はーちゃんとの戦いは新たなステージへ……なゲームの実況プレイはーじまーるよー。
前回は部のホームページに紹介文を作ったところで終わりましたね。今回は一転、たまちゃんがスランプに陥った所から再開です。
はーちゃんの絵が上手かったことに悪夢が重なりナーバスになっているんですね。ウマ娘で言うとランダムイベントと寝不足で二重にやる気が下がってるようなもんでしょう。
そんなわけで部長に捨てられるのではと不安になったたまちゃんは、通学路を歩いてる部長に突撃したのでした。残念ながら燎原くんはスランプとは無縁なのでアドバイス出来ないです。
部長は部長でプログラムはスランプとか無いし……と悩みながらも三人で廊下を歩いているのですが、教室ではなんと、はーちゃんが†星屑のインテンツィオーネ(前編)†を布教していました。人の黒歴史をばら蒔くのはやめろ──っ!
完全に扱いがタケル殿目線の序盤のマコト兄ちゃんなのですが、そこに颯爽と裕美音が現れ乱入してきます。たまちゃんにちょっかい掛けてると勘違いしてのことですが助かりましたね。
裕美音曰くはーちゃんはイラスト部でも傍若無人らしいですが、単純にカップリングにおいて原作至上主義のはーちゃんとBL好きの裕美音は相容れないというだけの話ですね。
今さらですが裕美音の嗜むBLは普通の恋愛漫画的なモノであって、我々が切り貼りしてる素材の元ネタの方ではありません。間違ってもヤクザに追突したり地下室に監禁したりスマブラしてる作品を公の場で読んでる訳ではないです。
それから授業が始まるからと姉こと飯野夏に自分の教室に押し返されるはーちゃんを見送りつつ、さっきまで居た部長が居なくなっているのを確認して、我々も教室に戻りましょう。
んだらば昼休みまで倍速。部室に向かうたまちゃんに付き添い廊下をうろうろ、向こうは向こうでいいアドバイスが出来なかったことを悩む部長がやってくるので会話します。
ここでなんだかんだ頼りになるあやめがたまちゃんに対応しました。
先輩、好きっス! 俺もお前が好きだ! 的な会話をしているので、燎原くんには後ろで後方保護者面でもさせておきます。
部室で一息ついてから、悩みも解決したし教室戻るべーと出て少しすると、ちょうどイラスト部から出てきたはーちゃんと出くわします。
やいのやいのと騒ぎながら歩いていると、部室から出てきた部長とあやめまで合流するのですが──あやめはカラコンとワックスで見た目を弄っているので、はーちゃんは彼女がIri§先生なのではと勘違いしてしまいました。*1
Iri§先生との邂逅でやっぱりSNS部に入りたいと駄々をこねるはーちゃんは、Iri§先生の作品でゲームが作りたいらしいんですよね。
イラスト担当は俺だ俺だ俺だ俺だァ!(タカトシ)と主張するたまちゃんがはーちゃんと火花を散らすなか、部長がおもむろに『それなら三人で描けば良いのでは?』と提案しました。
燎原くんは基本的に背景と表情差分担当なので巻き込まないでクレメンス……。
こうしてはーちゃんとたまちゃんと燎原くんの三人で、三角形になってIri§先生の作品をゲーム化させることになりましたとさ。そんなわけで今回はここまで、とほほ~ゲーム制作はこりごりだよ~(アイリスアウト)*2……*3
──たまのスランプ脱却に一役買ってくれた関さんへの尊敬の念を抱きつつ、廊下を歩く俺は星屑の……例の書物を手にする水葉と遭遇した。
「はーちゃん。もうお昼休み終わるよ?」
「誰がはーちゃんよ! 言っとくけど私はアンタらと同じ高1なんだからね!」
「見ればわかる」
「幼稚だって言いたいの!?」
「沸点が低すぎる……」
ガーっと噛み付いてくる水葉だが、そこにあるのは俺たちに対する嫉妬。
文字通り当たりが強いのは、
「だいたいアンタたちだけズルいのよ! 私だってIri§、先生……と……」
言葉が途切れた水葉が俺の肩越しに背後を見て、それにつられて俺とたまも背後を見る。そこには──髪の癖をワックスで伸ばし、眼鏡を外してカラコンを入れている関さんが立っていた。
「もしかして、Iri§先生ですか!?」
「ま、ま~~~そうだ、かも? ですわ?」
「先生の作品、私のバイブルなんですサインくださいっ!!」
「あ~いいですよ~~~」
関さんのカラコンとは違う意味で目を輝かせる水葉は、言動からしてアレ=関さんとは思ってもいないらしい。
まあ、ワックスの匂いもキツいからな……と考えながらそれとなく部長の傍に避難する。
「アレ、関さんですよね?」
「……犬井さん、驚いてませんね」
「心臓に剛毛が生えてると言われたことがありますが、流石に少し引いてますよ」
「えっ、あれ関せんぱもごご」
「たま、話がこじれるからステイ」
関さんを二度見して声を荒らげそうになるたまを後ろから引き寄せて口を塞ぐ。
「──決めましたっ、私SNS部に入ります! 先生のお話でゲームを作りたいっ!」
「もごーっ! っぷあ。ちょっと待って! 何それっ絵を描くのは私が……」
「ほ、ほら。本田さんもこう言ってるし」
「やだっ、私絶対描きたい作りたい!」
俺の手を振り払って水葉に言い返すたまだが、彼女は彼女で頑として譲らない。
水葉の夢であるならば、無下にするのは憚られる。かといってどちらかと言えば俺はたまの味方だ。さてどうするかと、俺は部長を見る。
「……その顔、まるで父親みたいですよ」
「少なくともたまの保護者は自称できますがね……部長はこの場を納める妙案が?」
「……約一名が致命傷を負いますがひとつだけ。──あの、三人で一緒に絵を描いて作れば、喧嘩する必要もないのでは?」
俺の横で傍観していた部長がそう言うと、二人の声がピタリと止む。
「なるほど。当然のように俺を巻き込んだのは兎も角、単純に作業量が二倍になる」
「りょーくん、そういうのってアリなの?」
「アニメの作画だって複数人でやるだろう」
「──待て待てい!」
「ぬっ」
なんやかんやといい具合に水葉と和解──そもそも争っていないのだが──出来そうなとき、関さん……もといIri§先生が遮ってくる。
「お待ちなさい! 今さらそのような昔の作品の復元などっ! この今を生きるストーリーテラーIri§が許可すると思って!?」
……ですわ! と、取って付けた謎の口調を付け加えたIri§先生は、しかして水葉の言葉の純情さに流石に胸を痛める。
「……どうしても駄目ですか? 私っ先生の作品が好きなんです! ……でも私の愛が未熟だから、駄目なんですか……?」
「ぐっ、良心が……!」
「あや、好きなものに好きといって駄目なことはないんでしょ?」
「今のうちにあの子にいい顔しておいたほうが、あとで関さん=Iri§先生だとバレた時のダメージも低いかと」
「お前ら味方じゃないのかよ!!」
俺と部長に顔を近づけて小声で話すIri§先生もとい関さんだが、ここまで勘違いと話の拗れが生じてしまっては残念ながらもう手遅れだろう。うおおおおお……! と唸り、それから振り返ると諦めたような声色で水葉に言った。
「う~~~~~ん……、わかった、わかりましたわ! その制作認めましょう。ただし、入部は貴女がボクのお眼鏡にかなえばの話。本田さんと犬井さんと力を合わせゲームを完成させた後!」
「はいっ! 頑張ります!」
休み時間も残りわずかなところで上手いこと話に帳尻を合わせた関さんは、水葉を見送った直後に血──ではなく昼食に合わせたトマトジュース──を吐いて膝をついた。
「げふっごぶぉあああっ!?」
「お疲れ様です」
「い、犬井さんさぁ……私のこと嫌いなん?」
「好きか嫌いかで言えば前者ですが、先輩株は徐脈性不整脈のように上下してますね」
「ほぼ死んでんじゃねえか……」
ただただ気と我の強い人物という俺もたまも相手にしたことのない少女・水葉が、新たな厄介事を持ってくるだろう予感に、俺は関さんへとハンカチを差し出しながら小さくため息をついた。