恋は~ダービ~競争~社会~(ジョイマン)なゲームの実況プレイはーじまーるよー。
前回はドッキドキーのワックワクーな合宿イベントが終わりましたね。今回は本実況の花形、孤独のレヴュー、ドキドキ文芸部、喋るブラックホールこと百武照がようやく登場します。
そんなわけで朝、5時までBL談義をしていたらしい眠気で瀕死の裕美音を引っ張ってたまちゃん共々登校します。たまちゃんは課題である表情差分で難儀しているみたいですが、そこに現れたのが同級生の清水マリカというハーフの子でした。この子はちょくちょく出番のある人なので覚えておいて損はありません。
そしてもう一人が
2巻から登場するメインキャラの姉で、動物好き、更には良家の出身なのでやや(燎原くんほど融通が効く訳ではない方の)堅物と、珍しくもステまにおける常識人ポジションです。*1
ではこの辺は特に進展もないのでキャラ紹介を終えたら倍速。下校後は川を眺めて黄昏れるたまちゃんに付き合いましょう。彼女の持ち込んだべっこう飴がうん、美味しい!(ナイナイ岡村)
表情差分が上手く描けないことを嘆くたまちゃんは猫になりたいね♀(レ)と溢します。いえ、たまちゃんは太刀です(裕美音並感)
とかなんとか言っていると、時間経過でラスボス戦……もとい百武照とエンカウントします。
いい歳して猫耳カチューシャを着けた大学生のエントリーだ! イヤーッ!*2
燎原くんのえげつないモノを見る顔を無視しつつ会話を続行。最初の方はマタタビでもキメてんのかってくらいに話が通じないので、たまちゃんが悩みを吐露するあたりまでボタン連打。
自分の事を『テル』と名乗る百武照はたまちゃんのスケブの絵を見て、それがSNS部で作ったゲームのキャラだと理解します。
自然と二人も所属していることを察して、百武照はなんとスケブを持ち去ります。
この時点で「は?」案件なのですが、百武照に誘われるのでとりあえず着いていきましょう。何故かカフェで奢られることになりますが、スケブを返してもらうように言ったたまちゃんに、あろうことか百武照はなんで? と返します。
燎原くんの額にビッキビキに青筋が立っていますね。落ち着け燎原くん! こいつは将来的にはお前の彼女になる女だぞ!
──と、百武照はたまちゃんに『きみは絵を描かされるから描くの?』と質問しますね。
百武照なりにゲーム制作は労力と見合わないことを知っているからこその質問なのですが、ここでたまちゃんはみんなで作るのが楽しいと思ったと答え、無事『テル』に認められました。
ちなみに百武照は9巻辺りでこの時の話を引き合いに出して、『嫌々で参加させられてるなら部の幕引きをするつもりだった』と答えます。お前(SNS部に向ける感情が)重いんだよ!
その後はあれよあれよと煙に巻かれて解散となりましたが、二人とも怒濤の展開過ぎて狐につままれたような顔をしています。
直後に先ほど紹介した飯野夏がペットの散歩をしているところに遭遇したところで今回はここまで。次回、スキャナー購入。お楽しみに。
──下校してたまに付き合う俺は、河原で川を眺めながら芝生の上に座り込んでいた。
隣に座るたまは表情の描き方に悩んでいるようだが、ただ絵を描くより差分として描き分ける方が難しいのはわからないでもない。
「うーん……あっ、りょーくん、おばあちゃんが作ってくれたべっこう飴食べる?」
「……ああ、貰うよ。糖分は頭を回すのに必要だし、ひとまず悩みは忘れた方がいい」
鞄から出されたべっこう飴を受け取り、包みを外して口に含む。甘さがじんわりと広がり、ほっと一息をつき──隣でたまが噎せるのを聞く。
「んぐっ!?」
「どうした、大丈夫か?」
「だ、大丈夫、変なところに串が……」
ごほごほと咳き込むたまの背中をさすり、落ち着くのを待つ。たまが食べようとしたべっこう飴は、地面を転がり猫の餌となっていた。
「……ダメだなぁ、私って」
「今日のたまはいつにも増してネガティブだな。そこまで難しく考えることか?」
「……いっそ、猫になれたらなぁ。そしたら一日中りょーくんの膝の上で寝てられるのに」
「お前結構元気だな?」
「…………に、にゃー」
また投げられたいのか。と言おうとして、ふと気配を感じて振り返る。いつの間にか真横に居た女性の、黒く濁った瞳と目線がかち合った。
「────!?」
「にゃ? にゃー!」
「ひゃっ! だ、誰っ!?」
「子猫ちゃん、こんにちはっ! もっかいにゃーって言ってみて?」
「にゃ……いえ、こ、こんにちは」
「…………誰ですか」
「あーっそっちの少年は携帯から手を離してくれないかな? 1と1のあとに0はやめて!?」
たまを背中に隠して反射的に後ずさりながら携帯を取り出す。頭に猫耳のカチューシャを着けた女性は、大慌てで取り繕う。彼女からは悪意は感じないが、いまいち
全身が危険信号を放っているにも関わらず──どうにも、この女性から目を離せない。
俺の警戒心に気を悪くするでもなく、女性はそのまま俺を挟んでたまの事情を聞いた。
「──そっか、絵が上手く描けないんだ」
「はい……クラスメートにも茶化されちゃって」
「むむっ、もしや少年もからかったのかな?」
「そんなわけないでしょう、曲がりなりにも、俺も一応絵描きですよ」
女性はふぅん? と言って笑うが、その目だけは笑っていなかった。
「あ、私のことはテルって呼んでねっ。折角だから子猫ちゃんの絵を見せてくれる? 私も絵にはコダワリがあるから、笑ったりしないよ」
「……えっと……りょーくん?」
「たまが決めなさい」
「うん、それじゃあ……どうぞ」
「うむ、拝見いたす~」
ニコニコと顔だけは笑わせて、女性──テルさんはたまのスケブを見て、パラパラとめくって少しすると、表情を固めて凝視する。
「あれ──? もしかしてきみたち……」
「……えっと、何か?」
絵を見ていたテルさんの顔から、不意に様々な感情が溢れた。それは怒り、呆れ、興味。その全てを押し留めて、最後には虚無に戻る。
「なんでもないよ~、ただしこれは私が失敬します! 代わりに、子猫ちゃんたちにまほうをかけてあげましょうっ!」
「……は?」
「……えっ」
──あれよあれよと街中のカフェに連れていかれた俺たちを端から見れば、『猫耳カチューシャを着けた奇妙な女性とお茶をしている不審人物たち』であろうことは想像に難くない。
「大学の友達にここを教わったんだけど、パンケーキがほんとに美味しくて──」
「たまのスケブを返してもらえますか」
俺の言葉は、自然と怒気がこもっていた。悪意はなく、されど負の感情が多いテルさんを前に、俺の感情はずっと乱されているのを感じる。
だが、俺の問いに、テルさんはあっけらかんとした顔をしてさらりと返した。
「え、なんで?」
「は──?」
俺からたまに目線を動かして、テルさんはおもむろに口を開いて問い掛ける。
「ゲームを作るって大変なことだけど、その為にきみが頑張る必要ってあるのかな? きみは、絵を描かされるから描くの?」
「──それは」
たまはちょうど悩んでいた部分を指摘されて口ごもる。俺はともかく、たまの悩みはそれだ。ゲーム制作の為という理由があるがゆえに、絵を描く行為が趣味から義務になっているのだ。
「わ、私は……だらだらしてるだけの自分を、変えたくて……」
だが、たまは気づいている筈だ。
「この前、合宿とかしてっ……みんなで一緒にゲームを作るのが楽しいって思って、だから──、それは────!」
「……よろしい!」
たまの口から出ようとする言葉がつまり、激情から目尻に涙が溜まる。しかし、それを見て、テルさんはあっさりとスケブを返した。
「それだけ本気なら、その意気で取り組めば、きっとイカすモノが作れるよっ!」
ポカンとしているたまは胸に押し当てられるように渡されたスケブを受け取り、テルさんが会計を済ませて踵を返す。去ろうとした彼女の肩を掴むと、テルさんはきょとんとしながらも言う。
「ん? どしたの?」
「貴女は……、……。いえ、すみません。引き留めてしまって」
俺を見上げるその瞳から感じ取る虚無感が、何かを諦めたような、それでいて一点に執着をしているように見えて、まるで吸い込まれるような──と考えた辺りで、ふと、たまに呼ばれる。
「りょーくんっ」
「──ん、なんだ?」
「ねえ、さっきの人にゲーム作ってること説明したっけ?」
「……ああ、いや、してないな。テルさん?」
「あれ? い、居ない!? いつのまに……」
振り返った顔を戻してテルさんにその真偽を問おうとしたが、ほんの一瞬の間に彼女の姿はどこにもなかった。なんというか、狐につままれたような、不思議な感覚。
「うや? 本田さんと犬井くん。どしたん、こんなところでボーッとして」
「あっ、飯野さん」
「飯野か。いや、まあ、なんだ……奇妙な人に誘われてお茶を少し、な」
「知らん人についてっちゃ駄目でしょ」
ばったりと再開した飯野は、どうやら犬の散歩をしていたらしい。言われてみれば確かに、スケブを持っていかれたからとはいえ、赤の他人とお茶をするなんてあまりにも危険な行為だった。
俺はいいが、たまが危なかったのだ。やはり容赦なく通報するべきだったか。
「……なんだったんだ、あの人」
俺は胸の内に、あの女性──テルさんの瞳の色を思い浮かべながら、そんな事を呟いていた。