無知シチュBL台本朗読を中学生にやらせてたゲームの実況プレイはーじまーるよー。
前回は池谷乃々がそもそもBLを知らずに声の収録をしていたことが判明したところで終わりましたね。今回は後半戦となります。
自分がなんとなくいかがわしい事をしている自覚はあったけど、そもそものいかがわしいという意味を分かっていなかった乃々。
そのことをたまちゃんに話しますが、彼女はそれどころではないご様子。そう! たまちゃんは! 今めっちゃトイレに行きたいのである!
やめろ──! どうしてわかってくれないんだ! 我慢のし過ぎは膀胱炎に繋がるんだよ!
たまちゃんの膀胱が決壊するのが先か、乃々がBLについての理解を示すのが先か。まずゲームの設定として、乃々演じる主人公ユミーネ(仮)は、記憶を失った腐女子です。*1
そして腐女子とはBLを好む人のことで、BLとは最強雄筋肉ち○ぽバトルのことである。色々と間違えてるけどだいたいこんな感じですね。
BLって男の人が接吻するやつですよね? となんか妙な堅苦しさを見せる乃々は、燎原くんが対応するのとは別のお客に営業スマイルを披露。立ち去るのを見届けて改めてたまちゃんに向き直る乃々は、そういうものは駄目なものだと漠然とした言葉で返して来ますが、その辺は情操教育の偏りを感じさせます。
しかしかつての裕美音曰く、『確かに男同士だとウコチャヌプコロしても子供作れないじゃんとかツッコミ入れられるけど、性別とか本能に縛られないからこそ相手のことを想う気持ちがビシッと伝わるのだ』とのこと。はぇ~(適当)
確かに私も百合から栄養素を得ている蜂みたいな生態をしていますが、でもSTAP細胞はあるって言ってたじゃないですか……!
──仕方ない、
──と、裕美音の言葉を引用して話すたまちゃんですが、ここでまた別の問題が。
そう! 池谷乃々は! 赤ちゃんはコウノトリが運んでくると思っているのである!
……あ~~……そこからかぁ。
そう。乃々が歌詞がセンシティブな歌ってみたとか動画にしてたのは、プロ根性とかではなく、そもそもえっちな概念を欠片も理解していないだけというオチだったのです。
コウノトリというのも、高野トリという人が夫婦のもとに赤ちゃんを届けに来るのだという、彼女なりの明々後日の方角に理解を三回転半捻りさせての思考でした。
トナカイとかコウノトリを中三になっても信じてるわけないじゃないですか! と言いますが、トナカイとコウノトリ自体は実在します。
そんな乃々に、たまちゃんは決心を決めて立ち上がりスケブを握ります。
ののちゃん……人と人がどうやって子供を作るのかについて……お話しします(糞土方)
そうして始まる保健体育。燎原くんがやったら確実にセクハラになる光景を尻目に、客の対応は一人でやります。うおおお二人の保健体育の邪魔はさせねぇ──っ!!
事情を察して手を貸してくれた隣のサークルの人とのゆゆうじょうパパワーで客を捌き、二人が帰ってくる時間稼ぎをしましょう。
それではコウノトリを信じている子に現実を突き付けたところで今回はここまで。ようやくトイレに向かうために離脱できたたまちゃんですが、無事に辿り着けるのか? ではまた次回。
──唐突に始まった池谷とたまの保健体育も終わり、たまがトイレに離脱したのも今は昔。
「そんな……犬とか猫と大差ないんだ……みんな知ってるんだ……」
「……あ、先ほどはどうも」
「いえ……お気になさらず」
今はそっとしておいた方がいいだろう。少女の性教育に男の俺が口出ししたら余計に拗れかねない。それも相手が池谷なら尚更である。
「──あ、もしかしてその鶏マスク、SNSの人だったりします?」
「まあ、はい。ネットの方では猟犬を名乗っております、よろしく」
「鶏なのに猟犬なんだ……」
「お父さんとお母さんも……して私を産んだのかな……なんかショックだ……」
ごもっともな指摘はそれとなくスルーしつつ、池谷に意識を向けておく。一応、訪れてきた客の対応は出来ているため大丈夫だろう。
「…………んおおおおお……!」
「池谷。休憩するか?」
「い、いえ……大丈夫です」
「そうか。……お前、まさかとは思うが、生放送の時に流れ来た際どいコメントに対しても特に考えないで肯定していたんじゃないか」
「…………はい、たぶん」
だろうな……と続けて、俺は小さくため息をつく。予感というよりはほぼ確信に近いが、池谷は、近いうちに
どことなく炎上も注目される手段と割りきっている節がある池谷のことだ、人気を得るためにと
「──普段は同人誌メインで活動しているんですか」
「そうなんですよ~、以前からノベルゲームに興味があったんですけど、いざ挑戦するとこれがなかなか大変で……」
「ですよね~、私も夏、に…………」
隣のサークルの方──名前を聞きそびれた──と話している少女が、おもむろに俺たちの方を見る。その正体は、毎度の如くこういった場所で出くわす同級生──水葉だった。
「うげ、鶏の妖怪」
「ひさしぶりだな」
「──は、はーちゃん先輩~~!」
「そう呼ばれたのは初めてだわ」
──俺と池谷乃々間にあった、たまの席に座る水葉。彼女は池谷の言葉に眉を潜めた。
「わ、私、よくないことをしてるのかもしれないんです」
「保護者、これどういう話の流れ?」
「特に理解しないままいかがわしいゲームの制作に関わったんじゃないかと嘆いている」
「はぁ。アイスと太もも一緒に写した写真載せて呟いてるくせにそういう耐性無いんだ」
「なんで知ってるんですか!!?」
「池谷……ネットリテラシーをだな」
「お父さんは黙ってて!」
「誰がお父さんだ」
水葉に暴露されて焦る池谷だが、水葉が自分のアカウントを知っている事実に驚愕していた。俺は池谷の恥じらいの無さに驚いている。
「私のサーチ力を舐めないでちょうだい。ゲームのタイトルで検索したら見つけたのよ」
「ブロックしますよ!?」
「水葉、あとで教えてくれ。この娘が変なことをしないか監視する必要が出てきた」
「ブロックしますよ!!?」
池谷が一拍置いて、それから隣の水葉にポツポツと語り始める。
「……だって太もも見せたら閲覧数増えるから」
「ふうん。とにかく何があったのよ池谷乃々」
「…………が……で…………な感じで」
「──なるほど」
「先輩もその、……つ、作り方について知ってた感じですか」
「まあ高校生にもなれば自然と知識が……」
水葉は、言葉を途切れさせて苦い顔をした。彼女も色々と漫画やゲームにおける失敗をしているのだろうことは、察するに余りある。
「こ、このゲームもBLが好きだった女の子の話なので……子供を作る事とは関係ないけど、その……えっ、えろいことに興味あるヒロインなんて、よくないものを作ってるんじゃないかって」
「んー……んー?」
ちら、と俺を見てから、小首を傾げた水葉は疑問符を浮かべて池谷に問い掛けた。
「なんでそう、いかがわしいもの=駄目なもの、って思ってるの?」
「それは──周りの友達も避けるし、お母さんも良くないって……」
「なんでそこで周りの反応が出てくるの? 人の意見に流されて駄目だって決めてない? ……あんたもなんか言いなさいよっ」
「う゛っ」
強めに肘で脇腹を小突かれて、低い呻き声が出た。俺は咳払いを一つに、池谷へと顔を向けて口を──言い換えると嘴を──開く。
「……池谷、お前は『そういう』表現をいかがわしい、恥ずかしいものだと思っているが、それはひとえに親の過保護さが原因だ」
「過保護……」
「いずれ大人になる頃には自然と男女の営みがどういうものかを知って行くからといって、幼い子供の疑問に蓋をするべきではない。
まあ、エロいものは恥ずかしいと考えるのは、わからんでもないがな」
「燎原先輩にもそんな時期が?」
「あった……わけでもないな。親父の書いた官能小説を小学生の頃に読んだのがきっかけで、他より早く保健体育を学んだ記憶がある」
鶏マスクを脱いで、席を立つ。座っている池谷に近づいて、トンと腹に指を当てながら、俺は下から見上げるように顔を合わせて続ける。
「ひゃっ」
「自分の体は、大事にしろ。──それと、あんまりSNSや生配信で露出を激しくするようなら部室でお説教だから覚えておけ」
「────ヒュッ」
それだけ言い終え、俺はサークルの席から離れてその場をあとにする。
「どこ行くのよ」
「たまの帰りが遅いから、見てくる。悪いが暇なら池谷とここに居てくれ」
「……まあ、いいけど」
「助かる」
会場内であるために早歩きで一番近いトイレに向かう。すると、女子トイレの行列の後ろで顔を青くしてもじもじしているたまを見つけた。
「たま」
「──! りょ、りょーくん」
「大丈夫……ではなさそうだな」
「りょーくん……も、もれそう」
「%で言うと?」
「97%くらい……」
……それは……不味いな。
急いで懐からパンフレットを取り出して、地図のページを開いて現在位置を確認する。
「──ん、たま。あっちの方に男女兼用の多目的トイレがある。場所的に見辛い位置の角にあるから、そこなら人がいないかもしれん」
「ほ、ほんと……?」
「少なくとも、ここで待ってたらあと十分以上は我慢しないといけないぞ」
俺の言葉に従って、たまは青い顔を更に青くしながらおぼつかない足取りで去って行く。果たしてたまが間に合ったかどうかは別の話だが……人としての尊厳は守られたとだけ言っておこう。