた。

 

 そのころ、甲児とシンジは使徒との戦いで半壊したエリアのがれき撤去任務についていた。

 シンジは初号機を器用に使いこなすことができるようになり、がれき撤去は大いにはかどっていた。

 零号機も参加しており、レイもシンジと同じエリアでがれき撤去の任務に参加していた。

 

 レイとの関わりにもだいぶ慣れて来た。

 シンジはエリアの最期の瓦礫を運び終えると、レイに通信を入れた。

 

「こっちは終わったよ。そっちは?」

「もう少し」

「応援に行くよ。L11点のほうから」

「ありがとう」

 

 レイのその言葉に、シンジは口元を緩めた。

 レイとの距離が縮まっているのをよく理解できる瞬間だった。その一言がシンジにはとてもうれしかった。

 

 しかし、そんなシンジに邪魔が入った。

 

「おい、シンジ。レイとこれから熱々デートとは問屋が卸さねえぜ。こっちの応援に来てくれ」

 

 ボスから通信が入った。ボスはシンジとレイが接近していることをわかっていてか、遠まわしにからかった。

 

「デートじゃないよ」

「なーにごまかしてんのさ。おれはわかってんぜ」

「だから違うって」

「いいか、シンジ。女ってのは難しいもんだわさよ。そうだわさ、さやかも難しいやつだった。俺様のラブラブアタックを真っ向から否定しやがるんだからな」

 

 ボスはフラれた過去を振り返った。

 

「あんまり猛烈にアタックしてると足元をすくわれるだわさ。遠回りが肝心よ」

「遠回りか……」

 

 シンジはつぶやいた。確かに最近はレイにアプローチしすぎていたかもしれないと思った。もちろん、シンジはボスと違ってわかりやすいラブラブアタックをぶちかますようなことはしなかったが、シンジにしては積極的に関わりすぎていたところがあった。

 

「まあ最近はおれにも新しい春が来たがな」

「え、いつの間に?」

「ふふふ、聞いて驚け。あの南原グループのカワイ子ちゃんよ。コンバトラーのパイロットに任命されたって聞いて祝福の言葉をメッセージで送ったら「ありがとう」って返事が来たのさ。おれの新しい春よ。うはははは」

 

 ボスはささいなことで舞い上がっていた。

 南原グループはネルフ傘下の軍事会社であり、現在コンバトラーVの開発を進めている。

 南原グループがネルフに入るまでには、多くのいざこざがあった。ネルフ前身のゼーレ時代に、防衛省の事務次官が南原グループを神奈川に移転させる計画を打ち立てており、ネルフから切り離される予定だった。

 ところが、事務次官がスキャンダルで失脚し、最終的にはアメリカが「ネルフに入るのが望ましい」と推薦文を送り、結果的に南原グループはネルフの傘下に入った。

 

 早くから超電磁技術が評価され、実用化に向けて研究が進んでいた。

 コンバトラーVは超電磁技術の集大成でもある。

 しかし、一年戦争に入り、実用化予定が大幅に遅れてしまった。

 もう1つの遅れの原因は、アメリカがコンバトラーVの技術に注目していて、日米合同で管理したいと申し入れていたということだ。

 

 ただ、最終的にアメリカはその計画を白紙にした。理由は、軍の合理化を進めるアメリカにとって、コンバトラーは燃費が悪く大量生産に向かないものは方針に合わないからだった。

 アメリカは金目で軍が形成されており、基本的に大量生産可能でないものについては他国に押し付ける傾向にあった。

 例えば、ヒュッケバインMKⅢがドイツに渡ったのも、採算が合わないという都合があった。

 

 アメリカは一度大型兵器の開発で、メガバンクをいくつも倒産させている。だから、兵器開発のコンパクト化はそのときの教訓だった。

 テスラの主力兵器がヒュッケバインからゲシュペンストに代わったのも、その影響があった。

 

 一方で、日本は大型兵器を好んだ。逆に言うと、大量生産帯を所有することをアメリカが嫌ったということでもある。

 安価な類似機が出回ると、ゲシュペンストの価格が落ちる。アメリカは兵器のデフレ傾向を嫌うために、同盟国の大量生産を阻止するところがあった。

 

 だが、そのおかげでエヴァンゲリオンやマジンガーZが誕生し、コンバトラーVの実戦配備も間近に迫っていた。

 シンジもコンバトラーの完成を楽しみにしていた。

 

 同じころ、ミサトは諜報部で情報の整理をしていた。

 ネルフの諜報部はいま慌ただしかった。

 

 ミサトはネオホンコンにいるミカムラ博士と連絡を取っていた。

 

「すみません、ミサト先輩、いまお父さん、大使館に出てるところなの」

「そっか。そっちはレインだけ?」

「はい、一人でお留守番ですね」

 

 ミカムラ博士の娘であるレインが留守を請け負っていた。

 レインはミサトの後輩にあたり、士官アカデミーの総合科学研究部出身だった。長い間、アメリカハーバード大学に留学しており、父親が発表した「DG細胞」の研究を引き継いでいた。

 DG細胞はいまだにその存在が疑われているのだが、DG細胞の証拠となる試料が研究所から盗み出されるなど、大きな組織がDG細胞に注目しているのは間違いなかった。

 

「様子は?」

「まだこのあたりは平和です。外出の制限もかかってませんね。国際線はすべてストップしたみたいですけど」

「そう、あんまり戦火が大きくならなければいいんだけどね」

「そうですね」

「ところで1つ聞きたいんだけど、例の盗難事件のやつ」

 

 ミサトは本題を切り出した。例の盗難事件とは、DG細胞の試料が研究室から盗み出された事件のことである。

 

「捜査はどこまで進んでる?」

「まったく。警察もあんまり本腰を入れてくれなくて。でも仕方ないです、性能が立証されたものではないですから」

 

 DG細胞は、半永久的に再生を繰り返す画期的な細胞なのだが、それはまだ完全に立証されたものではない。

 多くの科学者にとって、「無限の細胞」というのは信じられないものだった。

 すべての細胞には「ヘイフリック限界」という細胞分裂の限界値が存在する。すべての細胞には寿命があることを示唆している。

 

 DG細胞はその限界がなく、細胞のテロメアが自律的に再生することで知られている。だが、それはいわば不老不死の細胞であり、あまりに非現実的だった。

 しかし、レインはその存在を確信していた。

 

「けれど、DG細胞はあります。必ず私が立証してみせたいと思います」

「私は科学のことは詳しくないけど、頑張って。うまくいったら、私をぴちぴちの18歳にしてちょうだい」

 

 ネオホンコンの侵攻が始まったと言っても、まだ談笑しているだけの余裕があった。

 

 今回の侵攻について、ギガノス帝国は今夜声明を発表すると伝えている。

 ネルフ諜報部はいち早く、いくつかの情報を掴んでいた。

 

 ネオホンコンとギガノス帝国は数百年に渡り、領土問題を抱えている。

 ギガノス帝国は2つの大国が結集して生まれたのだが、ネオホンコンはその大国2つに揺さぶられてきた。

 

 ギガノス帝国が誕生した際に、ネオホンコンもまたギガノス帝国の領土に入ったも同然だったが、しぶとく独立を主張し続けていた。

 今回、ギガノス帝国がネオホンコンを自国領として主張したいがため、軍事行動を起こしたと見られている。

 

 ネルフ本部はもう1つ重要な事実を突き止めていた。

 

「葛城一佐、どうもティターンズがギガノス帝国を支持して、軍事的な支援に乗り出しているようですね」

「それ公式情報?」

「いえ、火星諜報部の調べですが。ジオン軍と通じている者からのリークということです」

「あてになるようなならないような話ね」

 

 ティターンズの動きを注視していた諜報部は、その情報をいち早く掴むことに成功した。

 ミサトはその情報をどう扱うべきか悩んだ。

 おそらく、ティターンズが協力しているという事実は一部を除いて、どこも把握していない。

 

 ティターンズがギガノス帝国を支援するとすれば、宇宙に大部分の拠点を持つティターンズによるコロニー侵攻が始まるおそれがある。

 直接、日本に影響は出ないが、ティターンズ勢力に近い位置にコロニーを持つ欧州には大きな影響が出るだろう。

 

 ミサトは一応それを大切な人のために伝えようと思って、ネルフ専用の通信機を手に取ったが、少し考えるように通信機をもとに戻した。

 一度、頭を抱えた。

 

「何考えてるんだか……」

 

 ミサトは独り言のようにつぶやくと、もう一度通信機を手に取った。

 

 ミサトはドイツ軍の秘密事務所の1つにネルフ回線で電話を入れた。

 この回線は複数のジャミングシステムにより守られ、外部から盗聴されないようになっている。

 

「はい、こちら、東ドイツ空軍基地の回線07-88です。ネルフ回線04-87を認識しました」

「マルドゥック機関A番17、加治良治につないでください」

 

 ミサトはそう伝えると、大きく息を吐いた。

 回線がつながって5分ほどすると、ようやく目的の人物が通信に出た。

 

「やあ、君か。突然どうした? 僕のことが恋しくなったのかい?」

「手元に日本刀があれば、全力で振り下ろしたい気分。わかってくれた?」

「機嫌が良さそうで安心したよ」

 

 電話の相手は落ち着いた様子で返してきた。

 

「バカやるために連絡したんじゃないのよ。ビジネスライク。オッケー?」

「ああ、わかってるさ」

「ギガノス帝国の侵攻。そっちもある程度情報が入ってるでしょ?」

「ああ、小耳にはな」

「ティターンズが軍事支援しているという事実は知ってる?」

「それは初耳だな」

「軍も掴んでない?」

「掴んでたら、入って来てると思うぜ。少なくともこっちには来てないな。それ本当なのかい?」

 

 やはり、ティターンズの暗躍は欧州の機関も掴んでいないようだった。

 

「信ぴょう性は半々。でも一応伝えておこうと思ってね。あんた、いまコロニーにいるんでしょ? p25かp28か」

「いんや、地上でバカンス中だよ」

「はあ? どういうこと?」

「まあ、いくつか事情があってな」

 

 加治はその事情を詳しく話さなかった。

 

「ろくでもない女を追いかけて謹慎ってとこ?」

「まさか」

 

 遠からず当たっていたが、加治は冷静にかわした。

 

「まいいわ。ティターンズが動いてる可能性があるから、伝えておくわ。どうせ関係ないだろうけど」

「いや、ありがたい情報だよ。アスカにアラドに、若い連中ばかりの部隊だからな。こっちから伝えておく」

「しっかり頼むわよ。あの子たち、私の教え子でもあるんだから」

 

 ミサトはそう言うと、回線を切ろうとしたが、とっさに加治が呼び止めて来た。

 

「あ、そうだ、葛城。ちょっと頼めるか?」

「なに?」

「いま諜報部にいるんだろ? 実は調べてほしいことがあるんだ。おれの権限じゃ限界があるから」

「何よ?」

「衛星ラフレシアを調べてほしいんだ」

「ラフレシアってジオン軍のサーバーじゃないの。なんで?」

「いや、ちょっとパスワードを拾ったんでな。もしかしたら罠かもしれないんだが」

「……一応聞くわ」

 

 加治はラフレシアのファイアーウォールを突破するためのパスワードをミサトに伝えた。

 

「一応聞くわ。そのパスワード、どこで拾ったの?」

「風の噂さ。風は良からぬものを運んでくるものさ」

 

 加治はそう言うと、通信を切った。

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