【完結】ステラのまほう/百武照攻略実況   作:兼六園

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LAST STAGE 10-8

 愛して! 愛さないで! なゲームの実況プレイはーじまーるよー。

 

 前回は歌夜の家に泊まろうとしたところで終わりしたね。今回は照のアパートから再開です。

 部屋の中には段ボール箱一つ残してすっからかんであり、彼女の居た形跡はありません。

 箱も自分の荷物に紛れていた燎原くんやたまちゃんの私物を入れてあるだけで、その上にぽつねんと手紙が置かれております。

 

 いわゆる死後のメッセージ的なアレですね。あっ先輩こいつ手紙とか遺して逝きましたよ、やっぱラスボスなんすねぇ。

『死んだりするわけじゃないしみたらしも連れていくから心配しないで』的なことが書かれていますが、そのみたらし藤川家に居るんですけど……うーんダメみたいですね。成仏して。

 

 

 とか言って見捨てるのも不味いので、とりあえず探しにいきましょう。今居る三人で"散ッ!"しながら部長やあやめにも聞きましたが、思い当たる場所なんてわかるわけもないので、いたずらに時間が過ぎてゆくばかり。

 

 いつのまにか半野良のみたらしが付いてきていて、時間もすっかり夜。

 これ以上は流石に危ないので帰った方がいいという流れになり、公園で休憩を挟んでからいざ自宅に鎌倉……と立ち上がった辺りで、ベンチとベンチの間に段ボールに入ってうずくまってる野生の百武照が落ちてました。

 

 なんかいる──!!?(ビュティ)となった我々は、ついに行方不明の照を発見しました。なにやら体調が悪いようで、おでこに手を当てるとめちゃくちゃ熱いです。ベーコン焼けそう。

 

 風邪こじらせて悪化させているなら家に帰るぞ~と提案するも嫌がるので、ぶっ倒れる前に抱えて病院につうずるっこみましょう。やっぱ……夜間診療やってる病院を……最高やな! 

 

 太い注射針(シーチキン)をぶすり♂されて点滴を注入されている照と話す前に、小腹が空いたのでたまちゃんたちに買い物に行ってきてもらいます。

 

 ──そしてここからがマグマなんです。照攻略の際の最終ステージとなるこのイベントでは、本来であれば歌夜が説得をして姿を消すことを思い直させるのですが、好感度をMAXまで稼いでいる場合はそのポジションをオリ主が務めます。

 

 ……えっ、好感度なんていつ稼いでいたんだよって? 実は彼女は攻略条件の『スキル3つを均一に育てる』という条件を達成できていれば、関わってるうちに勝手に好感度が上がります。

 

 つまり条件を整えるまでが面倒なだけで、整えてしまえばわりとチョロインだったんですね。データなんかねえよ(マッスルひろゆき)

 

 あとはパパパッと燎原くんが理解ある彼くんになって、終わり! なので、短いですが今回で百武照攻略実況はここまで。

 残り2partは攻略後のイベントを垂れ流すだけなので私の出番はここまでとなります。

 

 ではまた別のRTAか実況プレイでお会いしましょう。ほな、また……

 

 

 

 

 

 

 

『星ノ辻高2年 犬井燎原さんへ

 

 この手紙をもし貴方が読むとしたら、どれぐらいの時間が経っているかわからないけど、とりあえず今は8月18日頃です。

 りょーげんくんが家に招いてくれたこの数ヵ月かの時間は本当に楽しかった。私の気まぐれな精神もかなり安定するようになりました。

 本当にありがとう。私は誰かと一緒に居ないとダメなんだなって気付かされてしまいました。このまま貴方たちとの生活に甘え続けるのは、二人の人生によくない影響を与えてしまうんじゃないかって、最近すごく不安でいっぱいです。

 だから、しばらく一人にさせてください。死んだりはしないからみたらしも連れていきます。もし戻ってこなかった時は、私が居たこと、私との時間のことは、綺麗さっぱり忘れて下さい』

 

 

「──自分の遺書を目の前で朗読される気分はどうだ? 感想を述べよ」

「んぎょわぁおぉ~~~!!??」

 

 点滴を繋がれて動かせない左腕を垂らしたまま、右手で頭を抱える照を、俺は横のパイプ椅子に座って眺めていた。手紙は丁重に畳み、バッグの中に仕舞っておく。

 

「……まったく、部屋を空っぽにするドッキリまで仕込んでおいてこれか」

「えへへ、びっくりした?」

「しないわけないだろう」

 

 ため息をつく俺に、照は言う。

 

「コミマのあと、ちょっと風邪でばたんきゅ~しちゃってね、でもたまたまちゃんは実家だしりょーげんくんも居ないから心細くて」

「そうか」

「誰かに看病頼もうかとも思ったんだけど、考える度に迷惑かける自分が嫌いになった」

「…………」

「だからお引っ越し業者さん呼んで荷物ほとんど実家に送り返しちゃった!」

「なんで?」

 

 俺の疑問に、照はへらへらと笑うだけ。その表情は、強烈な罪悪感を隠す顔だった。

 

「……で、しばらくウロウロしてたらみたらしはどっか行っちゃうし風邪は治らないし、本末転倒ってこういうのを言うんだねぇ」

「照」

「……ん?」

「今は、俺だけだぞ」

 

 ──ここがターニングポイントだということはわかっていた。だから歌夜とたまに夜食を買いに行かせるという名目で部屋から出てもらっていた。恐らく歌夜は分かっているだろうから、しばらくは外でたまを連れ回していてもらう。

 

 すると、取り繕っていた仮面(かお)が剥がれ、暗い感情が彼女の口から言葉となって溢れる。

 

「──そう、そうだね。ごめん……ごめんね。──あ、駄目だ、ママと同じこと言ってる。

 私のママね、『ごめんね照ちゃん、ちょっと疲れちゃっただけだから心配しないで。私が生きるのが下手なだけだから、あなたは何も悪くないの』って、俯いて謝って俯いて謝って」

「ああ」

「同じなんだよ。私もママと同じ、人に迷惑をかけて、全部自分が悪いって人に謝らせようとしない。……同じだ。同じ──私の、この体の隅々まで、ママ(あれ)と同じ血が流れてる」

 

 照はガリガリと、左腕を掻きむしる。

 

「実の親を傷つけても自分を傷つけても何も変わらない、弱い自分も価値の無い人生も全部、何もかも──「照」

 

 ガリガリ、ガリガリと爪を立てられている照の腕に手を重ねた。照は俺の手の甲を引っ掻いて、それから握り、ただただ力を入れる。

 

「……何を言えばいいか、わからないでしょ。こんなやつの相手なんて、正直、面倒くさいでしょ。自分がそうだったからわかるよ」

 

 握られている手を見て、痕が残るだろうな、とぼんやりと思案しながら照の言葉を聞く。

 

「パパは子作りがママの心を変える契機になると期待してたんだろうね。

 でも出てきたのが出来の悪いクソガキだったから、事態はより悪くなった。

 ママがこんなに辛くなる必要が、私がそれを見てこんなに辛くなる必要がどこにあるんだろう? 誰も産んでくれなんて頼んでないのに──そうやってぐだぐだ悩んでいるうちに……」

 

「──ある日いきなり消えてしまって、周りの人間も自分のことを忘れてしまえばいいのに。とでも思ってしまったのか。半端だな」

 

「そう、半端なんだよねえ。結局自殺(きえること)なんて出来なかったし、迷惑かけちゃうし、今でもこの点滴を引っこ抜く勇気も無い」

 

 自分の腕を掴む俺の手を離したいのか、はたまた掴まえておきたいのかわからないが、照はずっと俺の手に力を入れている。

 ──そういうことなのだ。照は自分が嫌いで、親が嫌いで、だけど俺にはこうして弱音を吐き、突き放したいのに離れてほしくない。

 

 愛してほしいが、愛されたくない。百武照という人間の根底にあるのは、シンプルな感情。

 

 まるで子供の癇癪だと思っていたが、事実として、照は子供なのだ。親の勝手な期待で人生を歪ませられて、幼いながらに病人への気遣いで心が歪み、時間が止まってしまっている。

 

「俺は医者ではないから、照の脳や心の異常についての話をするつもりは無い。一般的な道徳倫理を持つ人間の正論なんて、ちゃんとわかっているからこそ下らないのだろうからな」

「よくわかってるね~」

「どれだけそれらしい言葉を使ったところで、俺とお前は他人でしかない。消えたい疲れた居なくなりたいと言っているヤツを引き留める権利は無いし、言う気もないが──」

 

 俺の手を掴んでいる右手の小指と自分の小指を絡めて、俺は照の顔を見て続ける。

 

「例えば、そうだな。次の星辻祭──部員勧誘の文化祭が終わるまではとりあえず生きてみる、っていうのはどうだ?」

「私が約束好きそうな奴に見える?」

「いいやまったく。でも、可愛い後輩に頼まれたらなんやかんやで筋は通すだろ。照がそういう奴だからSNS部は続いていたんだからな」

「あはは、言うねえ」

 

 声はともかく、照の顔は笑っていない。

 

「そういえばりょーげんくん、ナチュラルにタメ口になってるね」

「今の照なら、丁寧に扱われるよりはこの方が気が楽だろうと思ったからな」

「ふぅ~ん、悪くないかも」

 

 けれども、今すぐにでも死んでしまおうという雰囲気は、無くなっていた。

 

 

 

 

 

 ──後日の二学期を迎えた夏、部室に集まった全員で、次の活動についての話をしている。

 

「部室で打合せるのも久しぶりだなー」

「星辻祭の件など……正直、受験勉強もあるので私たちは時間が取れるかも怪しいのですが」

「はいはーい、提案があるんだけど」

 

 部長たち3年組がそう言い、ふいに歌夜が挙手をして注目を集める。

 

「──SNS部、解散しない?」

 

 あまりにも唐突にそう言い出し、そう言い出すことを知っていた俺以外の全員の動きが止まる。言葉の意味を飲み込めた頃には、部室に困惑の色だけが残されていた。

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