プロット『詩羽に叱られる英梨々』
プロット『倫也と恵の会話』
※※※
詩羽と英梨々がいつもの喫茶店のいつもの席に座っている。
詩羽がアイスコーヒーを飲む。
「で、これはいったいどういうことかしら?澤村さん」
「まずかったかしら?」
「これはもう浮気じゃないの?いくらなんでもまずいでしょ」
「そう?伊織には恋愛感情もなく、むしろ同じ物語の戦友みたいな印象なんだけど」
「この物語の波島さんも、キャラ崩壊がけっこうひどいのよね」
「終始いい人で通しているしね」
英梨々はアイスティーを飲む。
「で、むしろ聞きたいのは『プロット』通りに進めなかったのだけど、それはどう問題なっていくのかしら?」
「未来のことは私にもわからないけれど、少なくとも『倫也と恵の会話』プロットが立ったわね」
「そこはもうどうにもできないでしょ」
「そうね」
「一つわかったことがあるのよ、詩羽」
「なにかしら?」
「あたし・・・プライドは高いみたい。なんか倫也の御託きいていたら、イライラしてきちゃって・・・こっちから誘っているんだから、ボート乗りにいけばいいじゃないね?」
「まったくその通りなんだけど・・私も漫画の取材名目でデートに誘いなさいって言ったわよね」
「ちょっとまって、詩羽までお説教するつもり??」
「そうではないけど・・・」
詩羽が一口飲んでからため息をつく。
英梨々はグラスの氷をストローでかき混ぜている。
「あたしが何をしたいか?って、問いに答えたわけでもないけれど、あの状況で倫也とボートに行きたいほど卑屈にはなれなかった」
「それが澤村さんの選択ならそれでいいのかもしれない」
「でも、このままじゃ英梨々ルートにいけないし、『負け犬7』が完成している以上は困るのよね・・・」
「先のことはおいておいて、要するに今の倫理君が好きじゃないってことでしょ?」
「そうかもしれない・・・」
詩羽がコーヒを飲みながら考える。
(もしかしたら倫理君の記憶の消し方を失敗したのかも。『ハーレム型主人公らしく』なんていってしまったから、逆にクラスメートBにまで優しくなってしまったのかもしれない。それに澤村さんが好きなのは『ゲーム会社の社長になる倫也』であって、アシスタンとしてヒモになる倫也ではない・・・)
「ゲームを作るしかないのかもしれないわね」
「それも今更って感じだし、倫也に強烈なインスピレーションが起こるわけでもないし・・・」
「そうね。まぁ今回のボートイベントは成功したってことでいいんじゃないかしら?」
「倫也とデートしてないのに?」
「あなたが自分の意思でプロットから外れた。この事実をまずは喜びましょうよ」
「優しいのね、詩羽は」
※※※
GWも半分が過ぎたころ、倫也が部屋でゴロゴロしていた。
恵とLINEのやり取りをしている。
「五月のクラスメートBイベントなんだけど、『お土産を渡す』でいいかな?」
「いいと思う」
「自宅までいくのは変だから、学校始まってからでいいよね?」
「いいと思う」
「じゃあ、また、学校でね」
倫也はそれには返信しない。際限なく続きそうで・・・今はそんな気分にはなれなかった。
プロローグから積極的だった英梨々は、帰ったきり連絡をよこさない。何かに怒っているようだが心当たりがない。やはり鈍感主人公だからだろうか?
告白イベントのオープニングから付き合うことになった。最近はいい感じに仲良くなってきている。物語がはじまってからずっと振り回されっぱなしだ。英梨々と結ばれる物語なら、英梨々と喧嘩中のまま進めばバットエンドだろう。それは回避したい。だとすると英梨々に機嫌を直してもらうしかない。仲直りイベントが必要だ。ということは・・・俺は英梨々を好きなのか?好きは好きだ。でも・・・何かが違う。好きっていうのはもっとこう・・・気になるというか・・・
倫也がケータイを見る。
『じゃあ、また、学校でね』
抑揚のないトーンの高い澄んだ声が聴こえてくるようだった。
・・・そう、胸が締め付けられるような感覚だ。
(つづく)