スーパーロボット大戦Y   作:やまもとやま

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第7話 シンクロ率99%

 LCLは一気に入ってきて、シンジは一瞬のうちに水中に満たされた。

 それでも落ち着いてゆっくり呼吸を取り戻した。

 

「シンジ君、大丈夫?」

「は、はい、大丈夫です」

「最初は違和感あると思うけど、すぐ慣れるわ」

 

 LCLは高温高圧に耐えるためになくてはならない。LCL内では、酸素を取り込むことができ、音波も正常に伝達するので、会話のやり取りをすることもできる。

 

「シンジ君、濃度調整するけど、どう、いまの状態で苦しい?」

「大丈夫だと思います」

 

 科学者たちはさまざまなデータを取っている。

 リツコは色々な数字をものすごい勢いでコンピュータに打ち込んでいった。

 

「次、神経接続か。ここが一番の問題ね」

 

 ミサトは手元の資料を見ながら頭をかいた。

 エヴァンゲリオンはパイロットと神経を接続して、パイロットの脳神経とエヴァンゲリオンの機能を同化させる。

 これには数々の副作用が心配されている。

 

 エヴァンゲリオンは金属であり、金属に人間の神経を同化させた場合、統計的に15%の確率で拒絶反応が出ることがわかっている。

 具体的には、嘔吐、頭痛、腹痛などである。

 また長期の神経接続による後遺症も心配されている。

 まだいくつかの課題を残したままエヴァンゲリオンは実戦配備されようとしている。

 

 この急ピッチな実戦配備には、上層部だけが知っている理由がある。

 まもなく訪れるとされている約束の刻を阻止するために、エヴァンゲリオンは必要不可欠だった。

 

 ミサトはひとまずシンジに神経接続の概要を説明した。

 

「シンジ君、今からシンジ君の神経をエヴァに同化させる神経回路接続作業に移るんだけど、いくつか説明することがあるからちゃんと聞いて」

「な、なにが起こるんですか?」

「そんなに不安に思わなくてもいいんだけど、要はね、シンジ君の神経には電子が絶えず移動していて、その信号をエヴァに送るってこと。そうすると、エヴァの体とシンジ君の脳が疑似的につながった状態になるの。電気的につながった形ね」

「はあ」

 

 よくわからないが、得体の知れないことが行われるようである。シンジは強い不安に駆り立てられた。

 

「シンジ君、あんまり不安がらないで。不安な気持ちは神経接続の副作用発生率を高めるという研究結果があるわ。笑って笑って」

「いきなり笑えないですよ」

「まあ、そうね。どうしようかしら」

「ここは俺様に任せろ」

 

 近くで実験を見守っていた甲児とボスが乱入してきた。

 

「あー、それがいいわ。あんたたちにシンジ君のリラックス係を任せるわ」

「よっしゃあ、気合入れてくぜ」

 

 ボスは右から左に持ちギャグを披露した。

 つまらないものばかりだったが、数をこなしているうちにそれなりに効果があったらしく、シンジの脳波が落ち着いた状態に移行していった。

 

「ぜーはーぜーはー、ど、どうだ?」

 

 ボスは体を張ったギャグ100連発で精神力を使い果たしてしまったらしい。

 

「すごいわ、ボス君。エンドルフィンの分泌量が推定4倍。さっすが、サポート業界の帝王」

「へへへ、帝王なんて言われると照れるじゃないのさ」

 

 ボスは誇らしく胸を張った。

 

 シンジの脳波が好転したところで、エヴァとシンジの神経接続が行われた。

 

「神経同化スタートします」

 

 神経接続が始まると、シンジの神経を漂う神経伝達部室はすべてエヴァの中に流れ込み、エヴァが持つ電気信号の一部がシンジの神経を通して脳に送り込まれていった。

 このとき、シンジは不思議な経験をした。

 

「シンジ、来たのね」

「母さん?」

 

 ふと、シンジはそうつぶやいた。

 幻聴だろうか、シンジはあたりを見渡した。たしかにいま母親に名前を呼ばれたような気がした。

 しかし、ミサトからも通信は入っていないし、気のせいだと考えた。

 

「神経完全に同化しました」

 

 科学者のマヤが伝えた。マヤは去年大学を卒業してネルフに入った若手の研究者で、リツコの部下としてエヴァプロジェクトに参加していた。

 

「シンジ君、どう? 気持ち悪いとか頭痛がするとかない?」

「はい、大丈夫です」

「ずいぶんすんなりいけたわね。相性がいいのかしら」

 

 エヴァとの神経接続では、パイロットが体の不調を訴えるケースが多い。

 しかし、シンジは何もなかった。まるで、エヴァと自分が完全に一致しているようであった。

 

「これならかなり高いシンクロ率が出るんじゃないかしら。リツコ、どう思う?」

「そうね、シンクロ率が30パーセント未満なら、何かしら症状が出るはずだから、少なくとも操縦可能ライン以上の数値は見込めそうね」

 

 この業界に詳しいリツコがそう言った。

 

「シンジ君、かなりいい結果が出そうよ、喜んで」

「そうなんですか?」

 

 シンジはただコクピットに座っているだけであり何もしていない。何もしていないから、褒められてもうれしくなかった。

 

「それじゃあ、シンジ君。今からシンクロテストを始めるから。テスト項目は全6項目。順番にやるから」

「はい」

 

 エヴァとのシンクロ率が高いほど、エヴァの感じたことをパイロットも感じることができる。

 この精度をテストするのがシンクロテストになる。

 最も簡単なテストが「物を握る」というもの。

 エヴァの手で400キロの重りを握りしめ持ち上げる。

 

 一見簡単に見えるが、強い力で物を握りしめる動作はかなり高いシンクロ率が求められる。

 

「シンジ君、目の前に重りが用意されたのが見える?」

「はい、黒いやつのことですよね?」

 

 シンジの視覚はいまエヴァと同化している。視神経の働きは良好だった。

 

「それね400キロあるんだけど、右手で握って持ち上げてみて」

「400キロですか」

「エヴァは象を持ち上げることができるぐらい力持ちよ。シンジ君はいまそんな力持ちを自在に操ることができるわけ」

 

 そう言われると誇らしい気持ちになった。

 

 シンジは言われたとおり、目の前の重りに手を伸ばした。

 

「こうかな」

 

 シンジが手を伸ばすとエヴァもまた呼応して手を伸ばした。

 

「すごい。自分の動かしたとおりに動いた」

「いま神経がつながってるから」

「なるほど、でも歩くにはどうすればいいんですか?」

「想像すればできるわ。でもいまはまだダメよ」

 

 エヴァの前身は器具で固定されていて、いまは動くことができない。

 

 シンジは目の前の重りを握りしめて持ち上げた。

 ミサトの話では400キロもあるという。しかし、コップを手に取るように楽々と持ち上げることができた。

 

「お、すげえ。動いたぜ」

 

 甲児はその様子を見て驚嘆の声をあげた。

 

「ミサトさん、シンジのやつ器用に動かすじゃないか。この前のやつは手が震えてまともに握ることもできなかったのに」

「そうねえ、これはかなりの精度かも。リツコ、どう?」

「驚きの数字」

 

 リツコも機械がはじき出したシンクロ率に驚いていた。

 

「何パーセント?」

「99%以上。ほぼ完全に初号機と同化しているわ。こんなシンクロ率は初めて」

 

 シンジは驚異的なシンクロ率を打ち出していた。

 

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