プロット『倫也と英梨々デート①(ボート)』 その2
前回の続き。倫也の部屋に倫也と英梨々がいる。
「帰るわ」
「えっ?」
英梨々が部屋から出る。倫也は茫然と見送った。
イライラしながら歩く英梨々は、『倫也のバカ』みたいなありふれたセリフも呟かない。黙って部屋からでていった。
ある人物にケータイで連絡してから、駅へと向かった。
※※※
電車を乗り継いで目的の駅に着く。伊織が待っていた。
「伊織、ボート乗りに行くわよ」
伊織は空を見上げる。快晴。小さな白い雲が少し浮かんでいた。
「ボートに乗るにはいい天気だね」
英梨々が公園へ向かって速足で歩く。伊織はその横を黙ってついていく。
「それにしても・・・澤村さんは絵になるね。うん」
「どうも」
公園内につくと、どっちに向かうか英梨々はわからず立ち止まる。
「ボート乗り場は確か・・・あっちだよ」
伊織が左手を指す。
「それにしても・・・ヒロインが他の男性とデートなんて、タブーにふれるにもほどがあるんじゃない?」
「別にデートじゃない。ボートに乗るだけよ」
「まっ、いいんだけどね」
「それにしても、他に男性キャラっていないのかしらね?」
「さぁ・・・まぁ適役な気もするから、僕でいいんじゃない」
2人が新緑の木漏れ日の中を歩いていく。道行く人があまりの美男美女のカップに驚いて振り返る。「撮影?」って呟いている人もいる。
「昨日の第七章、読んだ?」
「まぁ、一応ね」
「どう?」
「ん~。まぁひどいよね」
「でしょー」
伊織が自販機でボートのチケットを買う。英梨々に何も尋ねない。
2人が案内に従って手漕ぎボートの乗り場にいく。
「澤村さんが漕ぐ?」
「そうねぇ・・・できるかしら」
「疲れたらかわるさ」
伊織が先にボートに乗る。それから手を差し出す。
英梨々は少しためらってから、伊織の手を取りボートに飛び乗る。
ボートが揺れて英梨々のバランスが崩れるのを伊織がそっと支える。
「漕ぎ手はそっち」
2人が向いあって座った。
英梨々が櫂を漕ぐがボートがうまく動かない。
伊織は両方の櫂の端をもつ、英梨々とは手が少し触れる。
「そこまでは頼んでないんだけど」
「ここだと、他の人に迷惑になるから、少し我慢して」
「・・・そう」
伊織が黙って反対側から漕いで、広い池の中央付近までボートを進めた。
「今日は風も弱いし、ここでゆっくりなれるといい」
「うん」
英梨々が櫂を漕ぎだす。どうしても右手が強く、同じところを回っている。
「意外と難しいのね・・・」
眉をしかめる。伊織は少し笑顔を作る。
「慣れるしかないさ、たくさん漕ぐよりも、一回一回両方をそろえて、大きく進むイメージがいいと思う」
英梨々が櫂を大きく操作する。ボートが進んでいく。
「慣れてきたら、奥の方へ進んでみよう。橋の下もくぐれる」
「うん」
他のボートに近づきすぎたときは、伊織は櫂を手にもって無言でコントロールする。
「倫也はあたしのキャラをなんとかしようとしていたのよね?」
「そうかもしれないね」
「あれでしょ、倫也と恵がボート乗っているところを、詩羽とあたしが帽子とサングラスとマスクで顔を隠して、スワンボートで追いかけるようなキャラだとおもっているのよ」
「目に浮かぶよ」
2人で静かに笑う。
「こう、ツンデレキャラっていうのかしらね?『ボートに乗ってあげてもいいけど?』みたいな言い回しにさ、『いや、俺は乗りたくねぇし』みたいな返しで突き放してから、こっちが涙目で何かを訴えかけて、『しょうがねぇなぁ・・・』とか、そんな会話が倫也はしたいのよ?わかる?」
「ため息がでるほどわかるよ」
「どこにそんなやつがいるんだろ?」
「妄想だから」
「そういうギャルゲー脳が倫也をダメにしたのね・・・」
「キャラ立ちや物語の導入を考えると倫也君の気持ちもわかるんだけどね」
「まぁ・・・ね。ところで、漕ぐの疲れたわ」
英梨々は一本目の橋をくぐったところで満足した。
「かわるよ。でも立ち上がらないで危ないから」
「そうなの?」
「うん、重心は低く保ったままこっちにきて」
伊織が手を差し出す。英梨々がその手を握る。
それから、伊織も低い姿勢のまま場所を入れかえた。
「ふぅ・・」
「そんなに危ないの?」
「立つとバランスが思ったよりも崩れるんだよ。2人とも立って場所を入れかたら、どっちか落ちても不思議じゃない」
「へぇ・・・」
「奥までいってみるかい?」
「せっかくだから、そうしてもらえる?でも・・・」
「ずいぶん長くすごしたみたいだね。次は霞センセと相談かな?」
「さぁね。今は、ゆったりとボートに揺られていたい」
英梨々が両手を前で伸ばした。それから木の間から見える青い空を眩しそうに見上げた。
「こうして黙っていると、本当に童話の絵本のお姫様みたい綺麗だよね。澤村さんは。」
「釣り合う王子もいなければ、ダメな王子すら隣にいない結末なのよね」
池の波が静かにきらめく。
(つづく)
なんと・・・