スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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15、コロニー侵攻

 ギガノス帝国の宣戦布告声明の翌日、ジオン公国から分離して生まれた軍事組織「ティターンズ」も公式にギガノス帝国の大義を支持し、全面支援を行うと声明を発表した。

 

 ティターンズの詳細はまだよくわかっていない。

 一年戦争末期から、ジオンの分断が進んでいたことはわかっていたが、ティターンズの誕生は軍の内部分裂が思った以上に深刻であることを浮き彫りにした。

 

 ティターンズ誕生に際して、ジオン公国の創始者ギレン・ザビは「連邦軍の侵略行為による結果に他ならない」と責任を国連を構成する主要7大国(アメリカ、日本、ドイツ、イギリス、フランス、韓国、ブラジル)に擦り付けた。

 ティターンズの独立に、ザビ家が関与していたかは不明である。

 もともと、ザビ家は資本主義のいいところどりで隆盛した。モビルスーツのビジネスが頭打ちであることをいち早く予感して、ネルガル工業の筆頭株主になったり、火星の鉄鋼王を次々と暗殺して、その地位を固めて来た。

 

 今回のティターンズの行動は、論理的に言えばザビ家には損害となっている。ギガノス帝国の宣戦布告以降、株価は下落ムードであり、国連主要国の経済制裁を歓迎しないはずだ。

 そのあたりの事情からか、ギレン・ザビは小さなメディアを用いて、声明を発表していた。

 

「ジオン公国は平和を重んじ、国際秩序に背くことはない。今回のティターンズの声明は、我々の大義に大きく反している」

 

 ポーズか本当かはわからなかったが、ジオン側はティターンズと友好ではないということを強調した。

 

 ティターンズはジオン軍の分裂であり、アメリカの調査では、「シャア・アズナブルの求心力低下に合わせた、国際社会からの支援を引き出すためのジオン公国の調整結果だ」としている。つまり、ジオン公国はティターンズと少なからず通じているということである。

 ティターンズはシャアの失脚に乗じて、シロッコが率いる部隊と考えられている。

 

 ティターンズは火星を中心に強力な軍事力を展開している。ザビ家の息がかかっているのか、木星連合の兵器も多数所有していることもわかっている。

 ティターンズは開発に力を入れたハンムラビにディストーションシステムを取り入れる研究に着手していた。

 

 ティターンズがギガノス帝国を支援したことで、おそらくはネオホンコンのコロニーが狙われるだろうと、国連は推測した。

 しかし、どの国も支援に消極的だった。

 

 アメリカ大統領バルデンはさっそく声明を出していた。

 

「我々は今回のギガノス帝国の侵攻に対して、軍隊を派遣することはない」

 

 日本の総理大臣岸田もアメリカに追従した。

 

「国連安保理決議の重大な違反であり、大変遺憾である。国連の主要国と十分に話し合い、必要な制裁を講じる」

 

 要約すると、軍隊は出さないということだった。

 イギリス、韓国、ブラジルも後ろ向きだったため、残ったのはドイツとフランスだけとなった。

 特にドイツはEUのリーダーというメンツがある。ネオホンコンとは歴史的につながりが深く、関与は避けられなかった。

 

 ドイツのメルカリ大統領は声明を発表した。

 

「ネオホンコンが主権を持つコロニーへの軍事攻撃に対しては、明確な軍事的措置を取る」

 

 フランスは明言を避けたが、日米チームのような軍隊の派遣については否定しなかった。

 

 日米が消極的なので、国連の連邦軍はこの侵攻に関与できなくなった。

 ネオホンコンを守るために支援に乗り出す国は限定的だった。

 

 とはいえ、ネオホンコンの軍事力は低くない。

 ネオホンコンはガンダムファイトの文化があり、それに裏打ちされたモビルスーツの開発、パイロットの育成ともに精度が高い。

 かなり激しい軍事衝突が起こるかもしれないと、メディアは危惧していた。

 

 ◇◇◇

 

 ネオホンコンの緊張感が高まる中、ティターンズとギガノス軍は同盟を結び、ギガノス特務部隊を構成し、ついにネオホンコンが主権を持つコロニーへの侵攻作戦を開始した。

 ドラグナー約40機で構成される部隊がネオホンコンの宇宙領土に侵攻した。

 

 コロニー侵攻のセオリーは以下の流れになっている。

 

1、モビルスーツなど足の速い部隊を用いて、コロニーの防御システムを破壊する。このシステムを破壊しなければ、戦艦を十分に近づけることができず、コロニーの制圧に必要な兵站が滞ってしまう。

2、コロニー周辺を占拠したら、コロニーに突入し、住民を捕獲し、内部システムを占拠する。

3、コロニーの防衛に備えて、軍事システムを再構築する。

4、周辺の宇宙航路の制圧および、監視。

 

 1つのコロニーを奪うのも簡単ではない。

 だが、コロニーは宇宙航路を形成し、火星と地球をつなぐゆえで必要不可欠であり、強奪する価値の高いものでもある。

 その瞬間は出費がかさんでも、10年もコロニーを運営すれば、その資金は回収できるとされている。

 

 ドラグナー部隊はネオホンコンの手薄なコロニーを侵攻。

 宇宙戦力に乏しいネオホンコン軍は十分に反撃することができず、約四日で「敵軍の攻撃で弾薬庫コロニーAS17は占拠された」と結果が報告された。

 

 これを受けて、ドイツ国内は騒がしくなった。

 すでに、コロニーの主権を侵攻した場合には軍事的に応答とすると声明を出していたから、ドイツ軍はコロニー奪還のために軍を派遣するしかない。

 だが、国内世論は軍事支援に否定的だった。

 

 大統領の支持率は大幅に低下した。

 国民はようやく一年戦争の悪夢から解放されたばかりであり、国民生活に支障が出ることに過敏だったようである。

 しかし、大統領は世論に背いてでも、軍事支援を決定。

 ドイツ軍はコロニーAS17の奪還のための作戦を展開することになった。

 

 ◇◇◇

 

 この侵攻で、アスカが所属する04小隊の輸送機護衛任務は中断となり、次の命令まで、p35にとどまるようにと指令が出た。

 少しゆっくりできると喜ぶパイロットが多い中、アスカはイライラしていた。

 

 アスカは諜報部が発表した今回のコロニー侵攻レポートに目を通しながら、険しい顔をした。

 

「たった四日で制圧? 情けない。何やってんの、ネオホンコンの軍は」

 

 アスカはレポートをクシャクシャにまとめた。

 立ち上がるのと同時に部屋がノックされた。

 同じ部隊の小隊長であるマリが命令を伝えに部屋を訪れたところだった。

 

 アスカはマリと面会すると、当然のように尋ねた。

 

「ちょうどいいところに来たわね。当然、うちの部隊はコロニー奪還作戦に参加させてもらえるの?」

「待機だってさ」

 

 マリはアスカのようにピリピリしていなかった。

 

「待機? それが上の決断?」

「そりゃそうでしょ、エヴァを実戦に参加させたら、世界大戦になるかもしれないんだから、上も慎重になるわよ」

 

 アスカは自分が奪還作戦に参加できないことに強い怒りをあらわにした。

 多くの兵士が戦争を避けたがる中で、アスカは違っていた。アスカにとって、戦いは生きることそのものだった。

 

「じゃあ、エヴァ降りるわ。百式に鞍替えすれば参加させてもらえるんなら、それでいいわ」

「あきれた。ほんとに好戦的なバカ。あんた、自分の歳がいくつか知ってんの?」

「15歳」

 

 アスカはマリの質問にありのまま答えた。

 

「未成年が戦争なんかやるもんじゃないわよ。一年戦争は例外。わかってるでしょ、EUが消えるかどうかの戦争とよその国のコロニーが奪われたじゃ、まったく意味が違うのよ」

「何が違うってのよ。ネオホンコンは一応同盟国でしょ。自分の国が侵略されたら、一年戦争も犬の喧嘩も関係ないのよ」

「体裁では同盟国じゃないし、何言ったって命令は変わらないわよ」

「馬鹿げた命令」

「そんなに戦いたいなら、自分で軍隊作って独立しなさいな、ティターンズみたいに」

「……」

 

 アスカは黙り込んだ。しかし、怒りの感情は治まっていなかった。

 

「いいこと、おとなしくしてるのよ。私の部隊にいる間はくれぐれも勝手なことをしないこと」

「ふん」

 

 アスカは上官にも平気で逆らう非軍人的軍人だった。

 

 ◇◇◇

 

 アスカはしばらく部屋でぼんやりとしていた。

 行き所のない怒りはやがて心の底に消沈していった。

 

 アスカの部屋からは宇宙の様子が見える。

 ずっと先までコバルトの宇宙が広がっている。

 

 ソロモン戦争では、ここからでも見えるほど、赤い炎が上がったものだった。

 アスカは今でも悔しい気持ちを持っていた。

 

 自分があの場にいれば、核攻撃をしたデンドロビウムを討つことができていた。

 核攻撃を阻止し、オウカもゼオラもプルもラトゥーニも無事帰還していた。

 自分が待機を命じられて、命令のままに待機したから、大切な仲間がすべて失われてしまった。

 

 アスカの戦いの本質は、幼いころからの競争から始まったが、その闘争心を究極のものとしたのは、ソロモン戦争の悪夢に他ならなかった。

 アスカの許せないリストに加えられた「アナベル・ガトー」を討つまでは死ねないと考えていた。

 ガトーはソロモン戦争の核抑止力部隊の隊長として参加していた。そのガトーがいなければ、仲間は奪われなかった。

 

 だから、アスカは誰よりも強くなり、ニュータイプさえも超えて、いずれ仲間の仇を討つと心に誓っていた。

 

 アスカはタブレットを操作して、気まぐれにネオホンコンの戦況をまとめた情報に目を通していた。

 外国語を使いこなせるアスカは中国語の情報もすべて読解できた。

 

「あっ」

 

 アスカはある一文に目を留めた。

 その一文には以下のようなことが記されていた。

 

 ネオホンコン軍は、共に戦ってくれる仲間を無差別に募集しています。

 軍関係者も民間人も、戦う勇気のある者の力を我々に貸してください。

 

 アスカはその記事を読んでしばらく経つと、ベッドから起き上がった。

 その目は真っ赤な闘志に燃えていた。

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