一応、負け犬5の続きということで始まっています。
「総ボツ」
恵がばっさりと出海の短編を却下した。
「それは横暴じゃないですか?恵先輩。何が悪かったんですか」
「何がって・・・全部だよ・・・」
「夢から覚めないわたしを倫也先輩が夢の中に入り込んで起こしに来る。テンプレ通りの作品だと思いますけど」
「もう少しプロットを紹介してみて?」
「3つの関門があって、それぞれで鍵を手に入れないと最後にたどり着けないんです。そこにはガラスの階段があって鎖につながれて目覚めないわたしがいて・・・倫也先輩がキスをすると目覚めてハッピーエンドです」
「で、どんな関門なの?」
「1つ目が温泉イベントです。湯あたりしたわたしを倫也先輩が介抱してくれて、人工呼吸で起こして鍵をGETします」
「2つ目も3つ目も紹介する?」
「もちろんです。2つ目は森の中で目覚めない姫役のわたしが・・・」
「もういいよ出海ちゃん」
「なんでですか?」
「要するに3回キスして、4回目に本当に起きるわけね?」
「そうです。いい話じゃないですかー」
恵がため息をつく。
「それって、出海ちゃんを安っぽくしているよね? それがまず問題だよ。わたしたちヒロインは様々なイベントを通して、涙や笑いがあって、読者と心を通わせて・・・祝してもらいながら、最後にキスをするんだよ? もちろん、出海ちゃんがこれから『可愛い元気な後輩役』をやめて『ビッチ』になりたいなら、それでもいいのかもしれないけど・・・」
「でも、恵先輩はこの作品の中でたくさんキスしているじゃないですか?それに、負け犬5の最後の方では行間にエッチを想像させる言い回しをしてますよね?」
「あの・・・出海ちゃん・・・今、わたしを『ビッチ』だっていったのかしら?」
「そこまでは言ってませんけど・・・」
「ちょっと波島くん?妹さんへの指導はどうなってるのかなぁ・・・?」
恵の瞳が黒く塗りつぶされる。
「波島君なら、さっき走って帰っていったわよ。加藤さん」
詩羽が答えた。
「そう・・・でも、わたしはもうこの子を指導する気もしなくなったから、そろそろ帰るね。霞ヶ丘先輩・・・あとはよろしくお願いします。『負け犬5』で恵ルートも終わったことだし、わたしはここで降板するわ」
恵が作品から消えた。
「・・・それにしても、ひどい作品プロットを作ってきたものね・・・出海さん」
霞ヶ丘詩羽もため息をつく。
「そんなにダメですか?」
「ええ、もうプロット紹介をした時点で活字の無駄って感じね」
「・・・」
「そうねぇ、夢から覚める話なら、最初の3つの話は倫理君になぜ惹かれるようになったかを書くべきね。例えば・・・
①一緒に作品を作っている時に褒めてくれて嬉しかった。
②二人で買い物イベントしたときアクシデントがあってドキドキした。
③困ったことがあった時さりげなく助けてくれた。
そのような小さなフラグを立てた上で、最後にキスは勘弁してあげます・・・でも手をつないで現実に戻してください・・・今は『憧れの先輩』でわたしには十分です・・・みたいなオチなら、出海さんらしさも残るし、読者もほんわかするし、応援したい気持ちにもなるんじゃないかしらね」
出海は納得してうなずく。
「さすがです・・・霞ヶ丘先輩!それやりましょう」
「こんなのテンプレみたいなストーリーでしょ。やる価値なんてないわよ?」
「どんなストーリーなら価値があるんですか?」
「少なくともネズミーランド編よりは完成度が高くないとだめよね。あれはスケッチでオチを事前に描いているという伏線を回収したのだけれども、3つの話+結末という構成を踏襲しつつ、3つの中に伏線を忍ばせてから回収。さらにネズミーランド編も関係するようなものならいいんじゃないかしら?」
「それ考えてください霞ヶ丘先輩!」
「キャラはね・・・作者以上の知能をもてないのよ」
「・・・ボツになった理由って・・・」
英梨々がぼそりと一言いう。
「作者はいくら考えてもアイデアが浮かばないので、そのうち考えるのをやめた・・・」
詩羽が苦笑いをして、さらに続けた。
「でも短編やるっていったしな。そうだ加藤に投げてみよう」
「ひどくないですか!?それで総没ですか」
出海は自分の扱いのひどさに呆然とした。
(つづく)
すまない。