負け犬ヒロインの育て方 6 (ラスト)   作:きりぼー

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平和だなぁ


第十三章

 

プロット『倫也と英梨々デート①(ボート)』 その5

 

※※※

 

 ぎぃーというボートを漕ぐ音。水が跳ねる音。木々の間には鳥も鳴いている。

英梨々は今、倫也と過ごす時間をゆっくりと感じている。

少し資料集めのためにケータイで画像を撮ろうか。あるいはスケッチブックでラフでも描くか・・・

 何かをしていた方が気持ちは楽だ。ボートを漕ぐ倫也をまっすぐに見ることができない。ときどき目が合うと、

(何みてんのよ)

っと、ついつい照れていいたくなる。だからすぐに目をそらす。きっと顔が赤くなっているに違いない。

 

「ねぇ倫也?」

「ん?」

「あたしは何を質問すればいい?」

「・・・何いってんだ?」

「さっきから、何度も何度もいろんな質問して、会話がシミュレートされているんだけど?」

「ああ、それは『リテイク』されているんだろ」

「誰に?」

「お前自身に」

「そう・・・なんだ・・・」

 

倫也がボートを漕ぐのやめる。水の流れに任せるとボートは脇の方へ流れてついて、そこで静かに上下に揺れるだけになった。

 

「んー。無理に会話することもないしさ、こうして2人で過ごす時間が俺は好きだけど」

「あたしだってさ・・・この時間が続けばいいと思う。時間が止まればいいとさえ思うよ。そしたらこんなに『不安』にならない。倫也と、このあと遅めのランチを食べて、ぶらぶら買い物をして、ちょっと可愛い小物を記念に買ってさ・・・、そんな時間がずっとずっーと続くなら・・・」

「・・・英梨々・・・」

 

英梨々は小さく体育座りをして顔を隠した。

 

「・・・それを人は・・・『恋』と呼ぶんじゃないか?」

 

英梨々の肩が震える。顔が真っ赤になる。

 

「ぷっ」

 

思わず笑ってしまう。それから立ち上がる。

 

「ちょっと倫也!あんまり恥ずかしいセリフ言わないでよ!」

 

バランスが大きく崩れて、英梨々が池に落ちそうになる。

倫也が慌てて支えようとすると、ボートが転覆した。

 

「・・・」

「・・・」

 

英梨々が倫也を抱えて空に浮いている。

 

「あの・・・英梨々・・・?」

「ちょっと、照れるとこういう展開になるのよ・・・」

「ドラゴンボールじゃないんだから、舞空術使わないでいただけます?」

「あんたが恥ずかしいこと言うからでしょ!」

 

橋の上に2人が降りる。

英梨々が指を鳴らすとボートが元の乗り場に転送された。

 

「さっ、デートイベントも終わったし、帰りましょ」

 

倫也は苦笑いをしてため息をつく。英梨々なりに精いっぱいがんぱってくれた。それでいいと思った。

 

「どっかで、遅めのランチでもとるか・・・」

「そ・・・そうね・・・担々麺がいい」

「中華ね」

「あとゴマ団子」

「中華だな」

「うん。いい店知ってる?」

「残念だけど、こんなリアルデートイベントには対応していない仕様なんで」

「あっそ」

 

2人が歩きだす。

 

「恋人になるのも大変なのね」

「もう少しだった気がするけどな?」

「あたしが耐えていれば?」

「そうだなぁ・・」

「でも、そのためにデートを重ねるんじゃないの?」

「なるほど」

「6月のイベントね、やっぱり梅雨だし相合傘イベントかしらね?」

「さぁ・・・俺が決めることじゃないから・・・」

「そうね。加藤さんはどうするのかしらね」

「日直じゃね?」

「あはは。ありそう」

 

2人が和やかな時間を過ごす。

この時、英梨々は少し浮かれていた。自分の発言が、自分の考えが物語に影響を及ぼすことを軽視していた。

「6月」に恵から提出されたイベント内容もまた、「相合傘」になることを、この時はまだ知らない。

 

(つづく)




不穏だなぁ
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