プロット『倫也と英梨々デート①(ボート)』 その5
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ぎぃーというボートを漕ぐ音。水が跳ねる音。木々の間には鳥も鳴いている。
英梨々は今、倫也と過ごす時間をゆっくりと感じている。
少し資料集めのためにケータイで画像を撮ろうか。あるいはスケッチブックでラフでも描くか・・・
何かをしていた方が気持ちは楽だ。ボートを漕ぐ倫也をまっすぐに見ることができない。ときどき目が合うと、
(何みてんのよ)
っと、ついつい照れていいたくなる。だからすぐに目をそらす。きっと顔が赤くなっているに違いない。
「ねぇ倫也?」
「ん?」
「あたしは何を質問すればいい?」
「・・・何いってんだ?」
「さっきから、何度も何度もいろんな質問して、会話がシミュレートされているんだけど?」
「ああ、それは『リテイク』されているんだろ」
「誰に?」
「お前自身に」
「そう・・・なんだ・・・」
倫也がボートを漕ぐのやめる。水の流れに任せるとボートは脇の方へ流れてついて、そこで静かに上下に揺れるだけになった。
「んー。無理に会話することもないしさ、こうして2人で過ごす時間が俺は好きだけど」
「あたしだってさ・・・この時間が続けばいいと思う。時間が止まればいいとさえ思うよ。そしたらこんなに『不安』にならない。倫也と、このあと遅めのランチを食べて、ぶらぶら買い物をして、ちょっと可愛い小物を記念に買ってさ・・・、そんな時間がずっとずっーと続くなら・・・」
「・・・英梨々・・・」
英梨々は小さく体育座りをして顔を隠した。
「・・・それを人は・・・『恋』と呼ぶんじゃないか?」
英梨々の肩が震える。顔が真っ赤になる。
「ぷっ」
思わず笑ってしまう。それから立ち上がる。
「ちょっと倫也!あんまり恥ずかしいセリフ言わないでよ!」
バランスが大きく崩れて、英梨々が池に落ちそうになる。
倫也が慌てて支えようとすると、ボートが転覆した。
「・・・」
「・・・」
英梨々が倫也を抱えて空に浮いている。
「あの・・・英梨々・・・?」
「ちょっと、照れるとこういう展開になるのよ・・・」
「ドラゴンボールじゃないんだから、舞空術使わないでいただけます?」
「あんたが恥ずかしいこと言うからでしょ!」
橋の上に2人が降りる。
英梨々が指を鳴らすとボートが元の乗り場に転送された。
「さっ、デートイベントも終わったし、帰りましょ」
倫也は苦笑いをしてため息をつく。英梨々なりに精いっぱいがんぱってくれた。それでいいと思った。
「どっかで、遅めのランチでもとるか・・・」
「そ・・・そうね・・・担々麺がいい」
「中華ね」
「あとゴマ団子」
「中華だな」
「うん。いい店知ってる?」
「残念だけど、こんなリアルデートイベントには対応していない仕様なんで」
「あっそ」
2人が歩きだす。
「恋人になるのも大変なのね」
「もう少しだった気がするけどな?」
「あたしが耐えていれば?」
「そうだなぁ・・」
「でも、そのためにデートを重ねるんじゃないの?」
「なるほど」
「6月のイベントね、やっぱり梅雨だし相合傘イベントかしらね?」
「さぁ・・・俺が決めることじゃないから・・・」
「そうね。加藤さんはどうするのかしらね」
「日直じゃね?」
「あはは。ありそう」
2人が和やかな時間を過ごす。
この時、英梨々は少し浮かれていた。自分の発言が、自分の考えが物語に影響を及ぼすことを軽視していた。
「6月」に恵から提出されたイベント内容もまた、「相合傘」になることを、この時はまだ知らない。
(つづく)
不穏だなぁ