メインヒロインが久しぶりに登場するゲームの実況プレイはーじまーるよー。
前回は藤川姉妹の複雑な愛情表現を聴いたところで終わりましたね。今回は珍しくも裕美音と一緒に居るところから再開です。
珍しくといえば、今日の裕美音はどこか不機嫌そうですね。理由は親から『いつまでBLを読んでるつもりなのか』と叱られたからだそうで。
んまぁそう、親も悪気があるわけではないですからね。私とて『いつまでホモビデオの音声素材で遊んでるつもりなんだ』とか言われたら正論過ぎて返す言葉もありませんし。
などと言いながら図書室に向かうと、そこにはこれまた珍しく村上部長が。今日は製作する気が起きないらしく、折角だからと相席しました……が、ここで問題が一つ。
そう! 部長と裕美音はそもそもあんまり接点が無いから会話のネタがないのである! お前らさっきから俺のことチラチラ見てるだろ。
──仕方ない。燎原くんでナウなヤングにバカウケの話題を捻り出してやるか。*1
どこか元気のない部長にその理由を聞くと、こちらも親との話でテンションが下がっているようですね。彼女の母はシステムエンジニアで、その苦行さを知っているため娘の椎名にはプログラマーになってほしくないのだとか。
とはいえプログラムぐらいしか出来ることがないと、部長は途方に暮れていたんですね。そんな部長に、裕美音はちょうど自分も将来に悩んでいたからと、じゃあ二人で同人ゲームサークルで一山当てるかぁ! とのたまっていました。
(無謀なギャンブルは)してはいけないと窘める部長に対して、冗談めかしていたからか大人しく引き下がる裕美音。
しかし自分はそこまでプログラムが書けるわけではないと卑下する部長に、かつては病弱だった自分を重ねてそういうのはよくないと続けます。そう、この子昔は体が弱かったんですよね。
あれからどうしてこうなったのか。
そうして嘆いていると、燎原くんたちの元に見覚えのある邪悪な気配が。──
まるでその辺を彷徨いているラスボスとエンカウントしたかのような緊張感。百武照は
なんだかんだで実は初対面の裕美音と照の挨拶もそこそこに、しれっと放たれた浪人生というワードにツッコミを入れておきましょう。
このブラックホールは第一志望の滑り止めだった大学を、つい先日自主退学したそう。
来年一年は部長たち先輩組とライバルだと笑う百武照ですが、その瞳が真っ暗な事に気づいてしまった視聴者はSANcです。
(すごい人だなあ)とドン引きしている裕美音も、その感情は正しいとだけ言っておきます。
そんな裕美音の名前を聞いてSNS部の新作体験版のヒロインと同じ名前だと気づく辺りに、百武照の人間性が垣間見えますね。
それでは元担任に怒られに行った百武照を見送った辺りで今回はここまで。次回はまたもや歌夜関連の問題が起きます、お楽しみに。
──捲し立てるように語り終えた照さんは、そのまま廊下の奥に消えていった。
図書室から自販機とテーブルの置かれた休憩室に移り、それとなく奢られていた飲み物を音もなく啜ると、俺の横で裕美音が言う。
「将来かぁ」
「どうした?」
「ほら、藤川先輩なんかは曲の投稿で有名人じゃない?」
「……ですね……池谷さんも歌がお上手です。それに……あやも人当たりがいいから、どんなところでも友人を作れそう」
裕美音の言葉に続けた部長。
それを聞いて、裕美音は手元の紙コップを玩びながらポツリと呟いた。
「……私、このまま時間が止まっちゃえばいいのになって、時々思っちゃうんです。
中学生になって最初の頃、クラスの子と仲良くなるのに失敗しちゃって……部活も気づいたら勧誘シーズン終わっていたりして」
「帰宅部だったんですか」
「初耳だな」
「うん。りょうくんとたまちゃんには、こういう話したことないから」
アンニュイな表情で、裕美音は俯く。
「……二人のお陰で忘れてたんだ。私は友達作りが上手いわけじゃないってこと」
「まあ、裕美音は昔のこともあるからな」
病気がちで保健室によく居た小学生の頃は、裕美音の周りには人が居なかった。
偶然、プリントを届ける機会があって、俺とたまが裕美音と関わるようになったのが、ターニングポイントだったのだろう。
「──今はイラスト部もSNS部も両方楽しい。私が変なことを言って、たまちゃんや皆が笑ってくれて、りょうくんが突っ込んでくれて。……毎日が、楽しいんです」
「裕美音……」
絞り出すような吐露は、裕美音の胸のうちに隠されていた弱音を吐き出すモノだった。
安心させるように、テーブルに置かれた手に自分の手を添えて──何か言うべきかと思案する俺と隣の裕美音を、フラッシュが包み込んだ。
「──っ!?」
「……時間は有限で、明日は今日より楽しくないかもしれないと、不安になる気持ちは私も同じです。だから後悔がないように自分のやりたいことをやるべきだ。──先輩の受け売りです」
部長の手元にある、フラッシュの正体──カメラの画面には、いつぞやの合宿でたまを撮った時の画像が写されていた。
やりたいことをやっているたまの顔は、不思議と、漠然とした不安をほぐしてくれる。
「村上先輩……そんな攻めキャラみたいな顔も出来るんですね」
「お前それは流石に失礼だぞ」
「私をどういう目で見てたんですか」
まったく、と呟く部長は、荷物を纏めて立ち上がる。図書室ではやる気が出ないなどと言っていたが、結局は役目を果たそうとするのだから、部長に任命されるだけのことはあった。
部長に着いて行きながら会話を交わすと、内容は将来的な仕事の話題に移る。
「……プログラムのお仕事は、やはり大変なのでしょうか」
「どうでしょうね。俺の両親は……毛色が違うから参考にならないし、やはりとりあえず一回やってみるしかないのでは?」
「……ですよねえ。まあ、悩んで後悔するよりはよっぽどいいかもしれませんが」
「大変だったら辞めちゃえばいいんですよっ」
あっけらかんとそう締めくくる裕美音。嫌なら辞める……正しいのだろうが、間違いなくとてつもない叱られ方はするだろうな。
「……後悔、か」
「裕美音?」
「ねえりょうくん、小さい頃、私が二人に酷いこと言っちゃったの、覚えてる?」
「────」
『帰ってよ! 友達の話なんて聞きたくない!』
裕美音の問いに、俺の記憶が呼び覚まされる。あれはそう、確か──幼い裕美音なりに悩んでいた事も察せられず、たまと一緒に無神経な話をして琴線に触れてしまった時の話だったか。
「そんなこともあったな」
「……あの時、りょうくんは許してくれたけど、たまちゃんには謝れてないんだよね」
「そうか。謝りたいなら、早いうちにした方がいいぞ。そもそもたまは怒っちゃいないが」
「わかっ、ては……いるんだけどね」
もごもごと口を動かす裕美音に、俺はそう言って前を向く。妙なところで気にしすぎるのはどうかと思うが、小さい頃の嫌な記憶というものは、どうしても忘れられないものである。
とはいえ、
「し────っ! どこ行ってたんだ!?」
「最終章の仕様を固めないと他の作業進められないんですけど! 今進捗どうなって……」
「あ゛あ゛あ゜あ゛あ゜あ~~~~ッ!!?」
「部長さん!? 部長さ────ん!!」
──こんな風に邪魔が入るのは、現実でもままあるのだ。関さんが室内から飛び出してくると、その後ろで池谷が
「これが……フラグ……?」
「現実は小説よりなんとやらだな」
凄まじく間の悪い裕美音に、俺は労うように肩を叩いてやるのだった。