楽しい部活も終わりの時が近づいてきたゲームの実況プレイはーじまーるよー。
前回は
SNS部の部室では燎原くんの他にあやめと乃々がおり、そこではあやめが『プレゼントされて嬉しいものとは』と悩んでいました。
乃々は横からスッと欲しいものリストを見せてきましたが、違うそうじゃない(曲名)
誰もダミーヘッドマイクを買ってあげるという話はしてないんだよなぁ。
あやめの悩みというのは、制作中のゲームシナリオのトゥルーエンドへの持っていき方の話でした。呪いをかけた魔女にも悩みがあってそれを解決して~という流れにしたいのだとか。
乃々はそれを聞いて、心の悩みを解決するなら承認が一番ですよ! とのこと。
えっ、それって……主人公に呪いをかけた魔女にダミーヘッドマイクを買ってあげてASMRデビューさせればいい……ってコト!?
なわけないでしょ(マジレス)
なんか最初の方は乃々のキス配信炎上をネタにしたやつ、だった筈の話がガチ目に書かれていることに当の本人が驚いていますね。
まあ、あやめも物書きの端くれとして、自分の作品である以上は最後まで面倒を見たいのでしょう。そんな旨の話をしたあやめに、乃々はリスナーにも聞かせてぇ……となっていました。
最近の乃々こと恋詩露咲るるなは色恋に鈍感な弄られキャラとして定着しつつあるそうです。うーん……自業自得では?
とかなんとか言いつつ、悩みついでに乃々はあやめに部活での悩み──そう、三年組が卒業したあとのことの話を切り出します。
自分が(照と一緒に)作った部活の癖になーぜーか何も考えてないあやめに二人で渋い顔を向けると、彼女は慌てながらも弁明。
卒業してもちょくちょく顔見せるよ! とか言いますが、乃々はそう言ったOBほど顔見せに来ることはなかったと演劇部時代の話をします。
わかるまい、ゲーム制作を遊びにしているあやめには! 好きな絵師が社会人になった途端病みツイートしかしなくなって泣く泣くリムーブすることになった、この俺の体を通して出る力が! という乃々の力説に、あやめも自分は絵師を信じてリムーブしないもん! と言い返します。
……いやそういう話ではなく、と燎原くんを使って話の流れを戻させましょう。
現実を見て話をすると、当然ですが三年組──あやめ、椎奈、歌夜が卒業したら、この部には燎原くんとたまちゃんと乃々しかいません。
原作では二人だけですし、裕美音やはーちゃんが都合よくこっちに来てくれるわけでもなし。文化祭の時が来れば去年の乃々のように誰かが参加するかもしれませんが……実はこの作品、
神の視点ではまあ結末はわかりきっていますが、SNS部の問題としては『誰も来なかったら?』の方で話を進めるべきだし、今の代で終わるなら後腐れなくしたい。
──というのが乃々の相談でした。だってたまき先輩に相談したら自分だけで抱え込むし……と彼女の性格をよく理解しているご様子。
などといったところで短いですが今回はここまで、次回をお楽しみに。
──夕方、いつぞや以来、時おり関さん宅の家事の手伝いをしていた俺は、彼女が書いた乃々をネタにした例のシナリオを読んでいた。
『悪しき魔女よ! どうして俺にこんな呪いを掛けたりしたんだ──!』
『だって……あなたがポコポコ生放送を引退するって仄めかすから……!』
『私はあなたのポコ生を──あなたの声を聴くことだけが生き甲斐だったのに!』
『あなたとの別れの悲しみに身を焼かれる思いをするくらいなら……あなたと出会わなければ良かったとさえ──』
『──ありがとう、愛しいハニー。俺のようなしがない配信者を支えてくれたのは、何時だって君たちファンのほほろ民だ』
『君たちの言葉と熱意を、俺はこれからも決して忘れないだろう──』
『だから──心の片隅でいい、俺の存在を覚えていてくれ。あの日と変わらず、君に向かって手を振り、挨拶する俺の姿を!』
『何時だって、俺は傍に居る──!』
「……なるほど」
「書いてて思ったけど、まぁ~ありがちな綺麗事だな。ボツだボツ」
「結構面白かったですよ」
読み終えてデバイスを返し、一旦席を離れてコーヒーを淹れてくる。
二つのカップのうち一つを関さんに差し出すと、彼女はポツポツと続けた。
「結局、私も無責任に……SNS部を託すとかいつまでも友達だとかなんとか言って、犬井やたまちゃんに全部丸投げするんだろうな」
「ふっ、きっと照さんだったら、それでいいって言いますよ」
「言いそ~。まっ、SNS部で思う存分楽しい思いをしたし、このシナリオを書き終えれば一応の役目は果たせたってことになるよなぁ」
湯気の立つコーヒーが眼鏡を曇らせ、目元が隠れる。役目は果たせた。そう言う割には──
「まだモヤモヤしているようですが」
「──犬井殿はなんでもお見通し、ってか。そうなんだよなあ、やり残したことなんてない、って思ってても……まだあるんじゃないかって気がしてな。やり残したこと、なんて……」
「あるんでしょう。──たまと交換宿泊をした時に、照さんに何を言われたんですか」
「お前マジでこえぇよ」
……なんとなく表情や仕草、態度である程度分かってしまうんだから仕方ないだろう。
とは口に出さず、関さんの言葉を待つ。すると、ため息をこぼしつつも彼女は言った。
「照先輩なぁ……あの人、私たちとは卒業後は関わるつもりもなかったっぽいんだよな。
『私の身勝手が、あなたたちの時間を奪って、不可逆に人生をねじ曲げているんじゃないか』って言われたし、『可能なら私を忘れてほしい』とも言われたんだけど────」
そこまで言うと、関さんは目を見開いて、何かに気がついたように続ける。
「──そうか、私、まだ照先輩にありがとうって言えてないんだ。
あの人と〆切に追われた日も、SNS部で
「……それで?」
「それはきっと、しーや藤川さんにとっても絶対に同じなんだよ。でも、それを伝えられるほど、私は照先輩の信頼を勝ち得ていない。純粋な気持ちを伝えるには、どうすればいい?」
「わかっているくせに」
俺の言葉に、関さんはにやりと笑う。コーヒーを飲み干し、眼鏡を外して、がたりと勢いよく立ち上がってデバイスを手に取る。
「──冗談のセンスまで奇抜な先輩だ、
「調子が戻ってきたな……」
いつものノリが出てきた関さん──否、Iri§先生は、意気揚々と文章を叩き込み始める。
……と、ノリが出すぎて暑苦しくなってきた辺りで、俺はそのまま部屋を出た。
「†ボクはIri§──ザ・ストーリーテラー†
†私たちと完璧に決別できなかった寂しがりやな先輩の鼻先に全力で物語をぶつけてやろうじゃないか──†」
「ねー、あれなに?」
「信人、目を合わせるな。魂を吸い取られるぞ」
「いつも学校でアレの相手してるんすか?」
「慣れると可愛いもんだぞ」
「嘘でしょ……」
関さんの弟二人、春馬と信人にそう言って、俺は静かに扉を閉めて家に帰るのだった。
──後日、教室では、水葉の姉である飯野夏が悩んでいた。
「承認されたい」
「どうした急に」
「いやさ、この前るるなさんの欲しいものリストからお菓子詰め合わせを送ったんだけど、他のファンが買った高額商品と被って……」
「偶然にもスルーされたわけか」
すっかり乃々──人気生配信主にハマっている飯野は、そう言いながら携帯でヤツの公開している欲しいものリストを眺めている。
「やっぱ数千円の小物じゃいかんね。次は奮発してこれ送ろうかと思ってるんよー、どんなマイクかよくわからないけど」
「……12万円…………」
「どしたん犬井さん」
俺は思わず顔を覆う。変わってしまったな、と言うべきか否か。しかし好きなものが出来たことは否定すべきではなく、かといってそこから先は地獄だぞと言うべきかとも悩む。
オタク趣味の先輩としては安易な否定はしたくないが、その出費はやめた方がいいとは言いたい。一瞬で思考が駆け抜け──
「飯野」
「なにかね」
「田山さんに連絡させてもらう……」
「なんで!?」
「お前の健全なオタク活動の為だ……!」
苦い表情をしながら、俺は休み時間の間に飯野家のメイド──田山さんに連絡をする。
帰ったら