照を中心にした物語が佳境に入るゲームの実況プレイはーじまーるよー。
前回はコミマで地獄を見たところで終わりましたね。今回は夏休みから再開です。
コミマを経て一旦それぞれが実家に"散ッ!"したのも暫く、夏休みに久々の広い和室で一人寂しく音楽を聴きながら絵を描いていた燎原くんは、ふと連絡に気づきました。
なにやら歌夜がまたしても相談があるから泊まりに来てほしいとのこと。ゲーム制作の修羅場を乗り越えて燃え尽き気味に暇をもて余しているので、誘いに乗りましょう。
親父(biim兄貴ではない)に泊まりにいくことを報告して、最低限の荷物を片手にいざ
藤川家に向かう途中、同じく歌夜に呼ばれたらしいたまちゃんとも合流します。
電車でこちらに来る途中で歌夜とメッセージでやりとりをしていたたまちゃんいわく、人生相談をしたいとか。あと新顔が増えたとか。
来てのお楽しみ! と返されたそうですが、これで赤ちゃんが居たら私は同情するしかないんですよね。藤川姉妹、もう喧嘩はしてないけど仲が良いわけでもないので。
とかなんとか駄弁っていると、藤川家に到着。インターホンくんをねっとり鳴らして少し待ち、中から開けてもらうのを待ちましょう。
ガチャリと開けられ中から出てきたのは、いつもの元ミュージシャンの姉ちゃん(2×歳)こと藤川奏でした。そしてその頭にはなんか猫耳が生え、足を飼い犬に噛まれています。なんで?
突然の情報量に宇宙猫している二人は、それから頭の猫耳がうごめき、ひょこりと猫そのものが顔を覗かせてきた光景に困惑。なぜならその猫はどこかで見たことのある──
数日前にベランダから入ってきて居着いたのを保護したらしいですね。あれほど首輪しとけと言ったのに……とぼやきつつ、犬が吠えるから飼えないと里親探しをしている奏さんに案内されて歌夜の部屋の前に通されました。
相変わらず作業中の歌夜の部屋に顔を覗き込ませると、なにやら絶賛ボーカリスト中。
自分の言動を後悔してるようなリリックは聞いてると気が滅入るのでさっさと部屋に入ってイベントにも入りましょう。
──カップヘッド辺りに出てきそうな皮肉っぽく言いがちな小悪魔系の顔を崩さない歌夜に、ふとコミマの感想を問われます。
たまちゃんは、楽しかったけどエゴサしたらシステムがわかりづらいとかパズルパートで詰まった人の意見もあったりで嬉し恥ずかしって感じですね。気になってエゴサしてたら一日が潰れたり、乃々の気持ちを理解できましたか……?
燎原くんはフォロワーが増えました。猟犬先生はSNS部のマスコットみたいなもんやし。
と、歌夜の相談に入ります。良い知らせと悪い知らせがあるようで、まずは良い知らせから。彼女はコミマでプロの音楽事務所にスカウトされたらしく、名刺を受け取っていました。姉いわく進路の一つに検討しても良いところなのだとか。
そして悪い知らせは──といったところで今回はここまで。次回、実況パート最終回。照攻略最終決戦を経て、SNS部が下した決断とは。
──コミックマーケット会場で照と偶然再会した歌夜は、つい浮かれていたこともあり、素直にプロにスカウトされたことを話していた。
『いいじゃんっ! 大学入学はやめてそっちを選ぶことにしたの?』
『え、いや……一旦大学で様子見しつつって感じですよ、照先輩とも約束したし──』
『ああ、いーよ別に』
歌夜の顔を真っ直ぐ見据えて、照はあっけらかんと否定する。
『え? 大学、一緒に受かろうって』
『……ちょっと落ち着いて話そっか』
目尻を細めて、照は休憩スペースに歌夜を連れて行くと、静かに言葉を続ける。
『私はね、これ以上あなた達の人生の枷になりたくないの。私はこの人生を後悔しないよう消費し尽くして死ぬ──そんなエゴでSNS部を作った。新しく作った部活で失敗して、完膚なきまでに失望され、嫌われて、「ああやっぱり私は誰かを率いることすら出来ない人間なんだ」と確認して、SNS部を思いでリストに加えて終わり。
──ってなる予定だったんだけど、成功しちゃったんだよね。あなた達は根拠も無く行動した私を信じて、最後まで完成させてくれた』
買ってきたパックジュースを啜り、一息ついて歌夜を見ながら言う。
『本当に、私とってもすごく素敵な思い出だった。だからこそ、あなた達をSNS部から、私から解放して、それで
私が生まれた理由はたぶん……親を照らすための非常灯。だとしても、一滴でもなにかを残してから消えたい。卒業式ごっこをしたあと、欲張りな私は──みんなの人生を明るく照らす光でいられたかな? って、
眩しいものを見るように目を細めて、飲み干したパックを潰し、照は席を立つ。
『──ちょっと長く語りすぎたね。ふよんちゃんが笑ってくれるだけで、私は十分多く貰ってるよ。私はこれ以上あなたたちから与えられたくないし、奪いたくもない。
ふよんちゃんは未来への切符を手にしたんだし、どちらの道を選ぶにしても、私が邪魔になるなら記憶から消していっそ忘れてほしいな。冷静なふよんちゃんも好きだよ』
──ってさ。と言って話を終わらせた歌夜を前に、俺とたまは顔を手で覆って重いため息をつく。まさか、挨拶回りをしただけなのに帰りが遅かったのは照さんと話していたからだったのか。
「……重っ」
「それは私も思ってる」
胃もたれしかねん情報を噛み砕いて理解するが、ふいに疑問が脳裏をよぎる。
照さんは自分が嫌いで、家族が嫌いで、人に迷惑を掛けるくらいなら自分が消えることを選ぼうとする人間だった。
そんな人間が──たまですら幾つか荷物を残しているのに、
ざわざわと、嫌な予感が脳裏を駆け抜ける。
「たまちゃんと燎原くん、夏コミ以降に照先輩と連絡とったりした?」
「いえ、『お盆は実家に戻るからアパートの方に行っても誰もいないよ~』ってメッセージを貰ったっきりで……ね、りょーくん?」
「私も何度か連絡したんだけど、あれから出てくれなくてさ~」
そんな会話をしている二人をよそに、俺はベッドから立ち上がり二人の手を引く。
「──クソっ、気づくのが遅れた……!」
「……りょーくん?」
「燎原くん?」
「歌夜、たま、一緒に来てくれ、手遅れになるかもしれん」
俺の顔を見てただ事ではないと察してくれたのか、二人はなにも言わずに頷いてくれた。どたばたと部屋を出る俺たちに何事かとリビングから顔を向ける奏さんにはあとで説明するとして、俺たちは大急ぎで照さんのアパートに向かう。
「照さんッ!」
念のためにと互いに交換していた合鍵でアパートのドアを開けようとして、