池谷乃々の攻略が完了するゲームの実況プレイはーじまーるよー。
前回はたまちゃんが生配信の危険性を"理解(わか)"ったところで終わりましたね。
今回は部室から再開です。
前回ラストでの乃々の発言に困惑している燎原くんたちは、その理由を聞きます。
要するに、前に裕美音が持ってきた乃々の炎上をネタにしたゲームをマジで作っちゃえ~ということみたいですね。こちらはネタ探ししなくて済むし乃々は自虐で炎上も鎮火できる、いわゆるWIN-WINになるでしょうとのこと。
そうかな……そうかも……(チョビ)
──いや、そうはならんやろ。火に油ってそれ一番言われてるから。たまちゃんも、歌夜の髪をふよふよ弄って心を落ち着けています。
乃々は迷惑を掛けた分、自分をゲーム作りに使ってくれれば良いらしいですが……ぶっちゃけ打算あるよね。わかっちゃうよおじさんRTAエスパーだから(TNTN亭)
とにかくこの話は一旦保留、ということで、たまちゃんにふよふよされている歌夜は部長の髪をふよふよしていましたとさ。*1
んだらば帰りの時間になったので燎原くんとたまちゃんは離脱しましょう。この時乃々が着いてきますが、まあ好きにさせます。
帰路を歩いていると我々にぶっちゃけておきたいことはないかと聞いてきますが、んにゃぴ……今日はやけに自虐的ですね。
複雑そうなたまちゃんも、乃々を容易に許すことは『先輩を巻き込んでゲーム作りをしている自分勝手さ』を許すことにもなるのではと悩んでいるようでした。気にしすぎ──!
たまちゃんの悩みは可愛いな池谷を見ろ全然死なないぞ(シュワちゃん)
こいつの図太さを分けてやりてぇ~と思いつつ、やはり許してあげたいけど時間が欲しいということで、たまちゃんは一足先に犬井宅に帰りました。二人っきりだね……(低音)
……いえ、『そこ』に居ますね。出ておじゃれ、隠れていても獣は匂いで分かりまするぞ。看板の裏に隠れていた裕美音を引っ張り出すと、第一声が『あれがたまちゃん流の焦らしプレイ……ってコト!?』でした。君もう帰って良いよ!
ここ最近たまちゃんと照さんがうちに泊まっていることを知っている裕美音は、どうやら我々での妄想を楽しんでいる様子。キメェ……という乃々のシンプルな思考には同意しておきます。
しかし親からの電話で現実に引き戻された裕美音は、さっさと帰らないとヤバいとかなんとか。駅が違うので門限もまあまあ厳しいのですが、流石に『たまちゃんの送り迎えをしている』という言い訳が通用しなくなっているらしい。
そんなこんなで燎原くんも家に帰るので、ここらで乃々ともお別れします……のですが、ここの裏でイベントが発生しています。それは『家に誰もいない乃々が夜遅くまで外を出歩いており、ホモコップに保護される』というものです。
ここで説明しますが、池谷乃々の家はいわゆる
両親はいつも仕事で家に居ない時間の方が多く、家にいれば喧嘩をしており、愛情を受け取らずに育ってきた乃々はネットの住人からちやほやされることで承認欲求を満たしています。
……つまり、さっきまで自虐的な発言をしていたのは、
愛して欲しい、怒って欲しい、心配して欲しい。子供なら誰もが持っている欲求を、我々に求めている。要は甘えたいんですね。
──助けを求めるヒロインに応える……燎原ャーンがやらねば誰がやる! といったところで今回はここまで。ではまた次回。
──自宅でたまと照さん、親父と共に鍋を囲んでいると、畳に置いていた携帯が震えた。
「ん」
「りょーくん、どうしたの」
「電話だ……池谷……?」
「噂の後輩ちゃん?」
二人にそう言われつつ電話に出ると、意気消沈したような声で話をされた。
「──なんだ。……は? ……ああ、ああ。わかった、すぐに行くから待っていろ」
「どうした燎原、何かあったみたいだけど」
〆のうどんを鍋に入れてかき混ぜながら問う親父。たまと照さんも電話の奥で起きた事態を聞きたいらしく、こちらを見ていた。
「…………後輩からだ。こんな時間まで外に居たら警察に保護されて、家には親が居ないから、俺の方に電話をしたんだと」
「えっ!? ののちゃんが!?」
「迎えに行ってくるから待ってろ」
俺が立ち上がって上着を手に取ると、たまたちが同じく立ち上がり上着を羽織る。
「そんなのダメっ……私も行く!」
「あ、じゃあ私も~。一応大人だからね、りょーげんくんたちだけだと未成年のみだし」
「僕も行こうか?」
「日本酒を一瓶空けた奴は座っていろ」
「はい」
車すら出せん大人は役に立たないし、なにより池谷を萎縮させかねない。
俺だけで行くつもりだったが、二人も来るのは……まあ、仕方がないだろう。
「行ってらっしゃい。お父さんは、一人寂しく、うどんを啜っています」
──という悲痛な声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
──夜遅くに明かりが煌々と輝く交番の前に、くだんの池谷は立っていた。
「池谷」
「ののちゃん!」
「……りょー先輩、たまき先輩まで。すみません……こんな夜遅くに」
項垂れている池谷はそう呟くと、こちらを見ながら更に暗い表情で言う。
「迷惑でしたよね」
「いや──「迷惑でしょ? 私、悪い子なんですよ。だから怒っていいんです」
俺の言葉を遮って、池谷が捲し立てる。
「ねえ先輩、怒ってください。叩いてもいいです。先輩たちの気が済むまで……」
そう言いながら、携帯を握る手や体をガタガタと震わせて、口角をひくつかせて。池谷は──乃々は、確かに、助けを求めていた。
「それで、それで……元通り、になる、とかは、まあ……思いっきり、わがまま……なんですけど」
「────ふんッ」
「いっっっっっ!!!??」
だから、俺は……普通に頭をぶっ叩いた。バチィンと乃々の頭から音が鳴り、後ろの二人が見なくとも顔をしかめているのはわかる。
「いっ、たぁ!? 普通ここで殴ります!? 優しくするところでは!?」
「叩いてもいいと言ったのはお前だ。──罰を欲したのは、お前だ」
「…………」
それはそうだが、とでも言いたげな顔をする乃々。それから頭に手を置いて、今度は優しく撫でながら、俺は彼女に続ける。
「ぅえっ?」
「あれは子供なのにこんな時間までうろついていた罰だ。いいか、乃々──心配したんだぞ」
「…………っ」
「ののちゃん」
俺に撫でられるがままの乃々に、横から顔を覗かせたたまが、同じように頬に手を添える。
「……あのね、ののちゃん。私もまだ、全部は整理できてないよ。先輩たちを巻き込むのは自分勝手なのかとか、ののちゃんのやったことはどうなのかとか……。
ただ一つだけ、ののちゃんも一緒の部活の時間が、私はすごく楽しくて素敵だと思ってる」
指で頬を撫でて、潤んだ瞳を見据えると、たまは一拍置いて締めくくった。
「だから──あんまり危ないことはしないで? 謝ること謝ったあとは、また一緒に……みんなで楽しめる部活にしたいな」
「……はい……っ」
その言葉を反芻するように、乃々は何度も、何度もこくこくと頷いた。
「……やー、私要る?」
「あぁ……じゃあ、交番の方に俺たちの関係の説明をしておいてもらえますか。俺も乃々のことを親父に連絡しないといけないので」
「まかされた~っ」
ゆる~っとした敬礼をしたのち、照さんは交番の中に入る。片手間で乃々の頭を撫でながら、俺はもう片方の手で携帯を掴んだ。
「乃々、自分の家に帰れるか?」
「……りょー先輩のおうちにお泊まりするのはダメですか? 家には誰も居ないし」
「…………はぁ……。少し待て」
画面をタップして電話を繋ぐと、少しの間を空けてスピーカーから声が聞こえてくる。
『燎原。後輩ちゃんは無事かい?』
「ああ、保護した。……それでだな、家に誰もいないらしいから連れて帰りたいんだが」
『──それは僕じゃなく、君が決めることだ。燎原がここまで干渉するということは、
「……そうだな。親父、悪いが予備の布団を一組出しておいてもらえるか」
『いいとも。あとついでに秘蔵のお酒も出しちゃおう……かな!?』
「息子の人間関係を肴に酒を呑むのはやめろ」
それだけ言って、電話を切る。
ため息混じりに携帯をポケットに仕舞うと、乃々はぼんやりと俺の顔を見上げていた。
「………………ほぁ~~~」
後ろの交番が逆光になっていて見辛いが、どことなく顔が赤くなっている。
「……? 乃々、帰ろうか」
「──ぁ、えっと、はぃ……」
おずおずと俺の手を取る乃々の小さい手を握り返して、説明の終えた照さんを待ってから、四人で家に帰ることになったのだが。
──その後、親父が酒を更に二瓶空けたのは言うまでもない。